Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

劇場の灯を消してはいけない

2011年03月17日 | Memo
野田秀樹さんの「劇場の灯を消してはいけない」を紹介させていただきます。

「劇場の灯を消してはいけない」
~この東北関東大震災の事態に上演続行を決定した理由~

15日より『南へ』公演の上演再開にあたり、野田秀樹が劇場にてご挨拶させて頂きました全文を掲載致します。

全文はこちらへ:http://blog.goo.ne.jp/admin/newentry/


お芝居が好きな方々はぜひ読んでみてください。

私は被災していない人々はなるべく日常を取り戻すことが必要だと思います。その日常は今までと違うかもしれません。それでも被災地の方々を応援するためにも復興を早くできるよう支援するためにも、社会をまわしていかなければ。停滞させるべきではありません。

もし公演が中止になったり、こんな時期だからとの心情だけで行けなかった人は払い戻されたチケット代を東北地方太平洋沖地震の救援募金の寄付しませんか?

日本赤十字社の義援金の専用口座も開設されたようです。
東北関東大震災 専用口座について → http://www.jrc.or.jp/

義援金・救援金募集
東北関東大震災義援金を受け付けます

11/03/14

 日本赤十字社では、今回の震災の被害が甚大かつ広範囲に及んでいることから、被災県組織に代わり、皆さまからの義援金を受け付けております。

※この義援金は寄付金控除の対象となります。
※個人については、所得税法第78条第2項第1号、法人については、法人税法第37条第3項第1号の規定に基づく寄附金並びに、地方税法第37条の2第1項第1号及び第314条の7第1項第1号に規定する寄附金に該当します。
※法人については、全額損金扱いとなります。



義援金窓口1 
■ 郵便振替(郵便局)
口座記号番号   00140-8-507
口座加入者名   日本赤十字社 東北関東大震災義援金
取扱期間     平成23年3月14日(月)~平成23年9月30日(金)

※郵便局窓口での取り扱いの場合、振替手数料は免除されます。
※郵便窓口でお受取りいただきました半券(受領証)は、免税証明としてご利用いただけますので、大切に保管してください。
※通信欄にお名前、ご住所、お電話番号を記載してください。



義援金窓口2
■ 銀行振込
三井住友銀行:銀座支店 (普)8047670
三菱東京UFJ銀行:東京公務部 (普)0028706
口座名義 日本赤十字社(ニホンセキジュウジシャ)

ゆうちょ銀行:〇一九店(ゼロイチキュウ店) (当)0000507
金融機関コード 9900
店番 019

受領証が必要な方は、こちらから事前登録をお願いいたします。

※同一行内(本支店間)での振込の場合、振込手数料は免除されます。
※ゆうちょ銀行への送金については、振込手数料がかかります。


義援金窓口3
■ クレジットカード・コンビニエンスストア・Pay-easyによるご協力
詳しくは、こちらをご覧ください。

※「寄付目的」の選択項目で、義援金名(東北関東大震災義援金)を指定してください。
※寄付金額は、2,000円以上から受け付けています。



[担当窓口]日本赤十字社 東北関東大震災義援金担当
Tel: 03-3437-7081  E-mail: info@jrc.or.jp

新橋演舞場『三月大歌舞伎 夜の部』 1等1階前方花道寄り

2011年03月13日 | 歌舞伎
新橋演舞場『三月大歌舞伎 夜の部』 1等1階前方花道寄り

『浮舟』
脚本のダメさ加減は別として芝居としてだいぶ締まってきていました。

匂宮@吉右衛門さん、軽妙さがかなり出てて若くはないけど天真爛漫な雰囲気は出ていて、個人的には前回(3/5)のように生理的に受け付けないという感じではなかったです。台詞はプロンプが外れ、多少詰まる部分はあれど聞かせてくるようになっていました。ただ、大詰の台詞は大幅カットされていました。大詰めは浮舟をめぐって、匂宮と薫大将が自分たちの「愛」の価値観をぶつけ合う場面。この場、前回拝見した時に吉右衛門さんがかなり苦労されていましたが…芝居を止まらせるよりはと決断したのでしょうか?ただ、この場の台詞がないと本当に単に薫と浮舟カップルを邪魔しただけの男になってしまう気も…。

薫大将@染五郎さん、立ち姿が美しいです。男性としてはかなり面倒であろう非常にクサイ台詞というか恥ずかしい台詞を切なく滔々とたっぷり。前回より浮舟@菊之助さんへ熱い視線と熱い抱擁(笑)、純で青臭い薫大将を品よく演じておりました。しかし、大詰めの場での匂宮@吉右衛門さんの台詞がカットされたため、薫大将の理想主義的台詞もカットされ、そのおかげで浮舟を大事にしすぎて寝取られてしまった普通に可哀想な若者になっておりました。それは良かったの悪かったのか。

