Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

国立小劇場『あぜくら会特別企画『沙翁文楽×乱歩歌舞伎 新作の競演』』

2009年08月10日 | 講演会レポ
国立小劇場『あぜくら会特別企画『沙翁文楽×乱歩歌舞伎 新作の競演』』

国立小劇場で行われたあぜくら会特別企画『沙翁文楽×乱歩歌舞伎 新作の競演』に行ってきました。
http://www.ntj.jac.go.jp/member/event/eve090626.html

2008年11月の歌舞伎『江戸宵闇妖鉤爪』(国立劇場)と先月の文楽『天変斯止嵐后晴』(国立文楽劇場)のダイジェスト版記録映像の上映と、鶴澤清治さんと市川染五郎さんのトークショーの二部構成。沙翁文楽と乱歩歌舞伎の宣伝兼ねた企画という感じでしたが司会の水谷アナが古典芸能にとても詳しい方だったので、わりと有意義なトークになっていたと思います。文楽と歌舞伎なので鶴澤清治さんと染五郎さんが絡むことがあまりなく交互に話を聞くという感じにはなってしまいましたが、そこは仕方ないですね。

【第一部】
歌舞伎『江戸宵闇妖鉤爪―明智小五郎と人間豹―」』(国立劇場20年11月公演)と文楽『天変斯止嵐后晴』(国立文楽劇場平成21年夏休み特別公演)のダイジェスト映像を上演。

乱歩歌舞伎のほうは人間豹と明智の対決中心のダイジェスト。物語の流れはわかるようにはなっていましたが観たことある人間にとっては非常に不満のあるダイジェストでした…。個人的に好きなとこがいっぱいカットされてて悲しかった。

文楽『天変斯止嵐后晴』は序幕の嵐の部分の三味線と琴の演奏をたっぷりとって、あとは春太郎と美登里の出会いあたりを。こちらは、東京公演がこれからなのでいかにもプロローグ的なダイジェストになっていました。

【第二部】
鶴澤清治さんと市川染五郎さんのトークショー。鶴澤清治さんも染五郎さんもスーツ姿で水谷アナに突っ込まれていました。「鶴澤清治さんは財界人みたい、染五郎さんは青年実業家、って感じにみえます。」だそうです(笑)

清治さんと染五郎さんは今回初めて一緒に仕事をしたそうです。。染五郎さんは清治さんとのことは何度か拝見させていただいている、とのこと(勉強のために文楽を観ているのでしょう)。

清治さん:

○実は最初『天変斯止嵐后晴』は1991年の英国ジャパンフェスティバルで上演するために2週間で作ったのだけど、色んな理由で持っていけなかった。英国ジャパンフェスティバルには染五郎さんがハムレットを歌舞伎化した『葉武列人倭錦絵』を持っていってたので実現していれば、染五郎さんとは向こうで一緒になっていたはずなんですよね、と。

○『天変斯止嵐后晴』の大阪公演の最初は入りが悪かったけど後半良くなっていった。出番が終わると急いで客席にまわって客の反応を見ながら少しづつ手直しをしていった。新作なので拍手のしどころがわからないせいか静かに観ていたけど幕が下がって沢山の拍手が湧いて良かったと思った。東京公演は大阪の反省を活かして手直して上演する。人形や衣装もいくつか新しくします。

○嵐の演奏はオドロオドロした雰囲気を出すために低音が出る十七弦の琴を使用した。他に高音のでる半弦の琴を使いファンタジックな雰囲気を出した場面もある。

○シェイクスピアは台詞劇。文楽は情景描写が地の文にあり、そこで人形を動かすので台詞だけにしてしまうと人形は動けない。動けるように脚本を考え、また台詞の部分も動けるようにゆったりとした曲を考える。

○西洋の演劇は理を求めるが文楽は情で物語が動く。その情の部分で突拍子もない部分を納得するのが日本人。向こうの人はなぜ?と突っ込んできますから…。(最近の日本人もそうですね(笑))

○昔も西洋の芝居を文楽にしたことはある。小さい頃、いくつか見て子供心に違和感があった。文楽人形に西洋の衣装を着せてやっていたので形が格好悪いんです。そのなかでは蝶々夫人が一番まあまあ見られた、日本人が出てて来るからね(笑)。

