Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

帝国劇場『ラ・マンチャの男』 S席1階前方上手寄り

2008年04月26日 | 演劇
帝国劇場『ラ・マンチャの男』 S席1階前方上手寄り

両親に見せたくて連れていきました。そしたらとても良かったと喜んでくれて、連れて行ったかいがありました。 このミュージカルは人生経験が長いほうがより胸に来る芝居だと思います。私は前回2002年の公演を観ているので今回、2回目の観劇です。感動した~。前回より良かったような気がする。それにしてもとにかくこの芝居、脚本が良い、音楽が良い、そして演出も練られているし、そこに良い役者たちがいるんだもの。伊達に何度も上演されてないですよ。やっぱりすごく魅力的な芝居だ。これは何年か後にまた見てみたい。たぶん、見る年齢によって印象が変わっていくのだろう。

16世紀の末、教会を侮辱した容疑で投獄された詩人のセルバンテスと従者。牢内で牢名主から自分の罪を問われたセルバンテスは抗弁するために「ラ・マンチャの男」という芝居を即興で上演することとなる。

今回、ようやくドン・キホーテとカラスコが表裏一体なキャラなんだと判った。今の私はたぶんカラスコだ。彼の言い分のほうにうなづく。でもドン・キホーテの生き方に憧れる。嫉妬交じりに。

セルバンテス&ドン・キホーテ(キハーナ)@幸四郎さんが非常に魅力的でした。あれえ、こんなに幸四郎さん、良かったっけ?と思いました。前回よりどこか肩の力が抜けてたような。完全に役のなかに入り込んで緩急自由に活き活きと演じていらっしゃいました。何より存在感が見事。はた迷惑な人物に違いないドン・キホーテがなんとも魅力的に見える。また唄うときのお声がね、ほんとに素敵。圧倒的な歌唱力、ではないんだけどとても表情のある歌声。

アルドンサ@松たか子さん、アルドンサはいわゆるニンではないと思うのです。どーやったって「あばずれ」に見えないんですよ。どこか清純なんです、やっぱり。でもその部分で切なくもなるアルドンサでした。生きることに必死な姿を見てなんだかね、泣けてきちゃうの。 それにしてもたか子ちゃんの歌はどこまで真っ直ぐ。ストレートに届いてきます。

牢名主&宿屋の主人@瑳川哲朗さん、上條恒彦さんの代役として舞台に立たれましたがしっかりとした芝居でしっかり舞台を締めていました。歌はさすがに上條さんが素晴らしいので比べてしまうとちょっと辛いところですがなかなか良いお声でした。

サンチョ@佐藤輝さん、旦那想いのけなげなサンチョでした。歌はお上手ではないのですが(^^;)、サンチョというキャラクターにはピッタリ。

カラスコ@福井貴一さん、クセのある芝居をする方でしたが、それが常識人であるはずなのに「冷たさ」とも感じさせるカラスコというキャラクターを浮かび上がらせた感じです。

神父@石鍋多加史さん、声が優しいのです、歌がお上手で癒されます。


-------------------------------------------------------------------------
「人生が狂気じみているとしたら、
 一体本当の狂気とは何だ本当の狂気とは。
 夢に溺れて現実を見ないのも狂気かも知れぬ。
 現実のみを追って夢をもたぬのも狂気だ。
 だが一番憎むべき狂気とは、
 あるがままの人生に折り合いをつけて、
 あるべき姿のために戦わないことだ。」                 

       ―セルバンテス 『ラ・マンチャの男』より
--------------------------------------------------------------------------

【キャスト】
セルバンテス&ドン・キホーテ:松本幸四郎
アルドンサ:松たか子
サンチョ:佐藤 輝
牢名主: 瑳川哲朗
カラスコ: 福井貴一
アントニア:月影 瞳
神父:石鍋多加史
家政婦:荒井洸子
床屋:駒田 一
隊長:鈴木良一
ペドロ:大塚雅夫
ギター弾き:水村直也
ムーア人の娘:萩原季里
マリア:塚本理佳