浮舟@菊之助さんは最初から出来上がっていたけど色気が増した感じ。薫大将のことが大好きモードのほうがやはり強く、それだけに自分の業ゆえの二人の間での揺れというよりは、シチュエーションに流されてしまった可哀想な女の子という感じも。

時方@菊五郎さん、この日の大ヒットは菊五郎さんでした。なんだかほんと楽しそうに遊んでる感じで。ドドスコ、愛注入~とかやってしまうし、とってもカワイかった。こういう余裕のあるとこいいなあ、大好き。

中将@魁春さん、珍しく台詞をカミカミ。でも「ぐふふ」の笑いがインパクトありすぎ。

侍従@右近くんがすごく良くなっていました。声もいいし可愛くなってた~。

『水天宮利生深川』
お話が暗めなのがなんだけど芝居としてしっかり密に見せてくる。ラストは明るく気持ちが晴れやかになる。原作通りの奇跡のほうを取った演出。台詞をいくつか追加したようですが違和感はなかった。幸四郎さんの演出はメリハリあって緻密ですね。

幸兵衛@幸四郎さん、かなり若くみえました。動きにキレがあるせいかな。存在感が多少邪魔してて世話物ぽくはないけど、あざとい部分含めて飽きさせないし上手い。世知に疎い元武士で品格はあるけど融通がきかず自分で自分を追い詰めてしまう、そのリアル感がありつつ前回演じた時より少しばかり軽めに外してきていた感。武士のプライドの部分をあえてあまり出さなかったように思います。今観る芝居としては、今回のほうが気分的に観やすいし、「芝居」として説得力があったような気がします。前回演じた時はあまりに理知的で前半の佇まいの部分と後半の狂いの部分が乖離していた部分がありましたが今回は奥さんに死なれた男やもめの弱さもしっかり出してきていたので狂いの部分がすんなり通っていました。またこれはいつも思うのですが、幸四郎さんは子役に対しての扱いというか触れる時の手つきなどが非常に丁寧で優しい。そこに子へ愛情が表れていて、ちょっとした仕草なのですがああ、いいなあと思うこと度々。

また、子役二人がとても良いです。お雪@梅丸くんとお霜@吉太郎くん、健気な姉妹を丁寧に熱演。泣かせます。

周囲も揃ってる。適材適所というか、皆ピタリはまってて芝居を盛り立てる。周囲が揃うと芝居全体が立ち上がってきます。

車夫三五郎@松緑くん、明るくて真っ直ぐな気性の三五郎。情け容赦なく、強欲に金の取り立てしていく、金貸因業金兵衛@彦三郎さん、茂栗安蔵@権十郎さんも「らしく」演じ、差配人与兵衛@錦吾さんは気概のある気の良さを見せ、巡査民尾保守@友右衛門さんは場を取り仕切るものとしての佇まいがしっかりと。

『吉原雀』
舞台面が明るくて、梅玉さん、福助さんの踊りもよくて、気持ちのよい打ち出し。梅玉さんの品のよい踊りと福助さんの色気のあるしなやかな踊りがいいバランス。この二人のコンビなかなか良いかも!

新橋演舞場『三月大歌舞伎 夜の部『浮舟』』  3等A席後方上手寄り

2011年03月05日 | 歌舞伎
新橋演舞場『三月大歌舞伎 夜の部『浮舟』』 3等A席後方上手寄り

『浮舟』
北條秀司作の新歌舞伎。観ていて本気できつかった。一時代前の男性原理な昼メロって感じな話で…。妙に俗ぽくて王朝ものの雅さがない…。今回は特に匂宮と薫がどう見ても同世代じゃないから、話がちょっと変わってしまってるし…尚更。純愛カップルを壊す好色おやじの図にしかみえず…。しかも男性の自己中心的な女性観の台詞のあれこれに少々げんなり。その価値観が古過ぎないところで引っかかるのよね…。古典なら古典でそういうものとして見られるんだけど…。これなら源氏物語の原作のままのほうが全然良いよ。出生ゆえに可愛がられずに屈折しぐだぐだと思い悩む薫と、何不自由なく屈託なく生きつつも薫にライバル心むき出しの情熱的な匂宮と、その間でゆらゆら揺れ動くあまり自由意志がない浮舟の三角関係(雪樹的解釈あらすじ(笑))。源氏物語を今、歌舞伎でやるなら誰か若い女性作家に書き変えてもらったら?と思います。今や歌舞伎は女性客が大半なんだし。

