日生劇場『十二月歌舞伎公演 夜の部演目』 1等1階前方センター
変則日程の日の観劇です。昼に夜の部演目のみ上演。
『錣引』
初日に拝見した時に面白みのない演目で「なぜこの演目を染五郎さんと松緑さんでやらせるの?…」とちょっと憤慨。今回、再見してもやはり演目としてはそれほど面白みがあるとは思えませんでした、とはいえやはりこなれてない初日から比べると舞台全体としてはだいぶ締まってて、趣向の部分、部分ではわりと楽しめました。それでもこの二人なら違う演目があったでしょうと思います。
まずは悪七兵衛景清@染五郎さんと、三保谷四郎@松緑さんの役者ぶりが大きくなって、お互いの立場でわざわざ正反対なことを言って相手を探りあう、そのばかばかしいようなやりとりが随分と面白くなっていました。そして何より立ち回りが、あらこんなにカッコイイ立ち回りだったっけ?と思ったほど見ごたえが出ていました。二人が息をピッタリ合わせてきてて様式美たっぷりで楽しかったです。
伏屋@笑也さん、男勝りの姫。すっきりと美しいですね~。渋い薄紫の衣装もお似合い。でもどうせならもう少し華やかな衣装でも良かったかも男むさいなかでの紅一点なんだし。
『口上』
他の日に拝見した友人たちの話を総合するに、染五郎さんが七代目幸四郎の人となり(数種パターンあり)を解説し、また昼の部の演目説明&宣伝、松緑さんが日替わりで楽しいくすぐりを入れた口上、海老蔵さんは定番で真面目に。そして最後、染五郎さんが松緑さん口上を受けて落して客を和ませるというのが今回の定番口上ぽいですね。三人ともそれぞれに存在感や華がありますね。
日替わりの松緑さんの23日の口上:小さい頃、祖父、父と出演した舞踊で舞台上で踊りを忘れ頭が真っ白になってしまった事があり、舞台は無事済んだが楽屋でいつもは綺麗な父に鬼のような形相で怒られ、子供心にそんなに怒らなくてもと思った記憶がある。しかし、いざ自分が息子と共演すると父を同じように怒ってしまっている。そのせいで大河(松緑くん息子)から同じ舞台に立ちたくないと言われる始末。1月には大河の念願かなって別々の舞台です(笑)
松緑さんのその口上を聞きながら染五郎さんは横で肩震わせ大笑い。自分にも身に覚えありとみた(笑)。松緑くさんはお父様の思い出話のほかに「今日は染五郎さんと私の学校の先輩、中車を襲名される香川さんが本日いらしてる」と暴露(笑)。染ちゃん、それを受けて35分の幕間に「香川さんを探せ」をしても良しと煽る。人気ものの香川さんゆえ客席は盛大にざわざわ(笑)
『勧進帳』
個人的には不満足な『勧進帳』でした。私はこの演目は「義経」を想う人々の物語と解釈しているのでそこがないと満足しません。
義経@染五郎さん、そしてそういう部分で今回、染五郎さんの義経は想われるだけの人物像としてしっかりそこに立っていたと思います。ほんとに良かったと思います。頭領たる品格と度量の大きさのある優しさがあった。また花道での極まる姿が美しい。座ってる姿も美しい。また流転の貴公子としての色気もありました。個人的に初日同様にやはり芝翫さん、勘三郎さんのお二人のイメージがそこにふんわりとだぶりました。演じ方が芝翫さん→、勘三郎さん系統の義経なのだと思います。
富樫@松緑さん、前回、どこで関所を通すことを許したのか不明瞭でしたが今回はそこをしっかり演じてきました。松緑さんの富樫は義経一行を弁慶の主君への想いに心打たれてではなく、黙って打たれる強力のその姿に義経だと確信しその瞬間に義経のために見逃すというやり方にしていた。打たれている義経を辛そうに見、目を背ける。台詞廻しが初日よりちょっともったりしたのが残念かな。落ち着いた富樫を演じようと意識しすぎたか。芯の強い厳しい富樫という造詣は良いと思うが、この造詣にする場合、もう少し全体的に緩急が欲しいのと台詞に鋭さがあるほうが良いかも。弁慶@海老蔵さんの間に合わせてあげていた部分もありましたので、そこら辺で自分のペースを掴みきれてない部分が少々あったようにも思います。
弁慶@海老蔵さん、わが道を行っていた。行き過ぎていて私にはどこに向かっているのかわからなかった…。台詞廻しの拙さ、音を時々外す舞、過剰な演技は置いておきます。これでいいと思う方も多いようですしあとはご本人次第でしょう。私が海老蔵さんの弁慶に不満なのは「義経」をしっかり意識してないという一点に尽きます。私には海老蔵さん弁慶からは義経大事がどうにも伝わってきません。最後も客席を終始見てるあの六法はなんですか?あそこは義経を守るために必死で追いかけていく姿をみせるための六法です。義経一行を追いかけるそぶりすら見せない、客にどうこれ?というように踏む六法はさすがに初めてみました。
弁慶は義経を心から慕い義経を救いたいその一心で行動している、その純粋な心根からの強さと愛嬌がある人物だと私は思っています。そしてそれがある父様の團十郎さんの弁慶の義経大好きっ子な弁慶にいつか戻ってきてくれることを私は祈ります。
