晴れ、ときどき映画三昧

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「ワルキューレ」(08・米) 75点

2015-11-06 15:31:19 | (米国) 2000~09 
 ・ ヒトラー暗殺計画を緊張感をもって描いたサスペンス。

                   

 ヒトラー関連の映画は数多くあるが、ハリウッドでトム・クルーズ主演、ブライアン・シンガー監督というアクション映画コンビによって製作するのはミスマッチでは?という前評判があった。

 事実、ドイツではかなりの反対があったという。結果は全編英語のセリフに違和感があったものの、想像以上の史実を踏まえた完成度には概ね好評であった。ユダヤ系の監督B・シンガーにとっても渾身の演出といえるだろう。

 「ワルキューレ」とはワーグナーのオペラ「ニューベルリングの指輪」に登場する北欧神話の女神の名。ドイツ国内の捕虜や奴隷が反乱を起こした際、ナチス予備軍がその鎮圧を行う作戦で、命名したのはワーグナー好きのヒトラーだった。

 いっぽう国内の文化人・政治家・軍人などが密かに反ナチス組織を結成していて、その機会を狙っていたがガードが固く何度も失敗を重ねていた。

 レジスタンスの主要メンバー、トレスコウ少将(ケネス・ブラザー)は酒に爆弾を仕掛けた暗殺計画に失敗、実行者ブラント大佐の欠員を埋めるため、アフリカ戦線で左眼・右腕・左手指2本を失った英雄シュタウフェンベルグ大佐(T・クルーズ)と会い、ヒトラー暗殺を打ち明ける。

 暗殺作戦立案者のオルブリヒト将軍(ビル・ナイ)、ベック参謀総長(テレンス・スタンプ)など軍人・政治家のレジスタンス主要メンバーは、敗色色濃い全軍に戦闘停止命令を出すことに注力しているが、シュタウフェンベルグは暗殺・ベルリン制圧・新政府樹立という壮大な作戦を立案し賛同を得る。

 予備軍参謀長となった彼は、ワルキューレ作戦を利用し、暗殺後ナチス政権を転覆させ連合軍との和平成立をしようという、いわば軍事クーデター。

 いよいよ実行となるまで、ヒトラーにワルキューレ作戦変更計画の承諾を獲ったり予備軍司令官フロム(トム・ウィルキンソン)の懐柔したりする必要があった。

 結果は失敗すると分かっていても、作戦はどのように発動され何故上手く行かなかったのか?歴史の1ページを紐解く緊張感が漂う。

 主人公は愛国者で、敬虔なカソリック信者で、妻・ニーナ(カリス・ファン・ハウテン)と子供たちをこよなく愛する善き軍人で、風貌もT・クルーズ張りの二枚目。とてもミスキャストとは言えないほど良く似ている。

 T・クルーズも他作品と比べると派手さを抑え、真摯な軍人役に徹していたように感じた。

 作戦大本営である<狼の巣>へ乗り込み、10分のタイムリミットで成功しなければいけない緊迫感はなかなかのもの。それも全ドイツ警察長官・ヒムラー不在のため実行をためらったベックの躊躇もあり、1度ならず2度も味わう羽目になるとは。

 ただかなりの数が軍服姿で登場するため、テンポよく進む展開は人と名前を覚えるのに一苦労。達者な脇役陣も見せ場が少なく、その心情などが充分活かされていないようでモッタイナイ気がした。

 歴史に<もしも>はタブーだが、本作戦を始め15回もあったヒトラー暗殺計画がもし成功していたら、20世紀の世界史は大幅に違っていたものになったことだろう。

 T・クルーズ目当てに本作を見た人にも、歴史の一端に触れる切っ掛けになったのでは?

 


 


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