Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

新橋演舞場『五月大歌舞伎 昼の部』 2回目 1等1階センター

2007年05月21日 | 歌舞伎
新橋演舞場『五月大歌舞伎 昼の部』 2回目 1等1階中央

『歌舞伎十八番の内 鳴神』
染五郎さん「鳴神少年」から「鳴神青年」には成長していたと思われ(笑)前半、高僧らしい厳しさが多少出てたかなと。でもやっぱり「鳴神くん」だったけど…。絶間姫の話を身を乗り出して聞くとこなんか、もう可愛いくて可愛くて。ほんとに興味深々て感じ。他の役者さんだと「ふむふむ」って感じですが、染五郎さんの場合「それで、ねえそれで?(わくわく)」って感じです。それにしてもほんとコロッと騙されます。幾人かの役者さんで同じ演目を観てるんですけど、あそこまでで純真な鳴神は初めてです。後半の荒事はやはり形がとても綺麗で華やか。確かに線は細いですけど、めいっぱい体を大きく使っているので見栄えがします。しかし前半、声が少々きつそうでした。頑張って!

芝雀さんは相変わらず可愛い絶間姫です。姫なりの恋しい殿御と添うためなれば、なんでもやったるでぇ、な一途さが「赤姫」です。やはり終始鳴神を意識しての微妙に天然入りつつも計算高い、いい女(笑) 芝雀さんのぼっちゃりしたところが色仕掛けってとこに説得力も。でも品が崩れないのが素敵。

『鬼平犯科帳』
『鳴神』に集中しすぎて疲れたのか、『鬼平』の途中まで若干、集中力を欠いてしまいました。もったいないことをした。前回観た時よりだいぶ余分なとこが減っていたような気がしました。細かいところはわからないのですが全体に芝居が締まってました。まあ二回目だと、確かに「この場面必要かな?」と思うとこもありましたが、いわゆる鬼平ファンへのサービスでしょうね。

吉右衛門さんが活き活きしてました。なんだか嬉しそうにやってるし。で、やはり友五郎役の歌六さんがほんとに味~ないい芝居。歌六さんはアクの強い役のほうが似合いますね。

『釣女』
もうこれは、とにかく何も考えずに楽しめる。配役がピッタリとハマって、観てて気持ちいいです。醜女@吉右衛門さんの「錦ちゃん~、素敵」、手をパチパチってするのが、錦之助さんへのエールに聞こえて、なんかほんとに気持ちがあったかくなりました。

新橋演舞場『五月大歌舞伎 夜の部』 2回目 1等1階前方花道寄り

2007年05月19日 | 歌舞伎
新橋演舞場『五月大歌舞伎 夜の部』2回目 1等1階前方花道寄り


『妹背山女庭訓』 「三笠山御殿の場」
染五郎さんの求女に存在感が出てきてた。くっきりと輪郭が出ていい男ぶり。ノリも良くなっていました。お三輪、橘姫二人の女に惚れられるのが納得だし、淡海としてのちょっとした冷酷さもあってなかなかいい出来。

高麗蔵さんの橘姫は形が美しいが求女ラブな感じが少々薄い。ちょっと残念。時に最初のほうが硬い感じが。あともう少し、という感じなんだけど。

お三輪の福助さん、凄かった、素晴らしかった、ブラボーです。いやあもうこれを見せてくれるだなんて、感動感動。初日近くに観た時は前半の表情にアンバランスさを感じたのだけど、今回はしっくり。まだ幼さが残る少女の恋狂い。全身全霊でお三輪だったと思う。 盲目的で素直であるがため、愛しい人のために死ぬことを受け入れられる。そのまっすぐな気持ちが伝わる、非常に切なく可愛らしいお三輪でした。時々、歌右衛門さんを彷彿とさせました。役者さんに時々何かが憑くことがあると感じることがあるのだけど、今回の福助さんがそうでした。鳥肌が立つかと思った。

