Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

みなとみらい大ホール『ゲヴァントハウス・バッハ・オーケストラ』 B席2階LC席

2006年07月17日 | 音楽
みなとみらい大ホール『ゲヴァントハウス・バッハ・オーケストラ』 B席2階LC席

プログラムはJ・S・バッハ『ブランデンブルグ協奏曲』全6曲。私の大好きな曲の一つです。聞いていて胸が粟立つというか心の琴線にじわっと触れる音楽でした。もう大満足。至福の時を過ごしました。『ゲヴァントハウス・バッハ・オーケストラ』は少数人での演奏とは思えないほどの厚みのある音とアンサンブルが素晴らしかったです。それにしても協奏曲5番の時のチェンバロの演奏は凄かったなあ。バロック音楽は最近ご無沙汰だったけどやっぱり好き~。はあ、ほんと素敵だった。


曲目:
J・S・バッハ『ブランデンブルグ協奏曲』
第1番 ヘ長調
第5番 ニ長調
第4番 ト長調
第3番 ト長調
第6番 変ロ長調
第2番 ヘ長調

アンコール曲:
J・S・バッハ『G線上のアリア』

歌舞伎座『七月大歌舞伎 夜の部』 3階B席下手寄り

2006年07月15日 | 歌舞伎
歌舞伎座『七月大歌舞伎 夜の部』 3階B席下手寄り

観ました。頭の表面をサラサラと通り過ぎていった感覚です。私が芝居に今求めているものが何なのか考えるキッカケにはなりました。厳密的な意味でのファン体質でないことも再自覚しました。

『山吹』
辺栗藤次: 歌六
島津正: 段治郎
縫子: 笑三郎

役者のがんばりは褒めるべきだろうが三人ともニンではないと思う。特に藤次と縫子は「狂」が必要。不安定さを出せる役者がやるべき芝居。

『天守物語』
天守夫人富姫: 玉三郎
姫川図書之助: 海老蔵
近江之丞桃六: 猿弥
奥女中薄: 吉弥
小田原修理: 薪車
亀姫: 春猿
十文字ヶ原朱の盤坊: 右近
茅野ヶ原舌長姥: 門之助

7年前に歌舞伎座で上演された『天守物語』のほうが好きです。

国立大劇場『歌舞伎鑑賞教室『彦山権現誓助剣-毛谷村-』』 1階前方花道寄り

2006年07月09日 | 歌舞伎
国立大劇場『歌舞伎鑑賞教室『彦山権現誓助剣-毛谷村-』』 1階前方花道寄り

『解説 歌舞伎のみかた』
解説は「おめちゃん」こと市川男女蔵さん。先月の亀三郎さんと比べたらかなりフランクな解説ぶり。学生には受けるかも(笑)内容はしごく真面目でいかにも歌舞伎教室といった趣。先月より超初心者向けになっていたような。今回は国立の研修生6名を使っての解説で色んな場面で大活躍。18歳から26歳までの若者でしたが、歌舞伎には若者も多いんだよ、というアピールになったのではないでしょうか。彼らも役者としてこれから頑張っていって欲しいですね。

『彦山権現誓助剣』
「杉坂墓所」と「毛谷村」のニ場。「杉坂墓所」があるとストーリーがかなり分かりやすくなります。

梅玉さんが手の内の入ったお役の六助を気持ちよさそうに演じてらしたのが印象的。朴訥さはあまりないけど終始、気の良さが前面出てて素敵でした。台詞の緩急が上手く、六助の真面目で良い人ぶりがよく伝わってきます。表情も場面、場面でとてもわかりやく作っていたように思います。ただ剣豪という雰囲気は残念ながらあまりなかったのが残念といえば残念。鋭さがどこかにあってもいいんじゃないかなーと。弾正に騙されたと知った後の怒りがそれほど強くないように見えてしまいました。自分の気持ちより義母、妻の気持ちを優先してる風情。かなり優しい六助でした。

芝雀さんのお園は昨年の金丸座で拝見した時より虚無僧での出でキリッとした風情がよく出てたので急に乙女になるところにメリハリがでて可愛らしかったです。婚約者に出会って慌ててしまい恥らう様が本当に初々しく可愛らしい。いきなり夕餉の支度を始めて大失敗の巻も「お園」の一途さゆえなのが見えるし、芝雀さんはこういうお役がピッタリです。クドキでの搦みの部分はとても丁寧にされていますがまだまだノリが悪いかな。ここは金丸座の時のほうがノリの合い方と心情の出し方がとても良かったので。たぶん後半こなれていくでしょう。

