Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

歌舞伎座『三月大歌舞伎 雀右衛門襲名披露公演 昼の部』 1等1階前方下手寄り

2016年03月12日 | 歌舞伎
歌舞伎座『三月大歌舞伎 雀右衛門襲名披露公演 昼の部』 1等1階前方下手寄り

『寿曽我対面』
花形総出のなかなか観られない面白い組み合わせ。どこか爽やかさがある不思議な『対面』だったかも。

工藤祐経@橋之助さん、まずは姿が立派。声がちょっと荒れてたのが残念。人の好さが見え隠れ。

五郎@松緑さん、勢いのよさが身上。台詞もいつもよりはまとめてきた感じで良い。ただもう少し稚気が欲しい気もする。

十郎@勘九郎くんは凛として優美。姿の美しさが格別で芝翫丈を思い起こさせた。台詞廻しは勘三郎さん譲り。この十郎、かなり好き。

朝比奈@鴈治郎さんのが安定した巧さとおおらかさで目を引く。

女形は総じて控え目な感じ。化粧坂少将@梅枝くんの立ち姿が綺麗だった。喜瀬川亀鶴@児太郎くんがお父様にそっくりに。美人さんですね。八幡@廣松くんの台詞がしっかりしてていい。所作はもっと頑張れ。景時@錦吾さん、景高@橘太郎さんらのベテラン勢がさすがにぴりっと場を締める。

『女戻駕』
美しい三人の並び。時蔵さんの芝居っ気のある踊りが場を盛り立てる。菊之助さんはあくまでも端正な踊り。お澄まし顔にどこか茶目っ気がみえて楽しい。錦之助さんはいかにもな二枚目の奴ぶりと強い女二人に挟まれてのおろおろぶりが嵌る。

『俄獅子』
粋にさらりと、だけどたっぷりと。鳶頭と芸者の並びってだけでウキウキする。梅玉さんと魁春さん兄弟の足腰の強さには毎回感動してるんだけど二人並ぶとそれが顕著。兄弟の息の合いっぷりが楽しい。孝太郎さんは踊りが巧い。そして目に色気ある。

『鎌倉三代記「絹川村閑居の場」』
休演されていた菊五郎さんの復帰でテンションあがったのもあるかもしれないけど、これぞ大歌舞伎の密度の濃さに感動しまくり。とにかく菊五郎さんと吉右衛門さんが凄くて、そこに五代目雀右衛門さんが食らいついて、加えて周囲もよくて、大満足。

時姫@雀右衛門さん、は出がまずしっとりと綺麗で◎。一途さと品のよい可愛らしさと。三浦之助への強い思慕と親への義理の狭間で悩む姿を切々と描く。とてもらしい時姫でした。まだ必死に演じてる感じがあるものの情味の強さがしっかりあって良かったです。

三浦之助@菊五郎さん、休演されていたとは思えない充実ぶり。この役はこの方のど真ん中の本領の役。ごくごく自然に三浦之助の若者らしい悲壮感、母への情、主への忠、時姫を図りつつも受け止める泰然たる心持ちを舞台に活写する。そして華やかな艶。見事だった。

佐々木高綱@吉右衛門さん、舞台をかっさらう。緻密さが大きさとして表出する芝居。前半の茫洋とした軽妙さのなかのじっとりした味わい、後半 の古怪などっしりとした大きさと鋭さ。存在感が本当に半端なかった。

おくる@東蔵さんが立ち場が鮮明で悲哀がありとても良かった。富田六郎@又五郎さんは役者ぶりが大きくなってきた。秀太郎さんが母長門でお付き合いくださって舞台が一段と大歌舞伎。

にしても吉右衛門さんと菊五郎さんに挟まれる雀右衛門さん大変ですね。

『団子売』
華やかな打ち出し。仁左衛門さんの華やかさ、孝太郎さんの色気。そしてこの親子共通のサービス精神旺盛な愛嬌。とても楽しい舞踊でした。