歌舞伎座『さよなら公演 納涼大歌舞伎 第三部』 3等A席中央センター
『お国と五平』
とってもイヤ~ンなお話。こういうお話は結構好きなので楽しめました。原作が谷崎潤一郎、いかにもでした(笑)。誰にも感情移入できないし、同情も出来ないけど、在りうる話よねとか、「今」のほうが通じる話ですねえとか思いながら観ておりました。一幕もので簡素な舞台装置、奥行きのある音の使い方など新劇ぽい演出がこの芝居には似合っていたように思います。
友之丞@三津五郎さん、今月の三津五郎さんのなかでは一番のお気に入りです。気の弱い優男風情に甘えたストーカー論理を滔々と語って、一瞬「まあ、わからなくもないけど」と騙されそうな気にさせる。自分の気の弱さを認めてしまう部分での爽やかな物言いと、未練がましい情けなお態度のギャップも面白かったです。個人的にはもう少しあっけらかんとした部分に、どこかもう少しの線の細い、底がみえない、どこか病的な部分を出してもらえるとお話のイヤ~ン度が高くなって好きなんですけどね(笑)。
お国@扇雀さんは、ちょっと細かく体を動かしすぎかな。最初からどこかベタッとした甘えた感じがあっていかにも男に頼りそうな雰囲気が見える。。前半、もう少し弱っていながらもいかにも武家の貞淑な女という雰囲気があったほうが後半ギャップがでて面白いと思うんだけどな。女のずぶとい感じはいかにも、という感じでそこは良かったです。
五平@勘太郎くん、今月のなかでは一番、彼らしい芝居で個性が出てたような気がします。いかにも忠義ものといった風情のなかに、肩肘はった若さがあって、そこの危うさがなかなかいい感じでした。
『怪談乳房榎』
この演目は初観劇です。期待していた方向と違っていたという部分でこれが個人的に残念でした。
早替わりを主に見せるだけの芝居になっていて、物語の面白さがなかなか伝わってこない。メリハリがないというか、一場一場ぶつぶつと途切れてどういう話なのか見えてこない。早替わりの技術は見事だったけど、その部分だけで引っ張った感が…。これはその趣向を楽しむ芝居なのかな?お話としては人のずるさや弱さがもたらす怪談話だと思うんだけど、それを体現する個々のキャラが弱まってしまっていて残念だった。
趣向を楽しむ芝居なんだと最初から判っていたら楽しみ方も違ったんでしょうが、私的には円朝さんの人間ドロドロな怪談噺の物語を楽しみにしてしまっていたのです。
勘三郎さん、小悪党の三次が一番、すっかりハマっていて、まあこれくらいなら勘三郎さんはお手の物でしょう。でも本来なら正助が一番良くないといけないはずなんだけど…。こういう、朴訥だけど小心者のゆえに流されて生きてしまうという役は得意だと思うのですが今回、上滑りしてました。菱川重信は少々存在感が薄かったですね。三役の演じ分けはかなり出来ていたとは思うのですが、個々のキャラクターの心持の部分まで突っ込んでの芝居ではなかったですね。でも早替わりをかなり多用しているので、深めて演じるだけの場面もないのだからしょうがないですよね。ラストのお楽しみ円朝役の口上は楽しくてよかったです。早替わりの部分でいえば、、本当に見事でした。ここで替わる、とわかっていても面白い、その早替わりの妙の部分しっかり見せてきていました。
ここからは戯言。個人的な印象だけで書きますが、このところ勘三郎さん本来の良さがうまく前で出てきてないなとい感じることが多い。トンネルに入ってしまっているであろう感じはここ数年感じているのだけど、それにしても、まだ光の方向がみえてない感じ。地力があるという部分はきちんと伝わってくるのだし、今の幹部連中もある時期何年かはジタバタしてた人が多いので長い目で見るべきなのでしょうね。
お関@福助さんの抑えた芝居がよかった。上品で綺麗な奥方でした。ただ、芝居上の関係なのか、磯貝浪江と無理矢理関係させられた後の描写がなく、子供を手放す行動が唐突すぎて、何を考えているのか今ひとつ見えないキャラクターになってしまっていたのが可哀相ではあった。しかし、こういう抑えた芝居も出来る人なのに、なぜ肝心な役で崩しちゃうんだろう~。
磯貝浪江@橋之助さんは今月は全体的に頑張っているという印象。 浪江では色悪のキャラクターを過不足なく演じていましたし、色気もありました。
小山三さんが茶店の女でご出演。90歳のお誕生日を迎えられたそうです。90歳とは思えないほど動きが若いです。ますますお元気で頑張っていただきたいです。
