歌舞伎座『八月納涼歌舞伎 第一部』 一等一階真ん中上手真ん中
『元禄忠臣蔵』「御浜御殿綱豊卿」
若手中心の配役しかも台詞劇ということで、最初正直なところ歌舞伎座の大きい舞台でどの程度の空間を埋められるか心配だった。ヘタすれば舞台の空間がスカスカになってしまう危険性があるなあと思っていた。出演している役者が大好きな人たちばかりだったので尚更、ドキドキしながらの観劇になった。が、その心配はうれしいことに杞憂だった。思っていた以上に良い舞台で話自体をかなり面白く観ることが出来た。それぞれの役者が持ち味を生かしていてとても見ごたえのあるものでした。全体的にテンポが早くたっぷり魅せるという部分では先輩たちにはまだまだ及ばないものの、勢いがあり、また一生懸命さがうまく噛み合ってとてもわかりやすいものになっていたと思う。これから彼らが「歌舞伎」を引っ張っていくんだなーという想いを感じつつ、爽やかな気持ちになれました。
綱豊卿役の染五郎の貫禄ぶりにまずは驚かされた。どちらかというと初々しく若々しい感じの姿が似合うし、そういう役しか観た事がなかったせいか今まで貫禄という部分を感じたことがなかった。ところが今回は大きい存在感があり、きっちり受ける芝居をしていたのが印象的。膨大な台詞を高麗屋ならではの調子の良い節回しで語り聞かせてくれる。またその台詞にあまり飲み込まれることなく殿様としての心情を言葉の端々に感じさせてくれました。なんというかもどかしさとか寂しさみたいなのが伝わってきた。勿論、もう少し聞かせどころでたっぷり台詞を言って欲しかったとか、ちょっといっぱいいっぱいな部分もあったし手放しでは褒められない部分もいくつかはあった。けれど初役でしかも腹で性根を見せる難しい役だったにも関わらず、かなり良い出来だったと思う。それになんといっても姿が麗しくていいわ。最後の能衣装での立ち回りの部分は「美しか~」と見惚れちゃいました(笑)。白塗りお殿様で美しいと思わせられる役者はあまりいないし、台詞術の部分ではこの役は染五郎の柄に合う役だし、今後もやっていくであろう役なのでどんどん深めていってほしい。
助右衛門役の勘太郎は大熱演。一途な田舎侍というこの役にぴったりで朴訥さと熱血漢のバランスが良い。一本気なところが勘太郎の若さと相まって、とても説得力があった。台詞術はお父さんの勘九郎にそっくりで、ちょっとした間の取り方が絶妙。これは天性のものもあるだろう。涙を流しながら綱豊卿と丁々発止でやりとりする部分などはその熱い心情に胸を打たれる。勘太郎くんは確かに勘九郎さんの芸風を確実に受け取る役者になっていくだろう。今ある品のよさとこってりした勘九郎の芸風をうまくかみ合わせていってほしい。すでに勘太郎ならではの芸風がかなり出てきているし今後が楽しみ。
お喜世役の七之助の最近成長著しい。女形をやることが多いが姿がすっきりきれいだし、なんといっても声がいい。助右衛門とのやりとり部分の必死さに愛情がみえてとても良い場面にしていた。もう少しふっくら可愛らしい雰囲気と殿様への甲斐甲斐しさが出れば、お喜世という役柄により説得力が出たかなとは思うけど、けなげさがきちんと見えるのはとてもよかった。
江島役の孝太郎さんも予想外の良さ。柄からいうとお喜世役のほうが合うかなあと思っていたのだが、才の切れる江島役を落ち着いた雰囲気でこなし、こういうお役も出来るんだあと感心してしまいました。あんなに小柄なのに奥と取り仕切っている女性としての大きさがありました。。お喜世をいじめる局たちを諌めるシーンでもきっぱりしてて、なんというかカッコイイ女性をかっこよく演じてて気持ちよさげ。またさりげなく綱豊卿を気遣う姿がちょっといじらしい雰囲気もあって孝太郎さんらしい。
新井勘解由役の橋之助は今回の舞台のなかでは一番落ち着いてわりとキーになる要所をきっちり引き締めておりました。 綱豊卿と勘解由のやりとりの部分がしっかりしているので後半がきちんと生きてきた感じ。殿の相談役という部分以外に気を許せる友人といった感じがあって綱豊卿の普段の生活がどれだけ緊張感のなかでのものなのかが垣間見えるものとなっていた。
『蜘蛛の拍子舞』
華やかで楽しい舞踏劇でした。福助さんの傾城姿は本当に色っぽい。福助さんの色気は肉感的でかなり女性ぽいのです。それが後半、蜘蛛の精での荒々しい化粧に大胆な足捌きになるギャップがお見事。迫力があってよかったです。
三津五郎さんが相変わらず踊りの美しさを見せます。でもバランス的には資質が同じ橋之助さんとの踊りのほうがより華やかに見えますねえ。勘九郎さんが金時役で終盤にでて、美味しい部分をもっていきました。観客を喜ばせることに関してはお見事。
