Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

江戸川区総合文化センター『松竹大歌舞伎 東コース夜の部』 S席

2007年06月30日 | 歌舞伎
江戸川区総合文化センター『松竹大歌舞伎 東コース夜の部』 S席

『玉兎』
染五郎さん、とにかく丁寧にかっちりと。わかりやすい舞踊ですがひとつひとつ情景をきちんとみせてきていました。もう少し柔らか味が加わるといいと思う。

『仮名手本忠臣蔵』「祇園一力茶屋の場」
吉之助さんの前説が付きます。『仮名手本忠臣蔵』全般、「祇園一力茶屋の場」までの流れをおおざっぱに。

そして開幕、なんですがこれがかなりの短縮ver.で、鷺坂判内と斧九太夫が祇園から帰ろうとする場面から。これでは由良之助と寺岡平右衛門の人物関係がわからないし、後半の彼らの心情に観客が沿うのが難しくなる。この前半部分、どうにかして見せられないのかな~。芝居を見せないまでも前説で説明してもいいと思う。

吉右衛門さんの由良之助、かなりたっぷり気持ちを見せてきます。前半の九太夫とのくだりがないのが残念です。二月歌舞伎座での由良之助より、今回のほうがいかにも由良之助らしく感じました。とても良かった。

芝雀さんのお軽、頑張ってました~。だいぶ痩せたせいか2階から手鏡で手紙をよむシーンでの風情でみせる部分をかなりきちんと見せていたのが嬉しい。遊女としての色気がもう少し欲しいかなとかは思いますが可愛らしかったです。ただ、まだまだ段取りを追ってます感があって台詞廻しが少々平坦、もっとメリハリが欲しいです。ただ、芝雀さんのお軽は勘平一筋、そのためだけに生きているといういじらしい部分が明快で、こなれてくるとかなり良くなるのではと思う。

染五郎さんの平右衛門、習ったことを確認しながら、という感じでまだまだ段取りをこなしてるという感じ。特に前半、まだまだ。最近仁左衛門さんの平右衛門の芝居を観たばかりなのでなおさら、足りない部分がよく見えちゃう。しかしそのなかでもお軽とのやりとりのなか平右衛門の苦悩はしっかり見せてきて、こういうとこはやはり上手いなあと。まあ義太夫のノリが思った以上にかなり良かったので後半が楽しみです。しかし声がキツそうだったのが難点。六月の歌舞伎座では喉を痛めてながらもだいぶ安定させてきていたので、平右衛門の声のコントロールを早めにマスターして安定させていってほしい。

『太刀盗人』
九郎兵衛の歌昇さんと万兵衛の高麗蔵さんがしっかりと見せてとっても楽しかったです。踊り上手な二人ですから観てて楽しいし、気持ち良い。種太郎くん、重要な役で出てましたがまだまだ若いね、な感じです。羽目物は難しいですね。でも可愛かったです。吉之助さんの目代がかなりいい感じでした。

歌舞伎座『六月大歌舞伎 夜の部』 1等1階前方花道寄り

2007年06月26日 | 歌舞伎
歌舞伎座『六月大歌舞伎 夜の部』3回目 1等1階前方花道寄り

歌舞伎座千穐楽です。夜の部は23日(土)に観た時にかなり感動したので、その感動をそのまま持っていたくて、今回わざわざ千穐楽を取らなくても良かったかな?と思っていたのですが、いやいや、観に来て良かったです!役者さんたち、テンションMAXだったんじゃないかなあ。なんだかすごい「熱」を発してました。

『御浜御殿綱豊卿』
とにかくこれが凄かった。仁左衛門さん、染五郎さん、芝雀さんのテンションが凄いことになっていました。それが綱豊卿、助右衛門、お喜世それぞれの「情熱」として伝わってきて、圧倒させられちゃいました。

仁左衛門さんの綱豊卿って、心底孤独な人なんだな、赤穂浪士へのシンパシー、武士としての生き様に拘るのはその裏返しの情熱なんだなって今回、すごくそう思いました。そして頭が良すぎるからこその放蕩かなと。 それにしても台詞廻しの細やかな部分まで神経がいっていて、緩急が豊か。仁左衛門さん、渾身の芝居でした。

染五郎さんの助右衛門、その熱い仁左衛門さんへの食らい付きっぷりがお見事でした。助右衛門の赤穂の殿様への想い、仲間への想い一筋にただひたすらにその道を信じて疑わない、その情熱。綱豊卿と助右衛門の丁々発止の緊迫感たるや。ぐぐっと空気が凝縮していき、空気がピーンと張り詰めていくのが見えるようでした。

