Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

歌舞伎座『鳳凰祭三月大歌舞伎 夜の部』 3等B席上手寄り

2014年03月21日 | 歌舞伎
歌舞伎座『鳳凰祭三月大歌舞伎 夜の部』 3等B席上手寄り

3演目の並びもいい感じで楽しかったです。なんといっても『勧進帳』が一番の見応えでしたが『加賀鳶』も『日本振袖始』も楽しかった。

『加賀鳶』
何気に贅沢な配役(主な役者だけでなく個人的に大好きな脇役さん大勢♪)でウキウキ。幸四郎さんは道玄が活き活き。こきたない小悪党ぶりが楽しい。幸四郎さんの悪党ってどこか突き抜け感があるのが面白い。そういう意味では黙阿弥より南北の悪党のほうが似合うけどね。

勘九郎くんはいつもながら鳶姿が似合いすぎだね。橋之助さんもかっこよかったわ。コタちゃん、台詞がすごく良くなってる。松蔵の梅玉さん、最近この手の役まわりも多くなってきてるせいか以前拝見したときよりハマってた。店先で道玄をやり込めるあたり押し出しが強くなりスカッとさせる。

『勧進帳』
今月の勧進帳は台詞劇の趣き。台詞上手な役者陣が’物語’を鮮明にする。四天王含め、重量感のある芝居でした。なんというかみっちり詰まってる。

吉右衛門さんの弁慶、まずはこの物語にある弁慶が発する台詞の明快さが見事。何をするのか、すべきか、そこの説得力が強い。また揺るぎのない強さと大きさ。今回は高麗屋型でかなり前へ前へと出る弁慶ですがそこに今まで培ってきたずっしりと受ける弁慶も併せてあったように思う。吉右衛門さんの弁慶は、歌舞伎のなかの象徴としての「義経」というキャラクター同様に、人間弁慶というより弁慶というイメージの象徴として在った感じ。身体はかなりきつそうでハラハラする場面も多かったけど、その悲壮感すら弁慶に嵌めてきた。

菊五郎さん富樫。いつもの情味あふれる富樫。朗々とした台詞の明快さがやはり見事。前へ出る吉右衛門弁慶にずしりと受けるのではなく突っ込んでいく。藤十郎さん義経、いつもながら位取りが見事なのと能がかりの台詞の良さよ。


『日本振袖始』
美しい玉三郎さんがガニガニ歩いてガブガブお酒飲んでるってだけでなんだか楽しいんです。個人的趣味です、ええ。正直なところ前より動けてないのが悲しいんだけど、それをご自身でわかってらして見せる部分での工夫をしっかりされている。

玉三郎さん、蛇体になった時の隈が今回、素晴らしかった。怖さと哀しさが同時に表現されている見事な化粧。あれは凄いわ。

勘九郎くんがキレッキレの踊りでとてもかっこよかった。拍手多かったです(^^)

米吉くんはとにかく可憐でかわいい、かわいい。ほっぺたがもちっとしてて触りたくなります。

新橋演舞場『空ヲ刻ム者~若き仏師の物語 昼の部』 1等A席後方センター

2014年03月15日 | 歌舞伎
新橋演舞場 スーパー歌舞伎Ⅱ『空ヲ刻ム者~若き仏師の物語 昼の部』 1等A席後方センター

新作ってなかなか難しいわね~。三幕目が面白かった(なんというか笑えてくるくらい)ので奮発したことに後悔はない。役者も活き活きしてたし。でも芯になる脚本が私には物足りなかったな。演出は舞台機構の使い方はよかったけど役者の動かし方とか、やっぱこうなっちゃうか~だったし。いわゆるスーパー歌舞伎らしさを活かそうとして折り合いつけちゃったかな?な感じが。前川知大氏の作家性はどこ?と思ったけど、それはほぼ無かったと友人が。

