Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

歌舞伎座『壽初春大歌舞伎 夜の部』 3等A席下手寄りセンター

2009年01月24日 | 歌舞伎
歌舞伎座『壽初春大歌舞伎 夜の部』 3等A席下手寄りセンター

『壽曽我対面』
今月唯一の大顔合わせ演目。

曽我十郎@菊五郎さん、私、大好きなんです。やっぱり素敵~~~~。おっとりとしながら知的で芯のある兄としての格が十分の十郎です。姿形もほんとに素晴らしい。当代一の十郎です。

曽我五郎@吉右衛門さん、大きくて怒りが充満してる少々怖い系五郎でした。いかにも工藤に飛び掛らんばかり。力の入れ方が上手です。お手本のような形の良さ。高めに取ったハリのある声に若々しさを感じます。終始勢いのある五郎でした。

工藤祐経@幸四郎さんがいやみったらしくて良かったです(笑)。格の高さ、大きさがありつついかにも敵役。今回、声が凄く出ててビックリ。劇場に響き渡り空気を切り裂くほど。敵役の凄みをみせました。幸四郎さんで悪人のお役を見たいですねえ。

鬼王新左衛門@梅玉さん、一人だけ様式じゃない拵えの出なんですが違和感がないのと、爽やかな声質で場の切り替えをします。良いですねえ。  

魁春さんの舞鶴、拵えがとても似合っていて素敵でした。キリッとした佇まいに大きさを感じました。

芝雀さんの大磯の虎、大きさのなかに艶やかさがあって非常に良かったです。風格が出てきて大磯の虎は完全に持ち役になりましたね。

近江小藤太@染五郎さん、八幡三郎@松緑さんの工藤家来、細々した仕事をしっかりと。声もよく出てました。この二人は五郎が出てきてからは吉右衛門さんを終始見続けていました。染五郎さんは花道の出からガン見状態で目が思いっきり右に寄ってました(笑)。松緑さんも本舞台に入ってからチラ見し始めてだんだん途中からガン見。二人とも芸を盗もうとするその姿勢がよろしい。

化粧坂少将@菊之助さん、魁春さんと芝雀さんに挟まれるとさすがにちょっと線の細さが目立ってしまいますが端正な佇まいで可愛らしかったです。菊之助さんは菊五郎さんをガン見してました(笑)

しかしこの面子で様式だけの芝居の『対面』というのは…。豪華だし、華やかだし面白かったんですけど、でも、芝居上手なこの面子が揃うんだったらなにか違う芝居させてよ、と言いたくなりました。『対面』をやらせる面子じゃないよ。ああ、もったいない、もったいない。


『春興鏡獅子』
勘三郎さんの『鏡獅子』は前回(2007年)のほうが良かったかも…。”気”の入り方が違っていたというか。多分、日によって出来が違うとは思うのですけど。弥生は相変わらず可愛いし、獅子は勇壮さがあって見事は見事なんだけど…チト物足りない。全体的に少し流れすぎかなあ。前回が良すぎたかな。

さすがに円熟の域に入ってきた感じで、弥生はまあるく、まあるく流れるように踊る。余計なものをそぎ落としつつある踊り。純粋さと娘らしい愛らさは見事だったと思う。でも好みからいうと今回は踊りが流れすぎな部分が。そこはもっと溜めて欲しい、とか体をもっとキツク、形を整えて欲しいとか…。前回のあの体の使い方が忘れられない。もっとギリなところで踊っていた気がする。獅子のほうは昔ほどのキレが無い分、押し出しの強い聖なる獣たらん雰囲気を強く出してきた感じ。その勇壮さはやはり良い。ただ、全体的に毛振りが若干小さめ。後半ですし、疲れがでたかな。足もあまり上げてなかったし。

胡蝶は二人とも頑張ってました。千之助くんは孝太郎父さんソックリですね。踊り方もさすがに似てる。柔らか味があってきちんと踊っていて上手いです。お澄まし顔がなんとも可愛い。玉太郎くんは少々不器用な踊りかな。そこを愛嬌でカヴァー。でも大きく踊ろうと頑張っていてほほえましかったです。玉太郎くんは華がありますね。