この男二人だけの世界になりそうなところに芝雀さんのお喜世の存在がしっかりとありました。お喜世にも彼女の情熱があるのだ、ということが今回よく見えた。そして綱豊卿への想い、助右衛門への想いがまったく違う、という部分が明快。助右衛門に対して、あくまでも「同士」であり親しきなかにも、というところがハッキリ。そして綱豊卿へは愛人としてお喜世なりに一途に守ろうとする気持ちが垣間見える。

『盲長屋梅加賀鳶』
『御浜御殿綱豊卿』を真剣に見すぎて相当、神経を使ってしまったので割とゆるゆるな観劇になってしまいました。

「本郷木戸前勢揃い」では歌六、歌昇兄弟がやっぱ上手いなあとか思いながら見てました。種太郎くんの顔がすんごいこわばってました(笑)男女蔵さんは痩せたような気がしますが?愛之助さんは白塗りの役じゃないほうが個人的には良かったなあ。

やっぱり「伊勢屋店先の場」から俄然楽しくなってくる。この場、幸四郎さん、吉右衛門さん、秀太郎さんがとっても楽しそうなのよね(笑)つい、ワクワクしてきちゃう。幸四郎さん、かなり小汚い道玄で、凄みを利かせつつなお間抜け感が良い。秀太郎さんの憎めない可愛らしい悪女ぶりもいいなあ。吉右衛門さん、幸四郎さんをやっつける役、気持ちいいんだろうなあ、とか。気持ちよさそうに台詞言っているように感じます(笑)

「赤門捕物の場」はアンサンブルがよく、そのコミカルさにとにかく笑って観ていられる。ここは前回の幸四郎さんが演じた道玄から一番ブラッシュアップされた場じゃないかな。ここ、今回かなり盛り上がるようになっていた。

『船弁慶』
染五郎さんの静御前が凄く良くなっていました!!23日(土)の時にようやくこなれてきて、だいぶ良い感じになったと思ったんだけど、千穐楽でかなり化けたと思う。体の使い方が、もうまるで違うんですよ。もっと前に化けて欲しかったなあ。

全体的にしなやかにゆるりと舞って非常に艶やかで華やか。そしてその華やかさのなかに静御前の義経への恋慕、そして離れなければならない哀切が体の芯のなかに秘められている。あっそうかこの時、静御前は身ごもっているんだ、というのが垣間見えました。贔屓目とか、そういうことではなく個人的にこれって凄いことだな思いました。染五郎さんは『船弁慶』のなかでは知盛より静御前の踊りのほうが好きらしいのですが、その思い入れをきちんと表現できるようになった、と思います。ほんとに感動してしまいました。 静御前が去った後もその哀しい気持ちが舞台上に残り漂ってるかのようでした。

そして後シテの知盛。やはりひとつひとつが大きい。そして今回、実態のない「気」を表現しようとしているのか、空気を包み込みような音をほとんど出さない踊りでした。そしてなんとなく感じてはいたけど、今回、ハッキリみえたのは哀しみです。恨みというよりは哀しさがあるように見えました。染五郎さんの今回の知盛は、恨みでギラギラしたものが余りないのです。大阪松竹座で演じた時は凄まじい恨みの気を発していたのですが今回はその恨みは心の奥底に沈められている。その澱のようなものは見えるのですが、それよりなによりどこか「哀しみ」を湛えている。23日まではもっと妖気、怨霊としての恨みの気が欲しいと思っていましたし、前シテと後シテの落差としてもそのほうが面白いと思ってたんですけど。だけど、今回、静御前と知盛は表裏一体なんじゃないかと、チラッと思ったりもしました。

なぜ知盛の亡霊が現れたのか?静御前の哀しいまでの義経への想いに呼応したんじゃないかと。義経と別れたくない、行かせたくない、その気持ちが平家一族の滅亡を見届け、哀切と共に海に沈んだ知盛を呼び寄せた。今回、前シテ、後シテが表裏一体な部分があるのでは、と思わせました。歌舞伎の『船弁慶』は演じ分けの面白さを見せるものだと思うのだけど…。でもなんだかとっても切なくて、これはこれでジーンと心に響いてきたのです。

それにしても花道の染五郎さんの大きさはなんだろうね。あの歌舞伎座の花道をすごく短く感じさせる。ゆらりと海の上を去っていく様、そして渦と共に去っている様が情景としてみえました。回転が楽のせいか多かったような気がしますが、その勢いのよさのなにも「哀しみ」の余韻がありました。私の錯覚、でなければ、染五郎さん独自の『船弁慶』をこれから形作っていけるんじゃないかと思った一瞬でした。

歌舞伎座『六月大歌舞伎 昼の部』 3等A席東袖

2007年06月24日 | 歌舞伎
歌舞伎座『六月大歌舞伎 昼の部』2回目 3等A席東袖

『妹背山婦女庭訓』
シンメトリーな舞台を楽しむにはセンター席を取るべきだったのに、昼夜を間違えて取ってしまったお席でした。東袖って下手が四分の一程度が見切れるのよね。大判事と久我之助親子のやりとりの見所の部分が微妙に見切れるのが哀しい。そんな環境の観劇でしたが3階のそんな席から観ても素晴らしいものは素晴らしい。

