Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

歌舞伎座『杮葺落六月大歌舞伎 第一部』 3等B席上手寄り

2013年06月27日 | 歌舞伎
歌舞伎座『杮葺落六月大歌舞伎 第一部』 3等B席上手寄り

粒が揃ってなかなかに充実しておりました。

『鞘當』
不破@橋之助さん、山三@勘九郎さんともに姿良く二人の台詞の間もよくて幕開きに相応しい華やかさ。留女の魁春さん、間に入ってしっかりとした存在感。勘九郎くん、この拵えだとお父さんに雰囲気が似ますね。台詞廻しもそっくり。

『喜撰』
評判通り見ごたえがありました。

喜撰@三津五郎さん、軽妙洒脱で愛嬌たっぷり。たっぷり演じて品が落ちないのが見事。踊りのキレのよさにまろやかさが加わったと思う。今月の喜撰は絶品。

お梶@時蔵さん、姿の美しさとお澄ましな雰囲気がお梶にピッタリ。三津五郎さんとの息も合い良かった。

御曹司の面々、頑張っていました。

『俊寛』
鉄板の布陣での安定感ありすぎの俊寛だった。あの密度感は凄いです。

俊寛@吉右衛門さん、以前より場ごとの喜怒哀楽が激しい。仲間を思う懐の深さ、優しさを出したかと思えば妻を思うやりせない気持ちをストレートに出し、そしてご赦免での喜びよう。そして真実を知ってから絶望。その感情の落差が大きくその感情に観ている側が呑まれるような感覚でした。ラストの俊寛は達観ではなくひたすら絶望感だったように見えました。たぶんあの後すぐ死ぬんじゃないかしらと思わせた。

丹波少将@梅玉さんがかなり千鳥ラブな可愛らしい青年だった。今まではもう少しクールだったように思う。

千鳥@芝雀さんはいかにもな一途でおぼこな娘。おろおろしながらも反撃しちゃうところが可愛い。近頃とみにお父様の雀右衛門を連想させる。芸格がほんとうに上がったんだなあとしみじみ。でも体型が…もう少し絞って欲しいかも。

丹左衛門@仁左衛門さん、前回演じた時は少々腹に一物ありな黒いオーラをそこはかとなく感じさせましたが今回は爽やかに情味を見せる丹左衛門でした。決まりがなんとも美しい。かっこよかったです。

瀬尾@左團次さん、良かったです。無慈悲だけど理は通ってるところを明確に。殺されるのが可哀想になりました。

康頼@歌六さんはまとめ役としての距離感のバランス良し。

世田谷パブリックシアター『オセロ』 S席2階上手後方

2013年06月10日 | 演劇
世田谷パブリックシアター『オセロ』ソワレ S席2階上手後方

面白かった!劇場をキャパを活かした劇中劇の演出がまず面白かったです。私は2階から俯瞰しての観劇でしたが1階の客席は通路含めてかなり使うし観客が参加する場面もあって1階席のほうが色々と楽しいかも。音楽は弦楽器とアコーディオンのカルテットの生演奏。これがまた効いていました。あと缶の鳴らす音も効果的。原作に忠実ながら演出は少し抽象的な部分も。踊りが入るのだけど少しピナっぽい振り付けの部分があった。ピナを意識してるんじゃないかな。振付、だれだろ?と思いながら拝見していましたが井手茂太氏とのこと。

オセロ@仲村トオルさん、オセロには二枚目すぎるけど嫉妬にかられて狂気に陥る所はとても迫力がありました。また声が良く通り滑舌がいいですね。一番台詞が聴きやすかったですし舞台を引っ張っていく力があります。

デズデモーナ@山田優ちゃんは舞台表現の部分で少し拙い部分も感じましたがそこが初々さや可憐さに繋がり可愛かったです。

ロダリーゴ@水橋研二さん、今回拝見してて注目した役者さん。ロダリーゴはイアーゴに振り回される単純な男ですがどこかおかしいと感じてもついそこの乗ってしまう男の哀しさが醸し出されていました。

個人的にはイアーゴは白井さんに演じて欲しかったな。今回の内容的に白井さんのほうがしっくりきただろうな~と思いました。

この芝居、期待以上で拾いものでした。まだ役者さんたち、ちょっとこなれてない感があったのでこなれた後半を観たかったな~。

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世田谷パブリックシアター『オセロ』

日程:6/9(日)~6/23(日)
場所: 世田谷パブリックシアター
作:W.シェイクスピア
翻訳:福田恆存
構成・上演台本・演出:白井晃
振付:井手茂太
演奏:生駒祐子/波多野敦子/清水恒輔
出演:
オセロ:仲村トオル
デズデモーナ:山田優
イアーゴー:赤堀雅秋
エミリア:高田聖子
キャシオ:加藤和樹
ロダリーゴ:水橋研二
モンターノ:有川マコト
ヴェニス公/ロドヴィーコ近藤隼
ビアンカ:谷村実紀
ブラバンショ(デズデモーナ父)/グランシャーノ:白井晃