『元禄忠臣蔵』「御浜御殿綱豊卿」
若手中心の配役しかも台詞劇ということで、最初正直なところ歌舞伎座の大きい舞台でどの程度の空間を埋められるか心配だった。ヘタすれば舞台の空間がスカスカになってしまう危険性があるなあと思っていた。出演している役者が大好きな人たちばかりだったので尚更、ドキドキしながらの観劇になった。が、その心配はうれしいことに杞憂だった。思っていた以上に良い舞台で話自体をかなり面白く観ることが出来た。それぞれの役者が持ち味を生かしていてとても見ごたえのあるものでした。全体的にテンポが早くたっぷり魅せるという部分では先輩たちにはまだまだ及ばないものの、勢いがあり、また一生懸命さがうまく噛み合ってとてもわかりやすいものになっていたと思う。これから彼らが「歌舞伎」を引っ張っていくんだなーという想いを感じつつ、爽やかな気持ちになれました。
綱豊卿役の染五郎の貫禄ぶりにまずは驚かされた。どちらかというと初々しく若々しい感じの姿が似合うし、そういう役しか観た事がなかったせいか今まで貫禄という部分を感じたことがなかった。ところが今回は大きい存在感があり、きっちり受ける芝居をしていたのが印象的。膨大な台詞を高麗屋ならではの調子の良い節回しで語り聞かせてくれる。またその台詞にあまり飲み込まれることなく殿様としての心情を言葉の端々に感じさせてくれました。なんというかもどかしさとか寂しさみたいなのが伝わってきた。勿論、もう少し聞かせどころでたっぷり台詞を言って欲しかったとか、ちょっといっぱいいっぱいな部分もあったし手放しでは褒められない部分もいくつかはあった。けれど初役でしかも腹で性根を見せる難しい役だったにも関わらず、かなり良い出来だったと思う。それになんといっても姿が麗しくていいわ。最後の能衣装での立ち回りの部分は「美しか~」と見惚れちゃいました(笑)。白塗りお殿様で美しいと思わせられる役者はあまりいないし、台詞術の部分ではこの役は染五郎の柄に合う役だし、今後もやっていくであろう役なのでどんどん深めていってほしい。
助右衛門役の勘太郎は大熱演。一途な田舎侍というこの役にぴったりで朴訥さと熱血漢のバランスが良い。一本気なところが勘太郎の若さと相まって、とても説得力があった。台詞術はお父さんの勘九郎にそっくりで、ちょっとした間の取り方が絶妙。これは天性のものもあるだろう。涙を流しながら綱豊卿と丁々発止でやりとりする部分などはその熱い心情に胸を打たれる。勘太郎くんは確かに勘九郎さんの芸風を確実に受け取る役者になっていくだろう。今ある品のよさとこってりした勘九郎の芸風をうまくかみ合わせていってほしい。すでに勘太郎ならではの芸風がかなり出てきているし今後が楽しみ。
お喜世役の七之助の最近成長著しい。女形をやることが多いが姿がすっきりきれいだし、なんといっても声がいい。助右衛門とのやりとり部分の必死さに愛情がみえてとても良い場面にしていた。もう少しふっくら可愛らしい雰囲気と殿様への甲斐甲斐しさが出れば、お喜世という役柄により説得力が出たかなとは思うけど、けなげさがきちんと見えるのはとてもよかった。
江島役の孝太郎さんも予想外の良さ。柄からいうとお喜世役のほうが合うかなあと思っていたのだが、才の切れる江島役を落ち着いた雰囲気でこなし、こういうお役も出来るんだあと感心してしまいました。あんなに小柄なのに奥と取り仕切っている女性としての大きさがありました。。お喜世をいじめる局たちを諌めるシーンでもきっぱりしてて、なんというかカッコイイ女性をかっこよく演じてて気持ちよさげ。またさりげなく綱豊卿を気遣う姿がちょっといじらしい雰囲気もあって孝太郎さんらしい。
新井勘解由役の橋之助は今回の舞台のなかでは一番落ち着いてわりとキーになる要所をきっちり引き締めておりました。 綱豊卿と勘解由のやりとりの部分がしっかりしているので後半がきちんと生きてきた感じ。殿の相談役という部分以外に気を許せる友人といった感じがあって綱豊卿の普段の生活がどれだけ緊張感のなかでのものなのかが垣間見えるものとなっていた。
『蜘蛛の拍子舞』
華やかで楽しい舞踏劇でした。福助さんの傾城姿は本当に色っぽい。福助さんの色気は肉感的でかなり女性ぽいのです。それが後半、蜘蛛の精での荒々しい化粧に大胆な足捌きになるギャップがお見事。迫力があってよかったです。
三津五郎さんが相変わらず踊りの美しさを見せます。でもバランス的には資質が同じ橋之助さんとの踊りのほうがより華やかに見えますねえ。勘九郎さんが金時役で終盤にでて、美味しい部分をもっていきました。観客を喜ばせることに関してはお見事。