今日も前回同様、後半ダダ泣き状態。もう切ない、切ない。藤十郎さんの定高の「母」が背負った業と「女」の強さが哀れで切ない。幸四郎さんの大判事の「男」としての筋の通し方と「父」としての弱さもやっぱ切ない。なんというか、背負うものがこの二人から見えてくるんですよね。そこに端正で真っ直ぐな若々しい久我之助の梅玉さん、雛菊の魁春さんが絡むのだもの、見応えありまくり。吉野川の後段は舞台と客席の感情が一体化してるような感じすらありました。定高と大判事に入り込み哀しみを共有するといった感覚といいますか。はあ、いいもん観ました。

『閻魔と政頼』
すいません、すいません。一応起きてはいたけど、気分的に休憩モードでした。だって泣くと疲れるんだよ。一幕目が重すぎたんだよ~。

『侠客春雨傘』
きゃ~、染五郎さん素敵。ストーリーがあるようで無いような内容のものだから思いっきりミーハーモードの観劇。花道での立ち姿が綺麗だわ、うっとり。貫禄も付いてきたかなあ。ため息ものです。

でもそしてやっぱり、いっくん登場にやられてしまうんですが(笑)ほんと可愛い。客席が全員親戚のおばさん、おじさん化してるし。何やっても可愛いんだもんね。今日の齋くん、幸四郎さんに手を引かれ花道では下を見ながら、時々お客さんのほうをこっそりみてる感じで歩いてきました。口がもぐもぐ動いています。たぶん、幸四郎おじいちゃまに餌付けされたんと違う?と思われ。観劇仲間からの報告によるとここ数日、もぐもぐさせてることが多いようです(笑)出る前に好物のお菓子でも口に放り込まれて機嫌よくさせてるんじゃなかろうか?と。

そして齋くん、本舞台に入った時はもうご機嫌なわけです。ペコリとするお辞儀もだいぶサマになってしました。今日は本舞台中央で幸四郎おじいちゃまに何かをおねだりしている。なんだろう?と思ったらそれは扇子。受け取ると満足そう。おっ、やる気満々?おじいちゃんのご挨拶中は染パパをやっぱりガン見。それから目尻がいつも以上に下がってる梅玉さん仁左衛門、吉右衛門さんもガン見。

さて、そしてやりました!いっくんの弁慶(のつもり)の飛び六方。ツケとお囃子物付きで、本格的にやりました!腕をあげ、首をクイクイッとして見得(のマネ)それから足を上げてバタバタッと六方(のマネ)、そしてラストにもう一度、クイクイッと見得。ちゃんと弁慶の雰囲気が出てるのがすごい。可愛すぎる~~~。観客も思わず、手拍子で応援しちゃってました。

歌舞伎座『六月大歌舞伎 夜の部』 1等1階前方センター

2007年06月23日 | 歌舞伎
歌舞伎座『六月大歌舞伎 夜の部』2回目 1等1階前方センター

『御浜御殿綱豊卿』
前回同様、まずは錦二郎くんチェック~。あら、目の前にいた(笑)一生懸命綱引きをやってました。顔の拵えはまあまあってとこかな?女形の顔に成りきってない感じ?

今回、仁左衛門さんの綱豊卿と助右衛門@染五郎さんがかなり前のめりな芝居。仁左衛門さんと染五郎さん、なんでそんなに熱いわけ?ってくらい熱かったです。なんというか思い入れがすごいことになっていました。役にのめりすぎてません?大丈夫?と心配したくなるくらい。でも観ているうちにこの二人の熱気に巻き込まれてしまいました。お互いの立場の違い、思惑のすれ違いによるいらだちがヒートアップ。男泣きの世界になってました。

仁左衛門さん@綱豊卿は感情豊かで情に厚くそして繊細。知性の鋭さと無邪気さが同居している。台詞廻しの緩急が前回以上に細かく、たっぷりと聴かせる。また今回は、綱豊卿の心持ががかなりストレートに出てて、助右衛門との丁々発止が熱い、熱い。助右衛門とのやりとりは、自らの孤独を図らずも意識させられてしまった瞬間であったかもしれない。その哀しみが伝わってきた。

助右衛門@染五郎さんもかなり白熱。全身全霊で綱豊卿に向かっていく。頑固一徹に若者らしい情熱と仲間への思いを身に纏い、綱豊卿の駆け引きに負けじと応戦。そしてまた、自分の気持ちをぶつけるだけではない、綱豊卿の気持ちをどうにかして汲み取ろうとする素直さがあって真っ直ぐな思い込みの短慮さすら清々しいほど。命懸け、だからこその熱い思いが伝わってくる。綱豊卿に突き放された、その瞬間の声にならない慟哭。

