国立大劇場『十二月歌舞伎公演』 3階前方センター
『花雪恋手鑑』
さすがに後半だけあって座組のまとまりがよく、テンポが良くなっていてお話のどうしようもなさが妙にストレートに伝わってきてしまった前回と違い様式美の部分も出てきてちゃんと歌舞伎になってました。上方の雰囲気が出てきたとは言い難いものの、役者たちの関西弁がだいぶ板につき「お江戸」の雰囲気よりは柔らかな空気感はなんとなく出てたように思います。今回は主役はもちろんだけど役者さんたち全員が色々と頑張った芝居だったなあと感じ入りました。
染五郎は京都弁の言い回しに苦労しているなという部分が無くなり台詞の言い回しをかなり自分のものにしていたのには感心。柔らかさが出たとまでは言わないけどキメの部分などだいぶ和事の雰囲気は掴んできたかなと。それと赤子との一人会話の間が良くなっていた。これはなかなか難しい部分だろうと思っていただけに、よくここまでもってこれたと思う。前回観た時は『花雪恋手鑑』の染主演の再演はどうだろう?と思ったんだけど、今回のを観て再演もありと考えが変わりました。5年後くらいに観て見たいです。
染五郎の頑張りのなかで、芝雀さんの小雪がやはりポイントとして締めていてくれてたなあと私は感じました。芝雀さんの可愛らしくそして品のある色気の小雪は『花雪恋手鑑』という歌舞伎のなかでの女としての存在をきっちり伝えてくれていました。どーしようもないばか旦那に惚れていて時に厳しく、時に甲斐甲斐しく接する姿に、女の可愛らしさを見せ、そして強姦という生々しいシーンですら美しい姿を見せる。女形だからこその形の美しさや硬質な台詞回しで歌舞伎の様式美のなかに引き込んでくれました。上方の女形が見せる特有のエロチックを感じさせる色気が無いというむきもあるとは思いますが題材が題材だけに今回ばかりは小雪が芝雀さんであったことで国立劇場で見せる芝居として受け入れられるものになったと個人的には思いました。
とりあえず全体的に楽しい芝居になっていてよかった。
『勧進帳』
幸四郎さんは観るたびに微妙に違う弁慶になっているような気がします。いまだに試行錯誤されているのか…。私のほうも観た位置が違うので確実なことはいえないのですが、それにしてもこれにはちょっと驚きです。今回の弁慶は義経への気遣いがより強いものになって、泣きの部分が非常に好感のもてるものになっていました。また富樫との対決の場の気迫が素晴らしく、前回2回の時より存在感の大きさがでてました。これは染五郎富樫がより厳しいものになったせいでもあるかもしれません。それにしても幸四郎さんの弁慶は3階からも表情がよく見える。前のほうで見るとやりすぎ感をどうしても感じてしまうのだけど上からみると大きさが際立つ。これはバランスが難しいんだろうなあ。
染五郎の富樫は観るたびに良くなっています。従来のちゃんとした声は残念ながら戻ってなくて、ところどころキツそうな部分がありましたが、だいぶ台詞が前に出るようになっていて、低音などは3階にまでびりびりと響いてまいりました。そして情を殺しあくまでも弁慶一行に対し厳しく見極めようとする凄烈な気持ちが伝わってきます。あの厳しさがあるからこそ、弁慶が主君を打たざる終えない気持ちの苦しさが際立つ。問答~呼び止めのシーンの染五郎富樫の迫力と形の美しさ大きさは素晴らしいものがありました。そのシーンでは周囲から声にならない感嘆のザワも起こっていました。富樫の引き上げの部分の解釈は上から見てても、抑制された感情のあり方がやはりいいなあと。
芝雀さん義経は相変わらず優しげで可愛らしい義経だ。小柄だからそう見えちゃうのもかもしれないけど時に子供ぽい儚さがあるんだよね。能の子方みたいと言われてしまうのもしょうがない。ほとんど男役をやったことないし、武将としての格はこれからもっと付いていくでしょう。でも気合が入っている台詞回しは非常にいいと思う。
それにしても弁慶一行と富樫一行が対峙するシーンの歌舞伎ならではの絵画的な美しさにただ感動しました。こういうのがあるから歌舞伎って好きなんだよなー。
