歌舞伎座『寿初春大歌舞伎 昼の部』2等席1階後方センター
昼の部はたっぷりした重量感はないけど軽やかで華やぎのある舞台で楽しかったです。『一本刀土俵入』にも華やぎ?と思うかもしれないけどじんわりさせつつ楽しいし明るさがあったので。幸四郎さんの華がそう感じさせたのかな。
『金閣寺』
この演目は雀右衛門・幸四郎・菊五郎とか玉三郎・幸四郎・吉右衛門とかの重厚な組み合わせで観てるし他にも組み合わせとしては重厚ではないけど誰かしら濃いめ役者が入っている『金閣寺』ばかりしか観てなかったので今月のはすっきりしすぎな印象。絵面はとても美しく端正。もっと色をつけてこれたらなあと。役者の色がまだしっかり出てなくて濃厚な空気感が足りないのが残念。皆が丁寧すぎて綺麗すぎるのかな?でも華やぎはあるのよね。あとピンと張ったクリアな空気感。金閣寺は物語性があまりないのでそのクリアさが必要か?というところ。見やすい舞台ではある。
染五郎さんの大膳、まずは拵えがなかなか似合い、姿に大きさがあったのが良し。かっこよすぎる気もしないではないが…美しさが前に出る(贔屓目?)。個人的にはもっとゲスさとか詰めの甘さがもっと見えたほうが大膳らしいような。染五郎さんの大膳の場合、考えをめぐらす雰囲気があって単純さが足りないかな。カッコイイなあ、雪姫そっちいったら?とか思わせちゃうところが。でも本来超ゲスなやつですから。大膳、国崩しとしての凄みを出すための声、台詞廻しはとても良かったです。台詞を発しても線の太さを感じさせることができていました。芝居が進むうちにどんどん上向き調子に。
勘九郎さん東吉、丁寧にきびきびと演じていて好感のもてる真直ぐなキャラ造形。個人的にはもう少し愛嬌があってもよかったかな~。台詞廻しにいつもの力みがなく聞きやすくてとても良かった。姿は決まり決まりは丁寧だけどどこか溜めがなく早すぎる部分が。ノリ地の部分も意外にさらりと進む。もったいない。こなれてくると見せ場をもっと見せ場にできると思う。武将として格はしっかりでていて良し。拵えが少し橋之助さんぽくみえた。ようするに二枚目。
七之助さんの雪姫、まずは品があって人形のように美しい。硬質さは相変わらずだけどそこに華がついてきた。完全に玉三郎さん写しの台詞廻し。とにかくきちんとという意識がみえて丁寧に丁寧に。反面、気持ちがまだ前に出てこない感じでもうひとつ前に出て、というところで収まっている。それでも大膳とのやりとりなど相対する人がいるとキャラは立つのだけど一人でのくどきに入ると熱が出てこない感じ。もっと熱を帯びてほしいのよね。まあ雪姫は私基準が雀右衛門さんなので誰のでも物足りないのだが…。単に綺麗というところを超えてほしい。恋情とか愛情ゆえの可愛らしさ+相手になんとか辿り着こうとする情熱、そこら辺。
廣太郎くんの鬼藤太がめいっぱい頑張ってて、それが良い方向に出てて小憎らしさとかは出てないけど十分に良かったです。男女蔵さんの軍平もよかった。いい塩梅の存在感。台詞が最近よくなってきたように思う。笑也さんの直信はすっきりと絵師らしい佇まい。
慶寿院尼、配役を把握しておらず東蔵さんじゃなくて最初違和感が…門之助さん、ごめんなさい。でも品が良くて柔らかさがあって良かったです。このポジション難しいですからね。門之助さんも幅広い役者さんですよねえ。
『蜘蛛の拍子舞』
玉三郎さんの変化舞踊が大好きなのでワクワク。妻菊での玉様、勘九郎、七之助兄弟に挟まれても超絶若い娘で存在しててびっくり。でも前半は少しまったりだったかな。玉様、少しお疲れ?でも正体を現し始めるあたりからは一気に楽しくなる。活き活きとしてオーラ倍増。玉三郎さんの女郎蜘蛛の精の拵えは迫力ありすぎ。玉三郎さんは化け物の化粧が巧い。目に異の光があるように見せるのよ、凄いわ~。蜘蛛の糸の扱いも綺麗だし、ああいう拵えであってもそのなかに異の美を見せる。うん、好き。
七之助さんの源頼光は品よく、位取りもしっかり。 勘九郎さんの渡辺綱は後半が拵えも似合い腰の入り方もよく、勘九郎さんらしさ満載で良し。
押し戻しの染五郎さんが、想像以上に大きく拵えも似合ってた!とにかくあの拵えで大きい丸みが出せたのに満足。声は最初きつそうだったけど本舞台では十分に。ああいう拵えに慣れていないせいか身体の裁き方は少々きごちなさもあったけど愛嬌もあって可愛かった。
蜘蛛の着ぐるみがリアルで迫力。苦手な人はギャー!かも(笑)私は平気なのでワクワク観てた。あの姿でかなりよく動かれていて拍手!太ももがすごかった。どなただろう。
