母なる証明
2009年/韓国
極限状態の姿を描くことで本質が見えてくる
総合 90点
ストーリー 90点
キャスト 90点
演出 90点
ビジュアル 85点
音楽 85点
「殺人の追憶」で名前を知られた韓国の気鋭監督ボン・ジュノの長編4作目。カンヌ映画祭で評判となった。韓国映画は縁がなくてキム・ギトク監督の「絶対の愛」以来2年半振りの鑑賞だったが、前評判を裏切らない出来で映画本来の魅力を堪能した。
母と息子が人間関係の原点であるというジュノ監督が韓国の母と呼ばれるキム・ヘジャと、韓国四天王のひとりで兵役による5年ぶりの復帰第一作となったウォン・ビンを起用したミステリー・タッチのヒューマン・ドラマ。
「殺人事件の容疑者となった息子を救うため、真犯人を追う母親の姿を描く」という謳い文句を素直に受け取ってはいけない。物語は一筋縄では行かず先が読めない。そこには盲目的に息子を愛する母(キム・ヘジャ)と、知的障害を持ちながら小鹿のような目をした青年トジュン(ウォンビン)の絶望的なすれ違いを見事に描いている。
冒頭、原野で何故か悲しげな顔で踊り出す母のシーンが終盤で衝撃のシーンに繋がる。そしてさらにむきだしの人間をあぶりだすラストへ。極限状態の姿を描くことで本質が見えてくる。
悲惨な物語だがユーモアに溢れ心が和むシーンも随所に見られる。何処にでもある田舎町の風景と底辺に住む人々の逞しい生きザマは、韓国映画ならではのエンターテインメントだ。
主役のキム・ヘジャに役名がないのは、母親の最大公約数をヒロインにした監督の意図が見えてくる。息子を持つ母親なら誰でも彼女の心情が分かるに違いない。韓国の母と呼ばれるキム・ヘジャ。こういう役が似合う女優は現在の日本にはいない。昔の女優・三益愛子や左幸子以来出ていないのでは?
演技派への脱皮を計るウォン・ビンの存在も欠かせないが、悪友ジンテ役のチン・グに将来性を感じた。
重箱の隅を突っつくとすればゴルフ・クラブについたのは血ではなく口紅だったというシーン。ゴルフ・クラブに口紅がつくのはどういう状況なのだろうか?
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