にしても役者が揃ってるのになぜにこの演目?という疑問符いっぱい。まあ、突っ込みどころ満載すぎて、インパクトは強いですが…。ツッコミ体質の人は内心笑いながらツッコミ入れまくりして、そういう部分では楽しめるとは思う。それが歌舞伎の怖いところで…役者に力量があるからなんとか見られる。ヘタな役者がやったらどうしようもない芝居だと思う。

役者が揃ってるだけにイライラしながら観てました。なぜこの演目?って。しかも、ほとんどの役者さんがしっかり芝居してるからなおさら。ベテランの余裕のある上手さと地力がついてしっかりした芝居をする花形の組み合わせのバランスがとても良いだけに、違う演目で観たかったです。

浮舟@菊之助さん、とても良かったです。浮舟の造詣を少女の成長譚として捉え、子供ぽい純粋さから恋ゆえに揺れ動き成熟しつつある女性にと変貌していく様子を丁寧に描き出していました。純朴さ、一途さゆえの嫉妬、情熱に戸惑う女の本能などを等身大の女の子として魅力的に体現していた。内面の動きがよくわかる演技でふくよかな色気さえ感じさせこれは一皮剥けたかな?という出来。菊之助さんはこのところ一気に成長してきた感がありますが今回もそれを感じさせました。ただ、まだ芝居に頑張っている感があり、二人の男性の間で揺れ動くというより薫一途に見えるんですね。薫との関係が安心できる状態になってないためにあてつけで匂宮の恋文を受け取ってるような雰囲気で。だから強引に匂宮に言い寄られるとこで、揺れがなく本気でいやがっているようにみえて…。もう少しファムファタルとは言わないけど揺れがあってもいいかなあと。

薫大将@染五郎さん、マジメで朴念仁な薫大将を丁寧にそれこそ、てらいなく真面目に演じて意外とハマっていました。どちらかというと匂宮のほうが似合うかな?と思っていたので。妙に気恥ずかしい台詞も生来の生真面目ゆえの爽やかさのある台詞の調子になっており、薫というキャラクターをよく演じてきていると思う。原作で本来あるはずの出生の秘密ゆえの影はないものの理想を追い求めすぎて愛する女性のことを幸せにすることが出来ないことに気が付かないでいる哀しさがありました。若さゆえの周りが見えない青臭い感覚の持ち主ないかにも青年らしい雰囲気。染五郎さん、声のトーンをあげかなり若い作りです。

染五郎さんと菊之助さん、予想以上にしっかりカップルになっていました。同年代で遠慮がない部分もあるのか二人だけの芝居は肩の力が抜けてて良い感じ。

匂宮@吉右衛門さん、台詞がまだ入りきってなく…。匂宮の天真爛漫なもて男の調子の良さが出てない…。情熱的に怒涛のごとく流暢に口説いてこそ匂宮だと思うので、いまひとつ。吉右衛門さん独特の愛嬌でカバーしている部分もありますがそこに生来の軽やかさがないので男の傲慢さが透けてみえてしまう…。この役はニンじゃないなあと思うばかり。しかも物語的に匂宮と薫大将は同世代で、そのなかでのライバル心ゆえの浮舟の執着であるはずなのに、今回の配役ではさすがに年齢差がありすぎて…しかも、台詞の合間に「あ~、う~」が入るので尚更年配に見えるし私にはただの好色なおやじにしかみえない…。吉右衛門さんは大好きな役者さんですがこの役はちょっと受け付けない。匂宮を菊五郎さん、薫を吉右衛門さんのほうが正直良かったんじゃと思います。もしくは浮舟:菊五郎さん、薫:吉右衛門さん、匂宮:梅玉さんの組み合わせで。

時方@菊五郎さん、とても楽しそうです。若い女の子に言い寄る姿もイヤミがないし、軽やかに演じていらっしゃいます。私は菊五郎さんが匂宮だったら全然OKなんですが。好みの問題かなあ…。

中将@魁春さん、奔放な男好きで勝手に娘の元に匂宮を手引きするという意外なお役をさらりと演じていらっしゃいました。さすがに好色な女には見えませんけど、計算高さがみえて面白い造詣。

中の君@芝雀さん、ふんわり優しげな空気感があって素敵。匂宮の強引さに負け愛妾になったもののあまり省みられずにいる愁いと、薫と浮舟の幸せを願う優しさを見せて行きます。こういうお役、ほんと上手です。

