Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

シアタートラム『治天ノ君』 前方下手寄り

2016年10月29日 | 演劇
シアタートラム『治天ノ君』 前方下手寄り

初演時(2013年)の評判がよく気になっていた芝居。演劇というのは意図せず時代を写すことがある(と思っている)けど、この芝居はそのひとつだ。演劇に興味がある方にはぜひ観に行ってほしい。非常に真摯で丁寧なとても良い芝居です。

史実をもとに貞明皇后の視点から大正天皇を描いた物語。大正天皇の生き方を丁寧に拾い出し、時代、親と子、運命、背負うものへの責務といったものが描かれていく。淡々とていながらも情感溢れた芝居。ちょうど「今」だからこそ、より考えさせられるものでした。虚実のバランスが絶妙。夫婦の情愛、親子の関係性、周囲の人たち係わりようを中心に描いているため、人としての在り様、情の部分で感情を揺すぶられるのだけど、もう一方で観客は歴史の目撃者としての立場にも見事に立たせられる。この芝居はぜひ再演していって欲しいですし、この戯曲が後世に在り続けられますようにと思います。

役者さんたち全員とても良かった。それぞれが役に嵌っている。貞明皇后の松本紀保さんの存在感の大きさ、凛とした品のある佇まいや声はちょっと圧倒的で彼女がそこにいたからこそ皇室の物語として説得力が出たと思う。また大正天皇の西尾友樹さんの活き活きとした明るさと繊細な芝居が魅力的でした。

『治天ノ君』を観てから継承ってこと考えてる。自身であることを求めながら背負うものに対して誠実に努力していく。背負う大きさは違うとは思うけど、歌舞伎のこと、ちょっと掠めたよね。紀保さんがあの役でいたこともあり。

劇団チョコレートケーキ27回公演『治天ノ君』
【脚本】 古川健
【演出】 日澤雄介
【出演】
貞明皇后節子:松本紀保
大正天皇嘉仁:西尾友樹(劇団チョコレートケーキ)
明治天皇睦仁:谷仲恵輔  
昭和天皇裕仁:浅井伸治(劇団チョコレートケーキ)
有栖川宮威仁:菊池豪 
大隈重信:佐瀬弘幸
原敬:青木シシャモ
牧野伸顕:吉田テツタ 
四竈孝輔:岡本篤(劇団チョコレートケーキ)