新橋演舞場『朧の森に棲む鬼~Lord of the Lies~』2回目 1等1階席前方センター
1月8日ソワレ観劇:
早々に2回目です。染五郎さんの誕生日ということでカテコで何かやるだろうという期待もあって行ってまいりました。期待通り、古田さんの音頭で染五郎さんのお誕生日お祝いがありました。大きなバースディケーキが運ばれてきたのですが途中ロウソクの火がいくつか消えかかって、慌ててオオキミの田山さんが袖で風避けしたり、エマさんと聖子さんが一生懸命火をつけなおしてあげていたり、座組みの結束力が何気に垣間見えたりしてほのぼの。染五郎さんは34本もあるローソクの火を一気に消していました。肺活量ありますなあ。
さて肝心のお芝居のほうですが2日初日に拝見した時より進化しておりました。観た席がだいぶ違う(3等と1等)というのを差し引いてもかなり良くなっていたと思う。初日に観た時は思ったほど芝居に入り込めなかったのですが今回はかなり入り込んで観ていました。役者さんたちがそれぞれにキャラにしっかり入り込んできた、という部分、そして演出のほうでも今回この物語でキーになる冒頭とラストの音響が致命的なまでに悪かった部分がきちんと改善されていた、というのが大きいですね。冒頭の歌詞が聞き取れる、ラストの台詞が聞き取れる、これだけでかなり印象が変わります。たったこれだけことなんですが芝居の締まり方が全然違うんですよね。ここが改善されなかったらどうしようと不安になっていたので本当に良かった。
また、どことなく腑に落ちなかった染五郎演じる、ライの悪役としての人物像がしっかり見えたというのも大きいです。ライは歌舞伎でいうところの国崩し系の悪役ではなく南北物の色悪系統。スケールが大きいようで小さい人間臭い悪役。それが今回きちんと腑に落ちた感じ。『リチャード三世』『酒呑童子』モチーフの徹底的な悪役という前宣伝のせいでイメージとしてはかなり緻密で冷徹で人間的弱さがないスケールの大きな悪役を期待してしまっていたんですよね。でもライは結構人としてとても破綻してて弱い部分がかなりある。そのギャップに戸惑ってしまっていたのですが今回、その破綻してるからこその悪役という部分に説得力が非常にあったような気がする。ライの欲望って権力欲じゃないんですよね。人が自分に振り回されていく様を観るのが楽しいって感じ。嘘をつくことが快楽になり人の死が快楽のための道具となる、それがどんどんエスカレートしていく。深いところを何も考えてないだけにそのエスカレートしていく部分の狂気が恐ろしくもあり、狂気ゆえの破綻に気が付かないままでいるのが哀れでもあり。その破綻の象徴がキンタと血人形の部分なんだよなあと。あれは単なる弱さではなく目先のことだけで感情のままでしか動いていないライの綻び。自分が何を求めているのか、が実はわかってない。だから王座を得た時に隙間ができる。手ごたえのあるやつを身一つで求めていってしまう、なんて本当に権力が欲しい人間だったらやらない。人を使うだけでいいのだから。
と私にとって今回、イマジネーション(妄想ともいう)を広げられるだけの芝居をみせてくれたってことですよ。この部分、私にとって芝居を観る時に大事な部分なのです。中島さんの脚本の粗も、まあいいやとなってきたかな。まあ不満な部分はやっぱりあるんだけどね。
ライ@市川染五郎、初日に観た時はまだ台詞にしゃべらされているというか時々頭の中で確認しながらやってる部分あるよね?なところがあったのですがだいぶこなれてきていた。前回以上に表情に凄みが出てきていました。少しづつライという人間が狂気に染まっていく様をじわりじわりと演じていく。最初は結構無邪気なんですよね。自分の嘘が面白いように決まっていって、それが嬉しくしょうがない感じ。おばかなキンタとのコンビネーションが良すぎるだけに甘さも見えるけど後半のどんでんがえしがより効果的だ。前半の甘さがあるだけに後半やってることが本当に憎ったらしい。