・ ブレーク前のJ・レモンが演じたカウボーイに憧れる男の成長物語。
ジャック・レモンといえば、「ミスタア・ロバーツ」(55)でオスカー助演男優賞を獲得して以来、「お熱いのがお好き」(59)でトニー・カーチスと組んだコメディでブレークし、その後も「アパートの鍵貸します」(60)、「酒とバラの日々」(62)でのひ弱なシリアスな役もこなす大スター。
その彼が、西部男になろうとカウボーイに憧れる役でグレン・フォードと共演したのが本作。原作はフランク・ハリスで自身の体験をもとにしている。監督はデルマー・デイヴィス。
1870年代シカゴのホテルマンのフランク。ホテルの常連で有名な牧童頭トム・リース(G・フォード)一行が滞在するため、お気に入りの部屋を用意する必要があった。そこには牧場主ヴィルタ一家が泊まっていて移ってもらう役割りをフランクが受け持つ。
ヴィルターの娘マリアと恋仲のフランクは、父親に結婚の許しを願うが身分違いと断られ、牧場へ戻ってしまった。
牧童頭のリースは荒くれ男を束ねる度量があり、フランクは父の遺産を牛に賭け共同出資を申し出る。こうして長い牛追いの旅が始まって行く。
実話がもとなので、荒涼たる情景のなかカウボーイの単調で過酷な労働を続ける長い旅の様子と、東部育ちのフランクが苦労しながらその世界を知って行くシーンが繰り広げられるストーリー。
一行には時代遅れの元保安官・ドッグ(ブライアン・ドンレビ)や荒くれ男ポール(リチャード・ジャッケル)が入っているが、リースは各自の言動には口を挟まない。ことが起きても云わば自己責任で、牛を守ることだけにはリーダーシップを発揮する。
フランクは「人と牛ではどっちが大切か?」と問い詰めるが「もちろん牛だ」と答えるリース。カウボーイの魂はここにあった。
先住民の襲撃・銃撃戦などもあるが、最大の見せ場は貨車での移動や牛の暴走シーンはなかなかの迫力で、人身事故が起きたのでは?と思うほどだ。
翌年、ビリー・ワイルダーで花開いたJ・レモンが演じたカウボーイ役フランクは、独特の風貌のせいか汗臭さとホコリ汚れを感じさせない不思議な西部劇だった。