Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

日生劇場 『髑髏城の七人 アオドクロ』3回目 S席1階花道外真ん中後ろ

2004年10月26日 | 演劇
日生劇場 劇団☆新感線 Shochiku-mix『髑髏城の七人 アオドクロ』3回目 S席1階花道外真ん中後ろ

3回目です(笑)。そして3回目にして完全のアオドクロという芝居にハマりました。なんかねえ、役者の役への感情の入り方が半端じゃなくいい感じになって、ストーリーや役者の動き方もわかってたくせにいったいどうなっていくんだろうとドキドキしながら観てしまいました。そして後半は涙腺刺激されまくり…。「泣くのか?おい、泣いちゃうのか?俺?」とかなり自分にツッコミしまくりでしたけど抑えられませんでした(笑)

とにかく声を大にして言いいたいのは「染、あんたやっぱすごいかも」だ。2回目鑑賞時に捨之介@染五郎がかなり彼自身のキャラにしていて捨之介が物語を動かしていく主役だというのを見せつけてくれたのでさすがと思っていたのですが、今回それがもっと進化していた。染ちゃん、ちょっとすごすぎ。捨之介という人物はあまり自分の感情を出さないキャラで後半ようやくむき出しになっていくのだけど、その時の感情の爆発具合というか感情の振れ具合の捉え方がすごかった。完璧に染の捨之介として確立させてた。そして染だけじゃなく、皆がそれぞれのキャラをしっかり掴んで個々が際立っていながらも纏まりがあるという、ほんとになんか今回芝居のパワーというものが体に響いてきて感動。

日生劇場『髑髏城の七人 アオドクロ』2回目 S席2階最前列真ん中

2004年10月22日 | 演劇
日生劇場 劇団☆新感線 Shochiku-mix『髑髏城の七人 アオドクロ』2回目 S席2階最前列真ん中

前回観た時よりパワーアップしてた。捨之介というキャラがどうしても古田さんのイメージが強すぎてどうなんだろうと思っていた染の捨之介がようやく染自身のキャラにようやく引き寄せてきたというか、開き直ったでしょ?感があってかなりいい感じ(笑)。色男自覚系の軽さを見せつつ、弱いものには情をかけずにいられない優しさと、業をひきづって居所を探しているような寂しさを持ち合わせた捨之介になっていた。

それにつけてもやっぱり「女好き」には見えないねえ。染本人がどうかは知らないけど、役者としては「女好きを誰もが認める男が見せる独特の色気」ってやつは持ち合わせていない。「女好きで情に厚い捨之介」は染のニン(柄)じゃないんだなあ。それを自覚してキャラを変えてきたのは正解。アオドクロでは「抜かずの兵庫」を「こぶしの忠馬」に演じる人に合わせて変えたんだから染キャラのほうも違う名前で新しいキャラでやったほうが良かったかもね。まあ、あと10年経ってどうなるかだな。少しは女好き系の色気も出せるようになってもいいとは思うので伯父さん(吉右衛門さん)にでもその独特の色気は教わんなさいね。

それにしてもこれでようやく捨之介のキャラも前に出てくるようになったので、前回の天魔王のほうがキャラ強すぎてバランス悪かった部分は今回ようやく結構納得できた。まあでも私的にはやっぱり天魔王@染さまの「敦盛」の舞にくーらくら、でしたけどね。それに孤高の存在って好きなんだよ~。

個性が強すぎてまとまりの部分で物足りなさがあった7人もまとまりが出てきて髑髏城へ向かうモチベーションがはっきり見えて良かった。22日はソワレ1回公演だったおかげで皆の動きのキレが良かったのと台詞の響きも通りが良かったせいでなおのこと満足。前回(11日)はちょっとお疲れモード入ってるみたいで皆さん立ち回りとかいつものキレのよさが無かった部分あったし。その代わり必死さがあってそれも良しでしたけど(^^)

日生劇場『髑髏城の七人 アオドクロ』S席2階最前列真ん中

2004年10月11日 | 演劇
日生劇場 劇団☆新感線 Shochiku-mix『髑髏城の七人 アオドクロ』S席2階最前列真ん中

ああ、なんというか私は劇団☆新感線はやっぱり、いのうえ歌舞伎が好きみたいです。ネタものも大笑いできて楽しいんだけどその場限りであまり余韻がないからなあ。いのうえ歌舞伎のほうがきちんとしたドラマがあって、その上でのお遊びやショーアップがプラスされてるので、人物像をあれこれ考える余地があるのがいい。

それにしても今回のアオドクロは本当に派手でしたねえ。色んなものがてんこ盛り。春のシンプルなアカドクロを観ているから尚更、よくぞここまで派手にできたものだと感心。一度ぎりぎりまでシンプルにしてドラマ中心にまとめた舞台をまた様々な色付けをしていくのは案外大変なんじゃなかろうかと思った。