歌舞伎座昼『一本刀土俵入』
正月からこれ?幸四郎さん似合うかな?とか思ってたんですが、とても楽しかったです。脇の役者さんたちがまた濃くていい味。やはり芝居はアンサンブル。こういうアンサンブルで見せる芝居を幸四郎さんはいつもとても上手に見せる。
まず最初のシーンが小山三さん筆頭に脇の皆が「時代」「らしさ」を濃厚に見せてくる。これから何が始めるんだろう?と一気に芝居に惹きこまれる。そこに主の役者がうまく乗っていく。そういう芝居だった。芝居に緩急があり面白く見せていった。
幸四郎さんの茂兵衛、意外に前半も似合ってた。身分の低さ、世間知らずな軽さ、そして寄る辺ない孤独さなどをしっかり纏う。後半の渡世人になった凄みのなかの孤独さとしっかりイコールになるように演じてくる。台詞は少し幸四郎流ではあるけど間がうまい。幸四郎さんはあれだけ重厚な存在感がある方なのに身分の低さを表現できる人なんですよね~。忠臣蔵の平右衛門でも足軽風情がしっかりあったしなあ。面白い役者さんです。
魁春さんのお蔦が個人的にかなりのヒット。地味ではあるけどお蔦という女性の地の強さのなかに薄幸な境遇が透けてみえて、幸四郎さん茂兵衛の孤独感と呼応してる感じがすごく良かった。だからこそお蔦は茂兵衛を可哀想に思うし金品をあげるんだなと説得力があった。魁春さんのお蔦、唄はうまくないけどうまくなくてもいいし。ちょっとかすれた声が酒やけな雰囲気が出ててかえって味わいがあった。後半幕での娘とのどこか母娘として馴染んでない距離感とそれゆえの情味という部分がストレートにみえ、とても切なかった。先行きも苦労しそうだけど、ほんの少しでも幸せを感じられたらいいなあって思った。感情移入できるお蔦さんでした。最近、魁春さんは当たりが多い。
後半幕の利根川べりの老船頭の錦吾さん、友右衛門さんと若船頭の宗之助さんの三人のシーンがすーごく良かったというか楽しかった。錦吾さん、可愛いよ~~。歌六さんの波一里儀十がカッコイイ。前回演じたときより貫録。役からするとかっこよすぎかも。
とにかく周囲も揃って、かなり面白かった。だれるとこもないし、子役も可愛かったし、皆がそこの世界の住人で、『一本刀土俵入』の世界が丁寧に活写されていた。切ないけど暗くないし、お正月の演目として全然ありでした。
昼の部はたっぷりした重量感はないけど軽やかで華やぎのある舞台で楽しかったです。『一本刀土俵入』にも華やぎ?と思うかもしれないけどじんわりさせつつ楽しいし明るさがあったので。幸四郎さんの華がそう感じさせたのかな。
『金閣寺』
この演目は雀右衛門・幸四郎・菊五郎とか玉三郎・幸四郎・吉右衛門とかの重厚な組み合わせで観てるし他にも組み合わせとしては重厚ではないけど誰かしら濃いめ役者が入っている『金閣寺』ばかりしか観てなかったので今月のはすっきりしすぎな印象。絵面はとても美しく端正。もっと色をつけてこれたらなあと。役者の色がまだしっかり出てなくて濃厚な空気感が足りないのが残念。皆が丁寧すぎて綺麗すぎるのかな?でも華やぎはあるのよね。あとピンと張ったクリアな空気感。金閣寺は物語性があまりないのでそのクリアさが必要か?というところ。見やすい舞台ではある。
染五郎さんの大膳、まずは拵えがなかなか似合い、姿に大きさがあったのが良し。かっこよすぎる気もしないではないが…美しさが前に出る(贔屓目?)。個人的にはもっとゲスさとか詰めの甘さがもっと見えたほうが大膳らしいような。染五郎さんの大膳の場合、考えをめぐらす雰囲気があって単純さが足りないかな。カッコイイなあ、雪姫そっちいったら?とか思わせちゃうところが。でも本来超ゲスなやつですから。大膳、国崩しとしての凄みを出すための声、台詞廻しはとても良かったです。台詞を発しても線の太さを感じさせることができていました。芝居が進むうちにどんどん上向き調子に。
勘九郎さん東吉、丁寧にきびきびと演じていて好感のもてる真直ぐなキャラ造形。個人的にはもう少し愛嬌があってもよかったかな~。台詞廻しにいつもの力みがなく聞きやすくてとても良かった。姿は決まり決まりは丁寧だけどどこか溜めがなく早すぎる部分が。ノリ地の部分も意外にさらりと進む。もったいない。こなれてくると見せ場をもっと見せ場にできると思う。武将として格はしっかりでていて良し。拵えが少し橋之助さんぽくみえた。ようするに二枚目。