局吉野@歌江さん、飛鳥井@吉之丞さんはそこにいるだけで存在感。今のうちに観ておかないとな役者さんお二人。

家老渋井五左衛門@友右衛門さん、老け役が続きますが体の作り方が見事なので驚きました。この方、実力はあると思うのですが役付きが…。女形さんのままのほうが活躍できたのでは、と最近つくづく思います。今からでも遅くないんじゃないかと。

染五郎さん贔屓の戯言ですが、この『春興鏡獅子』を拝見して、染五郎さんの『春興鏡獅子』もまた早いうちに拝見したいと思いました。勘三郎さん写しの踊りではありましたが持ち味が違ってるんですよね。清冽な初々しい鮮やかな踊りだったな、とつい思い出してしまいました。。


『鰯賣戀曳網』
のんびりほのぼの。打ち出しにはちょうどいい感じ。

蛍火@玉三郎さんがはっちゃけていました。おっとり一途なお姫さまを実に楽しそうにメリハリつけて演じていらっしゃいました。タカビーな玉様萌え(笑)。今月の玉様、本気で何かがふっきれた感じがするのは気のせいかしら?最後の「鰯こうえい」の声がスコンと突き抜けていきました。

猿源氏@勘三郎さん、肩の力がうまい具合に抜けていて、可愛らしい猿源氏でとても良かったです。コメディタッチの芝居の時にはやりすぎな部分もある勘三郎さんですが、今回は自然に自分の持ち味の間のよさで笑わせていたように思いました。

海老名なあみだぶつ@彌十郎さん、粋で渋い親父様でとても素敵でした。こういう包容力のある役がお似合いです。

六郎左衛門@染五郎さん、モミアゲにすんごい不細工メークで「えっ?染五郎さん?」という拵えでしたがかなりキュートでした。気のよさそうな馬が大好きな博労。馬と一緒に細かい芝居してるのが可愛い。後半も勘三郎さんとイキがあっていて良い感じでした。家老に化けたところでは何気に所作が良すぎて格好良かったりも(笑)楽しそうにマジメに演じているところで笑わせていました。やはり間が良いです。

歌舞伎座『壽初春大歌舞伎 昼の部』 1等1階席花道寄り前方

2009年01月17日 | 歌舞伎
歌舞伎座『壽初春大歌舞伎 昼の部』 1等1階席花道寄り前方

中日過ぎてもまだまだお正月の雰囲気が残っていて劇場に華やぎがありました。一月の歌舞伎座って良いですねえ。なんだかウキウキしてきます。昼の部、新味のない演目並びかなと思っていたのですが、思った以上にかなり充実していて楽しかったです。主役の役者さんたちがそれぞれが当たり役をしっかり勤めているんですから、なんだかんだ言っても見応えがかなりありました。

『祝初春式三番叟』
こちらの三番叟はお初。後見二人が最初にご挨拶するのって珍しいんじゃないかな?にしても錦之助さん、松江さん、今月これだけ?もったいなさすぎです。

翁@富十郎さん、お声にハリがあって謡が素晴らしいです。でも踊りのほうはかなりきつそうでちょっとハラハラドキドキ。腰を落としてゆったりと踊るのですからかなり大変なのでしょう。形が素晴らしいのがさすがとは思いました。でも五月の矢車会、大丈夫かなと心配になってしまいました。

三番叟@梅玉さんは品よく丁寧に。袖の捌き方がとっても綺麗でさすがです。ただやはりちょっと体にキレがなくなってきたかなという部分も…。梅玉さんはキレと柔らか味のバランスがとてもいい踊り手さんだったんですけど。

千歳@松緑くん、マジメに一生懸命なのは好感もちますが、踊りは一直線すぎ。曲線がないのよね。メリハリがあるのは良し。目の部分の化粧をもう少しなんとかしたほうが…。

千歳@菊之助さん、女形の柔らかい踊りです。形が非常に良くて品のいい踊り。でも個人的好みを言わせていただけるとこの舞踊にはもう少しメリハリが欲しいかな。化粧は色がなさすぎです…もう少し紅を入れたほうが似合いそうと思うのですが。