私はアカドクロは新国立観劇派なので役者がこなれてない&演出的に物足りなさがあったのしか観ていないせいもあって、かなり楽しんだことは楽しんだんだけどそれほど満足していなかった。もちろん、古田新太さん、橋本じゅんさん、水野美紀(演技がうまくなっていた)の三人がそれぞれに(やるせなさは古田さん、慟哭はじゅんさん、切なさは水野嬢)をきちんと演じていいドラマを見せてはいたが、よりその部分を演じられる場をたっぷりもらっていたわりにもう一歩届かせるには弱かったと思う。

なので、今回の勢いがあり、わくわく感のあるアオドクロのほうがかなり好き。今回観たアオドクロもまだはじまったばかりなので役者たちのまとまりという部分が少し足りない気もするが、全体的な印象ではかなりレベルが高い。役者が若いから動きがすごいとかそういうのではなくきちんと物語としてドラマがより明確であった。アカに較べて遊びの部分が多いにも関わらずドラマとしての情報量が多かった。どうしても歌や踊りやネタが多いせいでドラマが流れていきがちなのを要所要所できっちり本筋に戻していく染五郎と鈴木杏の存在はかなり大きのかも。

染五郎ファンとしては美味しい場面たっぷりで大満足。オープニングでロック調の歌にあわせて踊っちゃうし、染の鼓の生演奏(これが上手なんだ)が聞けるし!。それにしても飄々としたキャラの捨之介はなんとなくイメージできたけど、冷酷な天魔王をどう演じるか楽しみでもあり少し心配でもあった。しかしこちらの想像を上回る悪役ぶりにく~らくら~。冷ややかな笑みを浮かべる天魔王の姿は天からなにかが降りてきた感じでしたわ。本当に今回の天魔王@染のキャラは凄かった。似合うだろうとは思ってはいたけど、まさかこれほど悪役が似合うとも思ってみなかったよ。妄執に囚われた悪鬼であり、しかも堕天使のごとく美しい。うげー、自分で書いてて恥ずかしいやっ。すまんね、ただのバカなファンの目線なので読み飛ばしてくれや。いやでもほんと「美しい」です。もうこうなったら恥ずかしげもなく「染さま」と呼ばせていただきますわ、ええ。

染さまは、天魔王は確実に物にしている反面、捨之介のキャラはまだかなり迷いがある感じがした。飄々とした感じは出門@阿修羅城の瞳キャラの流れでうまく出ているんだけど、「女好き」キャラの部分を持て余しているというか。古田さんの捨之介のイメージを大事にしようとしているのはわかるがどうしてもうまく染のキャラクターにハマってこない。どことなく品が良すぎるのだ。正面から向かっていくものに対しては男女問わずかなりの色気を出す染であるが、いわゆる「とにかく女好き」方面のエロさはハッキリ言って無い。どこか一途なほうが「らしい」んだよね。なのでエロ系色男が板についた古田さんと同じようには無理。こうなったら「女は大事にしないといけません」なフェミ男系の捨之介にしていけば案外いけるかも。

ここからは染ファンの叫びです(笑)

いのうえさん、染への要求多すぎだと思われ。やっちゃう染も染だけど。歌こそ歌わなかったけどダンス(洋舞)踊って、動きづらそうな琵琶を持たされ、ネタものもやり、それで鼓打って、日舞入った踊りやって、殺陣やって、それで捨之介として天魔王としての人なりを声音で演じわけして、セリフだけで心情を見せるって、これなかなかできる人いませんよ。歌舞伎界の人だからやれるじゃなくて、歌舞伎界でもいないってばっ。(これを書いた後でパンフ読んでたらなんと松たかこ@染妹が同じこと書いていた。やっぱそうだよね。)

沙霧@鈴木杏
若いのにかなりの存在感がある。声の通りもよく、生き生きと可愛らしく一生懸命さがキャラに合ってて清々しい。これで背負っているものの重さを感じさせる切なさが出ればもっといいんだけどなあ。狭霧役には若すぎる感じ。でもキラキラした目は本当に印象的。

蘭兵衛@池内博之
声が良い!とにかく声が良いよ~。これは舞台に立つ上で武器になる。台詞回しはまだ感情をのせるまでにはいってないけど初舞台とは思えないほどしっかり演じていたと思う。かなり濃い日本人離れしたお顔&スタイルなのに着物姿が案外似合うし、腰でしっかり着こなしていたし思った以上に所作がきれい。カンがいいのかもしれないと思った。かなり中性的な蘭兵衛を演じていたがもっと男らしい蘭兵衛のほうがキャラには合ったんじゃないかな。それがちょっと残念。立ち回りに関しては微妙すぎ。あのふわふわ感は演出?それとも池内くんの運動神経が鈍いの?もっとスピードが欲しいなあ。