○歌舞伎に携わったことはないがスーパー歌舞伎の作曲はしたことがある。

○『フォルスタッフ』は文楽にしてみたい。文楽には喜劇がほとんどないから。私が観た『フォルスタッフ』を演じたイギリスの役者さんが先代の松緑さんそっくりでね、羽目物にすればいいのではないかと思い付いたんです。近松ももっと面白いのがあるので、そこら辺もやっていきたいんです。

染五郎さん:

○乱歩歌舞伎の発案者は私です。20年近くずっと乱歩を歌舞伎にしたいと思っていたので今回、実現できたのは嬉しかったし感慨深かった。

○歌舞伎の新作は普通は沢山ある歌舞伎の引き出しをどう使おうかという部分で作っていく。しかし乱歩歌舞伎は歌舞伎の引き出しをなるべく使わないように作った。その部分で新しい感覚の歌舞伎が出たのだと思う。またそれをやってみたところ歌舞伎の演出の懐の深さを改めて知った部分がありました。

○和太鼓の演奏は新しく作っていただいたものと既存のものと両方を使いました。これはテンポを出したいという父のアイディア。他に新内節(これは染五郎さんのアイディアですね)など、歌舞伎にあまり使わない音を使いましたね。ただ、それだけだと観客が気を抜けないので従来の下座音楽を挟み込みこむようにしました。

○脚本ができても、言葉で表現するのと実際に人が動いてみるのとでは、その通りになるとは限らない。着替えたり、セットを動かす時間もあるので、その時間を取るための場面を設けることもあります。それが不自然にならないように、また必然性があるように工夫もしなければいけない。

○歌舞伎の台本では「ここはよろしく立ち回って」と一行にも満たない言葉で書かれているんですが、ここが大変で…。どうやってそれを視覚化するか考えないといけないんです。

○原作でも歌舞伎もそうでしたが人間豹がどうなったかわかない終わり方。人間豹の最後は、言い出しっぺで演じている自分が見届けなければならないと思いましたので、乱歩歌舞伎第二弾というお話があった時に続編をと提案しました。

○恩田と神谷の二役を演じるというのは自分のアイデアではないです。芝居を作っていくうちに自分でも「なるほど」と思いましたね。

○色々やりたいことはあります。チャップリンの映画『街の灯』を昔『蝙蝠安』というタイトルで歌舞伎化したのですが、上手い具合に翻案しているんですよ。当時、こういう映画が日本に来るらしいという噂だけで歌舞伎化しちゃったらしいんです。今なら著作権問題で犯罪ですよね。当時はそこら辺ゆるい時代でしたから、やれたんだと思います。また色んなことをやろうという風潮があった時代なんですね。それを手直ししてやりたいです。歌舞伎は極彩美が特徴でもあると思うんですが、白黒映画のようなセピア色の歌舞伎というのもあっても良いと思って、どうにかできないか考えています。
 
○今年の乱歩歌舞伎は京が舞台で恩田が最後死にます。教えられるのはそれだけ。あとはお楽しみ(笑)。実は先ほども楽屋で脚本の打ち合わせをしていました。


今、きちんと思いだせるのはこのくらい。もっと色々お話はありました。企画は6時~8時の2時間でした。

明治大学『傾(かぶ)く技術(わざ)-三代の継承と日本的コミュニケーション』

2009年07月11日 | 講演会レポ
明治大学『傾(かぶ)く技術(わざ)-三代の継承と日本的コミュニケーション』

明治大学校友会寄付講座
『傾(かぶ)く技術(わざ)-三代の継承と日本的コミュニケーション』
鼎談:市川染五郎、明治大学文学部教授 齋藤孝、読売新聞 田中聡記者
日時:7月11日(土) 14:00~15:30(開場13:30)
場所:明治大学リバティタワー1階リバティホール

市川染五郎× 斎藤孝(『声に出して読みたい日本語』の著者です)×田中聡(読売文化部記者)の鼎談を聴きにいきました。この鼎談、かなり面白かったです。染五郎さんがここまで色々話すって珍しい。斎藤孝先生がお話上手で自分の知識や体験談を絡めつつうまく話しを振ってくれたのと、田中記者も合間合間でうまくツッコミを入れてくれて、話相手に恵まれたって感じでした。

