晴れ、ときどき映画三昧

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「アマンダと僕」(18・仏)70点

2019-12-29 13:16:20 | 2016~(平成28~)

 ・ パリの日常を描写した王道のヒューマンドラマ。


 突然の悲劇から姉を失った青年と母親を亡くした少女の互いに成長していくプロセスを描いて東京国際映画際グランプリと最優秀脚本賞を受賞したヒューマン・ドラマ。監督・脚本は長編三作目のミカエル・アース。

 パリで暮らす24歳のダヴィッド(ヴァンサン・ラコスト)は、ピアニストのレナ(ステイシー・マーティン)と知り合い幸せなときを過ごしている。しかし、突然テロ事件に巻き込まれた仲の良い姉・サンドリーヌ(オフェリア・コルブ)が7歳の一人娘アマンダ(イゾール・ミュルトリエ)を残し亡くなってしまった。
 
 突然親を亡くしたアマンダと保護者となったダヴィッドのふたり。触れ合ううちに徐々に距離を縮めて喪失の悼み・怒り憎しみを超えていく。

 難解で観客に結論を委ねるフランス映画という先入観を裏切る、優しい眼差しが全体に伝わる演出だ。パリ11区に住んでいた監督はパリの市井の人々の暮らしぶりをリアルに捉えながら、感情過多にならないよう節度あるストーリー展開に終始している。
 そのため同時多発テロやイスラム系住民への偏見などパリが抱えている社会問題は背景として描くにトドメ、二人を取り巻く人々も優しい人たちばかり。

 16ミリフィルムで撮影した映像が初夏のパリの街並みを美し捉え、自転車で疾走するダヴィッドたちが印象的。

 ダヴィッドに扮したV・ラコストはコメディでブレークした若手俳優で本作で新ジャンルに挑戦した。その戸惑いが少女の親代わりになる重荷を背負った青年役にフィットしたようだ。

 アマンダのI・ミュルトリエが可愛い。監督がスカウトした新人で演技経験がない分自然な振る舞いが、ちょっぴりオシャマな少女そのもの。泣き笑いのできる演技力は天性のものだろう。

 サンドリーヌが残したウィンブルドンへのチケットは20年ぶりの母・アリソン(グレタ・スカツキ)との再会でもあった。

 「エルヴィスは建物を出た」(もう望みはない。勝ち目はない。)という言葉がキイワードとなった再生の物語は、予定調和ながら静かな感動を呼ぶエンディングで幕を閉じる。

 年を取ってから涙もろくなった筆者だが、感動の涙を流す筈が泣けなくなった自分がいる。これも衰えの証拠なのだろうか?

 


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