Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

歌舞伎座『柿葺落 八月納涼大歌舞伎 第一部・第二部』 3等B席センター

2013年08月17日 | 歌舞伎
歌舞伎座『柿葺落 八月納涼大歌舞伎 第一部・第二部』 3等B席センター

旧歌舞伎座の納涼歌舞伎とは雰囲気がだいぶ違っていた、なんでかしら?そして強烈に勘三郎さんの不在を感じた舞台でもありました。

第一部

『新版歌祭文「野崎村」』
たっぷり感があまりなかったかな。

お光@福助さん、以前も拝見していますが状況を説明しすぎるような大仰な表情が今回も気になりました。前半、朴訥な可愛らしさを強調しすぎてかえってお光らしくなっている。自然体じゃないんですね。無理に作り込んでいる感じを受けてしまう。ただ後半の尼姿になってからは恋を諦めた犠牲心ゆえの雑味が落ちた憂いがあってとても良かったです。やはり顔の表情は大事ですね。ただ今の福助さんは華やかさや色気があるのでお染のほうが似合うんじゃないかと思ったり。

お染@七之助さん、良い意味でお染の形代だった。文楽人形にしか見えなかった。ただ、そこの情感をしっかり込められているとはまだ言えない。でも丸本物のなかの人物として嵌る形が身体にできてきているんだと思う。


『春興鏡獅子』
七之助さんの弥生/獅子です。
だいぶ前に浅草歌舞伎で拝見したハラハラドキドキな踊りの時以来。だいぶ成長していました。特に弥生が丁寧に踊っていてかなり安定感ありました。女形らしい嫋やかな踊り。後半少しバテたのか獅子はまだ頑張ってという感じでした。弥生の時は時々勘三郎さんの拵えにそっくりで驚きました。


第二部
『髪結新三』
中村屋のものとはかなり違う。三津五郎さんはやはり菊五郎劇団の人なんだなあとしみじみ感じた。

新三@三津五郎さん、甘さがあまりなく思った以上に悪の色合い。髪結いの手順がさりげなくて髪結い職人の部分がリアル。陰質がある部分で上昇志向のある悪党風情がちらりちらりと見え隠れ。その悪さをさらりとやってのける新三。


『色彩間苅豆 かさね』
福助さんと橋之助さんの兄弟コンビ。どちらも似合う役だと思いますし期待していたんですがどうもピリッとしませんでした。疲れていらしたのかな~?動きがお二人とも重くて着物の捌き方ももっさり。

渋谷大和田伝承ホール『渋谷金王丸伝説』 中央列上手寄り

2013年08月03日 | 古典芸能その他
大和田伝承ホール『渋谷金王丸伝説』 中央列上手寄り

大和田伝承ホール『渋谷金王丸伝説』第四弾を観に行きました。「帰ってきた金王丸」と副題が付いています。昨年は事故で染五郎さん、出演できなかったからね…。

さて、正直に書きましょう。超久々に染五郎さんたら観客置いてきぼり系をやらかしてたような(笑)たぶん頭の中にあるものをきちんと構成できず終いだったんでしょう。今回は準備期間が少なかったようだし。とはいえ前がかなりクオリティが高かっただけに大いにダメ出しをしたいところ。素直に原案通りに振り付けしてけばいいのに天邪鬼ぶりが出ちゃった感。個人的に染五郎さんが今何を踊りたいか、何に思考がいってるかは見えた気はしたんですよね。振付にあれこれが色々入っていたし。でもそれを創作舞踊のほうには消化しきれてなかったってところ。とりあえず極端に観客置いてきぼりするのはやめよう。単純に分かりやすくしてほしいわけではないのです。取っ掛かりは欲しい。

あとワークショップの発表会を挟み込む形式も舞踊公演という目線からみると流れとして裏目に出たかな。ワークショップの皆さんや親御さんにしてみたらかなり嬉しかったとは思う。子供たちは可愛かったし。ワークショップ参加者の身内の観客が8割な公演なので今回のように発表会をメインしたほうが正解なのかなと思います。あくまでもその一環なんだし染五郎さん的にも今回はそこを押し出した感もあったし。

従来みたく金王丸伝説のほうだけ一気にいけば感想はまた違っただろうなとは思うけど。染五郎さんの創作舞踊の現代邦楽のテンポに合わせて刻んでいくような独特の振り付けはやはりとても好きです。日本舞踊ってこういうのもありなんだよっていう提示のしかたも。まあ、思考のほうだけが走りすぎなことは多々あって、そこはもっと練ってこようよとか考えようよというのもやっぱりある(^^;)

ただ試行錯誤な染ちゃんの創作舞踊と染ちゃんの子供たちへの日本舞踊の種まきはそれでも着実に育ってるなんだなという思いは感じて、その世界にも染ちゃんはようやく戻ってきたんだな~という感慨は実はある。1年前のこと考えると染五郎さん、戻ってきてくれてありがとうとファンとしては素直に思う。