七之助さんの雪姫、まずは品があって人形のように美しい。硬質さは相変わらずだけどそこに華がついてきた。完全に玉三郎さん写しの台詞廻し。とにかくきちんとという意識がみえて丁寧に丁寧に。反面、気持ちがまだ前に出てこない感じでもうひとつ前に出て、というところで収まっている。それでも大膳とのやりとりなど相対する人がいるとキャラは立つのだけど一人でのくどきに入ると熱が出てこない感じ。もっと熱を帯びてほしいのよね。まあ雪姫は私基準が雀右衛門さんなので誰のでも物足りないのだが…。単に綺麗というところを超えてほしい。恋情とか愛情ゆえの可愛らしさ+相手になんとか辿り着こうとする情熱、そこら辺。
廣太郎くんの鬼藤太がめいっぱい頑張ってて、それが良い方向に出てて小憎らしさとかは出てないけど十分に良かったです。男女蔵さんの軍平もよかった。いい塩梅の存在感。台詞が最近よくなってきたように思う。笑也さんの直信はすっきりと絵師らしい佇まい。
慶寿院尼、配役を把握しておらず東蔵さんじゃなくて最初違和感が…門之助さん、ごめんなさい。でも品が良くて柔らかさがあって良かったです。このポジション難しいですからね。門之助さんも幅広い役者さんですよねえ。
『蜘蛛の拍子舞』
玉三郎さんの変化舞踊が大好きなのでワクワク。妻菊での玉様、勘九郎、七之助兄弟に挟まれても超絶若い娘で存在しててびっくり。でも前半は少しまったりだったかな。玉様、少しお疲れ?でも正体を現し始めるあたりからは一気に楽しくなる。活き活きとしてオーラ倍増。玉三郎さんの女郎蜘蛛の精の拵えは迫力ありすぎ。玉三郎さんは化け物の化粧が巧い。目に異の光があるように見せるのよ、凄いわ~。蜘蛛の糸の扱いも綺麗だし、ああいう拵えであってもそのなかに異の美を見せる。うん、好き。
七之助さんの源頼光は品よく、位取りもしっかり。 勘九郎さんの渡辺綱は後半が拵えも似合い腰の入り方もよく、勘九郎さんらしさ満載で良し。
押し戻しの染五郎さんが、想像以上に大きく拵えも似合ってた!とにかくあの拵えで大きい丸みが出せたのに満足。声は最初きつそうだったけど本舞台では十分に。ああいう拵えに慣れていないせいか身体の裁き方は少々きごちなさもあったけど愛嬌もあって可愛かった。
蜘蛛の着ぐるみがリアルで迫力。苦手な人はギャー!かも(笑)私は平気なのでワクワク観てた。あの姿でかなりよく動かれていて拍手!太ももがすごかった。どなただろう。
歌舞伎座昼『一本刀土俵入』
正月からこれ?幸四郎さん似合うかな?とか思ってたんですが、とても楽しかったです。脇の役者さんたちがまた濃くていい味。やはり芝居はアンサンブル。こういうアンサンブルで見せる芝居を幸四郎さんはいつもとても上手に見せる。
まず最初のシーンが小山三さん筆頭に脇の皆が「時代」「らしさ」を濃厚に見せてくる。これから何が始めるんだろう?と一気に芝居に惹きこまれる。そこに主の役者がうまく乗っていく。そういう芝居だった。芝居に緩急があり面白く見せていった。
幸四郎さんの茂兵衛、意外に前半も似合ってた。身分の低さ、世間知らずな軽さ、そして寄る辺ない孤独さなどをしっかり纏う。後半の渡世人になった凄みのなかの孤独さとしっかりイコールになるように演じてくる。台詞は少し幸四郎流ではあるけど間がうまい。幸四郎さんはあれだけ重厚な存在感がある方なのに身分の低さを表現できる人なんですよね~。忠臣蔵の平右衛門でも足軽風情がしっかりあったしなあ。面白い役者さんです。
魁春さんのお蔦が個人的にかなりのヒット。地味ではあるけどお蔦という女性の地の強さのなかに薄幸な境遇が透けてみえて、幸四郎さん茂兵衛の孤独感と呼応してる感じがすごく良かった。だからこそお蔦は茂兵衛を可哀想に思うし金品をあげるんだなと説得力があった。魁春さんのお蔦、唄はうまくないけどうまくなくてもいいし。ちょっとかすれた声が酒やけな雰囲気が出ててかえって味わいがあった。後半幕での娘とのどこか母娘として馴染んでない距離感とそれゆえの情味という部分がストレートにみえ、とても切なかった。先行きも苦労しそうだけど、ほんの少しでも幸せを感じられたらいいなあって思った。感情移入できるお蔦さんでした。最近、魁春さんは当たりが多い。
後半幕の利根川べりの老船頭の錦吾さん、友右衛門さんと若船頭の宗之助さんの三人のシーンがすーごく良かったというか楽しかった。錦吾さん、可愛いよ~~。歌六さんの波一里儀十がカッコイイ。前回演じたときより貫録。役からするとかっこよすぎかも。
とにかく周囲も揃って、かなり面白かった。だれるとこもないし、子役も可愛かったし、皆がそこの世界の住人で、『一本刀土俵入』の世界が丁寧に活写されていた。切ないけど暗くないし、お正月の演目として全然ありでした。