憎まれ役で構わない、その潔さがかえって気持ちいいくらいにライという人物にハマってきてました。出世していくうちにだんだん色っぽくなっていくんですよね、自信がああも艶を与えるものかと。それを見事に体で表現しているのが凄いなあ。それと目がね、だんだん光を失っていくんですよ。まさか、んなことないでしょ?と思うんだけど、そう見えちゃいました。染五郎さんの目を何度か覗き込める位置で見たんですがどんどん底なしの暗さになっていく。ゾクリとしました。ああ、そうですよ、この瞬間、「カッコイイ~」と惚れちゃいました(笑)。こんなライに惚れるなんざぁ、あたしゃマゾかよっ。
にしても今回の衣装替えはやっぱ凄いな。前回8回って書きましたけど数えた人によると10回だそうです。裏では戦場でしょうなあ。観てるほうは楽しいんですけどね。前半のくりくり頭のボロ衣装の染ちゃんは『黄金の日々』の助左@幸四郎さん?という感じでした。ちょっとごつごつ感を感じさせるんだけど、検非違使になった途端、なんか全然違うんですよ。いきなり美女になっています。とーっても麗しいんですわ。ああ、綺麗だなあって見とれてしまいまいます(笑)しかし皆が指摘してるけどクリクリ茶髪がなぜさらさらストレートな黒髪になったんでしょ?この中盤あたりはツナと衣装とメイクがすごく似てるんですよ。何か意味があるのかなあとか思ったりも。後半、どんどん眉なしになっていくあたりはもう私のツボすぎてどーしましょ、って感じ。ラストの姿は言わずもがなって感じです。やっぱね、ラストは総髪でしょ。
キンタ@阿部サダヲ、とにかく美味しい役をまんま体現してみせる。観てる観客、キンタがライと一緒にかなり悪いことしてるって思ってないよね?(笑)ほんとに憎めない純粋で可愛いキャラです。キンタも素直にわりと欲望のまま生きてきているんだけど、その欲望のあり方が人間らしくて共感できるんですよね。矜持があってその一線を越えないってところがいいのです。ライとキンタはかなり上手い対比になってると思う。ここら辺は中島さんらしいキャラ設定だよなあ、と思いました。サダヲさんを舞台で見るのは2回目で同じ新感線の『レッツゴー忍法帖』で拝見しています。この時とキャラがちょっと似てるかなあと思ったんですが中島さんがわざと似せた部分がある感じがしました。にしてもサダヲさんは体のキレは抜群だし、小動物的可愛らしいオーラがありますね。妙に応援したくなるというか。歌もやっぱ上手い。ノリノリなキンタ、ほんとに可愛いですよね。アイドルみたい。後半の芝居は悲痛さがストレートに伝わってくる芝居。ああ、上手い役者さんだなあと思いました。
マダレ@古田新太、かなり難しい役だと思いますね。ご本人もそうおっしゃていますが。キャラの立ち位置がどこに振れたらいいか、その微妙なふり幅が必要。敵味方としてハッキリした距離じゃないし、主要なキャラとの距離も難しい。マダレというキャラ自体、どういうキャラかハッキリしないところをどう作っていくか。心のうちを表現できないのは辛いでしょうねえ。古田さんだから役者の魅力的でキャラ立ちしてる感じですね。その分、遊ぼうと思えば遊べるし、実際かなり遊びの部分を入れているのですが、マジメな部分と遊びの部分のバランスを初日の時は図ってる感じでしたがそのメリハリを掴んできた感じでした。
ツナ@秋山菜津子、秋山さんのツナはかっこよくて鋼のような女。そのなかに柔らかい女としての心を奥にしまいこんで、凛々しくてほんのり色気があるツナです。秋山さんは『SHIROH』で拝見していて存在感のある女優さんだなと思ったのですが今回も独特の雰囲気を纏っていたような感じがしました。初日に観た時は「女の弱さ」をもう少し出して欲しいと思ったのですが今回はツナの脆さが透けてみえて深みが出てきた。それにしても秋山さんは体の線が綺麗な女優さんですねえ。
