Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

内幸町ホール『すずめ二人會 春の巻』

2007年03月27日 | 古典芸能その他
内幸町ホール『すずめ二人會 春の巻』

内幸町ホールで行われた歌舞伎役者の中村芝雀さんと落語家の林家正雀さんがコラボしたミックス寄席『すずめ二人會 春の巻』に行ってきました。私にとって落語初体験です。落語はまともに聴いたことがなく、今までなんとなく敬遠してきたのですが今回「落語って面白い」という認識に変わりました。こんなに面白いものだとは、やはり体験してみないとわからないですね。

林家彦丸「たらちね」
長屋で起こる私がイメージするいかにも落語、な楽しいお話でした。

林家正雀「毛氈芝居」
歌舞伎「蔦紅葉宇都谷峠」が組み込まれた落語ですんなり噺に入っていけました。すごーく楽しかった。

「芝雀×正雀トークショー」
出会いのお話から今回の二人会に至るお話。正雀さんの師匠、8代目林家正蔵さんのこと。芝雀さんの五月演舞場と六月歌舞伎座への意気込みとか、色々。

芝雀×正雀掛け合い噺「芝浜革財布」
落語「芝浜革財布」を政五郎(正雀さん)、おたつ(芝雀さん)夫婦だけの会話話に仕立て、基本は語りで少しだけ芝居気ありつつ話を進めていきました。思った以上に楽しかったです。情景がありありと浮かびました。落語家さんと役者の表現方法が違うんだというのもわかりました。正雀さんは基本、人に語りかける感じ、芝雀さんは感情表現が入り、人に聞かせるというよりは演じる感じになっていました。芝雀さん、後半かなりノッていたように思います。

評判がよければ次回に繋げたいとのことでしたが是非とも次も拝見したいです。

歌舞伎座『通し狂言 義経千本桜 夜の部』 3等A席前方中央

2007年03月24日 | 歌舞伎
歌舞伎座『三月大歌舞伎 通し狂言 義経千本桜 夜の部』3等A席前方中央

久しぶりに昼夜通して観た感想ですが、改めて通しで観ると物語が意図するものがよく見えてくるなと思いました。源平の戦いのなか大きなうねりに巻き込まれた人々の別れの物語。そして「時代」のなかの人としての在り方、高潔さといったものが立ち上がってきます。

「木の実」
小せんの秀太郎さんが絶品。色気と強さ、そして母としての細やかな優しさがある小せん。権太の仁左衛門さんは愛嬌が勝る権太。いがみの部分が前回(2003年)よりあっさり。全体的に家族愛を強調した演出だったような気がする。

「小金吾討死」
小金吾の扇雀さん、前髪姿が似合い若衆の雰囲気がきちんとあった。立ち回りも頑張っていたと思うが決まりが少々弱い。立ち回りに壮絶さ哀れさもあんまり感じられず。今まですっきりした立役がやっていたのしか観てないので(愛之助さん、信二郎さん、染五郎さん)そのイメージが強すぎるのかも。

「すし屋」
お里の孝太郎さんが上手くなった。おきゃんな田舎娘風情の可愛らしさと立場をわきまえた切なさとバランスよく。権太の仁左衛門さんはやはり家族の情愛を中心に気持ちを持ってきている。今回、「木の実」で愛嬌が勝ってしまったので戻りの部分のメリハリが少々薄れてしまったのが残念ではあるが「情」の部分の細やかさが上手い。弥左衛門の左團次さん、過不足なくまとめていたし人物造詣もしっかりしていて良い。ただ個人的にかなり情の濃かった坂東吉弥さんのが印象強くて…。

「川連法眼館」
佐藤忠信の菊五郎さんは文句なく絶品だと思う。武将としての格と鋭さが良い。狐忠信のほうはケレンの部分と狐言葉のメリハリがかなりきつそうだな、と。ただその分狐の親を思う情愛や可愛らしさがとても深く、魅せる。静御前の福助さん、可愛らしい。やっぱ静御前に関しては福助さんのが好きかも。源義経の梅玉さん、この段の義経は梅玉さんじゃなきゃ、という気がしてくるから不思議。似合いすぎ。

