日生劇場『二月大歌舞伎 夜の部』 1等席1階前方センター
3回目の観劇です。初日から舞踊も芝居もかなり完成度が高かったように思いますが後半にいくにつれやはり確実に引き上げてきますね。また観客によっても雰囲気が違ってくる。舞台は生ものだとつくづく思います。
『吉野山』
凛とした爽やかはそのままに華やかさが増してとても見応えのある舞踊になっていました。また場の情景描写のクリアさ、わかりやすさには本当に感嘆します。この舞踊で新たな発見があるとは!
忠信(源九郎狐)@染五郎さん、緩急の効いたキレのある舞踊が日々進歩しているのだろうな思いました。主を敬う従者としての忠信、武将としてに勇壮さのある忠信、そして狐が底の潜む忠信、くるりくるりと表情を変えながらも忠信としての実感がある。また基本に忠実にしっかりと踊るという部分の他に従来のしなやかさを取り戻してきたと思いました。今回、染五郎さんの舞踊の感覚が本来のとこまでようやく戻ってきていると思いました。しなやかでキレのある独特の間合いでの「あ、そう染五郎さんの踊りはこれ!」ってところを今日は感じました。そしてやはり染五郎さんの踊りは色ぽいです。ふんわりした色気ではなく撓るような色気。
ご自身がマイナスからのスタートとおっしゃっていましたが確かにそうだったのでしょう。改めてリハビリかなり大変だったんだろうなと思いました。初日の忠信によくぞここまで回復させたって思ったんですが今回はほんとに染五郎さんの踊り手としての復帰の第一歩が出た気がしました。
『通し狂言 新皿屋舗月雨暈』
座組みのバランスの良さとアンサブルの良さで見応えのある芝居となっていました。ベテラン役者の深い味わいと地力がついてきた中堅・花形の勢いのある味わいの組み合わせがとても良い方向に向いていたと思います。皆さん活き活きと演じてらしてとても楽しかったです。
宗五郎@幸四郎さんは前回演じた時と比べものにならないほど今月とっても良かった。前回と何が違うんだろう。緩急の上手さだけじゃないと思う。今回は酔いの部分に説得力があったんだと思う。ほんと酒の匂いが全身から漂ってくるかのようだった。そしてぐっと押さえられた底にある深い深い哀しみがふとしたことで表出する。懐の深い芝居とでも言うのでしょうか、宗五郎という人物像に説得力がありました。
お蔦/おはま@福助さんはどちらのお役も本当に良かったです。このところ一皮剥けた感がありましたが役者として一段上に登られた気がします。女性としての切ない部分や可愛らしい部分を表層ではなく芯のところで演じられるようになったのではないかな。余計な装飾がなくても人物像の説得力を持たせられるようになっていますし今の福助さんには余計な装飾はもういらないでしょう。
主計之助@染五郎さんはこういう役の時は線が細くなりがちでしたがだいぶ輪郭が太くなってきたように思います。主計之助の酒乱のための短絡も鬱積した前段階があるという部分をしっかり見せてきましたし、そのうえでタチの悪い酔いでの冷酷さも迷いなく明確に演じてきていました。染五郎さんは弱い人間をてらいなく演じられるのですよね。お蔦を切り捨てて刀を見ながら極める場はどことなく『籠釣瓶』の次郎左衛門を連想させました。
3回目の観劇です。初日から舞踊も芝居もかなり完成度が高かったように思いますが後半にいくにつれやはり確実に引き上げてきますね。また観客によっても雰囲気が違ってくる。舞台は生ものだとつくづく思います。
『吉野山』
凛とした爽やかはそのままに華やかさが増してとても見応えのある舞踊になっていました。また場の情景描写のクリアさ、わかりやすさには本当に感嘆します。この舞踊で新たな発見があるとは!
忠信(源九郎狐)@染五郎さん、緩急の効いたキレのある舞踊が日々進歩しているのだろうな思いました。主を敬う従者としての忠信、武将としてに勇壮さのある忠信、そして狐が底の潜む忠信、くるりくるりと表情を変えながらも忠信としての実感がある。また基本に忠実にしっかりと踊るという部分の他に従来のしなやかさを取り戻してきたと思いました。今回、染五郎さんの舞踊の感覚が本来のとこまでようやく戻ってきていると思いました。しなやかでキレのある独特の間合いでの「あ、そう染五郎さんの踊りはこれ!」ってところを今日は感じました。そしてやはり染五郎さんの踊りは色ぽいです。ふんわりした色気ではなく撓るような色気。
ご自身がマイナスからのスタートとおっしゃっていましたが確かにそうだったのでしょう。改めてリハビリかなり大変だったんだろうなと思いました。初日の忠信によくぞここまで回復させたって思ったんですが今回はほんとに染五郎さんの踊り手としての復帰の第一歩が出た気がしました。
『通し狂言 新皿屋舗月雨暈』
座組みのバランスの良さとアンサブルの良さで見応えのある芝居となっていました。ベテラン役者の深い味わいと地力がついてきた中堅・花形の勢いのある味わいの組み合わせがとても良い方向に向いていたと思います。皆さん活き活きと演じてらしてとても楽しかったです。
宗五郎@幸四郎さんは前回演じた時と比べものにならないほど今月とっても良かった。前回と何が違うんだろう。緩急の上手さだけじゃないと思う。今回は酔いの部分に説得力があったんだと思う。ほんと酒の匂いが全身から漂ってくるかのようだった。そしてぐっと押さえられた底にある深い深い哀しみがふとしたことで表出する。懐の深い芝居とでも言うのでしょうか、宗五郎という人物像に説得力がありました。
お蔦/おはま@福助さんはどちらのお役も本当に良かったです。このところ一皮剥けた感がありましたが役者として一段上に登られた気がします。女性としての切ない部分や可愛らしい部分を表層ではなく芯のところで演じられるようになったのではないかな。余計な装飾がなくても人物像の説得力を持たせられるようになっていますし今の福助さんには余計な装飾はもういらないでしょう。
主計之助@染五郎さんはこういう役の時は線が細くなりがちでしたがだいぶ輪郭が太くなってきたように思います。主計之助の酒乱のための短絡も鬱積した前段階があるという部分をしっかり見せてきましたし、そのうえでタチの悪い酔いでの冷酷さも迷いなく明確に演じてきていました。染五郎さんは弱い人間をてらいなく演じられるのですよね。お蔦を切り捨てて刀を見ながら極める場はどことなく『籠釣瓶』の次郎左衛門を連想させました。