私はせっかく外部からの新進気鋭の作家を呼んだのであれば、という作家性を求めてしまったけど、前川氏の四代目猿之助への応援メッセージと思えば、いかにもアテガキだなと思ったし十分有りな内容だとは思ったんですけどね。一幕目が説明台詞だけで動きもなく平坦すぎる。二幕目で少し動いたけど。一番気になったのは言葉かな。台詞がもうひとつ生きてる感じがしなかった。考えすぎたのか、ああいう言葉の使い方が前川さんなのか?理屈をこねるのは全然いいし(むしろ私は面白がる)、現代語でわかりやすいんだけど。それがなぜか「今」に生きた言葉になりきってない。

役者は適材適所で十分に魅力的で、だからこそもっとなんとかできるんでは?という。求めすぎたかな~?浅野さんの自由度がそのなかでいいポイントになってた。染まろうとしないのがいい。あと右近さんが超良かった。笑也さんもかっこよかったし、春猿さんがエロくていいし、笑三郎さん巧いし。福士くんが美味しい役ではあったけどあの素直な芝居が泣かせたし。

主役二人は好対照さがピッタリだし、役柄には合ってた。でももっと為所があったんじゃないかな~と。「歌舞伎」の制約が強すぎたような?猿之助さんに関しては3幕目の楽しそうな顔だけでもうあれこれはどうでよくなったんだけどね。

佐々木蔵之介さんがね~、なんかもったいないのよ。歌舞伎に嵌ろうとしてくれたのは十分すぎるくらいで。白塗りも似合うしカッコイイし。私的には蔵之介さんには違う部分求めてしまった。<ダークさにのまれる部分とかね。そこらへんの芝居。

やっぱ私は「物語」主義なのかな~。役者を観るんなら十分だったと思う。猿之助さんのドヤ顔は気分を明るくさせるし。作家性を押し出すという部分では野田さんが凄すぎて(特に研辰と鼠小僧)、クドカンも退かない個性の強さを発揮ってところか。<私は外部作家の新作にはそれがあっていいと思うしそれを期待する。

世田谷パブリックシアター『神なき国の騎士』 S席1階前方センター

2014年03月05日 | 演劇
世田谷パブリックシアター『神なき国の騎士 あるいは、何がドン・キホーテにそうさせたのか?』 S席1階前方センター

川村毅の『ドン・ キホーテ』をモチーフにした戯曲。というか、キャラを現代の日本に飛び込ませ、というお話でした。わかりやすくもなく難解でもなくな不思議な芝居でした。ディストピアものの一種かな。大駱駝艦との共演が抽象化したさまざまなものを表現するのに効果があげていた感じ。

萬斎さんのキホーテは本体ではないほうが活き活きしてた。以前、実盛を演じた時も思ったけど年老いた役だと妙に若さが全面にでる。時代劇のコスプレは楽しそうだったがあれある程度の年齢以上じゃないとわかんないと思うよw 萬斎さんのキホーテの台詞回しは狂言の発声を元にした萬斎さん流。しかし、キホーテはどうしても幸四郎さんの独特の哀愁のある台詞廻しのほうが印象残ってしまってて時々脳内変換…萬斎さんすいません。萬斎さんは芯がとても軽やかなんだなと思う。飄とした若々しさがまだまだ持ち味。無邪気で騒々しい、でも鋭さを秘めたお役とか舞台で観てみたいような。

配役を把握しないまま観に行ったんだけど、サンチョパンサ、久々に拝見したせいか、顔がイメージとちょっと違ってみえたけど中村まことさんだったのか。そりゃ上手いはずだわ。ちょっとした緩急や間がいい。

村木仁さんは間違えようがないというかw 新感線じゃない仁さんは初めてかも。こういう芝居のほうがより合ってるのでは?と思ったり。マツコデラックスみたいなキャラだったけど哀愁があってよかった。

木村了くんも久々に舞台で拝見。舞台表現が上達してた。相変わらずスラッとしててカッコイイわね。深谷美歩さんは初めて拝見、声がキレイですね~。歌声が素敵でした。


------------------------
[作] 川村毅
[演出] 野村萬斎

[出演] 野村萬斎/馬渕英俚可/木村了/深谷美歩
     谷川昭一朗/村木仁/中村まこと
     [大駱駝艦]我妻恵美子/松田篤史/高桑晶子/塩谷智司
          奥山ばらば/鉾久奈緒美/小田直哉/齋門由奈

