・ 情緒の巨匠・加藤泰監督・脚本による最後の劇映画
「瞼の母」(62)、「沓掛時次郎 遊侠一匹」(66)の任侠ものや「緋牡丹博徒」シリーズの巨匠・加藤泰最後の劇映画で、幕末の京都を舞台に会津の小鉄こと仙吉を主人公にした二部構成・147分。原作は飯干晃一の「会津の小鉄」。
問屋の息子・仙吉は、人を殺し大阪を追放され博徒で放浪中、ごぜのおりんと知り合う。そんななかイザコザで賭場荒らしを刺殺してしまう。挙句にシマの縄張り争いのため、おりんが犠牲になる。
復讐を誓う仙吉だったが、親分衆に止められてしまう。大阪に戻った仙吉は旧友の山崎蒸と再会、新撰組隊士たちを世話するが・・・。
兎に角豪華キャストである。主演の菅原文太を始め、倍償美津子・若山富三郎・中村玉緒・藤山寛美・藤田まこと・大友柳太朗・高田浩吉・丹波哲郎・佐藤允など主役級の俳優がずらりと顔を揃えている。
若手女優の層が薄いが監督ご贔屓の、きたむらあきこ・桜町弘子が情緒溢れる演技で観客の涙を誘う。
加藤泰といえば、ローアングル、長廻しに定評があるが本作は封印。<何が正しいか、人生はどう生きれば良いか、男女の素敵な恋を描いた大活動写真時代>の再現にエネルギーを注いでいる。
仙吉(菅原文太)とおりん(倍償美津子)の切ない恋、仙吉を慕い大阪から京で居座るお富(きたむらあきこ)、仙吉を父の仇と狙う和多田なか(桜町弘子)、若い新選組佐々木愛次郎(国広富之)とあぐり(豊田充里)の悲恋など、見せ場盛り沢山。
二部構成なのは仙吉が放浪中の一部が纏まって面白いが、二部で仙吉が時代とともに激動の渦に巻き込まれる本題となるので147分という長編となっている。正直のところ纏まりに欠けているのは否めないが、巨匠最後の劇映画と知ってみると感慨深い。
ダイナリズム溢れる加藤泰らしさを堪能した。