お喜世@芝雀さんも二人につられてか熱かった。控え目にじっとしてはいるものの二人のやりとりをしっかり聞いている。 助右衛門の憎まれ口を聞く度に、ハラハラドキドキ、まあなんてこと、という気持ちが伝わってくる。待っている時の風情に存在感が出てきたなあと思う。また少しほっそりしたか、とっても可愛らしかったです。

『盲長屋梅加賀鳶』
9日に観た時よりかなりこなれてました。やっぱり世話物の感じはしないかなあ。幸四郎さん、道玄のような単純な小悪党はニンじゃないかなと思ったり。でも飄々と楽しそうに演じられていて、観ているうちになんだか面白いには面白いなあっては思ってしまう。幸四郎さん@道玄と吉右衛門さん@松蔵の兄弟対決のやりとりがやっぱり一番面白い。やりとりの間とかが絶妙なんですよね。そこだけ会話が凝縮される感じがあります。それと赤門前の捕り物のとこが楽しい。

お兼の秀太郎さんが可愛い悪女。したたかでどうしようもない女なんだけど、どこか憎めないお兼でした。

『船弁慶』
贔屓目が入ってるとは思うけど、染五郎さんの静御前が相当な進歩。柔らか味がかなり出てきたし静の哀しみを湛えた情感が前に出てきたと思う。それと静の押さえた踊りのなかに白拍子らしい華やかさが出てきたなあと。知盛のほうは恨めしさを体に溜め込んでる感じ。心の奥底の澱に突き動かされて、って感じでしょうか。亡霊の凄みや異様さはまだまだですね。大きさはやはりあります。ひとつひとつの踏み出しが大きい。今回は花道での引っ込みにかなり迫力が出てました。鳥屋の前ですんごい回りっぷりでした。まさしく渦のなかに消えていく感じ。 迫力満点。観ているこちら側のボルテージが一気に上がってしまいました~。

幸四郎さんの弁慶はかっちりと演じていて品格、大きさともに文句なし。

芝雀さんの義経に公達らしい品格が増してきた。台詞廻しにきっぱりとした芯を感じさせるようになってきたと思う。またこの方の持ち味である優しさが終始感じられるのもいい。

芝雀さんの後見をしていた京珠くんがかなり体の使い方が上手くなってきたなあ。前はバタバタしてて悪目立ちしてたけど、もうそんなことはない。にしても幸太郎さん、錦弥さん、錦一さんの素早い動きと姿勢の美しさにはいつも惚れ惚れ。

渋谷コクーン『三人吉三』夜の部 1等椅子席センター

2007年06月21日 | 歌舞伎
渋谷コクーン『三人吉三』夜の部 1等椅子席センター

コクーン歌舞伎『三人吉三』を観に行きました。お席は椅子席で列、席番ともにほぼセンター。臨場感には若干欠けますが全体を観るには良いお席です。平場のほうが楽しそうではありますけど腰が弱い私は平場は最初から敬遠。

今回、つくづく思ったのは「芝居小屋」の大きさはやはりこのくらいのキャパが良いんだろうなあ、ということ。金丸座もだいたい同じ大きさですよね。観客を芝居の熱に巻き込むにはこのくらいがBestだろうなと。役者の、芝居自体の意図するものを肉眼でハッキリと感じさせるにはちょうどの大きさ。これ以上の大きさだと熱は拡散しがち。一点に集中させることはかなり難しいだろうと。歌舞伎座や国立大劇場での芝居の時間の流れがまったり見えるのはあの小屋の大きさのせいもあるんじゃなかと。今の歌舞伎のいわゆる通常の演出の歌舞伎も700名程度の小屋でやればかなり濃密に感じるだろうなとそう思ったのでありました。

ええっと、すいませんね、本題になかなか入らなくて。コクーン歌舞伎『三人吉三』感想はどうなんだ?と(笑)まずは黙ちゃん萌え再び。黙阿弥は七五調の台詞の心地よさが売りの戯曲作家とよく言われていますが、私は物語作家として黙阿弥が好きです、ええ。今でいうとノワール系作家ですね。私のイメージ的に黙阿弥は仏ノワール系。大南北は米系かなとか思ったり。

黙ちゃん萌え、になったのは串田演出がかなりテキストに忠実にほぼ正統派な演出をしてきたからです。正統派ってなんだ?と言われたら、正直答えられない自分がいますが。奇をてらってない、テキストを守ってる、歌舞伎役者の持ち味をそのまま活かしているという部分で、かな。

