Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

帝国劇場『ラ・マンチャの男』 S席前方下手寄り

2012年08月25日 | 演劇
帝国劇場『ラ・マンチャの男』 S席前方下手寄り

千穐楽を拝見いたしました。4年前に拝見した時以上に良かった~!素晴らしかったー!『ラ・マンチャの男』、観る前には「幸四郎さんの体力と芸のバランスが今回ギリギリのところだろうからもし次回があっても観なくてもいい」なんて思っていたのですが前言撤退させていただきます。また観たいよ~。今回も千穐楽観劇じゃなきゃ足していた。ほんと良かった。胸にグサグサ突き刺さってきた。何度もうるうるしちゃいました。

しかし幸四郎さん若返ってないか?身のこなしが前回より若かったような気が…恐るべし70歳。

拍手が鳴り止まず最初からスタンディングオベーション。カテコでは『見果てぬ夢』を皆で大合唱、そして幸四郎さんからのメッセージ、最後に幸四郎さんの英語ver.『見果てぬ夢』。

後日もう少し詳細に書く予定。予定は未定という感じですが書きたい。

<キャスト>
セルバンデス/ドン・キホーテ:松本幸四郎
アルドンサ:松たか子
従僕/サンチョ:駒田一
アントニア:松本紀保
神父:石鍋多加史
家政婦:荒井洸子
床屋:祖父江進
カラスコ博士:福井貴一
牢名主/宿屋の主人:上条恒彦

大塚雅夫/鈴木良一/萩原季里/塚本理佳/片岡身江/ICCOU/美濃 良/山本真裕/中尾和彦/土屋研二/ 柴崎義則/藤田光之/小川善太郎 山本直輝/市川裕之/石丸隆義/高木裕和/村上幸央/羽山隆次/斉藤義洋/安倍幸太郎/原 佳宏/穴沢裕介/ 松本錦一/仲由幸代

<スタッフ>
演出:松本幸四郎
脚本:デール・ワッサーマン 
作詞:ジョオ・ダリオン 
音楽:ミッチ・リー 
訳:森岩雄、高田蓉子 
訳詞:福井崚   
振付・演出:エディ・ロール(日本初演)
演出スーパーバイザー:宮崎紀夫 
振付:森田守恒 
装置:田中直樹 
照明:吉井澄雄 
音響設計:本間明 
衣裳協力:宇野善子 
音楽監督・歌唱指導:山口

パルコ劇場『其礼成心中』前方センター席

2012年08月21日 | 文楽
パルコ劇場『其礼成心中』前方センター席

素直に楽しかったです!おふくちゃん、超可愛いかったー!ツボ!カテコで技芸員さんたちがとても良いお顔をしていてなんだかそれがとても嬉しかった。

まさしく「三谷」文楽だなあとまずは思いました。三谷さんらしい題材で登場人物たちの使い方だったから。そして同じ伝統芸能を手掛けたパルコ歌舞伎『決闘!高田馬場』にそっくりだ~とも思いました。どこが似てるのかと言えば主役を狂言廻しにして周囲を動かす手法、そして舞台面の演出も似ていました。実は私はパルコ歌舞伎に関してはキャラクターたちは全員が愛おしかったけど「物語」が好きじゃなかった。でも三谷文楽はキャラクターだけでなく「物語」自体を素直に受け入れられた。どこか違うのかなと思ったんですが今回の『其礼也心中』には三谷さん独特のシニカルさや毒がほとんどなかったせいに思う。三谷さんから観た文楽や近松門左衛門に対するツッコミなどもとても素直だしなにより「生きる」ことへの肯定をそのまま描いている。そこが後味のよさに繋がったかなと。

新作文楽としてどう観たかという部分の感想では、よくやった!と言いたいです。古典の良さと新作ならではの弾けた部分がうまく融合してたと思う。カタカナや英語まじりの現代語をしっかり義太夫に乗せてきたことが文楽の骨格をしっかり守った形になったと思う。文楽がまずは「語り」だという部分をしっかり見せてきたのが成功だと思う。そして新作ならではの部分では人形の見せ方。古典をきちんと入れ込んで従来の美しさを見せる一方で足遣いをわざわざ見せたり、初心者がどうなってるの?と疑問に思う部分を大胆に見せたり。また、新作だからこそできたであろう人形の動き方も。いまどきの仕草をさせたりある意味型破りなことをしている。おふくちゃんなんて、ホリ&麻阿@亀ちゃん並だよ(笑)。若手(といっても歌舞伎でいう花形世代以上だけどね)だから出来たことじゃないかと思う。