「奥庭」
能登守教経の幸四郎さん、衣装、拵えともにお似合いで不気味さもあり。夜の部はたったこれだけの為に出演。でもこういうご馳走が芝居を締めるのですね。歌舞伎らしい大団円で通し狂言を観た満足感に浸らせてもらえた。今月も大顔合わせだったんだなあとつくづく思いました。


歌舞伎座『通し狂言 義経千本桜 昼の部』 3等A席前方下手寄り

2007年03月21日 | 歌舞伎
歌舞伎座『三月大歌舞伎 通し狂言 義経千本桜 昼の部』3等A席前方下手寄り

「鳥居前」
福助さんの静御前、色気と可愛らしさのバランスが私好きです。菊五郎さんは近頃、「熱演」ということに興味を持ち始めたんでしょうか?「鳥居前」の忠信は超熱演でした。

「渡海屋」「大物浦」
は幸四郎さんが銀平&知盛の拵えが似合いすぎ。カッコイイ。いつもの押し出しの強い芝居でしたが、私はそれが好きらしい。いかにもニンに合った役だわ~と惚れ惚れ。典侍の局の藤十郎さんも非常に良かった。私的に女形の藤十郎さんは時代もののほうが良いような気がするなあ。

「道行」
すごーくわかりやすい道行だった。芝翫さんならでは、ですね。菊五郎さんはこちらのほうではチトお疲れだったかも。鳥居前で頑張りすぎたか、いつものキレと華がチト足りなかったような?その分、仁左衛門さんが藤太なのに、三枚目キャラなのに華、華がありすぎだわって感じで楽しゅうございました。

新宿バルト9『ゲキ×シネ 髑髏城の七人(アオドクロ)』

2007年03月02日 | 舞台関連映像(映画・TV・DVD)
新宿バルト9『ゲキ×シネ 髑髏城の七人(アオドクロ)』

会社帰りに新宿バルト9にゲキ×シネ『髑髏城の七人(アオドクロ)』を観に行きました。生でも観劇してるし、銀座でゲキ×シネ上映した時も観てるしDVDでも何度も観ているのですが、久しぶりに大きな画面で観たくて。新宿バルト9はつい最近出来たシネコン。評判通り、音響は良いし、スクリーンも良いし、迫力満点でした。家で小さな画面で観てるより大きな画面で観るほうが臨場感もたっぷり。しかもデジタル対応のスクリーンのせいか解像度が美しくて役者の表情がよく見える。久々に『アオドクロ』を観たせいもあるのか新たな発見があったりして、わざわざ映画館まで足を運んだかいがありました。

『アカドクロ』や『朧の森に棲む鬼』と較べると色々過剰装飾で、いくつかの場面でこのシーン余計だなあ…とか思ったりもしましたが勢いがあるからこれはこれで大好き。特に第二幕からの疾走感は見事。爽快感あるし観てて後味すっきり。若い座組みだったんだなと改めて思ったし、あと登場人物が思っていた以上に多いのにも驚いた!すごい贅沢な芝居だったのねと。『アオドクロ』を生観劇した時のことも一気に思い出して感慨深い。天魔王の舞にはやっぱりクラクラしちゃうし、それと染ちゃんの着流し姿はやっぱ素敵。はだけた裾からみえる生足に目が釘付けだったり(笑)染から視線もらった、と勘違いしたシーンはここだったとか(笑)。ラスト、花道を去っていく捨之介に未来への風を確かに感じたことも思い出した。

『朧の森に棲む鬼』が「いのうえ歌舞伎第二章」としてドラマ中心になっていたのもよくわかった。いのうえさんも進化してるのね~。 そして染ちゃんも2年のあいだにやはり役者として成長している、というのも感じたな。