以下、思い出したことをつらつらと。メモも何も取らずに聞いていたので、正確なレポは残念ながら書けません。時系列もバラバラですし、トーク内容もこんな感じだったというおおざっぱなものです。言葉の使い方等、だいぶ違うとは思いますがご容赦を。

一番印象的だったのは、斉藤先生が「今日これだけは絶対忘れない時間になる」とおっしゃった時間です、やはり(笑)。「知らざぁ言って聞かせやしょう」から始まる弁天小僧の名文句の一節を中抜きながら、染五郎さんが滔々とやってくださったたのです。斎藤先生が染五郎さんに顔合わせの時にお願いしてくれたそうです。これが粋で鯔背でとても格好よかったんですよ。ほんのちょっとやっただけでしたが拍手が凄かったです。後で、学生が「歌舞伎は庶民のものと言うけれど、染五郎さんの台詞を聞いたらこれは芸術だって思った」と感想を言っていましたが歌舞伎を観たことがない学生たちにはかなりインパクトがあったみたいです。その後、染五郎さんが台詞を言って参加者が復唱する、という贅沢な時間も!本当に楽しかったです。斎藤先生ありがとう!!

知らざぁ言って聞かせやしょう
浜の真砂と五右衛門が歌に残した盗人の
種は尽きねぇ七里が浜
<~中抜き>
ここやかしこの寺島で小耳に聞いた祖父さんの 似ぬ声色でゆすりたかり
名せぇ由縁の弁天小僧菊之助たぁ俺がことだ


鼎談内容:

まずは金太郎くん襲名披露の話から。幸四郎さんが今までみせたことない顔を見せていることに斎藤先生も田中記者も驚いたという話から。二人して「孫って特別に可愛い存在なんですねえ」としみじみ。染五郎さんも「そうなんですかねえ、やっぱり」と。

斎藤先生「親子の関係は責任とかライバル心もあるし、なかなか難しいけど孫は年が離れているから無条件に可愛がれるんじゃないかと。部活動でも3年生と2年生との関係は難しいけど3年生と1年生はうまくいくんですよね。近すぎると難しいんじゃないか」と。

田中記者「福助さんから聞いた話ですが楽屋で芝翫さんが自分には言ったことがなかった話を児太郎にはしてる。え~、それボクには教えてくれなかったのに、と思いながら、あとで息子に何言ってた?と詳しく聞いているらしいですよ(笑)」と。「いずれ幸四郎さんがいっくんにあれこれ言っているのを後で染五郎さんが聞きだすという風景もあるかも(笑)」

という感じで始まりました。それから、染五郎さん金太郎くんの事や自分の初舞台の事など。自分が12歳の時に毛振りで首を痛めた経験から、金太郎くんには週2、3回マッサージを受けさせていたそう。最初の頃は首と肩が凝っていたが後半にいくにつれ、首と肩は大丈夫で腰と足が凝ってきたそう。それだけちゃんと後半になるにいき腰で振るという毛振りの基本ができていたということ。子供なので見よう見真似でやってしまえるところもあるんでしょう。公演中、舞台上では子供に気を使うことはしなかった。自分が舞台に真剣に向き合っている姿を見せたかったので。金太郎くんの毛振りの舞台写真で、「自分の理想の形してる」と思ったショットがあったそうな。子供ってすごいんですよね、と。全然親バカな感じじゃなく、子供の可能性って凄いという雰囲気でさらり言っていた。そしてちょっと嫉妬も、と(笑)

染五郎さん、子育ても芝居でもいわゆる自分アピール、押し付けが苦手なんだそうです。自分のウィークポイントと言っていました。「押し付けるのではなく、わかってもらえるように伝える事をしていきたです。芸は10割やってしまうといけない、8割ぐらいにするのが品のある芸になると言われています。お客様に判りやすく全部答えるように演じても違うと思いますし、かといって自分の見せたい物をどうだと押しつけてもそれも違う思うんです。その兼ね合いが難しいですね。自分は肚がにじみ出るような芝居を目指しています。芸は品格のあるものでないといけないと思うんですよね。でないと、とても薄っぺらいものになってしまうと思うんです。」