【スタッフ】
脚本: デール・ワッサーマン
作詞: ジョオ・ダリオン
音楽: ミッチ・リー
訳: 森 岩雄/高田蓉子
訳詞: 福井 崚

日本初演の振付・演出: エディ・ロール
演出: 松本幸四郎

演出補: 松本紀保
演出助手: 小島 靖
振付: 森田守恒
装置: 田中直樹
照明: 吉井澄雄
音響設計: 本間 明

衣裳協力: 宇野善子
音楽監督・歌唱指導: 山口也
音楽監督・指揮: 塩田明弘
歌唱指導: 桜井直樹

プロデューサー: 齋藤安彦/宮崎紀夫

名古屋御園座『陽春大歌舞伎 昼の部』 2等2階前方下手寄り

2008年04月20日 | 歌舞伎
名古屋御園座『陽春大歌舞伎 昼の部』2等2階前方下手寄り

『ひらかな盛衰記』「源太勘当」
「源太勘当」は『ひらかな盛衰記』の2段目にあたる芝居。歌舞伎での上演頻度はさほど高くない演目ですね。わりと面白くまた人情味もあり良い段だと思うのですが。ただ芯の源太は主役だけどほとんど動かず風情と語りだけで見せないといけないお役だから役者にかなりの技量が必要でしょうね。また芝居としては義太夫ものとしての濃さも必要だし。源太だけでなく登場人物の役者が揃わないと面白くならないのかも。

源太の染五郎さん、「鎌倉一の風流男」と語られるに相応しい姿でした。衣装がとてもよく似合い、二枚目の柔らかさのなかに武士として芯があり麗しさと凛々さが同居した源太でした。また優しさのなかに武士として、そして梶原家の長男としてのプライドを感じさせる。強さと弱さが同居している源太というキャラクターにピッタリでした。

ほとんどが受けの芝居なのですが芯としての華やかさと存在感が終始ありました。こういう受けの二枚目の役柄だと時に大人しくなってしまうことのあった染五郎さんですが、今回はどの場面でも目を離させない風情があったと思います。とにかく姿形が非常に美しい。また語る場面での所作のひとつひとつが美しく明瞭でその場面、場面の空気が流れ目の前に浮かんでくるかのようでした。ただ、義太夫にノッての語りは緩急やメリハリがまだ少し足りないかなあと思う部分も。この台詞廻しにたっぷり感じがでてくるともっとらしくなるんでしょうね。

勘当させられ「やつし」になってからがまた良かったです。中間の黒い着物に縄帯姿にさせられた姿がまた美しい。どんな格好をしていてもあくまでも気品ある風情。ボロな格好になってなお美しくある。母への情に崩れても武士として芯から崩れないのが良いです。再演を重ねていくうちに当たり役に出来そうでした。

平次の歌昇さん、強面ではあるけれど甘ったれで弱虫なキャラクターを滑稽に演じます。平次は敵役ながらどこか愛嬌をもつ役柄でかつ動きのある芝居をするので儲け役です。歌昇さんは体型がぽっちゃりしていらっしゃるし拵えがとても似合います。ただ少しばかりマジメすぎて少々分別がありそうな雰囲気が。もう少しはじけた感じのほうがいいかなと。平次がもっとアホキャラのほうが源太も生きると思う。

千鳥の芝雀さん、とても可愛らしくはじけてて非常に良かったです。芝雀さんは義太夫もののなかの女性が一番似合う。拵えもとても似合ってて若い娘にしか見えなかったです。今月のなかじゃ一番似合ってたかも。また恋する娘としての心持ちがストレートに伝わってきました。台詞廻しもとっても良かった。義太夫ものとしてのたっぷり感は芝雀さんが一番あったと思う。

母、延寿の東蔵さん、場を締めます。いわゆるたっぷり感は無いものの、母としての情をストレートにしっかり演じていらっしゃいました。子を想うゆえ、といった部分の強さ、弱さがしっかりとありました。

にしても延寿さん可哀相ですよねえ。旦那(梶原平三景時)に息子の処遇を一任させられちゃうだなんて。まあ母に頼んだということは、息子を切腹させないのを見越してだったんでしょうが…。そもそものこういうことになったキッカケの失敗は自分なのにっ。というツッコミがはいるとこが古典…(^^;)