そして、この『三人吉三』という物語を見せるという部分で、今回たぶん一番に「中村勘三郎一座」の役者バランスが良かったんだろうとも思いました。今回配役が絶妙。主要な役を肉親で固めたことによる独特の空気感が、近親相姦、因果応報といったキワードを持つ『三人吉三』をなおいっそう面白いものにしてきたと思います。

勘太郎くんの十三郎、七之助くんのおとせの配役が、まず兄弟でやっていることだけですでにどこか背徳な雰囲気を漂わせ、顔の似通ったものを観客が見出していける部分で、相当効果的であったと思う。また、この二人がいわゆる芝居上手な部分をきっちり見せて、十三郎、おとせの兄妹の物語をしっかりと見せ切ったところに感心した。勘太郎くんは勘三郎さんにかなり似てきたと思う。七之助くんは兼ねる役者を目指すのではなくきちんと女形を目指したらどうだろう。

そして福助お嬢と橋之助のお坊が、やはり兄弟ということで、物語上での兄弟分として惹かれあう「絆」がそのまま表に表れる。そこにもってきて、まさしく兄貴分の勘三郎さんだものね。芸の上で、かなり突出している、というところでも「兄貴分」だし。

ただ、いつもだと勘三郎さん一人勝ちになりそうなところが、今回は和尚、お坊、お嬢のバランスがそれほど崩れていなかった。勘三郎さんの吸引力が夜の部でお疲れか多少薄まっていたように思う。ただ、姿のよさ、感情表現の独特の上手さはやはり見事だ。特に吉祥院での肉親殺しの慟哭は素晴らしいものがあった。

その勘三郎さんに福助さんがかなり拮抗した部分を見せたような気がする。この人のアクの強さがお嬢吉三というどこか異質なキャラクターにうまくハマっていた。そして何より、七五調の台詞回しの謳いあげが上手いこと!単に謳いあげてるわけじゃなく、きちっとそこに感情が入ってる。そしてラストの立ち回りのイッちゃった弾けようが、少年性を帯びていてかなり面白かった。結構、私的ツボなキャラで好き。うーん、私、自分が思っている以上に福助さんが好きなんだわ、たぶん。

橋之助さんはこの二人に比べると少々物足りない部分があった。姿形、声ともにニンだし、過不足はないように思うのだけど、私にはもう少し色気と情感が欲しかった。

そして今回、一番重要だったかもしれない土左衛門伝吉役に、歌舞伎役者ではない笹野高史さん。台詞廻し、体の使い方が歌舞伎役者とはやはりかなり違う。しかし、かなり台詞の言い廻しを工夫もしてきたのだろうけど、違和感なく溶け込んでいた。だけど、どこか決定的に違うものもみせてきた。土左衛門伝吉が生きてきた道筋が体に入ってる。なんというか緩急のつけ方が独特。張った台詞廻しじゃないからこそ鋭く聞こえる言葉に重みがありました。

芝居演出の面では照明がとても良かったです。特に闇の使い方と水のゆらめきの部分が秀逸。芝居に陰影の深みが出る。

音楽の部分はかなり中途半端に感じました。芝居途中、時々エレキギターの音が入るのですが相当、邪魔。聞く側の気持ちが途端崩れてしまう。それとラストの林檎嬢の歌も私には邪魔にしか思えなかった。カテコの曲は楽しくて好きです。ロックを使いたいなら邦楽の下座をよして全編ロックで統一するくらいのことまでやらないとと個人的には思います。

さて、私は串田演出作品、生観劇は今回で4回目。んで、なんといいますか、「面白い」とは思うんだけど私の琴線には触れてこない演出家だったわけです。そして残念なことに今回も「面白い!」とは思ったのだけど、今までの串田演出のなかではダントツに好きなんですけど…、気持ちが粟立つとか昂揚するという感覚としてはどこか物足りないものでした。

たぶんラストの場にカタルシスを見出せなかったということだと思われ。あそこ、盛り上がるとこだと思うんだけど、なぜか役者が前に出てこないのね、なんか小さく見えちゃうの。なんだろな~。和尚、お坊、お嬢の切羽詰った感が、ハッキリ見えてこなかった。これは今回の芝居の流れの演出がこの三人に焦点を当ててないせいだと思う。思い入れは土左衛門伝吉と十三郎、おとせにある。だから、どこか取ってつけたようなそんな感じがしてしまうのだ。それと大量の雪の使い方は面白かったけど立ち回りが平面的すぎる。

串田演出作品を4本観てすべてで、「どこか物足りない」と思うということは、串田演出がどうというより、私の感覚の問題だとしか言いようが無いですね。従来の歌舞伎演出での『三人吉三』のほうが気持ちが昂揚するんですよね。なんでだろ。観客にはかなり不親切な、役者本位の演出なんですけどね。

