・現在なら禁止用語満載、吉村・水木コンビのホーム・コメディ
邦画最盛期時代、女性文芸作の巨匠・吉村公三郎監督、水木洋子オリジナル脚本によるホームコメディ。ともに数々の文芸作を映画化しているが、このコンビによるコメディは貴重。
ホテル春山荘を経営する事業家・唐沢家には、主人・卓夫(船越英二)と後妻・静(京マチ子)と小姑29歳の波子(若尾文子)24歳の鳩子(野添ひとみ)の妹2人、弟の5人が同居している。
家事を担当するのは静と婆や(北林谷栄)で、波子は自宅で書同教室を開くオールドミス、鳩子は劇団の売れない女優で2人は静が邪魔で仕方がない。
こんな家族構成で嫁と小姑の争いといえば深刻になりかねないが、テンポのよい演出と小気味いいほど言いたい放題の台詞で、新鮮なホームドラマとなっている。
もっとも現在ならTVでは絶対放送できない放送禁止用語のオンパレードで、この頃は平気で使われていたのが時代を感じさせる。
吉村公三郎は原節子、高峰三枝子、京マチ子、山本富士子、岸恵子など大女優を育てた女性映画の巨匠だが、本作では高峰・京に若尾文子、野添ひとみを起用して、従来のイメージとは違う新しい魅力を惹きだしている。
水木洋子は今井正、成瀬巳喜男など名監督の脚本を手掛けていて、女性脚本家の開拓者であり第一人者。「ひめゆりの塔」(53)、「山の音」(54)、「浮雲(」55)、「キクとイサム」(59)など数え上げればきりがない。
このコンビに宮川一夫(撮影)、間野重雄(美術)、池野成(音楽)という錚々たるスタッフが加わった本作は見所満載。
なかでも、波子のお見合いが壊れ家族でコタツを囲んでの言い争いは圧巻だ。
適材適所のキャスティングのなかで、メガネに着物姿の若尾文子と、ちゃっかり者でとぼけた味の婆や・北林谷栄の演技が秀逸。
何といっても、高度成長期になって<従来の女性の強かな生き方と新しいタイプの女性がどう生きて行くのか>を切り取った水木洋子の脚本が、着地も見事で素晴らしかった。
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