シアターコクーン『もっと泣いてよフラッパー』 A席2階真ん中下手よ寄り

2014年03月02日 | 演劇
シアターコクーン『もっと泣いてよフラッパー』 A席2階真ん中下手寄り

千穐楽を拝見。カテコ20分。物悲しいラストから一転させる明るい打ち出し。楽しかった♪

串田さんのいろんなものを詰め込んだ散文的な芝居という感じでした。ノスタルジックでファンタジック。切なさと哀しみと、そのなかの笑いと前向きさと。寂しいを抱えて人は生きていく。人生という舞台の楽屋裏にはまた楽屋、そしてまた楽屋。

ジル@松たか子ちゃんがとにかくキュートで透明感のある華があって、そのなかにちょっとした色気をみせてさすが。たか子ちゃんのまっすぐな台詞と歌、大好き。それとねずみの国での語りが見事だった。情景、そこにある想いをキラキラと伝えられる女優さんあ。最近は映画でも凄いって思わせるけど真価はやっぱり舞台だわ。もっともっと観たいと思わせる。

アスピリン@松尾スズキさん、存在感がすごい。独自色ありつつ串田さんぽい雰囲気も醸し出してカンパニーに馴染んでた。ラブレターの音読、歌舞伎風味な台詞廻しでやってたw

皇太子@亀蔵さん、超切なかった(涙)。可愛らしくて純粋すぎて哀しい人だった。亀蔵さんの品のある佇まいと繊細さを前面に出したお役だった。串田版の『十二夜』でもとてもキュートだった。歌舞伎の役柄とは違う魅力。ストプレ、もっと出てほしい。

サラ@秋山菜津子さん、キリー@りょうさん、役にピッタリと嵌ってちょっとタフで切ない女を演じていてかっこよかったです。


---------------------
作・演出・美術:串田和美
作曲:越部信義/八幡 茂/乾 裕樹
音楽監督・編曲:ダージリン(佐橋佳幸/Dr.kyOn)
照明:齋藤茂男、音響:市来邦比古、衣裳デザイン:田中洋介、フラッパーたちの衣裳:鳥居ユキ
ヘアメイク:佐藤裕子、振付:井手茂太、映像:栗山聡之、衣裳進行:中野かおる、音楽助手:片岡正二郎、美術助手:大島広子、振付助手:菅尾なぎさ、演出助手補:神野真理亜、演出助手:寺崎秀臣、技術監督:櫻綴、舞台監督:二瓶剛雄
宣伝イラストレーション:宇野亜喜良/宣伝美術:おおうちおさむ、宣伝写真:明緒、宣伝ヘアメイク:佐藤裕子、宣伝スタイリスト:森 保夫

出演:
トランク・ジル(踊り子)…松たか子
旦那アスピリン(黒手組の首領)…松尾スズキ
お天気サラ(踊り子)…秋山菜津子
青い煙のキリー(踊り子)りょう
クリンチ・チャーリー(八百長ボクサー)…大東駿介
フラポー(ベンジャミンの許婚者)…鈴木蘭々
月影ギナン(踊り子)…太田緑ロランス
銀色パパ(銀色ファミリーのボス)…串田和美
コミ帝国の皇太子…片岡亀蔵
シカゴタイムズの新聞記者・ベンジャミン…石丸幹二


大森博史、真那胡敬二、小西康久、酒向芳、内田紳一郎、片岡正二郎、
松之木天辺、山岸門人、近藤隼、佐藤卓、内藤栄一、木村智早、丹羽麻由美、
福島彩子、後藤海春、横岡沙季

<Musician>
佐橋佳幸(Gt)、Dr.kyOn(Pf)、黒川修(B)、木村おうじ純士(Drs)、黄啓傑(Tp)、花島英三郎(Tb)