歌舞伎座『八代目 中村芝翫襲名披露 吉例顔見世大歌舞伎 夜の部』3等A席前方下手寄り
長かったけど最後まで楽しく拝見(^-^)
『御浜御殿綱豊卿』
綱豊卿@仁左衛門さん、すっかり自家薬籠のものにして、技巧をかなりこらした台詞廻しも佇まいも綱豊としてごく自然にそこにあるものとして在るよう。華があり品があり、上に立つものとして大きさのなかに情熱を秘めている綱豊卿です。筋が通ろうが通るまいが、その情熱ですべてをおおいつくす。仁左衛門さんの綱豊卿は大石内蔵助へのシンパシーを隠さない。むしろ自分と内蔵助を同化させ完全に呼応させている。リーダーとしてこうありたい、その想いが伝わる。仁左衛門さんは『元禄忠臣蔵』が大好きなんだろうなって感じる。『大石最後の一日』をぜひやっていただきたい。
助右衛門@染五郎さん、演じ方は前回、大阪松竹座で仁左さん綱豊卿相手に演じた時と基本変わらないけど、造形の輪郭が太くなったのと受けの芝居に以前より緩急がついたので綱豊卿とのやり取りでの仁左衛門さんの少しずつあがる熱量と絶妙の間合いで呼応している。丁々発止が場の密度をあげていた。
仁左衛門さんの綱豊卿は大石内蔵助と完全に呼応させている。だから助右衛門には仇討ち以外眼中にない直情と志士ゆえの切実感が欲しいのだと思う。助右衛門@染五郎さんには真面目さのなかに哀がある。たぶん、そこが染五郎さんをずっと相手に選ぶ一要因かなと思ったり。喉を痛めてなければなあ。高い声が出せてたらもっと仁左さんと台詞廻しを合わせているのが明解だったろうに。助右衛門のキャラを前半、軽めに演じてるのは前からで、それが本質的なキャラではないというのを少しずつ見せていく。
助右衛門て拗ね者を自称してるけど本質的にはそうではない。そこをハッキリ見せてきたのが染五郎さんで、その部分を仁左衛門さんは望んだのだと、やはり思う。仁左衛門さんの綱豊卿の内蔵助への思い入れは綱豊卿の孤高さと繋がる。仁左衛門さんにとっては元禄忠臣蔵はあくまでも内蔵助の物語なんだと思う。染五郎さんの助右衛門は小者にみせよう、殿様が相手をするような人物ではないと必死にアピールしている。助右衛門は助右衛門で綱豊卿が評判通りの放蕩な人物ではないのがわかっているからだ。自身が浅野の殿様の無念さを内に抱えた志士だと暴かれたらどう転ぶか。殿さまの真意を図りかねての物言い。それなのに綱豊卿は引いてくれない。宥めすかし、脅しつつ追い詰める。そこに助右衛門は乗ってしまうし、殿さまの本音、真意を引き出せないかと、真っ直ぐに気持ちを吐き出していくのだと思う。真っ直ぐでないと届かない。染五郎さんの助右衛門はそこの台詞に悲哀がある。そうでないといけないのだと思う。
お喜世@梅枝さん、楚々としてしっとりした風情のなかに芯の強さをみせた。ウキウキとした町娘感は少な目だけど心根が真っ直ぐな娘なんだろうと感じさせてくれました。台詞の緩急が上手いですね。
綱豊卿って一介の浪人の助右衛門のことをよく知っている。江戸詰めの200石のお側用人だったと。いままでは、助右衛門が来た事をを知って話をするためにわざわざ調べさせた?と思ってたんだけど、今回、なんとなくお喜世から「兄さま」のことを問わず語りに耳にしていたのかなと思った。今回の梅枝さんのお喜世からそういう感じを受けた。雀右衛門さんのお喜は綱豊卿一途でな、それこそおぼこさのあるウキウキとした純粋な女だったけど、梅枝さんは、密かに助右衛門を兄としての信頼以上の好意をもっていたのでは?ってちょっと思わせた。
助右衛門が綱豊卿を激昂させた時、綱豊卿の刀を汚さないためにではなく自分が出ることで兄を守ろうとしてるようにみえた。手引きすると決めた時、助右衛門とともに一緒に死ぬ覚悟であったろうし吉良を討つのに成功したにせよ失敗したにせよ自害した気がする。梅枝お喜世はその雰囲気が一番強い。今回の梅枝@お喜世と染五郎@助右衛門からみえた関係性は10月の一連托生な染・梅の夫婦像をみたせいかもしれないので妄想を広げすぎたかもだけど。
江島@時蔵さんがかっこよかったです。知的なお役が似合いますよねえ。鏡山の尾上がまた観たい。
浦尾@竹三郎さんだったのが嬉しい。最近、豪華な衣装の竹三郎さんを拝見してなかったから。いじわるなお役だけど、やっぱりカッコイイ。
お古宇@宗之助さん、楚々として素敵だった。美人さん。
新井勘解由@左團次さん、どこかおおらかで綱豊卿のよき相談相手といった風情。
『口上』
ずらりと並び壮観です。口上はなにをするわけではないのですが楽しいです。新、芝翫さんの人柄が垣間見ることができる和やかで楽しい口上でした。いい話⇒オチになる口上が多かったような(笑)やっぱり左團次さんがフリーダムだった(笑)そしてなんと梅玉さんも!