『平家女護島 俊寛』
この演目飽きた…と思いつつ、これが面白かったんですよ~。好きな役者さんたちが出てるからなおさらなんだとは思いますが。

俊寛@幸四郎さん、『勘三郎襲名披露』で演じた俊寛からどんどん人間くさい俊寛になっていきますね。それ以前は孤高の高潔な人物像として描いてきてたと思います。しかも以前よりかなり若く演じてきています。一個の悩める壮年の男として俊寛を演じてきました。これがなんだかとても良い感じ。かなり感情表現がリアル志向で、余計なことをせずシンプルに真っ直ぐな演じよう。なので俊寛のその時々の心持がストレートに伝わる。幸四郎さんの俊寛は妻恋しい、寂しさのある俊寛でした。人のために、という悲劇のヒーロー的人物として演じてきていない。いわゆる俊寛の己の情の部分での行動に終始するのですがそこの説得力がある。それだけに「おーい」が切ない。でも残ることを決めたことを後悔してない万感の気持ち溢れる幕切れ。そして「それでも生きていく」という覚悟を決めたけ充足感を感じているようなお顔が印象的でした。呆然でもなく虚無でもなく笑顔でもなく、それらが全部入り混じっているのでは?と思わせました。ほんの少し口元が上がってるんですよね。

千鳥@芝雀さん、可愛いくて健気な、素朴さのある、でもどこか気の強いところものぞかせる逞しい娘でした。とにかく一途で真っ直ぐ。そのトコトンなところで切なかったり、困ったちゃんな愛らしさだったりしました。愛する人と別れることを絶望的なまでに嘆き、でも親と慕う俊寛をほっておけないその狭間で悩む千鳥でした。台詞廻しがほんとこのところ一段と良くなってきたと思う。ちょっと太めになっていたのがいくら皮下脂肪が必要な海女でも、どうなんだろうと思ったりもしましたが…。でもファン的にはムチムチ感が健康的な色気を感じさせるかなと良い方向に思ったりも(笑)。

丹波少将成経@染五郎さん、かなり良いです。すっかりこのお役も手中にしてきたな、と思いました。都人の浮世離れ加減と青年らしい素直さがとても丹波少将らしさに繋がって存在感がありました。千鳥を見初める語りも情景がしっかり浮かんできますし、千鳥を可愛いと思っている彼なりの誠実さがきちんと体から滲み出ています。島にいることの寂しさ、憂いが恋に走らせてしまった?という、どことなく「身分違い」というものを感じさせ千鳥との恋が成就しなさそうな部分があるのが、深読みできるという部分でいいなあと思う。にしても染五郎さん、綺麗さに磨きがかかってませんか?須磨に流された源氏の君のようでした。

平判官康頼@歌六さん、なんとなく想像つかなかったのですですが、やはりこの方は上手いですねえ。世話焼きな部分と状況をきちんと見極めるだけのしっかりとした芯のある人物像を描いてきました。三人の要的な位置付けがハッキリしています。どこにいても信頼できそうな感じがいいなあ。

丹左衛門尉基康@梅玉さん、もうねこの役は梅玉さんじゃないとダメです。もう大好きで大好きで、出てくるとニマニマしちゃう。この役をこれだけ説得力を持たせることができるのは梅玉さんしかいない。好き放題やってるのはこの丹左衛門なんですけどね、それを感じさせないの(笑)。

瀬尾太郎兼康@彦三郎さん、予想以上にすごく良かった。ちょっと尊大だけど、仕事はマジメにやる瀬尾、というキャラクターが浮き出ていた。どこか生きていくのに不器用さがあって、だから敵役になってしまったのね、な押し出しの強さが絶妙。瀬尾は段四郎さんのが大好きだけど彦三郎さんのもすごく良い。