この肚のことから腹を据えて、という話になり、腰を決める立ち振る舞いなどの話に。日本の舞踊と西洋舞踊が正反対とか。ここらで斎藤先生が「いざやかぶかん」DVDを持ち出し、この染五郎さんの踊りの解説がすごく良いんですよ~と。これ一見の価値ありですよ、と絶賛。立ち振る舞い、呼吸方法など、日本人としての立ち振る舞いの基本の部分のところを教えているのが気に入ったみたいでした。

そこで、台詞廻しの呼吸方法のことに言及し、染五郎さんがまだまだで今勉強中ですと。先輩役者さんが教えてくれる時に手を自分の腹と背中に置かせるんだそうです。それで台詞を言ってくれる。そうするとその呼吸方法がじかに伝わってくるんだそう。かなり息を腹に溜め込むらしいです。

何もしない、為所のない役は難しい、という話。染五郎さん「いるだけでその人物像をわからせないといけない」というような話をした時、斎藤先生が「世阿弥の言葉で「「何も演戯しないところが面白い」という言葉がある」と紹介したんです。それで染ちゃんが「何もしない、為所のない役は難しいけど、そういう役に説得力をだせるようになりたい」というようなことを。田中記者が「勧進帳の義経が代表ですよね。全然動かない、ほとんど座っているだけの役だけどそれだけで品格を感じさせ、弁慶やより格上の雰囲気を出さないといけない。弁慶と富樫と同じくらいに大事な役なんですよね」と。染五郎さん「そうなんですよ、義経は何もしないけど、物語の核の存在ですからね。何もしないで存在感をみせないといけない難しい役」


質問コーナー:
役者志望の男性「役者になるためにこれだけはやっておいたほうがいいといいことを教えて」

染五郎さん「役者は基本的に人を演じるので、まずは色んなものを観たり聞いたりして感動してほしい。何か、良いものを見たり、芝居でも映画でも音楽でもなんでもいいんです。日常の風景でも、ああ、いいなあ、ステキだなあと感動することが大事」。感受性を磨いてということですね。「技術は努力すれば誰でも身に付くから」と言っていました。その努力が難しいんですけどね~と思いました(笑)。

男子学生「歌舞伎は大衆演劇だといいますが、今、染五郎さんの台詞を聴いてたら芸術でもあると思うんです。その点についてどう考えていますか?」

染五郎さん「先ほども少しお話しましたが歌舞伎はわかりずらいものになってきているのは確か。歌舞伎は最先端の芝居を止めて古典になった時から、身近なものではだんだんなくなってきた。その過程で先人たちが芸を洗練させていき芸術の方向に向いたと思っている。その先がどうなるかわからないけど見極めていき、その先へ行きたいと思う」

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書けたのは内容の三分一以下な感じですが…、ざっとこんな雰囲気でした。主催者の方、スタッフの方、出演者のお三方、楽しい時間をどうもありがとうございました。

ミステリー小説講座『江戸川乱歩フォーラム2008』

2008年09月27日 | 講演会レポ
『江戸川乱歩フォーラム2008』

11月国立劇場の歌舞伎公演、乱歩歌舞伎『江戸宵闇妖鉤爪』に絡んだ内容なのでこちらにupしてみます。

ミステリー小説講座
~読売 江戸川乱歩フォーラム2008~

日時 2008年9月27日(土)13:30~15:30(13:00開場)
会場 立教大学 タッカーホール

13:30~14:00 イントロダクション 藤井淑禎氏
14:00~14:20 「歌舞伎と乱歩」
          市川染五郎×鈴木英一氏(早稲田大学講師)
14:20~15:30 ミステリー作家対談 有栖川有栖氏×北村薫氏

◎旧江戸川乱歩邸特別公開!12:30~13:30/15:30~17:00


○イントロダクション 藤井淑禎氏
まずはなぜ立教大学で「江戸川乱歩フォーラム」を開催することになったのか、というお話から。このフォーラムは今回で5回目だそうです。乱歩邸を資料すべてとともに大学に寄贈され管理しており、研究する使命を負ってとのこと。保存と公開のバランスが難しいとおっしゃっていました。


