その木戸を通って
1993年/日本
山本周五郎の世界を市川崑が映像美で魅せてくれた
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 80点
演出 85点
ビジュアル 85点
音楽 80点
今年の2月、享年92歳で急逝した市川崑監督が山本周五郎の短編を93年に映画化。ハイビジョン・マスターを35ミリに変換してヴェネチア・ロッテルダム国際映画祭で好評を博した。15年を経て、今年日本で劇場初公開。
平松平四郎(中井貴一)は娘・ゆかの嫁入りを迎え、17年前を思い出す。城代家老(神山繁)の娘・ともえと婚約中で、将来の出世を約束されていた。親代わりの中老・田原権右衛門(フランキー堺)に呼び出され家にいる娘は誰なのか?と詰問を受けるが、心当たりがない。
市川崑監督は、ちょっぴりミステリアスな山本周五郎の原作を、忠実に独自の映像美で再現して魅せてくれた。ヒロイン浅野ゆう子には「ふわっとした感じ」で演技して欲しいと注文を出したが、当時トレンディ・ドラマで日の出の勢いの彼女に新境地を切り開かせている。この上映が完成直後だったら彼女の女優人生は変っていたかもしれない。
中井貴一はコミカルな演技が多少オーバーな気もするが、思いやりのある優しい男を等身大に表現して初の老け役も無難にこなしている。
故人となってしまったフランキー堺や岸田今日子が、相変わらず達者な役者振りで正統派ドラマを支えている。
時代劇なのに殺陣が一切ないし、剣豪も悪役も出てこない。男から見て、雪女を思わせる理想の女性像を描いたメルヘンを、92分の程良い長さでジックリと魅せてくれた。日頃のTVドラマについてゆけないヒトにお奨め。
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