他に弁の尼@東蔵さん、右近@萬次郎さんと脇が揃っています。またポイントポイントで良い芝居をしてて感心します。

新橋演舞場『三月大歌舞伎 昼の部』 2等B席左袖席

2011年03月05日 | 歌舞伎
新橋演舞場『三月大歌舞伎 昼の部』 2等B席左袖席

『恩讐の彼方に』
菊地寛原作の芝居。新劇に近い作りでした。花形三人の魅力が出ていてなかなか面白かったです。しかし場割りが多く暗転多様。もう少し場面転換を工夫したほうが良いんじゃないかなあ。

間市九郎後に僧了海@松緑さん、熱演。まあ熱演すりゃいいってもんじゃないというか相変わらず台詞が一本調子になりがちでもう少し抑揚をと思う。しかし、元々は一本気な性格ながら悪女に入れあげ身を崩し悪党の道へ入ったことを後悔し続け、洞窟を一心に掘ることで許しを求めている姿をしっかり伝えることは出来ているので好感度はかなり高しでした。老けメイクが俊寛ちっく。作りこみすぎてる気もする…。

中川実之助@染五郎さん、真っ直ぐな役を真っ直ぐに、根が心優しい人物として描いていた。何年もの間、父の仇を討つ一心で了海を捜し求め、ようやく辿りついた先で仇討ちに流行る気持ちと、村人に慕われている了海の姿に戸惑い共に洞窟を掘ることで少しづつ気持ちが変化いく様をてらいなく演じていて気持ちよい。老け役の松緑さんとしっかり対比させるためか、かなり声や台詞廻しを若く作っていたのだけど違和感がない。もっと押し出しは強くしてもいいかも。

お弓@菊之助さん、根っからの悪女をいわゆる悪婆の形で演じる。ざっくりとわりと男声に近い感じの台詞廻しなのが面白い。愛嬌を乗せず芯の冷たい高慢な雰囲気で演じているのがなかなか楽しい。女形さんが悪婆を演じるとき、ほんと楽しそうですよねえ。

石工頭岩五郎@歌六さん、もったいない使い方とも思うが、良い役を説得力ある芝居で見せてくれる。

旅の若夫婦@亀寿さん、芝のぶさん、 浪々の武士@亀鶴さんが印象に残る。

六世中村歌右衛門十年祭追善狂言
『伽羅先代萩』「御殿」「床下」
思った以上に見応えあり嬉しい収穫。配役も適材適所で派手さはないもののしっかりと見せてくる。何より魁春さんの政岡が上々出来で本当に観て良かったと思いました。

政岡@魁春さん、飯炊きの場がとにかくとても良かった。政岡は今まで色んな役者で見てきましたが、格がかなり上って感じになる。だけど魁春さんだとまさしく「乳母」でした。とても情味があり重責を抱えて必死に頑張る政岡像がとても良かった。だから飯炊きの場が新鮮でした。役として手順とか大変なんだなあって思わせるとこもありましたが、それ以上に若君や子に対する心配り、心情が非常に納得できる。知らず知らずうるうるきてしまいました。こういう作り方もあるんだって思いました。千松の遺体に取りすがってクドキはもう少し一気に感情を爆発させてほしい感じであるけど、後半にいくにつれもっとよくなるんじゃないかなあと思いました。

飯炊きの場。子役二人もとっても頑張っていました。

八汐@梅玉さん、独特の雰囲気があって良かったです。あくまでも品を崩さず情のない打算的な八汐という感じでした。前回演じた時の八汐より断然良かった。

栄御前@芝翫さん、少し弱ったなと感じさせたけどさすがに場が締まります。品格があり芝居も的確。

沖の井@福助さん、丁寧に演じていて良かったです。

男之助@歌昇さん、姿といい台詞廻しといい、かなり良かったです。

仁木弾正@幸四郎さん、いつもよりあっさり目ではありましたが相変わらずの、ゆらゆら漂う黒々オーラが素敵。

『御所五郎蔵』
これは話がイマイチ好みじゃないので、観る時に乗れる時と乗れない時があるのです。今回は『伽羅先代萩』までで結構疲れてしまったのでまったり絵面を楽しんだ感じです。とはいえ菊五郎さんも吉右衛門さんもかっこよかったです。

五郎蔵@菊五郎さん、やっぱりこういう二枚目が一番似合います。一時期より若々しくなったような気がする。華やかさと色気が素敵です。短気で頑固なキャラですが根の甘さがあって憎めない雰囲気がありますね。

土右衛門@吉右衛門さん、さすがの存在感。でもあまり悪ぽくみえないかな。カッコイイほうが先に立つ感じも。押し出しがいいので菊五郎さんとの並びが眼福。

皐月@福助さん、綺麗だし、こういう役が本当に似合う。情の濃さをみせてとても良かったです。

逢州@菊之助さん、綺麗です。落ち着いた出来。