○「歌舞伎と乱歩」市川染五郎×鈴木英一氏(早稲田大学講師)
鈴木さんは演劇研究センター講師で常磐津の太夫さん。染五郎さんとは仲良しなんですよね。歌舞伎がらみの対談のときによく駆り出されています。

トークべたな染五郎さんは知り合いの鈴木さんと一緒のせいかいつもより頑張ってトークをしてました(笑)でもやっぱり緊張しいな感じだし、決して上手ではないかな…。

今回は11月国立での乱歩歌舞伎『江戸宵闇妖鉤爪』に絡んだトークです。そもそものキッカケは染五郎さんが新しい歌舞伎をどういう題材でやれば面白いかと色々、妄想していたのを鈴木さんと飲みながら話していた時の話題のひとつなんだそう。乱歩で歌舞伎ができないか、という話からじゃあどれを?ということで『人間豹』が候補にあがったとのこと。人間豹は映像化も舞台化も今までやってないものだと思うとのこと。

「15年前のこと。高校時代から新作歌舞伎のことは色々考えてきたので今回これを実現できるのは大変嬉しい。」

「乱歩作品は歌舞伎とは違う色彩ではあるけど色彩美が豊かだし、音楽性もある。その部分で歌舞伎に置き換えられると思った。また登場人物も個性豊かだし、実はだれそれ、という展開も歌舞伎によくある展開なので。今回『人間豹』を『江戸宵闇妖鉤爪』として歌舞伎にする時には江戸末期に、レビューシーンを劇中劇に、気球で去るシーンは大凧の宙乗りにと、置き換えてできますしうまく歌舞伎にハマると思います。実は大凧は大凧じゃなかったり…あっ、言っちゃだめ?観てのお楽しみ。」

「恩田(人間豹)を演じさせていただくのですが、恩田は沢山人を殺していきますがその背景や動機がいっさい書かれてない。その得たいの知れなさ不気味さを歌舞伎でいうところの「悪の華」として演じたい。また江戸末期という時代のあれこれに通じていくという部分も今回の歌舞伎にはあります。まあそこは観てください。」

「演出は今までの歌舞伎の手法でないものも使います。父が色々考えてます。音楽は新内を使います。新内節は色気があるので乱歩にぴったりかと思って。」

(染五郎さんは新作の歌舞伎の時には音にすごく拘りますよね。パルコ歌舞伎ではテーマソングを作り、劇中音楽はすべて新作。染模様では講談を使い、竜馬では尺八。邦楽という枠のなかで冒険をしています。音でここまで色々やっているのは染ちゃんくらいでは?)

「脚本は昨日、あがってきました。新作なので準備期間は長めにとってあります。十分な準備ができると思うので頑張って完成度の高いものをお見せしたい。実は10月は父の勧進帳1000回に向けての大事な巡業があるんですが、父(幸四郎さん)と会うとこの話は全然出なくて乱歩歌舞伎のことばかりなんです(笑)」

これが国立で実現するなんてすごい、と鈴木さん。「だって、日生とかじゃなく、劇団☆新感線とかでもなく、国立の歌舞伎公演でですよ~。乱歩の世界ってエログロだったりするでしょ、それを国立が許可するなんて」と、何度も言ってました(笑)その流れで「幸四郎さんの明智が見られるなんて!演出は幸四郎さんなんですよね」「あっ、だから国立が?」なんて感じでおっしゃるものだから、染五郎さんが「企画は僕ですから!!、そこのとこよろしく!」って強調してました(笑)

鈴木さんも脚本を読んだそうです。「面白いです。事前に情報を仕入れないで観てください。筋書き買っても読まないで観てね。」とのこと。


○ミステリー作家対談 有栖川有栖氏×北村薫氏
これがすんごい楽しかった。とにかく有栖川さんと北村薫さんのお二人が面白すぎ。このお二人、乱歩がかなりお好きなんですね。乱歩の話だけで1時間10分突っ走りました。すご~い。

それにしても北村薫さんてあんなキャラだったんですね。もうしゃべりまくり、仕切りまくり(笑)有栖川有栖さんがトーク上手なのは知っていたのですがそれを上回る。有栖川さん、だいぶ北村さんに押されっぱなしでした。それでもやっぱ突っ込み体質な有栖川さんだけあって、それでもあちこちで突っ込みしまくりでイチイチ楽しかった。