『鬼平犯科帳』「大川の隠居」
昨年五月に新橋演舞場で初演された新作歌舞伎。再演ということで、やはり演出が前回からかなり見やすいように練られていました。再演って大事なのね、と思いました。ちょっとダレるなと思っていた場がほとんど無くなっていてテンポが良くなっていました。ただ場をカットしただけでなく足した部分もあり、より内容がわかりやすく。

鬼平の吉右衛門さんが前回以上に「鬼平」でした。初演の時の肩の力が抜けた感じで鬼平らしいメリハリがあった感じ。ただ1幕目の声量が少々弱かったかなあ。2幕目以降は気にならなかったんですが。それにしてもまあ吉右衛門さんさんの鬼平にはいわゆる男らしい色気がありますねえ。

友五郎役の歌六さんは完全に当たり役ですね。上手すぎでしょう。アクの強い役を気持ちよさそうに演じていらっしゃってました。

奥方は芝雀さん、このお役どうなんだろう?と思っていたのですが品があってなかなか良かったです。旦那一筋な可愛らしさがあって違和感なし。

今回は木村忠吾の松江さんの劇中披露がありました。襲名してから松江さん、どんどん良くなってきましたよね。今月は飄々した忠吾がお似合い。

御園座『陽春大歌舞伎 夜の部』1等前方上手センター

2008年04月19日 | 歌舞伎
御園座『陽春大歌舞伎 夜の部』1等前方上手センター

『松浦の太鼓』
昨年12月に国立大劇場で同じ座組みで観たばかりの演目です。さすがにアンサンブルがかなり良かったです。お互いが絶妙の間でのやりとり。また、昨年12月の時より全体的に飄とした空気感がありました。

松浦候の吉右衛門さんにかなりお茶目度がup。台詞も緩急を付けつつも軽さのある台詞回し。我侭な言動も許せてしまう松浦候でした。義憤という部分が薄くなり能天気さが出てたけど、陣太鼓を指折り聞くシーンや「あっぱれ」と討ち入りを褒め称えるシーンに無条件でついニッコリしてしまいそうになる爽快感がありました。

大高源吾の染五郎さん、凛とした風情がとても美しいです。棹竹売りに身をやつしていても尾羽打ち枯らしてる浪人のように見えないんですが、それも有りかなと今回思いました。凛としているからこそ、そのみすぼらしいなりが切なくみえる。また、何かを秘めた風情が其角にふと句を投げかけさせるのだろうと、そういう源吾でした。そして何より前回に比べ表情、台詞回しがかなり良くなっていました。「両国橋の場」の大事のまえの静けさとフトした瞬間の情熱。そして「玄関前」での討ち入り装束姿の源吾はまさに美丈夫。力強さと骨太さがありました。討ち入りの語りは緩急をうまくつけ、朗々とまさに情景を見えるかのような語り。いやあ、ほんと上手くなりました。

宝井其角の歌六さん、安定感抜群の飄としながらも朴訥さのある其角。本当に良いですねえ。観てて楽しくなります。

お縫の芝雀は清純で可愛らしく。楚々とした佇まい。こういうお役が本当に似合います。


『閻魔と政頼』
昨年6月に歌舞伎座で上演した吉右衛門さんの新作狂言。他愛もない一幕というのは変わりませんがさすがに2回目の上演、かなり演出を練ってきたようで面白味がある狂言になってきていました。前回、個人的にさほど面白いと思わなかった作品だったんですが今回は十分楽しめました。

閻魔が富十郎さんから左團次さんに変わり、雰囲気がだいぶ変化してました。左團次さんらしいお茶目な閻魔。また赤鬼が松江さん、青鬼が種太郎くんと若くなり、二人ともかなり可愛い鬼。全体的に前回以上にほのぼのな閻魔界(笑)。また下っ端の鬼達のメイクも楽しく、立ち回りも工夫があり飽きさせない作り。


『与話情浮名横櫛』「見染め」「源氏店」
仁左衛門さん、玉三郎さんコンビでの上演が一際印象に残るこの演目。芝居心だけでなく美しい風情を出さないと芝居として立たない難しい演目。