『花街模様薊色縫 十六夜清心』
この演目も何度も拝見している演目。最近では新之助時代の海老蔵さんの清心と時蔵さん十六夜。菊五郎さんの清心はわりと観ててこれで3度目かな。個人的に仁左衛門さん×玉三郎さんコンビの通しが一際印象的に残っています。清心は演じる役者さんによってだいぶ雰囲気が変わるキャラクターですね。

さて、今回ですが見取り狂言なのがもったいないと思うほどバランスのよい良い舞台でした。さすが、大顔合わせだけあります。また菊五郎さんがほんと当たり役をしっかり気持ち良さそうに演じていらっしゃるのがうまく清心の人物像にリンクしていて見応えがありました。

清心@菊五郎さん、僧としては危なっかしい不安定さと色ぽさがあって後半落ちていく過程に妙に説得力がありました。また気持ちの弱さ、だめ男具合が妙に可愛くて思わず感情移入してしまう。後半、コミカルに軽く演じていながらもどの方向に向かうかわからない危うさがいいです。声の微妙なトーンの変え方でその揺れが表現されていて見事だなと思いました。また、清元に乗っての所作がいつも以上に体の置き方が丁寧で形のひとつひとつが美しくありました。

十六夜@時蔵さん、綺麗でした~。海老蔵さんと演じた時は、引っ張っていかないといけない立場もありかなり年上の女という感じがしてしまって愛らしさが足りない感じだったんです。しかし、今回は菊五郎さんがお相手。女のいじらしい可愛らしさが十分に出ており、清心一途な思いつめた気持ちがストレートに伝わってきて良かったです。時蔵さん、このところ体の線がますます柔らかに綺麗になってきたと思います。

白蓮@吉右衛門さん、役にピッタリでかなりカッコイイ。存在感ありまくりです。鷹揚で遊び心があるのが素敵。船頭三次@歌昇さんとのやりとりが自然でいい感じ。

求女@梅枝さん、以前演じた時にあった儚い感じはさすがにもう無いのですが、清心とのやりとりが明快でかなり良かったです。

『鷺娘』
玉三郎さんが何か吹っ切ったような気がした『鷺娘』。昨年9月の秀山祭での『日本振袖始』で方向性を変えてきたかな?と感じたんですが、それが今回の『鷺娘』でも見えました。現在のご自分の良さがどこにあるかというものを見極めてきた、という感じ。自分をどう見せていくか、一時期迷いがみえた気がしてたんですがそれが無くなってました。観ていて気持ちいいほどに玉三郎さんの世界観を表現してきていました。このところの内へ向かう踊りから外への解放がみえました。

さよなら公演Ver.は今まで以上に「鷺の精」という人外なものを前面に押し出してきていました。それだけに娘の部分が際立ったような気がします。なんとも可愛らしい可憐な町娘が立ち現れてきていました。玉三郎さんの『鷺娘』は何度も拝見していますが切ない恋を語る娘の部分がこれほど際立ったのは久しぶりのような気がします。地獄の責め苦の部分はいつもより激しい感じで観ていてこちらまで苦しくなってきそう。見応えのある鷺娘でした。

この演目に関しては隅々まで玉三郎さんの美意識でコントロールされた舞踊だと思うのですが今回、このVer.の舞踊は玉三郎さん以外では決して観れないものだろうなと改めて思ったりしました。

守若さんの引き抜きはいつ見てもお見事。

東京オペラシティ『ヒラリー・ハーン ヴァイオリン・リサイタル』 D席3階LA3

2009年01月15日 | 音楽
東京オペラシティ『ヒラリー・ハーン ヴァイオリン・リサイタル』 D席3階LA3

今年の初鑑賞は歌舞伎ではなくクラシックコンサート。昨夜はオペラシティに『ヒラリー・ハーン ヴァイオリンリサイタル』を聴きに行きました。

ヒラリー・ハーンは2005年に聴いた以来役3年ぶり。相変わらず背筋がピンと伸びたとても美しい演奏スタイル。透明感のある美しい音色はますます磨きがかかっていました。硬質でそれでいて伸びやかな音。またテクニックが凄いです。音にほとんどブレがなくて音のひとつひとつが本当に綺麗に鳴る。超絶技巧も軽々としかも淡々と弾いてしまうのには驚きます。繊細と言っていいような音色なのですが芯がしっかりしているというか弱さはまったくないです。彼女の真っ直ぐに真っ直ぐに伸びる美しい音色に聴いていると背筋がこちらもピンと伸びるような、爽やかな心持になります。音の膨らみという部分でまだまだ若いなあと思いますが、美しい音色を追求しているような真摯な演奏に心打たれます。