ツナというキャラクターは登場人物のなかでは一番芯の通った役かな。自分のなかの正義を揺ぎなく信じている。ライに出会い、それが少しづつ揺るぎかけるのだけど、崩れてしまわない。崩れてしまうことを自分に許さない。ライの嘘にいったん崩れかけるけど、死のうとすることで己を守ろうとする。いいタイミングで守る存在も現れるし。個人的には一度女としてライに完全に崩れてくれると嬉しかったんだけどなぁ。シキブとツナの丁々発止があって、でもその上で何か変?と感じてライと対峙する、というキャラだともっと萌えたんだけど。
シキブ@高田聖子、女の可愛らしさ、愚かさ、弱さ、怖さの全部を内包したシキブというキャラを活き活きと立ち上げていた。こういうものを見せてくれる聖子さん、やっぱ好きだなあ。おちゃらけた姿から一転、女のドロドロとしたものを一瞬にしてみせる。シキブの「だーいっきらい」の一言に背筋が凍った。聖子さんの底力だね。後半のシキブを見ていると泣きたくなる。ほんと哀しい女で、でも可愛い女だなあって思う。
シュテン@真木よう子、顔が小さいっ、顔が本当に整ってて綺麗な方です。太めの声がよく通ってるし頑張ってる、とは思うんですがライと対峙するにはまだちょっと色んな部分で弱いかなあ。もう少しカリスマ性とかが欲しいんじゃないかなと。冴え冴えとしたキツサとか威圧感とか、そういうのがあれば説得力が出ると思うのですが。にしてもオーエ国の女党首ってどういう立場なんだろ?オーエ国の王の娘の一人って感じなんでしょうかね?オーエ国がどういう国なのかさっぱりわからない、というのがねえ。
イチノオオキミ@田山涼成、亡羊としたかなり頼りない国王ですが田山さんのオオキミはほんわかしたオーラで憎めない王。シキブのことが可愛くてしょうがない、そのおおらかさが切ない。お酒のことはわかってて飲んだんでしょうね。それだけシキブのことがいとおしかったでしょう。でも王としてはどうなの?と思わなくも無い。
しかし、国の実権握ってたのは誰なんでしょね?四天王も実権握るほどの人物はいないような…。そこら辺の脚本がチト弱いのよね…。
ウラベ@粟根まこと、うーんと粟根さんはいつものキャラでした。粟根さんの使い方、あれだけでいいのかな?と思わなくも無い。頭脳派キャラなんでしょうけど、結構あっけない。四天王としてのキャラとしては弱いかなと。
サダミツ@小須田康人、とってもキャラ立ちしてました。衣装とメイクがカッコイイですね。でもちょっとおばかキャラ…。一応、国の参謀としては四天王のなかではもっともライを追い詰めるキャラなんですけどね、詰めが甘いと。ここら辺、もう少し手ごわいキャラだとライの悪役ぶりも活きると思うんですが。
1月8日ソワレ観劇:
早々に2回目です。染五郎さんの誕生日ということでカテコで何かやるだろうという期待もあって行ってまいりました。期待通り、古田さんの音頭で染五郎さんのお誕生日お祝いがありました。大きなバースディケーキが運ばれてきたのですが途中ロウソクの火がいくつか消えかかって、慌ててオオキミの田山さんが袖で風避けしたり、エマさんと聖子さんが一生懸命火をつけなおしてあげていたり、座組みの結束力が何気に垣間見えたりしてほのぼの。染五郎さんは34本もあるローソクの火を一気に消していました。肺活量ありますなあ。
さて肝心のお芝居のほうですが2日初日に拝見した時より進化しておりました。観た席がだいぶ違う(3等と1等)というのを差し引いてもかなり良くなっていたと思う。初日に観た時は思ったほど芝居に入り込めなかったのですが今回はかなり入り込んで観ていました。役者さんたちがそれぞれにキャラにしっかり入り込んできた、という部分、そして演出のほうでも今回この物語でキーになる冒頭とラストの音響が致命的なまでに悪かった部分がきちんと改善されていた、というのが大きいですね。冒頭の歌詞が聞き取れる、ラストの台詞が聞き取れる、これだけでかなり印象が変わります。たったこれだけことなんですが芝居の締まり方が全然違うんですよね。ここが改善されなかったらどうしようと不安になっていたので本当に良かった。