歌舞伎座『六月大歌舞伎 昼の部』1等1階席前方上手寄り

2007年06月16日 | 歌舞伎
歌舞伎座『六月大歌舞伎 昼の部』1等1階席前方上手寄り

『妹背山婦女庭訓』
今回、「吉野川」の前に「小松原」「花渡し」の段が付くので話の流れがとても判りやすいです。やはりある程度は通して芝居をしてくれたほうが良いなあと今回つくづくと思いました。

昼の部はこれが本当に素晴らしかったです。こんなに面白かったんだっけ?と思いました。いやあ、これは参りました。とにかく藤十郎さんの定高が絶品です。私のなかではかなり決定版かも。私、藤十郎さんの丸本物の品格ある女性のお役は相当好きかもしれません。気持ち本位と型のバランスがピッタリ。今の藤十郎さんだからこその定高なのかもしれません。今まで藤十郎さんは少々苦手で上手いとは思いつつ少し感情過多かなあと思っていたんですけど。ハラの部分が非常に深くて、芝居の濃さがとてもいいように出てると思う。

それでこの藤十郎さんの定高に、久我之助の梅玉さん、雛鳥の魁春さん、大判事の幸四郎さんのバランスがまた良かった。

梅玉さんの品のある若々しい真っ直なところ、魁春さんのなんともいえない可愛らしい恋心がいいです。藤十郎さんと幸四郎さんの二人の濃い芝居をしっかり受け止めて返す。うん、見事。

久我之助はまだファンになる前だったけど染五郎さんのがとーっても好きで、今でもまたやって欲しいんだけど、今回に関しては梅玉さんで正解だったかも。今回の梅玉さんの久我之助には一途な頑固さと若者らしい純な優しさがありました。

そして魁春さんがビックリの可愛らしさ。顔はいつものお顔なんですけど、なんか松江時代を思い出しちゃった。雛鳥の純な恋心を体全体で発していてとても若々しく本当に可愛かったです。

そして、前回(1999年)実はあんまり感銘を受けなかった幸四郎さんの大判事。前回は全体的にどこか弱かったのよね。でも今回はすごく良かった。なんというか大判事のハラがしっかり入ってた。不器用で頑固なおやじだけど、心根は優しい、という部分がしっかりあってとってもいい味わい。また藤十郎さん相手だから芝居の濃さが非常にいいバランスで。芝居上手な部分が活かされた。(にしても今月の幸四郎さん白鸚さんにソックリ!)

吉野川を隔てた定高と大判事のやりとりは見ものですよ。そしてその後の4人による壮大な愁嘆場がすごいすごい。2時間もあっただなんて思えないほど濃密で緊迫感のある時間でした。もう涙がボロボロこぼれてしまいました。


『閻魔と政頼』
吉右衛門さんの新作狂言。まあなんというか他愛もない一幕。それこそ「微妙~」(笑)でまだ練れてない感たっぷりですけど、まあそこそこ楽しいし前の幕の『妹背山婦女庭訓』がかなり重い演目なので軽くてちょうどいいかも。土日のみ出演の鷹之資くんが後見で出てました。笑いに一幕買ってました。

『侠客春雨傘』
暁雨の染五郎さん、カッコイイ~~~。すっきりとした男前。大人な魅力がありましたわぁ。立ち姿がほんまに綺麗やわぁ。声は良くはなってる感じだけど時々掠れたり、ちょっと安定しない部分もあったかな?なんとなく緊張してるかなと感じた。やはり齋くんのことが気が気でないんでしょうねえ。にしても染ちゃんの助六も見たいものだ。

んで、一気に客席の関心を持っていってしまうのが初お目見えの齋くん。可愛い、ほんとに可愛い。なんですか、あれ。おば様方のハートめろめろですよ。今日は少々、注意力散漫系?花道の途中から草履が気になったのか下を気にしながらテクテク。でも七三でちゃんとお辞儀。「へこっ」て感じのお辞儀なのがまた可愛い。中央に出てからは(幸四郎さんたち大人のご挨拶中)、なんかヘンな動きをしてるのよね(笑)胸をつきだしたり、羽織の房をいじって手をあげたり、仕舞いには余所向いて染とうたんをガン見。染とうたん、表情変えずに齋くんとにらめっこ状態です。齋くんの負け?で途中から今度は梅玉さんや仁左衛門さんをガン見。 梅玉さんと仁左衛門さんは幸四郎おじいさんに負けず劣らず目尻下がりっぱなしです。可愛くてしょうがないって雰囲気で、このお二人の子供好きな面が出てました(^^)。吉右衛門さんはちょっと心配そうにでもおだやかにニコニコされて一族の子を見守るって感じでした。