今回のプログラムはイザイ、アイヴズとそれほど一般的じゃないものを並べてきました。このなかではイザイが秀逸。特に第6番が素晴らしい演奏でした。バッハを意識した曲想ですのでヒラリー・ハーンに合うのでしょうね。こういう求道的な天上へ向かう音楽、というものが彼女の資質に合うような気がします。アイヴズは初めて聴きましたが映画音楽のような少しポピュラーな雰囲気を持った流れるような曲でした。ハンガリー舞曲集は上手いし聴き応えはあるのですが私の好みからするとちょっと綺麗過ぎるかなあ。好みからするともう少し粘り気が欲しいかも。アンコールではパガニーニのカンタービレが音の美しさが際立って 素晴らしかった。

伴奏者はヴァレンティーナ・リシッツァ。大柄で迫力のある金髪美女でした。演奏は脇に徹していた感じかな。悪くはないと思うのだけど、これぞという演奏はなかったかな。2005年のナタリー・シュウよりはハーンに合っていたと思う。ピアノの聴き所が少ないせいもあり今回の演奏からはどういうタイプのピアニストか把握できませんでした。調べてみるとどうやら超絶技巧の持ち主でわりと自由奔放なタイプらしい。

【曲目】
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第4番 ホ短調 Op.27-4
アイヴズ:ヴァイオリン・ソナタ第4番「キャンプの集いの子供の日」
ブラームス(ヨアヒム編):ハンガリー舞曲集より
アイヴズ:ヴァイオリン・ソナタ第2番
*****
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第6番 ホ長調 Op.27-6
イザイ:子供の夢 Op.14
アイヴズ:ヴァイオリン・ソナタ第1番
バルトーク(セーケイ編):ルーマニア民族舞

【アンコール曲】
パガニーニ:カンタービレ
ブラームス:ハンガリー舞曲第5番

2008年観劇総括

2009年01月06日 | 年間統括
2008年観劇総括

歌舞伎40回、文楽3回、演劇8回、ダンス4回、クラシックコンサート5回の計60回です。2008年は観劇を減らす方向だったはずなのにあまり減ってないです…。相変わらず歌舞伎中心の観劇でした。2008年を振り返って印象に残ったことを。役者の敬称は略。

<<1月>>
なんといっても歌舞伎座です。『一條大蔵譚』では吉右衛門の芸の凄みに圧倒させられました。高麗屋親子のドラマ性溢れる『連獅子』では20日に観た時には子(染五郎)の成長ぶりと豊かな身体表現に驚かされ、千穐楽では親(幸四郎)の気迫に驚かされた。『猩々』、『助六』での梅玉の品のある柔らかさに癒された月でもありました。

歌舞伎座『寿初春大歌舞伎 昼の部』
新橋演舞場『通し狂言 鳴神不動北山櫻』
歌舞伎座『寿初春大歌舞伎 夜の部』
歌舞伎座『寿初春大歌舞伎 夜の部』
シアターコクーン『NODA・MAP キル』


<<2月>>
歌舞伎座に通いました。染五郎の美しく伸びやかな『春興鏡獅子』に惚れ込んでしまいました。また染五郎の春興鏡獅子を観たいです。また『祇園一力茶屋の場』での芝雀のお軽の有り様に涙しました。『積恋雪関扉』ではこの舞踊の面白さがストレートに伝わって来ました。福助がとても美しかった。