なので期待半分不安半分の観劇。が、予想を大きく良いほうに裏切られました。とにかく染五郎さんの与三郎がハマり役。似合うだろうとは思っていたのですがこれほどハマってくるとは。この役は高麗屋は手掛けないお役です。染五郎さん自身もやれるとは思っていなかったようですが、やらせてもらって良かったんじゃないかな。与三郎は染五郎さん、完全に当たり役と言っていいでしょう。与三郎役者として仁左衛門さん、梅玉さんの後継者と言っていいですよ。初役でそれだけのものを見せてきた。与三郎の品のある甘さ、色気、凄みを見事に体現してみせました。手放しで褒めます、褒めないではいられない。

「見染め」では大店の身を持ち崩した若旦那の品のある甘い色気、優しい風情、世間知らずな弱さなどがそのまま現れたかのような可愛らしい風情ある与三郎。すらりとした姿がなんとも美しく、華やか。ふわふわした色気を振りまいて御園座をぐるりと散歩。お散歩通路の側の席だったのでかなり近くで拝見しましたが、ほんとほわほわと桃色オーラを振りまいていましたよ。それもとっても品のいいオーラ。梅玉さんの甘さ、仁左衛門さんのすっとした柔らかさの両方を持ち合わせ、そこに染五郎さん独特の可愛らしさが滲み、完全に染五郎さんの与三郎がいた。

そして「源氏店」での斬られ与三。傷跡の残る姿のなんと美しいこと。ぼんぼんだったという品が抜けていないなかの凄みと色気。悪を身につけた毒のある色気がありつつ、そのなかに甘さがある。そして染五郎さんの場合、考え込むような少しばかり孤独感のある愁いを見せ、でもどことなく愛嬌もある。それにしてもどこをとっても絵になる風情ある姿。玄関先で座り込む横顔は美しく、そして背中のラインの真っ直ぐなこと。とにかくどの所作も絵のよう。かなり辛いギリギリの筋肉の使い方をしているのだろう。静寂のなかの存在感。はだけた着物から見える肌の白さ、筋肉質な太もも、とにかく色気たっぷり。またちょっと崩れた江戸弁もピッタリで台詞廻しも心地よく聴かせてくる。いやあ、ほんとにこれは良いでしょう。与三郎は今後ともずっと手掛けていって欲しいです。

お富の芝雀さん、何度か手掛けているようで手に入ったお役で安定感がありました。大人な女の色気を醸し出し艶やか。芸者あがりの親分の妾といったご新造さんの貫禄のなかにどこか女の可愛らしさをみせる。源氏店の場」での風呂上りの髪型がとても似合い、愁いを帯びた風情。もう少し伝法なところを見せてもいいかなと思うものの、芝雀さんらしい細やかな気遣いのある素敵なお富さんでした。時々どこか雀右衛門さんに似てらっしゃるなあと思う部分もあり。声かしら?

歌昇さんの蝙蝠安、ちょっと気の良い小悪党風情がお似合いです。前回拝見した時より愛嬌も加わって、楽しませてくださいました。

東蔵さんの和泉屋多左衛門が場を締めます。情味があっていい旦那です。

歌舞伎座『四月大歌舞伎 夜の部』 1等2階前方センター

2008年04月12日 | 歌舞伎
歌舞伎座『四月大歌舞伎 夜の部』 1等2階前方センター

少々不完全燃焼な観劇でした。期待していただけに感想はかなり辛口になりました。すいません、ファンの方はスルーしていただいたほうがいいかと思います。

『将軍江戸を去る』
まず脚本が面白いと思えず&演出も?状態で…。三津五郎さん、橋之助さんはニンに合っているし熱演だったんですけど。でもまるで納得いかず。価値観がね、こういうものだったと思うには微妙に近すぎてかえって古さを感じてしまう。新歌舞伎の宿命でしょうね。ここからこの芝居が生き延びていけるのか。真山青果は「元禄忠臣蔵」は題材自体に日本人好みの、の普遍性があるので生き延びていけそうですが…。脚本の価値観の古さとともに、将軍が徒歩で家来と供に江戸を去って行くという演出シーンにはいくらなんでも説得力なさすぎです。