『盛綱陣屋』
盛綱@芝翫さんのが丁寧に押さえた芝居、後半いつもの熱演になったけど、それほど悪いほうには出ず、いずれそれが味になるかも。台詞廻しはお父様の巧さはないのだけど、まだまだこれから。情味のある優しい盛綱でした。後半、声が割れてた感じになってたのが残念。
小四郎@左近くん、もう一人の主役といっていい小四郎を可愛らしく健気。台詞も達者でとても良かったです。
微妙@秀太郎さん、この役はどうかな?と思いましたが位取りがしっかりあったのがさすが。終始、情にもろいのが秀太郎さんらしい。
篝火@時蔵さんは鉄板。敵の陣屋に忍びこむほどの芯の強さと母として子を心配する風情の塩梅のよさ。
早瀬@扇雀さん、凛として似合ってました。個人的にはもう少し情味があって欲しかったかな。
和田兵衛秀盛@幸四郎さん、さすがの姿のよさ。赤っ面は珍しいですがカッコイイですね。ただ声が出ておらず体調悪いのかな?と心配に。口上の時も少しお元気でなかったし…心配。
時政@彦三郎さんは押し出しよくて、姿に「らしさ」があって想像以上によかったです。
信楽太郎@染五郎さんは舞台が明るくなったような華やか。身体もよく動き戦語りがさすがに上手い。所作台がいい音を出してました。
藤太@鴈治郎さんはおちゃめだけど品を落とさず、ふんわりと。
『芝翫奴』
私が拝見したのは歌之助くん。丁寧にきっちりと。頑張ってました~。演奏が豪華でしたね。
長かったけど最後まで楽しく拝見(^-^)
『御浜御殿綱豊卿』
綱豊卿@仁左衛門さん、すっかり自家薬籠のものにして、技巧をかなりこらした台詞廻しも佇まいも綱豊としてごく自然にそこにあるものとして在るよう。華があり品があり、上に立つものとして大きさのなかに情熱を秘めている綱豊卿です。筋が通ろうが通るまいが、その情熱ですべてをおおいつくす。仁左衛門さんの綱豊卿は大石内蔵助へのシンパシーを隠さない。むしろ自分と内蔵助を同化させ完全に呼応させている。リーダーとしてこうありたい、その想いが伝わる。仁左衛門さんは『元禄忠臣蔵』が大好きなんだろうなって感じる。『大石最後の一日』をぜひやっていただきたい。
助右衛門@染五郎さん、演じ方は前回、大阪松竹座で仁左さん綱豊卿相手に演じた時と基本変わらないけど、造形の輪郭が太くなったのと受けの芝居に以前より緩急がついたので綱豊卿とのやり取りでの仁左衛門さんの少しずつあがる熱量と絶妙の間合いで呼応している。丁々発止が場の密度をあげていた。
仁左衛門さんの綱豊卿は大石内蔵助と完全に呼応させている。だから助右衛門には仇討ち以外眼中にない直情と志士ゆえの切実感が欲しいのだと思う。助右衛門@染五郎さんには真面目さのなかに哀がある。たぶん、そこが染五郎さんをずっと相手に選ぶ一要因かなと思ったり。喉を痛めてなければなあ。高い声が出せてたらもっと仁左さんと台詞廻しを合わせているのが明解だったろうに。助右衛門のキャラを前半、軽めに演じてるのは前からで、それが本質的なキャラではないというのを少しずつ見せていく。
助右衛門て拗ね者を自称してるけど本質的にはそうではない。そこをハッキリ見せてきたのが染五郎さんで、その部分を仁左衛門さんは望んだのだと、やはり思う。仁左衛門さんの綱豊卿の内蔵助への思い入れは綱豊卿の孤高さと繋がる。仁左衛門さんにとっては元禄忠臣蔵はあくまでも内蔵助の物語なんだと思う。染五郎さんの助右衛門は小者にみせよう、殿様が相手をするような人物ではないと必死にアピールしている。助右衛門は助右衛門で綱豊卿が評判通りの放蕩な人物ではないのがわかっているからだ。自身が浅野の殿様の無念さを内に抱えた志士だと暴かれたらどう転ぶか。殿さまの真意を図りかねての物言い。それなのに綱豊卿は引いてくれない。宥めすかし、脅しつつ追い詰める。そこに助右衛門は乗ってしまうし、殿さまの本音、真意を引き出せないかと、真っ直ぐに気持ちを吐き出していくのだと思う。真っ直ぐでないと届かない。染五郎さんの助右衛門はそこの台詞に悲哀がある。そうでないといけないのだと思う。
