厳重に監視された列車
1966年/チェコスロヴァキア
コミカルな要素があると悲劇が際立つ
総合 85点
ストーリー 85点
キャスト 85点
演出 85点
ビジュアル 85点
音楽 80点
チェコの人気作家ボフミル・フラバルの短編をもとに、当時28歳だったイジー・メンツェルの長編デビュー作。’67米アカデミー賞外国映画賞を受賞した。同じコンビの「英国王給仕人に乾杯!」上映を記念して限定劇場公開された。
折りしもナチスドイツ占領下チェコの田舎の村に住むミシェロ(ヴァーツラフ・ネツカーシュ)は、将来楽をしたいというだけで鉄道員だった父親の職を選んで見習いとなる。彼には、車掌のマーシャ(イトカ・ベントヴァー)というガールフレンドがいるが、男として自信がない。駅の先輩フビチカ(ヨゼフ・ソルム)は女好きで、電信技士のズデニチカ(イトカ・ゼレノホルスカー)といちゃついて、鳩好きな駅長を悩ませている。
メンツェルは「つながれたヒバリ」「プラハの春」などチェコを代表する監督だが、ソ連の弾圧によって製作が禁止されたこともあって寡作である。ユーモアを随所に織り込んだ若者の青春を描きながら、コミカルな要素があるほど悲劇性が増すという作風が満ち満ちている。紛れもなく反戦を訴えているが大声で反戦を叫ばずに、深刻なことは返ってジョークを交えたほうが効果的だということを実証してくれた。人間描写・構成・台詞・映像と、どれをとっても感心させられる佳作である。