『勧進帳』
弁慶@仁左衛門さん、富樫@勘三郎さん、義経@玉三郎さんの三人の方向性が一緒とは思えず…。この三人だったらアンサンブルが良いだろうと思っていたのですが、どうも演技の質感がそれぞれすぎて纏まりがない。しかもどことなくまったりで緊迫感とか盛り上がりとかが感じられず全体に平坦な感じ。プラス、私が聞いた日は長唄もなんだか盛り上がらなかった。とりあえず、舞踊劇という感じではなかったです。ひとつひとつの場面は判りやすいというか、ここはこうで、こういうことですよ、というのは明快すぎるほど明快でしたが。うーん、でもなんというか丁々発止の熱とか相手に対する情味とかのバランスが噛み合ってないというか。すいません辛口ですね。それぞれは熱演なんですよ。でもトータルバランスとして悪い。

仁左衛門さんの弁慶は思っていたよりは骨太さがありました。でも声をかなり低く抑えているためにいつもの台詞の調子の良さが出てこない。これ凄くもったいないです。弁慶だからといってもあれほど声を低く取らなくても。でもほんとに丁寧に丁寧に「勧進帳」の弁慶を演じているし、姿形も綺麗だし、悪くない。むしろ個で見たらとても情の深い優しさのある弁慶で非常に良いし、これも有りだと思うんです。しかしながら勘三郎さんと相対すると大きく見えない、全体的に線が細く見える。うーん、これは意外でした。丁寧に演じることで判りやすくはなっているけど反対に細かすぎて大らかさが無いので神経質な部分が時々垣間見えてしまうせいかな?仁左衛門さんの弁慶には梅玉さんの富樫あたりが合うと思います。延年の舞は短縮Ver.かな?サクッと終わった感じで、後半の動きがちょっと辛そうでした。やはり「勧進帳」は体力のいる演目なんですね。

勘三郎さん富樫。熱血系ですね。台詞は謳い上げるタイプで前へ前へと突っ込み、小柄ということを感じさせないかなりの大きさがありました。この大きさを出せたのは見事だと思います。かなり骨太な富樫で情に脆く熱い感じ。ただ時々、語尾にクセが出て凛とした武士らしさ、という部分が感じられないのが残念。うーん、なぜかしら?勘三郎さんは凛とした上品さも表現できる方だと思うんです。最近それを表現する役が減っているからかなあ?それと動きが忙しない部分も。舞踊が上手い方なのに着物の捌き方とか体の使い方にキレがないというか、綺麗に突っ込みきれてないのが少しもったいない出来。気持ち、台詞ともに突っ込んでいるのに体がそこに付いて行ってなかった。

玉三郎さん義経、姿は本当に綺麗でした。高貴さのほうを表現していたのかな。動きも優雅。ただし朝廷の御子ぽい優雅さ。武将の御大将の格という部分が足りないかな。それと台詞が能を意識したんでしょうか?かなりまったり…。仁左衛門さんの必死さのある台詞とかみ合わない…。「能がかり」は玉様の声質に合わないので「能の朗々たる」な台詞回しにもならないし。普通の台詞回しでのほうが武将らしさも出るでしょうし仁左衛門さんとのテンポももっと合うのではないかしら。


『浮かれ心中』
井上ひさし氏原作ということで楽しみにしてたんですが、期待してた戯作者の業とか批判精神の部分があまり感じられず。単なるコメディになっていました。脚色が悪いんだろうか??コメディとしても私にはあまり笑えなかったです。なんでだろ??

勘三郎さんは自己パロディにハマってしまっているような演じ方でした。もっと肩の力を抜いたほうがいいかなあとか。素直にストレートにやったほうが楽しくなるんじゃないかなあ。サービス精神旺盛な部分がちょっと裏目に出た感じ。

三津五郎さんも今回は肩に力が入ってたような?いつもの飄々としたところがあまりなかった。

時蔵さんは綺麗だし可愛いし、素敵でした。白無垢姿が似合うこと似合うこと。栄次郎でなくても惚れるわ。喧嘩シーンで男声出さなくてもいいのに~。可愛い女房とのギャップ狙いだったんでしょうけど、ちょこっとドス効かせるだけで十分かと。

七之助くんも綺麗でしたねえ。化粧を似せてたんでしょうが若い時の玉三郎さんなみじゃない?ってくらいでした。久々に七之助くんを観たけど台詞回しが上手くなってた。台詞の調子はやっぱり成駒屋系ですね。女形に専念したら、とふと思ったんですがどうかな。