鯖七の吉右衛門さん、でかいでかい。さすが。迫力が増していた。

強力役の梅秋さんが長袴での難しいトンボを次々と綺麗に決めていって見ごたえがありました。

今回、ここの場だけじゃキャラクターの意味が通じないので前段からやるべきという指摘が多く見受けられる。確かに、せめて前段「鱶七上使」からやったほうが面白かったと思う。演目並びを考えるは難しいですね。


『法界坊』
笑い、の部分は少ないけどやっぱ楽しいです~。吉右衛門さん、ほんとに楽しそうにやってますね。さらっとした愛嬌。ネタは外しがちでしたが(笑)おくみ坊への執着心が際立ってるぼんさん。

富十郎さんがやはり場を締める。足元は危ういんですけど、でもやっぱ上手いです。

錦之助さんと芝雀さんのラブラブぶりが上がってて、個人的にやっぱこのコンビ大好きです~。錦之助さんの要助はかなり良いです。受けオーラがね、すごーくあって元公家さんな品となよなよぶりがピッタリ。芝雀さんはそこはかとない色気も醸し出していて、色んな男から言い寄られるのが納得。

染五郎さんの野分姫は超ラブリーです。かなり可愛いです。声さえ潰してなきゃなああああああ。もったいない。ちょっとした出番だけだけど要助ラブな雰囲気がちゃんとある。目線の飛ばし方がいいのね。

『双面水照月』
やっぱこの場は「気」がすごいと思う。びんびん伝わってくる。芝雀さん、錦之助さん、福助さん、染五郎さんそれぞれに気持ちが入ってるというか。なんか空気が濃くなる感じというか。

染ちゃんの野分姫と法界坊の演じわけにかなりメリハリがついてました。肩の使い方が良くなったきたんですね。変化が一瞬にしてわかる。袂の使い方とか体のラインがやはり真女形さんにはかなり負けちゃってはいるんだけど、野分姫の切ない恨みと法界坊の執着心が手に取るようにわかる。それと踊りに色ぽさも出てきた。おくみでいる時の野分姫の女舞がやたらと色ぽい。要助への恋しい気持ちと恨めしい気持ちが渾然となったなんともいえない切ない表情がいいです。法界坊の時の下卑た表情もかなりハッキリしてて、しかも、またこの世のものではないものというどことなく崩れた表情で、凄みがありました。でもやはり野分姫の部分が強い双面ですね。

しかし女船頭の福助さんはマジでカッコイイ。

新橋演舞場『五月大歌舞伎 昼の部』 1等1階前方花道寄り

2007年05月05日 | 歌舞伎
新橋演舞場『五月大歌舞伎 昼の部』 1等1階前方花道寄り

昼の部は私的に不安要因がいっぱいあって、ドキドキものの観劇でしたが良い方向に裏切られ、とても楽しかった。久しぶりにあれこれ考えずに素直に観劇できました。観劇後、ごく自然に「迫力あったねえ、楽しかったねえ、面白かったねえ」と同行者やお隣さんと楽しくおしゃべり。幸せ。

『歌舞伎十八番の内 鳴神』
今回の「鳴神」は現在よく上演している成田屋型ではなく、二代目左團次版を白鸚さんが八代目團十郎系で復活させたという、言うなれば高麗屋型?だそうです。私は初めて見ました。細かい部分で演出や脚本が違っており、附け打ちさん曰く「古風な味わい」が残っているものでした。場の物語がよりシンプルで、見せ場が型として少々荒削りというか洗練されていない。その代わり誰が何をして、何をしたいのかが非常にわかりやすい。高麗屋型のほうが古風というのも今の感覚からしたら面白いですね。

まず叫ばせて!!!「染ちゃん、花道立たせたら日本一!!!よっ!カッコイイ!」<贔屓目爆発(笑)