歌江さんのお幸、一味斎の後家さんとしての強さがストレートに出て良いですね。ユーモラスな味わいもいやみがなく、とても印象が強いお幸。六助@梅玉さんとの間(マ)が良いいので後半の場も活きます。

弥三松の玉太郎くんが元気いっぱいに頑張っていました。

弾正の松江さんもお子さんの玉太郎くんに負けじと頑張ってらっしゃいました。体の使い方にもう少しメリハリが欲しいところです。

全体的に丁寧なお芝居で思った以上に見ごたえはありましたがなんとなくテンポが悪いかなあという部分も。全体的に淡々と進んでしまったかなと。もう少し密度の濃さが欲しかったです。

この演目、最近では昨年に金丸座で染五郎さん、芝雀さん、信二郎さん、吉之丞さんという座組みで見てます。この時も「杉坂墓所」と「毛谷村」のニ場でしたがメリハリという部分では金丸座のほうがあったかな~。ダレ場がほとんど無かったように思うんですよね。どこがどう違ってたんだろう?まあ、染五郎さんと信二郎さんが非常にかっこよかったのも個人的にポイントが高いのかも(^^;)

サントリーホール『ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団』 D席2階P席

2006年07月05日 | 音楽
サントリーホール『ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団』D席2階P席

小林研一郎(指揮)/ゾルタン・コチシュ(ピアノ)

音のパワフルさを堪能しました。弦楽器がいかにもスラブ系の哀愁を含んだ深みのある音。金管楽器の音色の美しさと安定度が素晴らしかった。金管楽器に関してはやはり海外オケのほうが良いよなあ。ゾルタン・コチシュ氏のピアノは音が深くて多彩でしたがオケとのバランスはいまひとつ?というよりピアノ協奏曲を聴くには席が悪すぎた(オケ裏席)ような気がする…。

コダーイ『ガランタ舞曲』
リズムが多彩で民族色豊かな曲という感じがしました。細かく刻んで音を聞かせる感じで、管楽器のレベルの高さがよくわかりました。また打楽器の演奏者も上手かった。音が滑らか。弦楽器の深い厚みのある音はいかにもスラブ系という感じで好み。楽しい曲でした。

ラフマニノフ『ピアノ協奏曲第2番』
大好きな曲で今回の一番の目当てでしたが、席が悪すぎたせいもあるとは思うのですが全体的な音のバランスの悪いこと、悪いこと(涙)。特に第一楽章ではピアノの音がほとんど聴こえてこない…。これはオケの音の作り方がよくないような気がする。パワフルなのはいいんだけど鳴らしすぎ。もう少しピアノを聴かせることも考えて欲しかった。なんというかこの曲に必要な繊細さが足りないような。この日の演奏のなかでは一番まとまりも無かった。

ゾルタン・コチシュ氏のピアノは第二楽章からしっかり聴こえてきましたが非常に音色が多彩で繊細。テクニックもかなりあるし音だしも深い。ちょっと早めの演奏だったかな。小林氏の指揮の煽られたのか、どうなんでしょう?なんとなくもったいない出来でした。とても綺麗な音だしのピアニストなのでリサイタルで聴いてみたいと思いました。

チャイコフスキー『交響曲第4番』
これは文句無く良い演奏でした。パワフルな演奏スタイルにぴったりで聴き応え十分。木管・金管が特に良かった。本当に素晴らしい安定感と美しい音色。そこの弦の厚みのある音が重なっていくのですから、見事というしかありません。音に熱が帯びていく、そんな感じでした。ラフマニノフでバラつきのあったオケとは思えない非常にまとまりのある演奏。にしても小林氏の指揮の激しさにちょっとビックリ。炎の指揮者と言われるだけありますね。

ブラームス『ハンガリー舞曲第1番』『ハンガリー舞曲第5番』
アンコールの『ハンガリー舞曲』はかなり手馴れた演奏。これもかなり激しい演奏でした。とにかく盛り上げてやろうって雰囲気でした。確かに楽しかったかも。