『お国と五平』
とってもイヤ~ンなお話。こういうお話は結構好きなので楽しめました。原作が谷崎潤一郎、いかにもでした(笑)。誰にも感情移入できないし、同情も出来ないけど、在りうる話よねとか、「今」のほうが通じる話ですねえとか思いながら観ておりました。一幕もので簡素な舞台装置、奥行きのある音の使い方など新劇ぽい演出がこの芝居には似合っていたように思います。
友之丞@三津五郎さん、今月の三津五郎さんのなかでは一番のお気に入りです。気の弱い優男風情に甘えたストーカー論理を滔々と語って、一瞬「まあ、わからなくもないけど」と騙されそうな気にさせる。自分の気の弱さを認めてしまう部分での爽やかな物言いと、未練がましい情けなお態度のギャップも面白かったです。個人的にはもう少しあっけらかんとした部分に、どこかもう少しの線の細い、底がみえない、どこか病的な部分を出してもらえるとお話のイヤ~ン度が高くなって好きなんですけどね(笑)。
お国@扇雀さんは、ちょっと細かく体を動かしすぎかな。最初からどこかベタッとした甘えた感じがあっていかにも男に頼りそうな雰囲気が見える。。前半、もう少し弱っていながらもいかにも武家の貞淑な女という雰囲気があったほうが後半ギャップがでて面白いと思うんだけどな。女のずぶとい感じはいかにも、という感じでそこは良かったです。
五平@勘太郎くん、今月のなかでは一番、彼らしい芝居で個性が出てたような気がします。いかにも忠義ものといった風情のなかに、肩肘はった若さがあって、そこの危うさがなかなかいい感じでした。
『怪談乳房榎』
この演目は初観劇です。期待していた方向と違っていたという部分でこれが個人的に残念でした。
早替わりを主に見せるだけの芝居になっていて、物語の面白さがなかなか伝わってこない。メリハリがないというか、一場一場ぶつぶつと途切れてどういう話なのか見えてこない。早替わりの技術は見事だったけど、その部分だけで引っ張った感が…。これはその趣向を楽しむ芝居なのかな?お話としては人のずるさや弱さがもたらす怪談話だと思うんだけど、それを体現する個々のキャラが弱まってしまっていて残念だった。
趣向を楽しむ芝居なんだと最初から判っていたら楽しみ方も違ったんでしょうが、私的には円朝さんの人間ドロドロな怪談噺の物語を楽しみにしてしまっていたのです。
勘三郎さん、小悪党の三次が一番、すっかりハマっていて、まあこれくらいなら勘三郎さんはお手の物でしょう。でも本来なら正助が一番良くないといけないはずなんだけど…。こういう、朴訥だけど小心者のゆえに流されて生きてしまうという役は得意だと思うのですが今回、上滑りしてました。菱川重信は少々存在感が薄かったですね。三役の演じ分けはかなり出来ていたとは思うのですが、個々のキャラクターの心持の部分まで突っ込んでの芝居ではなかったですね。でも早替わりをかなり多用しているので、深めて演じるだけの場面もないのだからしょうがないですよね。ラストのお楽しみ円朝役の口上は楽しくてよかったです。早替わりの部分でいえば、、本当に見事でした。ここで替わる、とわかっていても面白い、その早替わりの妙の部分しっかり見せてきていました。
ここからは戯言。個人的な印象だけで書きますが、このところ勘三郎さん本来の良さがうまく前で出てきてないなとい感じることが多い。トンネルに入ってしまっているであろう感じはここ数年感じているのだけど、それにしても、まだ光の方向がみえてない感じ。地力があるという部分はきちんと伝わってくるのだし、今の幹部連中もある時期何年かはジタバタしてた人が多いので長い目で見るべきなのでしょうね。
お関@福助さんの抑えた芝居がよかった。上品で綺麗な奥方でした。ただ、芝居上の関係なのか、磯貝浪江と無理矢理関係させられた後の描写がなく、子供を手放す行動が唐突すぎて、何を考えているのか今ひとつ見えないキャラクターになってしまっていたのが可哀相ではあった。しかし、こういう抑えた芝居も出来る人なのに、なぜ肝心な役で崩しちゃうんだろう~。
磯貝浪江@橋之助さんは今月は全体的に頑張っているという印象。 浪江では色悪のキャラクターを過不足なく演じていましたし、色気もありました。
小山三さんが茶店の女でご出演。90歳のお誕生日を迎えられたそうです。90歳とは思えないほど動きが若いです。ますますお元気で頑張っていただきたいです。