面白すぎてトーク内容を再現できないっ。

お二人の乱歩体験の話とかどの作品が好きだとか、乱歩はどういう人だったのか?とかそこらへんのお話を。

北村さんが乱歩の肉声をテープで聞かせてくださいました。なんとべらんめいな江戸っ子って感じのしゃべり方でした。イメージと違う…。有栖川さんもそう思われたらしく「ぼそぼそっと後ろ向きな雰囲気で話される、というイメージが…」とおっしゃていました。

乱歩は歌舞伎好きで仲間と観劇会を定期的に開いていたそうです。。文士劇で河内山に扮したことがあるとか。(風貌と声からするとピッタリだったかもしれません)

乱歩の二面性は頭髪にあり、との分析は山田風太郎氏が書いているそうで…(^^;)。

「乱歩は自分大好きな人ですから」とは有栖川さん。自分に関する資料、すべて保管していたらしいです。おかげで研究資料には事欠かないとか。

北村さんは小学校時代から乱歩を読んでいる。中学のときに女性が裸の表紙の本が出て、買うの恥ずかしくて隣町まで買いに行ったらしいです(笑)

有栖川さんは『人間豹』を来る直前に再読してきたそうでこの話をしたくてうずうずしてました。ネタばれしていいでしょ?と色んなツッコミ話を。染ちゃんが恩田を「悪の華」と評したのがいたく気に入ったらしく、「染五郎さんのおっしゃったことに感銘しました。「悪の華」いい言葉ですね、そうですよ、まさしくそういう話。歌舞伎、楽しみですよ~、これは!」「人間豹は悪の権化だけど、快楽殺人犯ではなく気持ちがまったくわからない人物ではない。そこがいい。」

「人間豹」と「黄金豹」の違いとか。もう、これ、有栖川さんと北村さんの解説が可笑しすぎるんですが…。本物の豹と着ぐるみ豹。電話のとんでもない?やりとり。着ぐるみ大好きな怪人二十面相?等々。ここら辺から乱歩作品の突っ込み解説が。乱歩作品を色々と読みたくてしょうがなくなりました。

新橋演舞場『女形の夕べ』

2006年05月12日 | 講演会レポ
新橋演舞場『女形の夕べ』

新橋演舞場に芝雀さん、福助さん、亀治郎さんのトークショー『女形の夕べ』を聞きに行きました。開場15分前に着いたらもうかなりの人数が並んでいました。しかも着物姿の方までいるし。うわああ、皆さん気合入りまくり。なんだか熱気が凄かったです。参加者は想像以上に多かった。年齢層も幅広かったです。トークショーのお話も楽しかったです。福助さんは飛ばしまくりで、芝雀さんはおっとりのんびり、とんでもない服装(笑)の亀治郎さんはお疲れ気味のようで質問には短めにハキハキと(芝雀さん比で言えばですが…)。最後に舞台上で記念撮影がありました。まさしく舞台裏を見る事ができて得した気分。

参加の皆様がレポされているように三人三様の服装が個性を現わしていました(笑)。芝雀さんは地味なグレーのスーツに薄いピンクのシャツにネクタイ(でも今までで拝見した素の芝雀さんのなかでも地味な格好だと思う。スタンドカラーのおしゃれスーツとかもお召しになってます)。福助さんは白いスタンドカラーのシャツに光沢のある黒いジャケットに黒いパンツでご自分で「ホストのようでしょ」とか(^^;)。衝撃だったのは亀治郎さんのまっ黄色のシャツに真っ赤(朱赤系)のジャケット。な、なんですかー!その格好は!大爆笑になったのは言うまでもない。ほんとに自前なの?ねえねえ。

トークでは福助さんが率先しておしゃべり。ホスト役を買って出てましたがわりとすぐに脱線したり人の話を取っちゃったり(笑)。芝雀さんはおっとりニコニコと聞き役にまわっていました。もっと話して~とは思いましたが芝雀さんらしいなあとも。亀治郎さんはお七を演じたばかりということもあり、かなりお疲れ気味のご様子。質問に対して最小限の会話(笑)