最初のうちは現代語を義太夫の乗せる言葉使いにどうしても慣れなくてムズムズしていたことは否めない。でも周囲の反応の良さも手伝って観ているうちに言葉を聴き取ろうとするストレスなく観られることが大事なんだなと思い直す。だって新作なんだもの。

後半観劇も手伝ってか太夫さんも人形遣いさんもよくまとまっていたと思う。特に太夫さんたちほんとよく語ってきたと思うし三味線の音色には初心者さんも「おおっ」って思ってくれたんじゃないかな~。人形のほうはいかにも若手な遣い方で「ここもっと見せられるとこなのに~」な不満もありつつガンバレ~~と応援モードになってしまった(^^;)けど思い切りのよさの部分で若手だから、固定観念に縛られないでこういう見せ方ができたなとも思った。

音に関してはPA使いしてたのが若干不満。それと主役夫婦の女形と立役の遣い手が逆なのはもったいなかったかも?

私は古典どっぷりな歌舞伎ファンだったけど新作歌舞伎に鍛えられた(笑)&新作は必要の立場から新作ものには甘い面もあるという事は書いておく。歌舞伎がそうであるように文楽にも両輪は必要だと思う。三谷さんが完全に書き下ろしでやってくれたことに意義があると思う。そして若手たち中心で創り上げたということも。若手たちは創作する力を養ったと同時に自分たちの足りない部分も学んだと思う。そういうのって大事。そしてなんというか観客も一緒に育っていけばいいんだよ。

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三谷文楽 「 其礼成心中 」
公演日程 2012年8月11日(土)~8月22日(水)
作・演出 三谷幸喜

出演 :
義太夫:竹本千歳大夫 豊竹呂勢大夫 豊竹睦大夫 豊竹靖大夫 

三味線:鶴澤清介 鶴澤清志郎 鶴澤清丈 鶴澤 清公 

人形:吉田幸助 吉田一輔 吉田玉佳 桐竹紋臣 桐竹紋秀 吉田玉勢 吉田簑紫郎 吉田玉翔 吉田玉誉 吉田簑次 吉田玉彦 吉田玉路 吉田簑之

囃子:望月太明蔵社中

元禄十六年四月七日、大坂の曾根崎天神の森で醤油屋の手代徳兵衛と北新地の天満屋のお抱え女であるお初が心中死を遂げた。この心中事件を題材に近松門左衛門が書いた物語が『曽根崎心中』。この近松が書いた『曽根崎心中』は大ヒット。その後、なぜかこの天神の森は第二、第三のお初と徳兵衛と言わんばかりに心中のメッカとなっていた。
その天神の森の近所にある饅頭屋。夫婦が営むこの饅頭屋だが、自分の家の目と鼻の先で心中を繰り返され、店から客は縁起がわると遠のき、饅頭屋は傾きかけていた。
ある夜、毎度のように若い男女が天神の森で心中しようとしていた。これ以上心中が出ないよう見回りをしていた饅頭屋の親父は、とにかく自分の家の近所で心中を繰り返されるのが嫌な一心で、この男女に「ここで死ぬな」と説得する。自分の饅頭屋まで連れてくると、女房と共に思い至った二人に死ぬことを思いとどまらせ、あげくの果てには腹が空いている二人に饅頭を食わせてやった。
この事件をきっかけに、ちょっとした親父の思いつきから突如饅頭屋が流行出す。だがそれも、長くは続かなかった――
(あらすじは公式HPより)

国立大劇場『亀治郎の会 さよなら公演』 1等1階花道寄りセンター

2012年08月18日 | 歌舞伎
国立大劇場『亀治郎の会 さよなら公演』 1等1階花道寄りセンター

亀治郎の会には2年前の特別公演に行っただけなので思い入れがあるわけではないですが『亀治郎の会』としては最後ですから良い舞台を見せてくれるだろうと期待していきました。まず出た感想としては「亀ちゃんのドヤ顔満喫(笑)檜垣はお父さまソックリだった」です。なるほど亀会だなというのを含めて色々面白かったです。