昼の部の不安要因の一番が染五郎さんの鳴神上人でした。この役、合うだろうか?線が細すぎやしないか?声は出るのか?等々。観てきた人たちに「良かったよ」と聞かされていてもやっぱり不安で。だけど、もうほんとに良かったです。勿論、足りない部分はいっぱいあってベタ褒めする気はないけど、でも想像以上に本当に良い鳴神上人でした。

前半は人形のように綺麗です。顔が小さいので特にそう感じます。ほんとは座っているだけで威厳、大きさ、重さがあるべきなんですが、そこは残念ながらまだまだ青二才の鳴神上人です。存在感が薄めですねえ。でも非常に気品があって、世間知らずで、絶間姫の俗世の話に興味深々、つい篭絡されてしまうのもこれはこれで納得。でももうちょっと、朝廷を恨んでる風情は欲しい<政治的に裏切られてるんです、鳴神は。

初日、声が上ずって高めに出ちゃってたそうですが今日は低めに安定してました。でもやはり前半は緊張してるんでしょうか、感情が入ってない感じで台詞をなぞってます感がまだまだありました。表情はすごーく可愛いです。最初はマジメくさった顔をしているんですが、途中から絶間姫の話が面白くてしょうがないって感じでわくわくした顔になっていくんです。子供みたいな顔になっちゃうのはちょっとどうなの?と思いつつ個人的にツボな顔(笑)

良くなってくるのは絶間姫と二人きりになってから。動きが出てくると大きさも出てきます。おおらかさはやはりなくて、マジメ一方な硬い~~鳴神上人が若さゆえに女の色香に「鼻血ぶー」しちゃいそうですっ、もうどうでもいいですって迫っちゃうって感じでしょうか。はい、青二才上人でございます、相当ウブです(笑)。ここら辺はもう少し余裕が出てきて染五郎さんの愛嬌がいい感じに醸し出されると「おおらかさ」も出そうな気がします。でも観てて楽しいやりとりになってました。濃厚な艶を求めるとちょっとあっさりぎみですけどね。演出自体、あまり色香を強調してないですし。

で、後半の騙されたと知った後の荒事が予想以上に迫力がありました。見得の一つ一つの形が綺麗。立ち回りも軽くなるかな?と危惧してましたが重さがきちんと出てました。怒りを爆発させる台詞廻しはもっと怒ってもいいと思いますが、これはこなれてくるともっときちんと出ると思います。(以前、六助やった時に怒りの表現が素晴らしく良かったので、まだまだできるはず)

あと引っ込みの飛び六方が本当に良かった。荒々しさ、迫力ともにあって、勢いも良いし、形がこれまた本当に綺麗で。あんなにたっぷりと綺麗で迫力のある飛び六方を見せてもらえるとは。染ちゃん、この役をやることがとても楽しいというか嬉しいのではないかなあと思いました。そういう気持ちが伝わってくる。気持ちの入り方が前へ前へと出てました。

絶間姫@芝雀さんが、いやああああん、もう素敵。拵えがまた似合ってて良いんですわ。鬘の形がおすべらかしでいつもと全然違うんですよね。簪の形も独特で、動物の耳みたいで可愛い~~。ほんと可愛いったらないわ。でもただ可愛いだけじゃないの。勅命を受けて、その使命を果たすための「大人」のしたたかさをチラリチラリと垣間見せて。篭絡できたなと確信したあとのタカビーな感じが、いいわ~~。でもそれが本心じゃないのよという、あくまでも使命のために、の部分が今回かなりクッキリしていました。最初から終始、鳴神上人を見据えての行動というのがわかるんですよね。なので「申し訳ない」と本心を語るところが説得力がある。健気な雰囲気がある芝雀さんに合った絶間姫でした。