それから、齋くんは幸四郎おじいちゃんに「お参りする時どうするの?」と問われ、手をパンパンしてお辞儀して「がんばるじょ~!」のはずが、やってくれない。んで、また謎の胸つきだしポーズ(笑)おじいちゃん、諦めてお客さんに解説。「ほんとはお辞儀して頑張るぞーをやる予定だったんですが、今、齋がやってるのは「勧進帳」の六方をマネてるつもりなんです。この子が弁慶をやるのはあと20年後だと思いますが(^^;)」

わはは、そうなんだ。あれは六方のつもりなのか。さすがに役の表情を変えてなかったですけど染ちゃんは冷や汗たらたらだったでしょうねえ。

梅玉さん音頭で一本締め。これは齋くんもちゃんとやってました~。捌ける時はやっぱりお手振りしてくれました。観客のほとんどが思わず振り返すというほのぼのな情景でございました(笑)幸四郎じいちゃんは「これっ」とたしなめてたけど。んで、そのまま引っ込むかと思いきや、途中でもう一回へこっとお辞儀をしていきました。うーん、観客のツボを心得てるぞ。大物になるかも。

芝居はすっかり齋くんに食われてしまいましたけど、その後、染五郎さんの暁雨と鉄心斎の彦三郎さんが引き締めての対決の場。止めに入る葛城の芝雀さんがキレイだぞ。雀右衛門さんにほんとに台詞回しが似てきたなあ。顔も似てきたと思う。またちょっと痩せたかな?錦弥さんは何役なの?美味しい役じゃないですか~。

歌舞伎座『六月大歌舞伎 夜の部』 3等B席センター下手寄り

2007年06月09日 | 歌舞伎
歌舞伎座『六月大歌舞伎 夜の部』 3等B席センター下手寄り

旅行明けなので疲れてたらパスするつもりのチケットでしたけど、無理矢理にでも行って良かった。観たら元気になっちゃった(笑)今日の夜の部、とっても良かったです!!

『御浜御殿綱豊卿』
まずは高麗屋の新人、錦二郎くんチェック(笑)多分、判ったと思う。次回しっかり確認するぞ。

仁左衛門さんの綱豊卿が超素敵。やっぱ華があるよねええ。それと台詞回しの緩急、情感が細やか。今回、助右衛門@染五郎さんと対峙する時にかなり鋭さをも出してました。そういう部分で、かなり助右衛門に対し容赦なく迫る。かなり前のめりな綱豊卿。赤穂浪士の心情を見極めようとする気持ちが強く、自らの立場に孤独感をもっている雰囲気でした。孤高の人。『御浜御殿綱豊卿』は新歌舞伎なのですが仁左衛門さんは台詞廻しにリズムを乗せ、たっぷり聴かせるのでいわゆる歌舞伎味を加味した舞台となっていました。

そしてその綱豊卿@仁左衛門さんに対する染五郎さんがこれまた良い!負けじと全身でぶつかっていく。本当にまっすぐで情熱溢れる助右衛門。台詞の一言一言が明快で、切っ先鋭い刃物のごとく向かっていき綱豊卿との問答では火花が散ってるかのようでした。声が直ってきたのか、台詞の通りが非常に今回良かったです。仇討ちにかける情熱が見事に表現されていました。また浅野家再興を願いでると言う綱豊の言葉に切羽詰り必死になる様、絶望した心情が痛いくらいに伝わってくる。まっすぐなゆえの不器用さ。

仁左さんと染五郎さんのコンビ、『荒川の佐吉』の時も思いましたが、この二人だからこその独特の世界をもうひとつ、現してくる気がします。なんというか裏表の鏡のようなんですよ。それぞれのキャラクターが目の前にいる立場の違う人物に一瞬入れ替わることが見える。その憧憬を見ようとすると見えてくる。そしてそれ故にお互いの人物像が際立ってくるかのようです。

お喜世の芝雀さん、とても可愛らしい。うきうきした若さがあって、とっても品が良い。また芯の強さを秘めてているという部分がきちんとある。仁左さんとのカップル度も思った以上によくて、綱豊の愛妾ぶりがよくみえました。やっぱり芝雀さんは着実に良くなってると思う。

江島の秀太郎さん、優しく非常に世長けた知的な女性。御祐筆としての大きさがきちんと見えるのがさすがです。

新井勘解由の歌六さん、やはり上手い。人物像が明快。台詞の中身がよくわかる。


『盲長屋梅加賀鳶』「本郷木戸前勢揃いから赤門捕物まで」
本郷木戸前勢揃いは3階からだと見えないのが悲しい。声だけで役者を判断していました。残念ながら全員はわからず。今回、渡り台詞が調子よく渡りとても楽しかったです。