お喜世@梅枝さん、楚々としてしっとりした風情のなかに芯の強さをみせた。ウキウキとした町娘感は少な目だけど心根が真っ直ぐな娘なんだろうと感じさせてくれました。台詞の緩急が上手いですね。
綱豊卿って一介の浪人の助右衛門のことをよく知っている。江戸詰めの200石のお側用人だったと。いままでは、助右衛門が来た事をを知って話をするためにわざわざ調べさせた?と思ってたんだけど、今回、なんとなくお喜世から「兄さま」のことを問わず語りに耳にしていたのかなと思った。今回の梅枝さんのお喜世からそういう感じを受けた。雀右衛門さんのお喜は綱豊卿一途でな、それこそおぼこさのあるウキウキとした純粋な女だったけど、梅枝さんは、密かに助右衛門を兄としての信頼以上の好意をもっていたのでは?ってちょっと思わせた。
助右衛門が綱豊卿を激昂させた時、綱豊卿の刀を汚さないためにではなく自分が出ることで兄を守ろうとしてるようにみえた。手引きすると決めた時、助右衛門とともに一緒に死ぬ覚悟であったろうし吉良を討つのに成功したにせよ失敗したにせよ自害した気がする。梅枝お喜世はその雰囲気が一番強い。今回の梅枝@お喜世と染五郎@助右衛門からみえた関係性は10月の一連托生な染・梅の夫婦像をみたせいかもしれないので妄想を広げすぎたかもだけど。
江島@時蔵さんがかっこよかったです。知的なお役が似合いますよねえ。鏡山の尾上がまた観たい。
浦尾@竹三郎さんだったのが嬉しい。最近、豪華な衣装の竹三郎さんを拝見してなかったから。いじわるなお役だけど、やっぱりカッコイイ。
お古宇@宗之助さん、楚々として素敵だった。美人さん。
新井勘解由@左團次さん、どこかおおらかで綱豊卿のよき相談相手といった風情。
『口上』
ずらりと並び壮観です。口上はなにをするわけではないのですが楽しいです。新、芝翫さんの人柄が垣間見ることができる和やかで楽しい口上でした。いい話⇒オチになる口上が多かったような(笑)やっぱり左團次さんがフリーダムだった(笑)そしてなんと梅玉さんも!
『盛綱陣屋』
盛綱@芝翫さんのが丁寧に押さえた芝居、後半いつもの熱演になったけど、それほど悪いほうには出ず、いずれそれが味になるかも。台詞廻しはお父様の巧さはないのだけど、まだまだこれから。情味のある優しい盛綱でした。後半、声が割れてた感じになってたのが残念。
小四郎@左近くん、もう一人の主役といっていい小四郎を可愛らしく健気。台詞も達者でとても良かったです。
微妙@秀太郎さん、この役はどうかな?と思いましたが位取りがしっかりあったのがさすが。終始、情にもろいのが秀太郎さんらしい。
篝火@時蔵さんは鉄板。敵の陣屋に忍びこむほどの芯の強さと母として子を心配する風情の塩梅のよさ。
早瀬@扇雀さん、凛として似合ってました。個人的にはもう少し情味があって欲しかったかな。
和田兵衛秀盛@幸四郎さん、さすがの姿のよさ。赤っ面は珍しいですがカッコイイですね。ただ声が出ておらず体調悪いのかな?と心配に。口上の時も少しお元気でなかったし…心配。
時政@彦三郎さんは押し出しよくて、姿に「らしさ」があって想像以上によかったです。
信楽太郎@染五郎さんは舞台が明るくなったような華やか。身体もよく動き戦語りがさすがに上手い。所作台がいい音を出してました。
藤太@鴈治郎さんはおちゃめだけど品を落とさず、ふんわりと。
『芝翫奴』
私が拝見したのは歌之助くん。丁寧にきっちりと。頑張ってました~。演奏が豪華でしたね。