歌舞伎座『白鸚二十七回忌追善 二月大歌舞伎 昼の部』
オーチャードホール『タンゲーラ』
歌舞伎座『白鸚二十七回忌追善 二月大歌舞伎 夜の部』
歌舞伎座『白鸚二十七回忌追善 二月大歌舞伎 昼の部』
国立小劇場『二月文楽公演 第二部』
歌舞伎座『白鸚二十七回忌追善 二月大歌舞伎 夜の部』
歌舞伎座『白鸚二十七回忌追善 二月大歌舞伎 昼の部』
歌舞伎座『白鸚二十七回忌追善 二月大歌舞伎 夜の部』


<<3月>>
十三代目仁左衛門の84歳から90歳までの姿を追った記録映画が一際印象的。芸を次の世代へ伝えていく厳しくも愛らしい十三代目の姿が忘れられません。ピナ・バウシュ ヴッパタールの『パレルモ、パレルモ』は生で体験することが出来て本当に良かったと思いました。

国立大劇場『3月歌舞伎鑑賞教室「歌舞伎へのいざない」』
下北沢トリウッド『歌舞伎役者 片岡仁左衛門』
国立大劇場『3月歌舞伎鑑賞教室「歌舞伎へのいざない」』
東京オペラシティ『アンドラーシュ・シフ ピアノリサイタル』
テアトロ ジーリオ ショウワ『ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団「パレルモ、パレルモ」』
内幸町ホール『歌舞伎一人芝居「人魚の恋椿(こい)-やおびくに」』


<<4月>>
『ラ・マンチャの男』はつくづく名作ミュージカルだと思う。幸四郎の魅力が一際輝いていた。名古屋での『与話情浮名横櫛』では染五郎の切られ与三がハマり役。当たり役になっていくのでは?と思わせました。

歌舞伎座『四月大歌舞伎 夜の部』
名古屋御園座『四月陽春大歌舞伎 夜の部』
名古屋御園座『四月陽春大歌舞伎 昼の部』
帝国劇場『ラ・マンチャの男』

<<5月>>
演舞場昼の部の染五郎に尽きます(笑)。『毛谷村』の朴訥で根がとっても優しい六助、『三社祭』の楽しげな悪玉、『一本刀土俵入』の無駄にかっこよかった根吉とそれぞれが素敵でした。

新橋演舞場『五月大歌舞伎 昼の部』
新橋演舞場『女形の夕べ』
シアターコクーン『わが魂は輝く水なり』ソワレ
新橋演舞場『五月大歌舞伎 夜の部』
新橋演舞場『五月大歌舞伎 昼の部』
国立小劇場『国立五月文楽公演 第一部』

<<6月>>
なんといっても歌舞伎座の『新薄雪物語』です。この芝居を観られて良かったと、しみじみ思いました。芝翫、幸四郎、吉右衛門の三人笑いが絶品だった。面白いとまでは思えなかったんだけど印象に残ってしまっているのが『生きている小平次』…不思議な芝居だった。

彩の国さいたま芸術劇場 小ホール『浦和ギターアンサンブル 定期演奏会』
歌舞伎座『六月大歌舞伎 昼の部』
歌舞伎座『六月大歌舞伎 夜の部』
歌舞伎座『六月大歌舞伎 昼の部』
歌舞伎座『六月大歌舞伎 夜の部』

<<7月>>
パルコ劇場『SISTERS』にやられました。脚本に物足りなさはあったものの主題をどう考えていけばいいのか咀嚼するのが大変で考えに考えた。たぶん、今後も考えていってしまうだろう。こういう芝居に出会えた、というのが一番の収穫だった。作・演出の長塚圭史は現在ロンドン留学中ですがぜひステップアップして帰国してきてください。オペラシティのピエール・ロマン・エマールにも「や~られた~!」でした。エマールの演奏はバロックと現代音楽のコラボだった。

全生庵『すずめ二人會』
彩の国さいたま芸術劇場『ラ・ラ・ラ・ヒューマン・ステップス 『Amjad アムジャッド』』
新宿コマ劇場『五右衛門ロック』
東京オペラシティホール 『ピエール・ロマン・エマール ピアノリサイタル』
パルコ劇場『SISTERS』

