国立小劇場『五月文楽公演 第二部』前方下手寄り
『義経千本桜』「椎の木の段」「小金吾討死の段」「すしやの段」
三段を休憩なしで一気に上演。文楽ではいつもこういう上演の仕方なのでしょうか。2時間40分という長丁場で最初は疲れるかなと思いましたが休憩なしのほうが複線のあるストーリーの流れが明確に浮き出てくるので集中力が途切れずあまり長さを感じませんでした。『義経千本桜』は歌舞伎で何度か観ていますが、やはり文楽のほうが話の骨格が明確ですね。歌舞伎は役者を見せるための工夫がなされ見せ場本位な部分があるのだなと思いました。役者によって解釈もそれぞれ違うので人物像もそれぞれ違ってくるし。
『義経千本桜』は全体的に床が揃っていたように思います。本(脚本)が良いせいもあるのでしょうがそれぞれの段が聴き応えがありました。そのなかでも「すしやの段」の住大夫さんの細やかな情感ある語りには惚れ惚れしました。切々としたお里のくどきには胸が締め付けられるようでした。語りの緩急が素晴らしいのですよねえ。田舎娘の一途な恋心を時にユーモラスに語り、そして一気に哀しみを湛えたくどきに転化させる。「すしやの段」後半は十九大夫さん。声が非常によく権太の戻りの様子をきちんと表現されていたと思いますが少々情感が足りないような気がしました。権太の戻りシーンって泣かせるとこだと思うんだけどなあ。
住大夫さんの語りの力もあったかもしれませんが桐竹紋寿さん@お里が田舎娘らしい色気があって非常に良かったです。
勘十郎さん@小金吾はすっきりしてて凛々しい。立ち回りは派手な歌舞伎のとは違いましたがなかなか迫力がありました。
玉女さん@権太は「椎の木の段」から「すしやの段」の性根の変化がよくみえ丁寧。
『生写朝顔話』「明石浦船別れの段」「宿屋の段」「大井川の段」
運命に翻弄されすれ違いを繰り返す恋人同士のお話。今回の段だけみると宮城阿曽次郎が身勝手な男性にみえてしまいましたがどうやら他の段があるときちんと理由があってのことらしいです。
とにかく今回は蓑助さん@深雪が凄かった。蓑助さんが操る女性はちょっと別格ですねえ。深雪の恋は恋に一途というよりまさしく盲目の恋。怖いくらいに女の情念が迸ってました。激しい恋心に忠実に生きる女。「宿屋の段」で落ちぶれてしまった哀れさのなかにもまだ諦めきれないものを持っていて情熱がある女だなと思っていたら、最後制止を振り切っていった姿には正直唖然。うわ、すごすぎっ。人形だからこそ表現できる激しい動き。そして「大井川の段」の狂乱する姿は清姫のようだった。もう情念としか言い様がありませんね。命がけの恋の感情を一気に迸らせる女性って文楽や歌舞伎のなかの女性で多いですよね。なんというか、どちらも男性が演じるというところに独特の空間が生まれるのかな?とか。女性がやってもああいう感じにはならないと思うんですよね。なんというかあの激情を表現するにはある程度線の太さが欲しいんじゃないかと。そんなことも考えた今回の『生写朝顔話』でした。
床は「明石浦船別れの段」がちょっと不安定な感じがしたかな。「宿屋の段」では嶋大夫さんの切々とした情感が素晴らしかったです。後半、感情の高ぶりを聞かせるとこは少々声が深雪にしてはハスキーすぎるとは思いましたが少しづつテンションがあがっていく様は見事。また「大井川の段」では呂勢大夫さんの気迫の語りと鶴澤清志郎さんの激しい演奏が凄かった。
『義経千本桜』「椎の木の段」「小金吾討死の段」「すしやの段」
三段を休憩なしで一気に上演。文楽ではいつもこういう上演の仕方なのでしょうか。2時間40分という長丁場で最初は疲れるかなと思いましたが休憩なしのほうが複線のあるストーリーの流れが明確に浮き出てくるので集中力が途切れずあまり長さを感じませんでした。『義経千本桜』は歌舞伎で何度か観ていますが、やはり文楽のほうが話の骨格が明確ですね。歌舞伎は役者を見せるための工夫がなされ見せ場本位な部分があるのだなと思いました。役者によって解釈もそれぞれ違うので人物像もそれぞれ違ってくるし。
『義経千本桜』は全体的に床が揃っていたように思います。本(脚本)が良いせいもあるのでしょうがそれぞれの段が聴き応えがありました。そのなかでも「すしやの段」の住大夫さんの細やかな情感ある語りには惚れ惚れしました。切々としたお里のくどきには胸が締め付けられるようでした。語りの緩急が素晴らしいのですよねえ。田舎娘の一途な恋心を時にユーモラスに語り、そして一気に哀しみを湛えたくどきに転化させる。「すしやの段」後半は十九大夫さん。声が非常によく権太の戻りの様子をきちんと表現されていたと思いますが少々情感が足りないような気がしました。権太の戻りシーンって泣かせるとこだと思うんだけどなあ。
住大夫さんの語りの力もあったかもしれませんが桐竹紋寿さん@お里が田舎娘らしい色気があって非常に良かったです。
勘十郎さん@小金吾はすっきりしてて凛々しい。立ち回りは派手な歌舞伎のとは違いましたがなかなか迫力がありました。
玉女さん@権太は「椎の木の段」から「すしやの段」の性根の変化がよくみえ丁寧。
『生写朝顔話』「明石浦船別れの段」「宿屋の段」「大井川の段」
運命に翻弄されすれ違いを繰り返す恋人同士のお話。今回の段だけみると宮城阿曽次郎が身勝手な男性にみえてしまいましたがどうやら他の段があるときちんと理由があってのことらしいです。
とにかく今回は蓑助さん@深雪が凄かった。蓑助さんが操る女性はちょっと別格ですねえ。深雪の恋は恋に一途というよりまさしく盲目の恋。怖いくらいに女の情念が迸ってました。激しい恋心に忠実に生きる女。「宿屋の段」で落ちぶれてしまった哀れさのなかにもまだ諦めきれないものを持っていて情熱がある女だなと思っていたら、最後制止を振り切っていった姿には正直唖然。うわ、すごすぎっ。人形だからこそ表現できる激しい動き。そして「大井川の段」の狂乱する姿は清姫のようだった。もう情念としか言い様がありませんね。命がけの恋の感情を一気に迸らせる女性って文楽や歌舞伎のなかの女性で多いですよね。なんというか、どちらも男性が演じるというところに独特の空間が生まれるのかな?とか。女性がやってもああいう感じにはならないと思うんですよね。なんというかあの激情を表現するにはある程度線の太さが欲しいんじゃないかと。そんなことも考えた今回の『生写朝顔話』でした。
床は「明石浦船別れの段」がちょっと不安定な感じがしたかな。「宿屋の段」では嶋大夫さんの切々とした情感が素晴らしかったです。後半、感情の高ぶりを聞かせるとこは少々声が深雪にしてはハスキーすぎるとは思いましたが少しづつテンションがあがっていく様は見事。また「大井川の段」では呂勢大夫さんの気迫の語りと鶴澤清志郎さんの激しい演奏が凄かった。