晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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『おとうと(’60)』 80点

2009-11-03 15:46:09 | 日本映画 1960~79(昭和35~54)

おとうと(’60)

1960年/日本

岸恵子と市川崑の代表作

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

幸田文の自伝的小説を水木洋子が脚色した市川崑監督初期の代表作。監督たっての希望で岸恵子主演が実現しただけあって、存在感抜群で彼女の代表作でもある。
両親への不満から、愚れてゆく弟・碧郎(川口浩)。家のことは殆ど無関心を装い息子には盲目的に甘い作家の父(森雅之)とリューマチの持病からかグチばかりこぼし信仰に救いを求める継母(田中絹代)。こんな一家を支え家事一切を切り盛りする姉・げん(岸恵子)が健気である。
映画史に残る「銀残し」という手法が時代を感じさせ、宮川一夫のカメラが文芸大作の趣きを一層際立たせている。
姉21才、弟17才にしては2人とも大人びているが、しっかりもので前向きな姉と気立てはいいのに何故か捻くれて行く弟の孤独感が画面に溢れ出ている。市川監督の手腕によるものだろう。
脇を固める森雅之・田中絹代は文句なしの演技。人を愛することの複雑な心境や哀しさを見事に演じて見せてくれた。他にも岸田今日子、中谷昇、浜村純など端役に近い役ながら達者な人達がきらりと光る役者振り。若き日の伊丹十三・江波杏子もマニアにとっては見逃せない。
これだけ条件が揃っていて、この年の代表作なのに何故かのめり込めなかった。不思議な感覚の映画である。



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