『栴檀女道行』
私はやっぱり四代目猿之助さんは女形のほうが好きだな~としみじみ思った演目。今回の三演目のなかでこの作品の女武道の小睦が一番気に入りました。男勝りな強さとその強さのなかの女らしさが自然。そのなかに色気がある。かなり武張った踊りなので男性が踊ると常に女の体を意識しないといけない。このところ立役が多いのでどうかな?と思っていましたが猿之助さんはギリギリのところでとても上手に女形になっていました。あと印象的だったのが戦語り。元々が女形が多かったこともあるのか資質ゆえなのか猿之助さんは戦語りは再現するのではなくあくまでも第三者が語る踊りだなと。これは『義経千本桜』の「道行き」でも感じたことですが個人的にそこをかなり面白く拝見しました。

栴檀皇女の米吉くんが拵えが似合って天女のような可愛らしさ。米吉くんのふんわりとした桃色オーラは観ていてとても和む。女形としてはまだ身体は殺しきれていませんが丁寧に踊っていて良かったです。

安大人の亀鶴さんを大将とした明国の兵たち(猿若さん、段一郎さん、蝶之介さん、蝶三郎さん、咲十郎さん、錦二郎さん)の立ち廻りが楽しいものでした。

『檜垣』
この舞踊に関しては三代目猿之助さんのが印象に強く残っているのでまずはこの舞踊の第一歩を踏んだなという印象。とはいえあの若さでしっかり老女を形作ることができるのは大したもの。あの姿勢で体幹がまったくぶれない。恋の妄執もよく表現出来ていたと思う。ただ、やはり色々とまだ若い。なんというか老女のものとしての芯がまだ薄い感じ。恋の妄執がコミカルに見えるのはいいとしてもそこから老女の哀が滲んでいてほしい。猿之助としては老女もの(『黒塚』『隅田川』のほうが主でしょうが)はこれから深めていくべき演目でしょうから折につけ踊っていって欲しいです。この演目では声といい顔の拵えといいお父様の段四郎さんそっくりでちょっとビックリ致しました。資質としてはお父様のものもだいぶ受け継がれているんだなあと思った次第。

四位の少将の門の助さんが上品。小野小町の笑野さんは抜擢でしょうが楚々として美しく印象に残りました。

『連獅子』
仔獅子が二人いるかのよう。親子というより兄弟獅子。兄が引っ張り弟がそこに必死に食らい付いている、そんな印象を受けた『連獅子』です。

澤瀉屋の連獅子は観たことがあるはずだけど随分に前に拝見しただけなのできちんと記憶に残っていなかったです。当時の猿之助さん(二代目猿翁)と亀治郎さん(四代目猿之助)だったと思うんですが派手だなという印象が残っているだけ。そういう意味でも澤瀉屋の振付は非常に新鮮だった。親獅子も仔獅子もかなり動き回るのですが。これはかなりハード。若い二人だから一番ハードな振付けで踊ったのでしょうがそれにしても親獅子もある程度体力があるうちじゃないと出来ないでしょうね。

親獅子の猿之助さんは前シテの狂言師右近が良かったです。先輩格として今ある自分(尾上右近に対しての兄貴分としての自分、というように私には見えました)を弾むように活き活きと表現していたように思います。これからもどんどん前に進んでいくから付いて来いと言わんばかりに跳ね回る。まさしく跳ねるという言葉が相応しいような踊りでした。後シテの獅子はドヤ顔満載だったような(笑)最初から勢いよく廻していきます。後半ちょっとお疲れでしたでしょうかね。

仔獅子の尾上右近くん、猿之助さんによく食らい付いていました。久しぶりに右近くんの踊りを拝見しましたがようやく大人の身体になっていて体幹がしっかりしてきたなあとまず思いました。そして丁寧にきっぱりと踊っていきます。いくつか甘い動きがあったもののハードな澤瀉屋の仔獅子を真摯に踊りこんでいってました。個人的に思っただけですが時々、首の使いかたとか手の使いかたの部分で勘九郎くんの踊りに似てる?と思う場面がいくつか。

日本橋公会堂『第四回 趣向の華 昼/夜の部』 S席1階

2012年08月11日 | 歌舞伎
日本橋公会堂『第四回 趣向の華 昼/夜の部』 S席1階

日本橋公会堂に実質5回目の『第四回 趣向の華』を昼夜通して観ました。この会は毎回思うのですが参加している皆さんの一生懸命に頑張る「熱」がダイレクトに伝わってきて観ているほうもとても刺激になりますし何より本当に楽しい。