演奏曲:
コダーイ『ガランタ舞曲』
ラフマニノフ『ピアノ協奏曲第2番』
チャイコフスキー『交響曲第4番』

アンコール曲:
ブラームス『ハンガリー舞曲第1番』
ブラームス『ハンガリー舞曲第5番』

日本青年館『歌舞伎巡業中央コース 松竹大歌舞伎「勧進帳」』S席後方下手寄り

2006年07月02日 | 歌舞伎
日本青年館『歌舞伎巡業中央コース 松竹大歌舞伎「勧進帳」』S席後方下手寄り

『ご挨拶』
幸四郎さんのご挨拶。舞台の幕外にスーツ姿でご登場。生で素を拝見するのは初めてだったんですがTVで見るよりダンディだ、かっこいい…。期待していた「松たか子の父です」のつかみは今回はありませんでした。真面目モードでちょっと残念(笑)。日によって多少お話の内容も変えているみたいですね。今回は『勧進帳』の巡業のキッカケとなった沖縄からの一通のお手紙のお話。ゴーヤマンの便箋に綴られた「病気で東京に出られない父に『勧進帳』を見せたいので沖縄に来て演じて欲しい」という訴えを読み、「観たいとおっしゃるお客様の立場にたって全国をまわるのも役者としての使命ではないか」と決意されたそう。沖縄での上演は確か2004年秋に実現しているのですよね。沖縄初の歌舞伎上演だったとかでNewsになった記憶があります。

『歌舞伎噺 -楽しい歌舞伎への誘い-』松本幸四郎監修
歌舞伎入門講座といった趣で、華やかな吉原の舞台セットのなか実演を交えてのレクチャー。客席の間を通って登場した案内役、袴姿の素の錦弥さんが素敵~。所々カミカミだったけど、少しづつ慣れていくでしょう。

阿国役に扮した翔太くんがとっても美人さんで目立っていました。顔を作ると七之助くんに似るのよね。山三役の澤村伊助さんと丁寧に念仏踊りを踊ってました。供奴の中村信之さんも頑張ってましたが狭い花道で踊るのは大変そうでした。衣装を着けての実演付きは「歌舞伎」の華やかな部分を見せるのに良かったんじゃないかなー。完全初心者向けというわけではないけど興味をひかせる楽しい一幕でした。

途中、観客二人を舞台に上げて立ち回りとお姫様を体験してもらうコーナーがありました。舞台に上がったのは元気な20歳代のお嬢さんと小さなお嬢ちゃんでした。お姫様役の小さなお嬢ちゃんは内掛けが重そうでした(笑)錦弥さんさんが上手にフォローしてあげてましたねえ。

『勧進帳』
4月御園座の時とは違い幸四郎さん、染五郎さんともに能がかりを意識した抑揚のある台詞廻しを押さえ気味にし台詞をわかりやすく伝え、また表情もよりわかりやすい方向での芝居だった。『勧進帳』という演目の「物語」を伝えるという雰囲気。これはこれで楽しくていいかも。こういうお話なんだ、というのがストレートに伝わってくる。初心者が多い巡業向けに少し演技を変えてきているようだ。弁慶と富樫の問答が非常にわかりやすいだけでなく周囲の登場人物の四天王の気持ちの揺れ動きや番卒たちの仕事がきちんと明確に伝わる細やかな芝居。

それにしても、意識的にわかりやすくと芝居を変えてくる幸四郎さんにはちょっとビックリしました…。慣れた台詞回しを押さえるのってそう容易いことではないと思うんだけど(幸四郎さんはいつもだとたっぷり抑揚をつけて台詞を口で転がして謡うような台詞廻しで演じています)。ま、それにしても相変わらず幸四郎さんの弁慶はThe主役ですね。

染五郎@富樫は相変わらず凛々しくて素敵だけどどうせならもっと突っ込んでいってしまえ~、と思う部分も。2004年12月での国立大劇場で演じた富樫の時はかなりの勢いで突っ込んでいってその勢いが結構好きだったりしたんだけど。まあ反対に言えば余裕がない富樫でもあったわけだが…。それが今年の御園座の富樫から「受け」の部分を意識してのゆったり構える富樫へと変えてきていた。最初から義経一行とわかりつつ弁慶たちの覚悟の程度を見極めるという部分を見せていくという方向性を表現しつつある感じ。ただやはり「受け」の芝居は難しい。まだまだ存在感や、ハラの大きさという部分が足りないのでどうしても弁慶に貫禄負けしてしまうのよね。発展途上ということで芝居をどう成熟させていくかを楽しみにしていこう。私は現役者のなかでは富十郎さんの富樫が大好きです。染ちゃんもいつかあの域までにいって欲しいなあ。