また、どことなく腑に落ちなかった染五郎演じる、ライの悪役としての人物像がしっかり見えたというのも大きいです。ライは歌舞伎でいうところの国崩し系の悪役ではなく南北物の色悪系統。スケールが大きいようで小さい人間臭い悪役。それが今回きちんと腑に落ちた感じ。『リチャード三世』『酒呑童子』モチーフの徹底的な悪役という前宣伝のせいでイメージとしてはかなり緻密で冷徹で人間的弱さがないスケールの大きな悪役を期待してしまっていたんですよね。でもライは結構人としてとても破綻してて弱い部分がかなりある。そのギャップに戸惑ってしまっていたのですが今回、その破綻してるからこその悪役という部分に説得力が非常にあったような気がする。ライの欲望って権力欲じゃないんですよね。人が自分に振り回されていく様を観るのが楽しいって感じ。嘘をつくことが快楽になり人の死が快楽のための道具となる、それがどんどんエスカレートしていく。深いところを何も考えてないだけにそのエスカレートしていく部分の狂気が恐ろしくもあり、狂気ゆえの破綻に気が付かないままでいるのが哀れでもあり。その破綻の象徴がキンタと血人形の部分なんだよなあと。あれは単なる弱さではなく目先のことだけで感情のままでしか動いていないライの綻び。自分が何を求めているのか、が実はわかってない。だから王座を得た時に隙間ができる。手ごたえのあるやつを身一つで求めていってしまう、なんて本当に権力が欲しい人間だったらやらない。人を使うだけでいいのだから。
と私にとって今回、イマジネーション(妄想ともいう)を広げられるだけの芝居をみせてくれたってことですよ。この部分、私にとって芝居を観る時に大事な部分なのです。中島さんの脚本の粗も、まあいいやとなってきたかな。まあ不満な部分はやっぱりあるんだけどね。
ライ@市川染五郎、初日に観た時はまだ台詞にしゃべらされているというか時々頭の中で確認しながらやってる部分あるよね?なところがあったのですがだいぶこなれてきていた。前回以上に表情に凄みが出てきていました。少しづつライという人間が狂気に染まっていく様をじわりじわりと演じていく。最初は結構無邪気なんですよね。自分の嘘が面白いように決まっていって、それが嬉しくしょうがない感じ。おばかなキンタとのコンビネーションが良すぎるだけに甘さも見えるけど後半のどんでんがえしがより効果的だ。前半の甘さがあるだけに後半やってることが本当に憎ったらしい。憎まれ役で構わない、その潔さがかえって気持ちいいくらいにライという人物にハマってきてました。出世していくうちにだんだん色っぽくなっていくんですよね、自信がああも艶を与えるものかと。それを見事に体で表現しているのが凄いなあ。それと目がね、だんだん光を失っていくんですよ。まさか、んなことないでしょ?と思うんだけど、そう見えちゃいました。染五郎さんの目を何度か覗き込める位置で見たんですがどんどん底なしの暗さになっていく。ゾクリとしました。ああ、そうですよ、この瞬間、「カッコイイ~」と惚れちゃいました(笑)。こんなライに惚れるなんざぁ、あたしゃマゾかよっ。
にしても今回の衣装替えはやっぱ凄いな。前回8回って書きましたけど数えた人によると10回だそうです。裏では戦場でしょうなあ。観てるほうは楽しいんですけどね。前半のくりくり頭のボロ衣装の染ちゃんは『黄金の日々』の助左@幸四郎さん?という感じでした。ちょっとごつごつ感を感じさせるんだけど、検非違使になった途端、なんか全然違うんですよ。いきなり美女になっています。とーっても麗しいんですわ。ああ、綺麗だなあって見とれてしまいまいます(笑)しかし皆が指摘してるけどクリクリ茶髪がなぜさらさらストレートな黒髪になったんでしょ?この中盤あたりはツナと衣装とメイクがすごく似てるんですよ。何か意味があるのかなあとか思ったりも。後半、どんどん眉なしになっていくあたりはもう私のツボすぎてどーしましょ、って感じ。ラストの姿は言わずもがなって感じです。やっぱね、ラストは総髪でしょ。