『鬼平犯科帳』
これは絶対見ると大騒ぎした「鬼平犯科帳」大ファンの父と叔母(年季の入った歌舞伎ファンでもある)を連れていきましたが、二人とも大満足の出来だそうです。「鬼平犯科帳」の特別ファンでもない私もかなり面白く見ました。かなりダレダレだ、と聞いていたんですけが、今日見た限り、まったく飽きることなく、ダレている感じもしなかったです。演目を聞いた時は、TVのイメージが強いし、新作でどーなるの?と思っていましたが、人情話の世話物としてきちんと歌舞伎になってました。元の話が良いのでしょうけど、しみじみと良い芝居でした。思った以上に「五月歌舞伎」のなかの演目として違和感が全然ない。季節感が今月にピッタリなとこが良かったのかも。それにしてもこの演目、役者さんを贅沢に使ってます。つーかもったいない使い方というか。段四郎さん、あれだけ?うそおおお、もったいないってな感じです。

ダレる感じがしなかったのはまずはプロンプ付きだったらしい吉右衛門さんにきちんと台詞が入っていたせいでしょうね。長谷川平蔵=吉右衛門を見事に体現しつつ、TVサイズではない舞台での鬼平にしてきているのが見事です。今月の吉右衛門さんはいい意味で肩の力が抜けていて、でも「芸」の部分をしっかり見せてきて、本当に良いと思います。近頃感じていた妙なリキミが消えてるような。

この舞台での殊勲賞は友五郎の歌六さんでしょう。最近、老け役が多いですが、まさしく「いい味」を出されている。この方、細やかな心情を伝える台詞術が上手いですよねえ。

最後の場、吉右衛門さんと歌六さんの二人芝居なんですけど、あの長さをしっかり聞かせて観客を泣かすのはなかなか出来ないことですよねえ。結構、泣いてる人多かったです。グスグス泣いてるのは男の人が多かったかな(笑)

福助さんの久栄が結構好きかも。すっきりきっぱりした良い奥さん。吉右衛門さんとのコンビネーションがもっと上手くいくと、良い感じの夫婦になりそう。

『釣女』
楽しい~~~。はいもうそれだけで良いんじゃないでしょうか(笑)小学2~3年生くらいの子が大声出して笑ってしました。ねっ、このくらいの年齢でも歌舞伎は楽しめるんですよ、と嬉しくなりました。それだけ「楽しい」舞台だったと判っていただけると思います。

2年前のこんぴらでほぼ同じ配役(大名某がこんぴらが染五郎さん、今回が錦之助さん)で観ていますけどその時と同様、醜女の吉右衛門さんがやっぱりはじけまくってます(笑)吉右衛門さんの醜女はとってもラブリーです。

錦之助さんと芝雀さんが、絵に描いたような美男美女ぶりで素敵。錦之助さん、先月の経験からか、存在感がだいぶ前に出てきてる感じがします。

歌昇さんが安心感の太郎冠者。こういう役にピッタリですよね。こんぴらの時より、醜女をいやがる顔がパワーアップしてたかも(笑)

新橋演舞場『五月大歌舞伎 夜の部』 1等1階前方花道寄り

2007年05月03日 | 歌舞伎
新橋演舞場『五月大歌舞伎 夜の部』 1等1階前方花道寄り

『妹背山婦女庭訓』「三笠山御殿の場」
染五郎さんの求女はとっても綺麗なんだけど無難。こういう役の時、妙に大人しい感じになってしまうのはなぜかしら?風情だけで説得力を持たせなければいけない役は難しいと本人も言っていたけど…。もう少し前に出る感じが欲しい。

高麗蔵さんの橘姫はいつもより柔らかな雰囲気。キツメの顔がこういう役の時に損してるけど体の使い方を工夫していた感じ。でもやっぱ高麗蔵さんは立役のほうが好きだなあ。

主役のお三輪の福助さん、思い入れたっぷりの熱演。可愛らしい声は娘役にピッタリだし、田舎娘のちょっとどろ臭い感じもいいんだけど、前半、表情を作りすぎ。もう少し顔の表情を押さえたほうが哀れさが出ると思うのだけど…。後半、擬着の相を表すところからは情念ともに切なさもあってかなり良いと思う。 気持ちがストレートに伝わってきてやるせない。