また昨年あたりから単なる発表会ではない先を見据えた公演になってきているなという実感が。染五郎さんが「歌舞伎座が開場したらここにいる出演者全員揃えてこれ(趣向の華)を歌舞伎座に持っていきたい。袴歌舞伎をきちんと拵えして舞台を作って上演したい」とおっしゃていましたがこの言葉は本気だと思います。それだけのものが出来上がりつつある。『趣向の華』ならではの袴歌舞伎はたった1公演だけで終らせるにはもったいない戯曲と芝居になってきています。若者たちのこの一年の伸びっぷりには驚きましたし感動しました。袴歌舞伎は年々レベルアップ。本公演で観たい!と本気で思いました。

【昼の部】
『長唄 雨の五郎』
玉太郎くんがなんと立三味線。小柄な玉太郎くんなので三味線が手に余るかと思っておりましたがしっかり弾いていて頑張ったな~と。太鼓の鷹之資くんも崩れることなくきちんと叩いていました。大人チームはバランスよく演奏していたように思う。皆さん舞台が多くてなかなか稽古はできないだろうけど年々それなりに余裕が出てきてるような気がする。

『長唄 連獅子』
短縮ヴァージョンの演奏ですが『連獅子』は聴いていてワクワクします。かなり聴きなれた曲なので「がんばれ!」と思う場面もありましたけど思っていたよりしっかり演奏してきたなという印象。三味線の男寅くんが暗譜での演奏。音もよくかなり精進してきたと見受けられました。歌は隼人くんが上手いとまでは言えないけどきちんと長唄の節回しができてた。成長してる。龍之助くんは声は良い声してるけど節回しがまだできてないかも。頑張れ~~。

染五郎さんは立ち三味線で昨年同様に自信なさげな掛け声。自信なくとも声は出しましょうよ(笑)。演奏のほうは1年間稽古しなかったわりには昨年よりは音が良かったような気がしました。大薩摩になるところで「高麗屋!」の大向こう。自信なさげな染五郎さんが思わず苦笑い。それをみた客からも思わず笑いが(笑)。

『常盤津 夕涼み三人生酔』
勘十郎さんの三味線に浄瑠璃は菊之丞さんの二人は相変わらず玄人はだしの演奏を聴かせる。今回は三味線と浄瑠璃に一人づつ助っ人がいるのでより演奏に厚みが加わり単に技術的に上手いだけでなく演奏に情感がありしっかり情景が浮かんでくる。この二人の芸達者ぶりにはいつも舌を巻きます。

『袴歌舞伎 白虎隊』
過去二回(明治41年、大正5年)しか上演されていない岡本綺堂の作品。勘十郎さんが演出。袴歌舞伎としてはお初の新歌舞伎ですね。新歌舞伎らしい台詞の多い作品ですが題材が白虎隊ということもあり若者の逸る気持ちやある意味短絡的な絶望感は今でも通じるものとしてあり見応えがありました。個人的に白虎隊には多少思い入れがあったりする(福島県に住んでいたことがあるので)ので途中から涙腺決壊でした。

若い役者たちが必死に一生懸命に演じる様がそのまま勝ち目の薄い戦に臨む若者たちの姿と重なりストレートに哀れさが伝わってきました。また高麗蔵さん、亀三郎さん、亀寿さん、梅之さんのベテランが要所要所で芝居を締めていきます。ベテラン、中堅の力って凄いんだなと痛感させました。素なのに高麗蔵さん母が凛として美しい。

千太郎@壱太郎くんと万太郎@米吉くん兄弟は女形を手掛けることが多い二人ということもあるのか全体的に雰囲気が柔らかで優しげ。それゆえにこの兄弟の健気さがなおいっそう伝わってきます。

会津藩に恩義のある相撲取りに萬太郎くん、小柄な萬太郎くんですが低めにとった声がよく響き押し出しもよくて相撲取り風情がしっかり出てたのには感心しました。立ち回りもとても良かったです。

七之丞@歌昇くん、白虎隊の頭領格としての存在感があります。気持ちを耐える姿に色気があり華が出てきたな~と。

いつもは女形専門の源之助@梅枝くんは骨ぽさのある男らしく演じていて意外な姿。地声がとても太いので立役も出来ますねえ。梅枝くんは何を演じても外すことがないのが凄い。