『花雪恋手鑑』
さすがに後半だけあって座組のまとまりがよく、テンポが良くなっていてお話のどうしようもなさが妙にストレートに伝わってきてしまった前回と違い様式美の部分も出てきてちゃんと歌舞伎になってました。上方の雰囲気が出てきたとは言い難いものの、役者たちの関西弁がだいぶ板につき「お江戸」の雰囲気よりは柔らかな空気感はなんとなく出てたように思います。今回は主役はもちろんだけど役者さんたち全員が色々と頑張った芝居だったなあと感じ入りました。
染五郎は京都弁の言い回しに苦労しているなという部分が無くなり台詞の言い回しをかなり自分のものにしていたのには感心。柔らかさが出たとまでは言わないけどキメの部分などだいぶ和事の雰囲気は掴んできたかなと。それと赤子との一人会話の間が良くなっていた。これはなかなか難しい部分だろうと思っていただけに、よくここまでもってこれたと思う。前回観た時は『花雪恋手鑑』の染主演の再演はどうだろう?と思ったんだけど、今回のを観て再演もありと考えが変わりました。5年後くらいに観て見たいです。
染五郎の頑張りのなかで、芝雀さんの小雪がやはりポイントとして締めていてくれてたなあと私は感じました。芝雀さんの可愛らしくそして品のある色気の小雪は『花雪恋手鑑』という歌舞伎のなかでの女としての存在をきっちり伝えてくれていました。どーしようもないばか旦那に惚れていて時に厳しく、時に甲斐甲斐しく接する姿に、女の可愛らしさを見せ、そして強姦という生々しいシーンですら美しい姿を見せる。女形だからこその形の美しさや硬質な台詞回しで歌舞伎の様式美のなかに引き込んでくれました。上方の女形が見せる特有のエロチックを感じさせる色気が無いというむきもあるとは思いますが題材が題材だけに今回ばかりは小雪が芝雀さんであったことで国立劇場で見せる芝居として受け入れられるものになったと個人的には思いました。
とりあえず全体的に楽しい芝居になっていてよかった。
『勧進帳』
幸四郎さんは観るたびに微妙に違う弁慶になっているような気がします。いまだに試行錯誤されているのか…。私のほうも観た位置が違うので確実なことはいえないのですが、それにしてもこれにはちょっと驚きです。今回の弁慶は義経への気遣いがより強いものになって、泣きの部分が非常に好感のもてるものになっていました。また富樫との対決の場の気迫が素晴らしく、前回2回の時より存在感の大きさがでてました。これは染五郎富樫がより厳しいものになったせいでもあるかもしれません。それにしても幸四郎さんの弁慶は3階からも表情がよく見える。前のほうで見るとやりすぎ感をどうしても感じてしまうのだけど上からみると大きさが際立つ。これはバランスが難しいんだろうなあ。
染五郎の富樫は観るたびに良くなっています。従来のちゃんとした声は残念ながら戻ってなくて、ところどころキツそうな部分がありましたが、だいぶ台詞が前に出るようになっていて、低音などは3階にまでびりびりと響いてまいりました。そして情を殺しあくまでも弁慶一行に対し厳しく見極めようとする凄烈な気持ちが伝わってきます。あの厳しさがあるからこそ、弁慶が主君を打たざる終えない気持ちの苦しさが際立つ。問答~呼び止めのシーンの染五郎富樫の迫力と形の美しさ大きさは素晴らしいものがありました。そのシーンでは周囲から声にならない感嘆のザワも起こっていました。富樫の引き上げの部分の解釈は上から見てても、抑制された感情のあり方がやはりいいなあと。
芝雀さん義経は相変わらず優しげで可愛らしい義経だ。小柄だからそう見えちゃうのもかもしれないけど時に子供ぽい儚さがあるんだよね。能の子方みたいと言われてしまうのもしょうがない。ほとんど男役をやったことないし、武将としての格はこれからもっと付いていくでしょう。でも気合が入っている台詞回しは非常にいいと思う。
それにしても弁慶一行と富樫一行が対峙するシーンの歌舞伎ならではの絵画的な美しさにただ感動しました。こういうのがあるから歌舞伎って好きなんだよなー。