極楽太夫@高田聖子
うわー、色っぽい。旦那と一緒の舞台だけど躊躇なしに色気むんむんを出してましたね(笑)。その潔さが好きよ。前半はちゃきちゃきの姉御でかっこよかった。でも後半、聖子さんのうまさや良さが出てなかったよー。無界の女たちが殺されての悲しさをもっと出して欲しかった。あと髑髏城でももうちょっと活躍してほしかった。中性的な蘭兵衛だったのでアカの時と同様に相対するのは忠馬じゃなくて極楽太夫のほうが説得力がでたような気がするんだけど…。聖子さんを大プッシュしてた私に同行者が「言うほどうまいかな?」って言うんですよ(涙)。うええええん、いのうえさんもっと聖子さんの良い部分見せてくれーー。

渡京@粟根まこと
裏切りの三五@河野まさとさんとは違った裏切りキャラ。表情が豊かで観てて楽しい~。コロ助との一人会話が絶妙。粟根さんの蘭兵衛はどんなだったんでしょう?この飄々と色んなものを裏切りまくる渡京のキャラが合いすぎて想像できませーん。

忠馬@佐藤アツヒロ
ジャニーズ出身というのは知っていたのですが、光GENJIのメンバーだったんですね。フリーダム♪ネタで「あれ?」と気が付く私。すいません、昔からアイドルに疎いもので。元気でしたねー、ガキ忠馬でしたねー。しかし、まあ動く動く。運動神経の塊って感じの動き方には感心しました。キャラ的には真っ直ぐな怒りという感じで良かったです。どうせならもっと怒りを現してもいいくらい。ああ、しかし、感情がいつもMAXすぎて疲れる部分も。なんつーか緩急がなさすぎ。特に仲間が殺されたシーンの慟哭の部分は弱い。泣かせどころだろーーっ。この部分はじゅんさんにも厳しい目で観た分もっと厳しいぞっ、と。

カンテツ(贋鉄斎)@三宅弘城
卑怯だーー、このアホキャラは卑怯だーー。まさしく飛び道具?「タナカ」が頭から離れないーー。贋鉄斎は元々美味しいキャラだとは思うけど、美味しいところ持っていきすぎ。しかし、この人の運動神経にもかなり驚き。トンボ切るところはまじですごい。100人切りのところでは染@立役者と三宅さん@三階さん的キャラなバランスでなんか「まさしく現代の歌舞伎だーー」となんか妙なところで感心しちゃったよ。これは絶妙配役でした。

狸穴二郎衛門@ラサール石井
まったく期待していなかっただけど、思ったよりうまかった。。まさしく狸やん。腹に一物もってそうでしかもちゃんと考えての、な部分がきちんと出てたのがいい。最後のキャラ切り替え部分はもっと重さを出してもいいかなとは思ったけど違和感はなかった。

甚平@村木仁
この方は実はあまり好きなタイプの役者ではないのです。なんだか観ててウザーーと今までは思っていたのですが、今回の体張っての演技は良かったかも。思いっきり笑えたし、鍬の立ち回りが上手かった。水呑百姓に見えない体型なのがチト残念ですが。しかしどうみても忠馬の兄弟には見えん…。

髑髏党の主要キャラに関してはネタ使いに終始しましたねえ。染天魔王がかなり非情でドラマチックだったのでもう少しマジ演技もさせてもよかったんじゃないかなーとか。それじゃ舞台が4時間以上になっちゃいますが…。鋼の鬼龍丸@高杉亘はコスプレが…動きづらそう。でもネタは笑えました。乱の剛厳丸@小村裕次郎もおばかな敵役って感じは楽しかったです。刀の非道丸@川原正嗣も最初は結構非道キャラでいきそうだったのに最後おもいっきりネタキャラになりました(笑)。アクションだけじゃなく芝居もなかなか。無明&およし@村木よし子と無音&おかな@山本カナコは髑髏党キャラのほうがかっこよかった。この二人の歌がよかったなあ。今まで新感線の歌って歌詞が聞き取れなくて当然なのかな?と思ってましたが、今回のこの二人は歌詞もばっちり。あと、カナコさんってきゃんきゃん声がいまいち好きじゃなかったんだけど、今回の抑え目な低い声がよかった。村木よし子さんは初で観ましたが華は無いけどなかなか良い役者さんだなあとちょっと印象に残った。

と役者個々への言及でした。あと、ストーリーのほうでちょっと思ったこと。

今回の天魔王の「魔」が強調されたことで話がより鮮明になったなあと思う。捨と天魔王の表裏一体だというのがハッキリわかったような気がした。人の血が大量に流された時代の権力と死の妄執に絡み取られた天魔王、そしてそのしがらみを捨て流離うことで人の情を探しているかのような捨之介。個としての立場よりもっと大きな業を背負ってる二人。立場は違えども、両方ともどちらにもなりえたそんな二人にも見えた。蘭はちょうどその中間にいてどちらにもつける立場だったけど、殿への情愛から業を断ち切れなかったんだねえと。捨と天魔王の背負うものとは別に蘭は殿個人への業を背負ってるんだよな。不安定な雰囲気を纏わせるのはそのせい。情を求めて妄執に絡め取られちゃったんだろう。かわいそうな蘭。うーむ、こう考えると蘭は芝居の上手な人にやらせたらかなり深い話になるなあ。