幸四郎さんは2005年1月に演じて以来2回目となる梅吉/道玄。前回拝見した時よりだいぶ肩の力が抜けてノビノビとしてきた感じで楽しく観ることができました。梅吉は鳶頭としての大きさはあるんだけど、大きすぎ?鳶頭というより大旦那のほうが似合うよね…。あとなんつーか粋な感じがあんましないのよねえ。道玄のほうは幸四郎さん独自の愛嬌をうまく加味させて「役者の味」で見せるのではなく「芝居っ気」で見せる。幸四郎さんにはどうも世話物特有の「市井の人」の空気が身に付いていないのですよね。人の小物さ加減を見せるのは上手いと思うのですが歌舞伎の世話物となると柄が邪魔する。なので今回も愛嬌のある小悪党とまではいかない。かなり凄みの効く道玄です。しかしながら前回のしたたかな緻密さがあった部分が消え、根っからの悪党ではあるがその場しのぎの間抜けな部分があってラストの捕り物への展開に無理がない。少し顔の作りを前回から変えたかな?按摩風情が今回のほうがあった。しかしこういう拵えをすると八代目のお父さんや叔父さんの二代目松緑さんに似てる。

松蔵の吉右衛門さん、やはり鳶頭というには少々大きすぎますが「粋」という部分で断然吉右衛門さんに軍配があがります。また物語への吸引力があります。死体に躓きのあたりでしっかりと印象付けて、伊勢屋での捌きに説得力を持たせます。にしても伊勢屋での幸四郎さんと吉右衛門さんのやりとりの間の妙が見事です。この二人が揃うと一気に熱を帯びて俄然面白くなる。

お兼の秀太郎さん、色ぽくてしたたかで可愛げで。崩れきった女じゃないのがいいです。この女の人生が垣間見える。

鐵之助さんのおせつがただ弱すぎるだけの女じゃないのも良かったです。

宗之助さんのお朝。久しぶりに女形を見ました。相変わらず純朴な娘ぶり。拵えはもうちょっと綺麗な顔にしてもいいんじゃないかと思う。


『新歌舞伎十八番の内 船弁慶』
染五郎さんの『船弁慶』は3年前に大阪松竹座で観ている。その時は知盛は勢いがあってとても良かったのだけど、前シテの静御前の舞が硬すぎて手も足も出てない感じだった。ただかろうじて静の切々とした心情が踊っているうちに乗ってきていたのが救いだった。

その時に較べて、ということではあるが格段の進歩。まずは顔の拵えからして可憐な表情。また謡も声がだいぶ良くなったきたのだろう、思った以上に朗々と聴かせてくる。能がかりの舞台なので謡は地声で十分だがきちんと女を意識しての声をある程度ではあるが作ってもいた。踊りのほうは能がかりのほうは足運びがやっぱり硬い。でも「春の曙」の部分は流れるように丁寧で端正に踊る。ふんわりとした艶やかな柔らか味という部分はまだ足りないのではあるけど、捌きがしなやかになり華やかさも加わってきた。そして何より静御前としての切々とした哀しみがしっかりとその所作のなかで表現されていた。3F席へもじんわりと伝わってきました。

そして後シテの知盛。前回も勢いがあっていいとは思ったのだけど今回かなり大きさが出ていた。歌舞伎座の広い舞台をところ狭しと突っ込んでいく感じ。ひとつひとつの動きがダイナミックでキッパリと決めてくる。恨みの情念が強い知盛。生霊のごとく生々しく激しい。その反面、哀れさ凄みはまだまだかな。豪快な引っ込みは次回までお預け。

今回、知盛が薙刀を振りまわしている最中に刃の部分が壊れてしまった。かなり驚いたけど、後見の幸太郎さんがすぐに代わりの薙刀を渡し刃を片付けていた。染ちゃんも落ち着いて素にもどることなく続行していました。アクシデントへの対応は歌舞伎役者さんたち、いつも素早いですよね。

弁慶は幸四郎さん。道玄で立ち回りまでこなし、たった15分の休憩ですぐに弁慶で出演なさるのに頭が下がりました。しかも世話物からがらりと格調高い羽目物へ見事に空気を変えてきます。しかも能がかりでの所作、台詞廻しが見事。幸四郎さんの大きさが活きて歌舞伎座の大舞台の空気が一気に濃密になる。歌舞伎座の舞台の広さをまったく感じさせなかったのは染ちゃんの成長ぶりも大きいとは思うけど、弁慶で付き合ってくれた幸四郎さんの力もかなり大きいだろうと思いました。幸四郎さんは羽目物が非常に似合う。狂言仕立てのにも出演してみては?と思ったり。

義経の芝雀さん、最近義経役を手がけているだけあって、品のある公達風情がしっかりと。優しげな雰囲気は芝雀さんならでは。優しい視線で静御前を見守ります。知盛と対峙する時にもっと格がでるとなお良い出来になるんじゃないと思います。

舟長三保太夫の東蔵さん、上手い。踊り手としての実力を見せてくださいます。キレが非常に良いし情景が見事に立ち上がる。

舟人の亀鶴さんが丁寧。