・ノルウェーのレジスタンスをもとにしたA・マン監督の戦争サスペンス。
<テレマーク>といえば、スキー・ジャンプの着地スタイルを連想するが、ノルウェーにある地域を指す。
ナチス原爆製造基地を爆破するため集結したノルウェー特殊部隊の活躍を描いた戦争アクションだが、「ナバロンの要塞」(61)のような派手な戦闘シーンのある大活劇とは趣きが違って地味な展開だ。
テレマーク地域ノルスク・ハイドロ工場は、ナチス・ドイツによって原爆には欠かせない重水を製造しているため、イギリス特殊作戦執行部はノルウェー・レジスタンス・メンバーを訓練し工場爆破作戦を画策する。
レジスタンスのリーダーはクヌート(リチャード・ハリス)で、旧友の科学者・ロルス教授(カーク・ダグラス)が主要メンバーとして加わった。
K・ダグラスといえば筆者は「OK牧場の決斗」(57)のドク・ホリデイを思い出すが、代表作は何といっても「スパルタカス」(60)だろう。
その「スパルタカス」で監督をしたのは当初アンソニー・マンだった。2人は撮影開始後意見が合わずマンが降板、無名のキューブリックが起用されたという経緯があって5年後のコンビ再開となった。
今回は監督の意向通り、できるだけ事実をもとに描き撮影には可能な限り実物を使用すること、ノルウェーの冬山の美しい景観の素晴らしさを映像化することなどを意識した作りとなった。そのため丁寧な演出となったが、その分冗長さは否めない。
ロルス教授役のK・ダグラスはプレイボーイで、元妻アンナ(ウーラ・ヤコブソン)に再会すると未練たっぷりな人間味溢れる人物。片やクヌート役のR・ハリスは理想主義者の堅物。対照的な2人が祖国を救うためにした命懸けの行為が、原爆を阻止したヒーローとして描かれる。
わずか9人で工場爆破に成功したがナチスはストックを準備しており、その輸送計画を阻止しようとするシーンが最大の見所でサスペンス気分を味わえる。
この作戦は第二次大戦の行方を左右した核兵器開発を阻止したという説と、ヒトラーは「ユダヤ人の科学」を忌み嫌い細々と続けられていたので大勢には影響しないという説があって、事実関係ははっきりしない。
だが戦後、この行為によってノルウェーの英雄たちが存在したことは、世界中に広まったことは間違いない。