<<8月>>
パルコ劇場『ウーマン・イン・ブラック』が素晴らしかった。これぞ演劇だと思いました。上川隆也の舞台役者としての華と実力を見ることができたのも楽しかった。そしてコクーン『女教師は二度抱かれた』には悩まされた(笑)。この芝居にどう向き合えばいいのか、その軸を見出すのが大変だった。松尾スズキの人物像の切り取り方は好きなんだけど方向性にはどうにもモヤモヤが…。

シアターコクーン『女教師は二度抱かれた』
シアターコクーン『女教師は二度抱かれた』
パルコ劇場『ウーマン・イン・ブラック』
歌舞伎座『納涼大歌舞伎 第二部』
歌舞伎座『納涼大歌舞伎 第三部』
シアターコクーン『女教師は二度抱かれた』

<<9月>>
文楽『奥州安達原』にウッキウキ。面白すぎ。特に「一つ家の段」は凄すぎました。これ歌舞伎でやらないかな~。歌舞伎座は『竜馬がゆく』『日本振袖始』が楽しくてお気に入り。演舞場は『加賀見山旧錦絵』の尾上@時蔵が絶品だった。いずれ歌舞伎座で観たい。

観劇ではないのだけどDVD『NHKスペシャル 人間国宝ふたり 吉田玉男・竹本住大夫』には感動した。伝統芸能に興味がある人には必見。

歌舞伎座『秀山祭九月大歌舞伎 昼の部』
新橋演舞場『新秋九月大歌舞伎 夜の部』
歌舞伎座『秀山祭九月大歌舞伎 夜の部』
国立小劇場『九月文楽公演 第二部『奥州安達原』』
歌舞伎座『秀山祭九月大歌舞伎 昼の部』


<<10月>>
10月は奈良東大寺『東大寺奉納大歌舞伎』に尽きる。あの場に居合わすことができて幸せだった。なんとも幻想的で素晴らしい『勧進帳』でした。

ゆうぽうと『松本幸四郎特別公演 松竹大歌舞伎』
平成中村座『仮名手本忠臣蔵 Aプログラム』
東大寺『東大寺奉納大歌舞伎』
国立大劇場『大老』


<<11月>>
良いも悪いもひっくるめて楽しかった新作の乱歩歌舞伎『江戸宵闇妖鉤爪』。音の使い方がとても好みでした。幸四郎の演出力は見事だと思う。しかしいつか、見せるという部分の方向性が幸四郎とは違う染五郎の演出での乱歩歌舞伎も観たいと思う。

国立大劇場『江戸宵闇妖鉤爪』
歌舞伎座『吉例顔見世大歌舞伎 昼の部』
国立大劇場『江戸宵闇妖鉤爪』
国立大劇場『江戸宵闇妖鉤爪』


<<2008年12月鑑賞予定>>
歌舞伎座『籠釣瓶花街酔醒』にハマりこんだ12月。ノワール好きにはたまらない芝居でした。幸四郎×福助コンビが絶品。ワディム・レーピンのヴァイオリンの音色は個人的に超大大好き。ゲルギエフの指揮ぶりに色んな意味でツボる(笑)

東京オペラシティ『ワディム・レーピン ヴァイオリンリサイタル』
サントリーホール『ワレリー・ゲルギエフ指揮ロンドン交響楽団』
歌舞伎座『十二月大歌舞伎 昼の部』
歌舞伎座『十二月大歌舞伎 夜の部』
新国立劇場オペラパレス『シンデレラ』
歌舞伎座『十二月大歌舞伎 夜の部』


<<統括>>
2008年も良い芝居や良い音楽に色々出会えて楽しい1年だった。今まで以上に贔屓役者中心の観劇となったがそれで十分満足でもあった。

2009年は歌舞伎座さよなら公演なのでなるべく歌舞伎座に足を運ぼうと思う。幹部役者の大半は今が年齢的に芸と体力のバランスが良く見時な方が多い。演目がどうであれ見逃さないほうが後々のためだろうと個人的には思うので。