キンタ@阿部サダヲ、とにかく美味しい役をまんま体現してみせる。観てる観客、キンタがライと一緒にかなり悪いことしてるって思ってないよね?(笑)ほんとに憎めない純粋で可愛いキャラです。キンタも素直にわりと欲望のまま生きてきているんだけど、その欲望のあり方が人間らしくて共感できるんですよね。矜持があってその一線を越えないってところがいいのです。ライとキンタはかなり上手い対比になってると思う。ここら辺は中島さんらしいキャラ設定だよなあ、と思いました。サダヲさんを舞台で見るのは2回目で同じ新感線の『レッツゴー忍法帖』で拝見しています。この時とキャラがちょっと似てるかなあと思ったんですが中島さんがわざと似せた部分がある感じがしました。にしてもサダヲさんは体のキレは抜群だし、小動物的可愛らしいオーラがありますね。妙に応援したくなるというか。歌もやっぱ上手い。ノリノリなキンタ、ほんとに可愛いですよね。アイドルみたい。後半の芝居は悲痛さがストレートに伝わってくる芝居。ああ、上手い役者さんだなあと思いました。
マダレ@古田新太、かなり難しい役だと思いますね。ご本人もそうおっしゃていますが。キャラの立ち位置がどこに振れたらいいか、その微妙なふり幅が必要。敵味方としてハッキリした距離じゃないし、主要なキャラとの距離も難しい。マダレというキャラ自体、どういうキャラかハッキリしないところをどう作っていくか。心のうちを表現できないのは辛いでしょうねえ。古田さんだから役者の魅力的でキャラ立ちしてる感じですね。その分、遊ぼうと思えば遊べるし、実際かなり遊びの部分を入れているのですが、マジメな部分と遊びの部分のバランスを初日の時は図ってる感じでしたがそのメリハリを掴んできた感じでした。
ツナ@秋山菜津子、秋山さんのツナはかっこよくて鋼のような女。そのなかに柔らかい女としての心を奥にしまいこんで、凛々しくてほんのり色気があるツナです。秋山さんは『SHIROH』で拝見していて存在感のある女優さんだなと思ったのですが今回も独特の雰囲気を纏っていたような感じがしました。初日に観た時は「女の弱さ」をもう少し出して欲しいと思ったのですが今回はツナの脆さが透けてみえて深みが出てきた。それにしても秋山さんは体の線が綺麗な女優さんですねえ。
ツナというキャラクターは登場人物のなかでは一番芯の通った役かな。自分のなかの正義を揺ぎなく信じている。ライに出会い、それが少しづつ揺るぎかけるのだけど、崩れてしまわない。崩れてしまうことを自分に許さない。ライの嘘にいったん崩れかけるけど、死のうとすることで己を守ろうとする。いいタイミングで守る存在も現れるし。個人的には一度女としてライに完全に崩れてくれると嬉しかったんだけどなぁ。シキブとツナの丁々発止があって、でもその上で何か変?と感じてライと対峙する、というキャラだともっと萌えたんだけど。
シキブ@高田聖子、女の可愛らしさ、愚かさ、弱さ、怖さの全部を内包したシキブというキャラを活き活きと立ち上げていた。こういうものを見せてくれる聖子さん、やっぱ好きだなあ。おちゃらけた姿から一転、女のドロドロとしたものを一瞬にしてみせる。シキブの「だーいっきらい」の一言に背筋が凍った。聖子さんの底力だね。後半のシキブを見ていると泣きたくなる。ほんと哀しい女で、でも可愛い女だなあって思う。
シュテン@真木よう子、顔が小さいっ、顔が本当に整ってて綺麗な方です。太めの声がよく通ってるし頑張ってる、とは思うんですがライと対峙するにはまだちょっと色んな部分で弱いかなあ。もう少しカリスマ性とかが欲しいんじゃないかなと。冴え冴えとしたキツサとか威圧感とか、そういうのがあれば説得力が出ると思うのですが。にしてもオーエ国の女党首ってどういう立場なんだろ?オーエ国の王の娘の一人って感じなんでしょうかね?オーエ国がどういう国なのかさっぱりわからない、というのがねえ。
