田中均といえば2002年小泉首相が電撃訪朝した際の立役者、元外務官僚である。トップ会談により金正日が拉致を認め謝罪し被害者の5名が一時帰国することができた。だが一方で残る北朝鮮側から8名の死亡が伝えられた。ここで世論は一気にヒートアップする。家族を日本に連れてくるために再度北朝鮮に5名を戻した場合、再度監禁されるのではないか。8名死亡の情報も疑わしい。北朝鮮は帰らなかったことに猛抗議し以降平壌宣言は空文化する。その後世論の矛先は外務省に向けられる。特に中心になった田中均は北朝鮮との密約説が浮上したり、拉致被害者を北朝鮮に一時戻すべきだと主張したとされ激しいバッシングを受け失意のうちに退官した。この本はいわばこれらの回顧録である。しかし当然ながら核心は一切語られていない。やはり墓まで持っていくのだろう。