義経@高麗蔵さんは初役?品があって素敵ですがまだ堅いかな。もっと存在感と情味が欲しいところです。義経って実は非常に難しい役なんですよね。

四天王は今回は亀三郎さん、亀寿さん、宗之助さん、錦吾さん。気合の入り方、動きの緻密さ、表情と台詞の的確さが見事です。散々書いていますが幸四郎さん弁慶の時の四天王は配役がどなたになろうともいつも動きと表情が良いです。たぶん、幸四郎さんのこだわりのひとつだと思うのですが、四天王としての存在感をかなり要求しているのではないかと思います。また全体の動きが計算されいてフォーメーションが素晴らしい。こなれていくうちにもっとよくなっていくでしょう。また富樫側の動きも計算された美しさになっています。今回、小屋が小さめなので弁慶側に幅を取られて少しばかり間合いを取るのが難しそうな雰囲気は感じましたがうまく形作っていたと思います。

あと今回特筆すべきなのが長唄連中と鳴り物連中がかなり良いということ。本興行と変わらない人選でビックリしました。この人たちを巡業にも連れて行くの?と驚きました。幸四郎さんは音にもうるさいと聞き及びましたが、なるほどと思った次第。ということで今回の中央コースの『勧進帳』は音楽を聴くだけでも価値のある『勧進帳』です。

備考:演目と配役
『ご挨拶』
 松本幸四郎

『松本幸四郎 監修 歌舞伎噺 -楽しい歌舞伎への誘い-』
 名古屋山三:澤村伊助
 出雲阿国:坂東翔太
 奴:中村信之
 花四天:松本錦次
 花四天:坂東翔次

『歌舞伎十八番の内 勧進帳 』
 武蔵坊弁慶:松本幸四郎
 源義経:市川高麗蔵
 亀井六郎:坂東亀三郎
 片岡八郎:坂東亀寿
 駿河次郎:澤村宗之助
 常陸坊海尊:松本錦吾
 富樫左衛門:市川染五郎

彩の国さいたま芸術劇場『主役の男が女である時』 S席センター

2006年07月01日 | 演劇
彩の国さいたま芸術劇場『ヤン・ファーブル演出『主役の男が女である時』』S席センター

彩の国さいたま芸術劇場にヤン・ファーブル演出『主役の男が女である時』を観に行きました。4月に観たピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団に続きコンテンポラリーダンス2回目の体験です。私、コンテンポラリーダンスがかなり好きかも。いやあ、楽しかった、面白かった!観終わった後、どこかがスコンと突き抜けたような開放感を味わいました。タイトルからわかるようにジェンダーという部分を意識したパフォーマンスだと思うのですが、男を模した女が少しづつ素の女となりそして女を超え無垢な生命体へと変容していく、そういうものを私は感じました。後半、フルヌードでのダンスなのですがオリーブオイルにまみれたその肉体は力強さと美しさがありました。柔らかそうな体につく筋肉のバランスが完璧。鍛えられた体のその美しさは彫刻のようでもあり一瞬、一瞬が絵画のようでもありました。激しく力強く踊るその肉体はエロチシズムを超えた美しさでした。

またパフォーマンスとしてそれこそジェンダーを超えたところでのユーモア感覚があって非常に楽しかったです。緩急の付け方がまた心地よいのです。ヤン・ファーブル氏は男性ですがいわゆる私が今まで感じてきた男性が「女」を捉える時の視点が無いんですよ。生理的な部分ですんなり「女」である私が受け入れることのできる世界観でした。これにはちょっと驚きました。ミクロとマクロが交差していくようなイメージの広がりを感じたりもしました。私的にテリー・ギリアム監督のユーモア感覚を連想させたりもちょっとしました。本質的な部分は違うんですけどね。感覚的な部分でちょっと似てる気が。

ダンサーのスン・イム・ハーが素晴らしかったです。キュートで力強さと繊細を同時に体で表現できるダンサーだと思いました。単純な舞台装置のなか繰り返しの多い動きをあれだけの吸引力をもって踊りきるのは並大抵ではないと思う。