イチノオオキミ@田山涼成、亡羊としたかなり頼りない国王ですが田山さんのオオキミはほんわかしたオーラで憎めない王。シキブのことが可愛くてしょうがない、そのおおらかさが切ない。お酒のことはわかってて飲んだんでしょうね。それだけシキブのことがいとおしかったでしょう。でも王としてはどうなの?と思わなくも無い。
しかし、国の実権握ってたのは誰なんでしょね?四天王も実権握るほどの人物はいないような…。そこら辺の脚本がチト弱いのよね…。
ウラベ@粟根まこと、うーんと粟根さんはいつものキャラでした。粟根さんの使い方、あれだけでいいのかな?と思わなくも無い。頭脳派キャラなんでしょうけど、結構あっけない。四天王としてのキャラとしては弱いかなと。
サダミツ@小須田康人、とってもキャラ立ちしてました。衣装とメイクがカッコイイですね。でもちょっとおばかキャラ…。一応、国の参謀としては四天王のなかではもっともライを追い詰めるキャラなんですけどね、詰めが甘いと。ここら辺、もう少し手ごわいキャラだとライの悪役ぶりも活きると思うんですが。
キンタは雪樹さんが言うように、ライと一緒に結構非道なこといっぱいやっているのにみんなに好かれるもうけ役ですね。でもキンタでさえ、後半目をやられて、アニキの声が届かなくなってからは、疑うことを覚え、純真でもなければ決していい人ではなくなってますよね。
復讐の鬼と化したツナやシュテンは、ライを倒すことは「悪」とは思っていないですよね。もちろん、マダレや疑うことを覚えたキンタも。
善って何、悪って何?
恋に狂ってライに殺されるシキブは哀しい。シキブの心変わりを知った上で毒を飲むオーキミも哀しい。
すべて含めて人間の哀しさが心にしみてくるような芝居ですよね。
(シュテンにももう少し哀しくなって欲しいけど。)
カワイイ序盤から恐ろしい終盤まで、衣装ばかりではなく、表情もメイクも、声も、身のこなしも恐ろしいほどの振れ幅で変身していく染ちゃんが美しい。ほんとすばらしい芝居です。
今回の芝居には「善人」は実はまったくいないんですよね。人って単に善悪だけで語れるものじゃないという部分をうまく捉えてると思います。そういう意味ではシェイクスピアの普遍性のある「人の矮小さを描く」物語をうまく消化してるなと思います。
ただ、人間ドラマとしてはエンターテイメントに徹してるのでドラマとしては深いところまでは描けてなくて、キャラ造詣だけで終わってるかなと思わなくもないんだけど、役者さんたちが皆、懐の深い芝居をしはじめているので、だいぶドラマとして際立ってきているかなと。
もこもこさんと違い、まだ微妙に冷静さが残ってる私です。次回、ずぼっとハマれるといいな。
私は染ちゃんに幻惑されてその辺の弱さは気になりませんでした(爆)
ブログ情報に寄ればマダレはまた進化しているらしいので次回も楽しみです。(いったい何回見るんだっ)
でも私も、もこもこさん同様、染ライに惑わされてますから。あんまり気にならなかったりして(笑)。古ちんはパワーアップしてると思いますよ!(13日現在。)
私は前回ほどキンタに感情移入できなくなりました。いや、観ていれば可愛いし、切ないし、カッチョいいんですけど、やっぱりライ様に心酔しちゃってます。もう贔屓目爆裂です(笑)。でも、大多数の人がキンタ支持派でしょうね~
染ライに惑わされてるのは同様でございます(笑)だからこそ、脚本をもっとがっつり緻密にしてくれたら悪役としてもっと引き立つのになあ~という戯言でございます。古ちんの「いや、浅いですよ。中島さんは基本、マンガですから」は本質を突いてますね。いまのとこ。そういう部分でいえばいのうえさんの演出もそう。新感線はそのマンガさが楽しいのだから文句言うなって気もしてるんですけどね。今回はついつい、題材が面白いしあつ程度ドラマを中心に、という意図が見えるだけにもっと正統派(というのも変ですが)な物語優先な舞台でも観たいなとつい思ってしまうのです。