変則日程の日の観劇です。昼に夜の部演目のみ上演。
『錣引』
初日に拝見した時に面白みのない演目で「なぜこの演目を染五郎さんと松緑さんでやらせるの?…」とちょっと憤慨。今回、再見してもやはり演目としてはそれほど面白みがあるとは思えませんでした、とはいえやはりこなれてない初日から比べると舞台全体としてはだいぶ締まってて、趣向の部分、部分ではわりと楽しめました。それでもこの二人なら違う演目があったでしょうと思います。
まずは悪七兵衛景清@染五郎さんと、三保谷四郎@松緑さんの役者ぶりが大きくなって、お互いの立場でわざわざ正反対なことを言って相手を探りあう、そのばかばかしいようなやりとりが随分と面白くなっていました。そして何より立ち回りが、あらこんなにカッコイイ立ち回りだったっけ?と思ったほど見ごたえが出ていました。二人が息をピッタリ合わせてきてて様式美たっぷりで楽しかったです。
伏屋@笑也さん、男勝りの姫。すっきりと美しいですね~。渋い薄紫の衣装もお似合い。でもどうせならもう少し華やかな衣装でも良かったかも男むさいなかでの紅一点なんだし。
『口上』
他の日に拝見した友人たちの話を総合するに、染五郎さんが七代目幸四郎の人となり(数種パターンあり)を解説し、また昼の部の演目説明&宣伝、松緑さんが日替わりで楽しいくすぐりを入れた口上、海老蔵さんは定番で真面目に。そして最後、染五郎さんが松緑さん口上を受けて落して客を和ませるというのが今回の定番口上ぽいですね。三人ともそれぞれに存在感や華がありますね。
日替わりの松緑さんの23日の口上:小さい頃、祖父、父と出演した舞踊で舞台上で踊りを忘れ頭が真っ白になってしまった事があり、舞台は無事済んだが楽屋でいつもは綺麗な父に鬼のような形相で怒られ、子供心にそんなに怒らなくてもと思った記憶がある。しかし、いざ自分が息子と共演すると父を同じように怒ってしまっている。そのせいで大河(松緑くん息子)から同じ舞台に立ちたくないと言われる始末。1月には大河の念願かなって別々の舞台です(笑)
松緑さんのその口上を聞きながら染五郎さんは横で肩震わせ大笑い。自分にも身に覚えありとみた(笑)。松緑くさんはお父様の思い出話のほかに「今日は染五郎さんと私の学校の先輩、中車を襲名される香川さんが本日いらしてる」と暴露(笑)。染ちゃん、それを受けて35分の幕間に「香川さんを探せ」をしても良しと煽る。人気ものの香川さんゆえ客席は盛大にざわざわ(笑)
『勧進帳』
個人的には不満足な『勧進帳』でした。私はこの演目は「義経」を想う人々の物語と解釈しているのでそこがないと満足しません。
義経@染五郎さん、そしてそういう部分で今回、染五郎さんの義経は想われるだけの人物像としてしっかりそこに立っていたと思います。ほんとに良かったと思います。頭領たる品格と度量の大きさのある優しさがあった。また花道での極まる姿が美しい。座ってる姿も美しい。また流転の貴公子としての色気もありました。個人的に初日同様にやはり芝翫さん、勘三郎さんのお二人のイメージがそこにふんわりとだぶりました。演じ方が芝翫さん→、勘三郎さん系統の義経なのだと思います。
富樫@松緑さん、前回、どこで関所を通すことを許したのか不明瞭でしたが今回はそこをしっかり演じてきました。松緑さんの富樫は義経一行を弁慶の主君への想いに心打たれてではなく、黙って打たれる強力のその姿に義経だと確信しその瞬間に義経のために見逃すというやり方にしていた。打たれている義経を辛そうに見、目を背ける。台詞廻しが初日よりちょっともったりしたのが残念かな。落ち着いた富樫を演じようと意識しすぎたか。芯の強い厳しい富樫という造詣は良いと思うが、この造詣にする場合、もう少し全体的に緩急が欲しいのと台詞に鋭さがあるほうが良いかも。弁慶@海老蔵さんの間に合わせてあげていた部分もありましたので、そこら辺で自分のペースを掴みきれてない部分が少々あったようにも思います。
弁慶@海老蔵さん、わが道を行っていた。行き過ぎていて私にはどこに向かっているのかわからなかった…。台詞廻しの拙さ、音を時々外す舞、過剰な演技は置いておきます。これでいいと思う方も多いようですしあとはご本人次第でしょう。私が海老蔵さんの弁慶に不満なのは「義経」をしっかり意識してないという一点に尽きます。私には海老蔵さん弁慶からは義経大事がどうにも伝わってきません。最後も客席を終始見てるあの六法はなんですか?あそこは義経を守るために必死で追いかけていく姿をみせるための六法です。義経一行を追いかけるそぶりすら見せない、客にどうこれ?というように踏む六法はさすがに初めてみました。
弁慶は義経を心から慕い義経を救いたいその一心で行動している、その純粋な心根からの強さと愛嬌がある人物だと私は思っています。そしてそれがある父様の團十郎さんの弁慶の義経大好きっ子な弁慶にいつか戻ってきてくれることを私は祈ります。