幕が閉まった後、染五郎さんがご挨拶で「彼らがトウが立たないうちに今回の面子で本公演で再演してほしい」とおっしゃていましたが『白虎隊』は確かに若者たちの今の年齢だからこそな演目なので今回上演したメンバーを揃えて近いうちに上演してほしい。来年の大河ドラマ、舞台が会津藩だしタイムリーだと思うのよね。

『グランドフィナーレ』
『白虎隊』が悲しいお話なので最後はパアッとした出し物をということで。三味線を勘十郎さん、小鼓を染五郎さん、小鼓&太鼓を菊之丞さんで。

まずは梅丸くん、男寅くん、種之助くん、米吉くん、隼人くん、廣太郎くんで「会津磐梯山」の曲で手ぬぐいを使っての踊り。これはチャリティ公演で出した踊りの一部かな?個人的には種之助くんのとても素直な踊りが好み。

それから一気にテンポの速い曲調に。壱太郎くんと廣松くんがテンポ速く激しく踊っていく。観ていてとても楽しい舞踊!!!二人とも楽しそうにリズムを刻む。壱太郎くんはさすがの踊り上手さを見せるけど廣松くんも負けずについていく。『深川マンボ』という踊りだそうで壱太郎くんのおじいさま(坂田藤十郎さん)が得意な踊りだとか。やあ、ほんとこれ楽しいわ。にしても廣松くんには茶目っ気のある愛嬌がある、役者として貴重。


【夜の部】
『袴歌舞伎 大和神話武勇功』

『大和神話武勇功』で個人的に一言、すみれちゃんにだまされた~~(笑)。

神話ヤマトタケルを元に勘十郎さんが書き下ろした新作を染五郎さんが演出。様々な古典歌舞伎を散りばめた作品で演出も多少のくすぐりはあるものの古典に拘っておりいかにもTHE 歌舞伎な演目です。袴歌舞伎ですが全体的にとても華やかで観ていてわくわくする芝居でした。この演目、突っ込みどころ満載なとこも含めて初心者にもいいんじゃないかな。というか『白虎隊』と『大和神話武勇功』はまた観たい~~。本公演で再演して~!!

基本、お家騒動でそのなかにヤマトタケル神話を入れ込んで、幕ごとに時代物、世話物、舞踊、立ち回りと色んなものを見せていく。テンポよく物語が進みそれぞれに見せ場あって飽きさせない。そして若手がしっかりと芝居をしていく。そのなかで亀三郎さんが善人、亀寿さん悪人といつもの役割と反対の役をしつつ要所で押さえていく形。昨年まではベテランや中堅が物語を進め、そのなかで若手が一生懸命に演じるという形が多かったと思いますが今回は若手にそこはすべてを任せ完全に物語の中心に立たせていました。若手がそれだけ芝居をみせられるようになってきたんだなと思いました。舞台に立つ機会が増えて皆さん急成長中なんだなあと感動しました。ほんとに全員が全員とも魅力的で素敵でした。

また絶妙なテンポや華やかな演出も若手を引き立てていたと思います。染五郎さんの演出の作品を観ていつも思うのですが物語をしっかり見せるというだけでなく役者さんの個性を活かし非常に魅力的にみせることに長けてるなあと思うのです。どんな役の役者でも、脇役でも「あ、いいな」ってかならず思わせてくれるんですよね。今回もやはりそうでした。演出家として役者さんたちの良い部分を引き出すのが上手いんじゃないかなと思います。

今回、くすぐりの部分で美味しい役をもらったのが男寅くんと隼人くん。二人とも不器用なタイプの役者さんです。でも美味しい役をしっかり美味しい役にしていました。

女中役の男寅くん、所作も台詞もかなりしっかりしていたので相当頑張ったんじゃないかなあ。いわゆる繰り返しで笑わせる役なんだけどこういう役は間が大切。不器用さで笑わせのではなくそれが出来ていた。

隼人くん、ちょっと頼りない二枚目のお役、すぐに殺されてしまうけど幽霊になって出没。その幽霊役が面白かった。客席で客いじりをするんだけど、ボソリとしれっとしたことを言う。また髪をかき上げたりするしぐさも笑える。彼は黒衣操る人魂とともにふらふらと歩くんだけど、人魂がこれまた妙にいたずらする。隼人くんにぶつけてみたり振り回してしたり。黒衣は実は染五郎さんんだった(笑)。隼人くん、楽しそうに開き直ってやってた感。