Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

野田地図(NODA・MAP)第20回公演『逆鱗』S席1階上手脇席

2016年02月28日 | 演劇
野田地図(NODA・MAP)第20回公演『逆鱗』S席1階上手脇席

野田さん特有の言葉遊びやイメージの飛翔は相変わらずだけど、最近どんどん表現がストレートにと言うわかりやすく作ってきていますよね。とにかくわかって欲しいという気持ちや、わかってもらえないと困るという危機感とかがあるのかなとか。

前半のどこか不条理な童話めいた世界から一気にそこここに散りばめられた言葉たちが回収され纏められ重く切ない世界へと昇華させていく。言葉に翻弄される世界から真直ぐに向けられた世界にと。あの人魚の咆哮のような叫びを受け止めたい。

主要の役者陣たちのバランスが良かった。アテガキだからという以上の何かがそこに現れていた。皆の個が立ちながらも絶妙なアンサンブル。「真摯に」という言葉が浮かぶ。

狂騒で狂想な前半と静謐な狂気の後半。反芻していてもメッセージがあまりにストレートすぎて芝居をあれこれと楽しむというより胸が痛くなってくる。舞台上でイメージを飛翔させてきた野田さんがここまでイメージを固定化したものを提示せざるおえない「今」を思う。「逆鱗」は死者の想いということであったろうか。拾い集め自分の身につけ人魚は咆哮するのだ。怒りと哀しみと。それを母たちがまた呑みこむ。

松たか子ちゃんのNINGYOには華と存在感だけでなく凄味が出てきたような気がした。可憐さと包容力のなかに毒も含まれた。にしてもたか子ちゃんの声と台詞の美しさには彼女を舞台で何度観ても毎回胸に迫る。たぶん、感覚的な部分で好きなんだと思う。私は染五郎ファンだけど、だからたか子ちゃんが好きというわけでなく全然別なところで女優さんとして大好き。兄妹だけど、まったくそういう感覚なしで別々で好き。でも昨日は兄妹だなって強烈に思ったシーンが。それは「怒りと哀しみがある咆哮」。昨年の染ちゃんのお岩様と何か通じててビックリした。

作・演出:野田秀樹
美術:堀尾幸男
照明:服部 基
衣裳:ひびのこづえ
選曲・効果:高都幸男
振付:井手茂太
映像:奥秀太郎
美粧:柘植伊佐夫

出演:
NINGYO:松たか子
モガリ・サマヨウ:瑛太
鵜飼ザコ:井上真央
サキモリ・オモウ:阿部サダヲ
鵜飼綱元:池田成志
イルカ・モノノウ:満島真之介
鰯ババア、逆八百比丘尼:銀粉蝶
柿本魚麻呂:野田秀樹

秋草瑠衣子 秋山遊楽 石川朝日 石川詩織 石橋静河 伊藤壮太郎 大石貴也 大西ユースケ 織田圭祐 川原田樹 菊沢将憲 黒瀧保士 近藤彩香 指出瑞貴 末冨真由 竹川絵美夏 手代木花野 中村梨那 那海 野口卓磨 的場祐太 柳生拓哉 吉田朋弘

東京オペラシティ『モスクワ国立交響楽団 Aプロ』C席2階LA

2016年02月06日 | 音楽
東京オペラシティコンサートホール『モスクワ国立交響楽団 Aプロ』C席2階LA

パヴェル・コーガン指揮
ソリスト:ダニール・ハリトーノフ(pf)
モスクワ国立交響楽団

プログラムが聴きやすいチャイコフスキーなので両親連れで鑑賞。爆音、爆走な演奏で楽しかったです。全体的にテンポがやたら速い演奏でかなり個性的。ちょっと雑かな?と思う部分もあれど音は揃っていてしかも綺麗で安定感あり。弦がやたらと巧い。第一奏者の音色がかなり好みでした。管楽器も気持ちのいい音。なかなかレベル高い。ロシア系の音の作りってやっぱり好きだな。

ソリストのダニール・ハリトーノフはまだ幼さ残る17歳のなかなかの美青年。タッチがしっかりしており華やかさのある音色で特に低音が良い音色を鳴らす。まだ情感の部分は若いので足りないけど伸びやか。真摯さのある雰囲気で先行き有望なピアニストだと思う。


【プログラム】
グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番

<<アンコール>>
ショパン:エチュードOp.25-1"エオリアンハープ"
チャイコフスキー:「くるみ割り人形」よりアダージョ
岡野貞一「故郷(ふるさと)」

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チャイコフスキー:交響曲第5番

<<アンコール>>
ボッケリーニ:メヌエット
ドヴォルザーク:スラブ舞曲第一番(第二集より)
パガニーニ:「無窮動」