内容は結構忘れてしまい。楽しくてアハハと笑いぱなしでした。思い出したら追加します。

<読書のこと>
・福助さん>『狐と笛吹き』のともねがよくわからなくて小池真理子『愛するということ』を読んで参考した。そしたら小池真理子にハマってすでに8冊も読んでしまった。(確かに小池真理子は読み始めると面白い。女の心理が鋭く描かれている初期~中期作品のほうが面白いです<読んでみようと思う方)

・芝雀さん>写真や絵が沢山載っている本を読むことが多い。老眼だから細かい字を読むのが大変で。

・亀治郎さん>小説は読まない。ノンフィクションばかり。福助さんに『利己的な遺伝子』(だったと思う)読んだ?と聞かれ、「読んでみます」。

<役について習う>
三人ともに父親はお役についてほとんど教えてくれないそう。他の人には丁寧に教えるのにとおっしゃっていた。ほんとは習いたいんでしょうね。

・芝雀さん>雀右衛門さんに「ふん、ふん、うーん、ダメねえ」とは言われる。ほとんど怒ったことはない。普段はあまり会話しない、特に最近は何言ってるかわかんないし…(と爆弾発言(^^;)もうお年ですからね…)

・亀治郎さん>段四郎さん、立役の時は教えてもらう。全然怒らない、でも怒ると怖い。人様に迷惑をかけたりとか、そういうしつけの部分は厳しい。

・福助さん&亀治郎さん>猿之助さんは芝居のこととなると話が止まらない。世間話をすると怒る。延々と芝居のこと話しているかと思うといきなり寝てる。先輩に習いに伺う時はほんとは録音とかしたら失礼だし嫌う方が多いのでやってはいけないことなんだけど猿之助さんは先代勘三郎さんのお話を隠し撮り(録音)していっぱいテープを持っている。内緒だよといいながら色んな人に聞かせてる(笑)

・福助さん>坂田藤十郎さんは細かく教えるのではなく「そこは感情をぐーっと入れて気持ちでやればいいんだよ」とか「そこでパアッと客を盛り上げるように」とかしか言わない。(さすが上方役者さん)

<辛い役>
・芝雀さん>『弁慶丈使』の花の井は辛い。途中で居なくなってもいいんじゃないかと共演者と話したことがある。書割を置いてもわかんないんじゃない。

・福助さん>『鮨屋』のお里も辛いわよね。妹なのに全然話しかけてもらえない。『熊谷陣屋』の藤の方の後半も書割でもいい。じっと後ろを向いている間、イヤホンを取り出して音楽を聴いていてもわかんないじゃないかしら。

・亀治郎さん>『河庄』の小春。倒れた姿勢が辛くて…。

・福助さん>「歌右衛門さんに、小春は黙っているときがいいのよって教わった」と亀ちゃんにツッコミ。(私もそう思う。昨年の雀右衛門さんの小春の風情は素晴らしかった)

<好きな役>
・芝雀さん>芯の強い女性の役

・福助さん>今までやった役はみんな好き

・亀治郎さん>玉手御前

<化粧>
・芝雀さん>顔が大きくて、團蔵さんに鬘で8割隠れていいねと言われた…。楽屋入りは早い。顔をしてしまえば何があっても出られると安心する。顔をしてから楽屋をウロウロして台詞をぶつぶつ唱えている。その間に自然と役になっていく感じ。

・亀治郎さん>なるべく早く化粧をするのがいいと思う。

・福助さん>照明によって変える。昔より明るいし近くで写真を撮れられたりするのでぼかしを多用する。金丸座や中村座などの暗めの小屋では陰影をハッキリ。間接照明を使う芝居(コクーンや野田歌舞伎)の場合はピンク系を入れる。アイラインは役者さんそれぞれの好みで入れてる。

・猿之助さんは早くていつもまったく同じように化粧ができる。

・玉三郎さんは楽屋入りが異常に遅くてハラハラドキドキサスペンス。でも化粧は早くて綺麗。

・橋之助さんは左利きを右利きに矯正したので急ぎの時は両手を使って仕上げる。端から見てると気持ち悪いby福助さん

★参加者の皆様のレポ★
★asariさん
★チハさん
★まるくさん
★春生さん
★achaccoさん
★cocoさん