鱶七の吉右衛門さんはさすがの存在感。がらりと空気が変わる。


『隅田川続俤』「法界坊」「浄瑠璃 双面水照月」
吉右衛門さんと富十郎さんが若干台詞が怪しいところを除けば、まだ3日目のわりに、かなりまとまってて面白い芝居になってました。

最近なんだかんだ言ってしまうことが多いけど、やっぱ吉右衛門さんは上手いなあと。人を惹き付けるすべを知っている。それこそ「芸」があるからこその法界坊かなと。勘三郎さんのように愛嬌で見せるのではなく、すっとぼけた飄々とした味わい。「いやらしさ」が表に出てこない分、殺しの場が悲劇と喜劇は隣り合わせ感がかえってあった<私的に結構意外な発見。この場はいやらしさ、グロテスクさを出したほうが面白いかな、と思っていたので。

でもって、甚三の富十郎さんがピッタリで。吉右衛門さんと富十郎さん、若干台詞が怪しいとはいえ、この二人のやりとりの時が一番、場が締まるというか空気が濃くなるのだから歌舞伎の世界の奥深さです。それにしても富十郎さんのカラッとした明るさというのは本当に貴重。ここからもっと調子を上げていってくれることをお願いします。膝はまだ辛そうですね。

おくみの芝雀さん、お顔がだいぶすっきりして娘ぶりが一段と可愛い。着替えもいっぱーい。「双面」での舞踊も頑張ってた。芝雀さんの踊りは手捌きは丁寧なんだけどちょっとちんまりと小さいんですよね。それがだいぶ大きく見せられるようになってきたかなとか。

要助の錦之助さんが4月とは見違えるほど良かったです。得意系の役とはいえ、ノビノビと演じてらして観てて気持ちいい。これですよ、これ~。4月はやはり緊張しまくりだったんでしょうねえ。

後半、おくみと要助がもっとラブラブになってくれると嬉しい。

おしづの福助さん、貫禄。とにかくカッコイイ女でした。

染五郎さんは野分姫がかなり綺麗&可愛い。前方花道横の席でドアップで観ても可憐。染五郎さんはの硬質な感じが「姫」の雰囲気にピッタリなんでしょうかね?「歌舞伎のなかの姫」にしっくりハマります。「双面」での花道の出の野分姫の幽霊は怖さと切なさと、これまたいい幽霊ぶり。

んが、おくみと同じ葱売りの格好をすると、かさのある姫の簪や着物でごまかしがきかない分、男の子の線が出てきてしまう。やはり女形の形になりきれてないのよね。体が完全に女形の形になっている芝雀さんと並ぶのでやはりね…どうしてもそこら辺が目立つ。また、その形になりきれてない体で女舞を踊るので全体的に硬さが目立つ。そのせいでかなり頑張ってはいるのだけど野分姫と法界坊の踊り分けがきっちりメリハリつくまではいってない。まあ、勘三郎さんのと較べちゃうから余計についつい姫の部分はもっと柔らかく~~~とか注文しちゃうのよね…。これからもっとメリハリをつけていって欲しい。法界坊になる部分は台詞廻しが吉右衛門さんソックリだったり、思い切りのいい踏み込みをしていてこちらのほうはなかなか。でもやっぱりもう少し法界坊の怨念を醸し出せるといいんだけどな。

ただ気迫はものすごくあって、舞台での緊迫感が終始保たれていて観ててダレることがなかったのは見事。周囲の観客もかなり見入っている感じだった。それと今回「野分姫から双面」だったので姫の哀れさが全面に出てて、それもまた面白かった。「法界坊から双面」の場合、格好が女(野分姫)であっても法界坊の俗世への執着が強調される。趣向として今回のもアリだなと思いました。

「双面」は福助さん、錦之助さん、芝雀さん、染ちゃんがそれぞれかなり気合が入ってる感じがしました。吉右衛門さん、富十郎さんがいなくてもみせたるぜな勢いというか。