晴れ、ときどき映画三昧

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「大鹿村騒動記」(11・日)70点

2017-01-12 11:48:34 | 日本映画 2010~15(平成23~27)

  ・ 原田芳雄の念願だった村歌舞伎を舞台にした人情喜劇


    

 南アルプスの山麓・長野県下伊那郡の大鹿村に300年伝わる村歌舞伎を舞台に繰り広げる、過疎化・高齢化など深刻なテーマを笑いに包み込んだ人情喜劇。

 公開直後に亡くなった主演の原田芳雄念願の映画化で、彼の人望で集まったスタッフ・キャストによる愛すべき人間賛歌のドラマだ。

 「六千両後日文章 重忠の館」という村歌舞伎公演の5日前、主役の景清を演じている風祭善(原田芳雄)。独りで鹿料理の店<ディア・イーター>を営んでいるが、18年前駆け落ちした妻の貴子(大楠道代)と幼馴染みの治(岸部一徳)が突然戻ってきた。

 貴子は記憶障害を患っていて、困り果てた治は善に返すと言いに来たのだ・・・。


 大鹿村は実在の村で、伝統の村歌舞伎も寺の境内で続けられているもの。2045年リニア新幹線が開通する問題で村には亀裂が入りそうだが、風光明媚でまるでユートピア。

 延江浩原案を阪本順が監督を担当し、10年来疎遠だった荒井晴彦とともに共同脚本化、僅か2週間で撮り終えた。

 3人を中心に群像劇のような趣きで、村役場の職員・美江に松たか子、バスの運転手・一平に佐藤浩市、郵便局員・寛治に瑛太や石橋蓮司、小野武彦、小倉一郎、でんでんなど多士済々。

 異色はアルバイトの雷音(冨浦智嗣)で性同一障害の悩みを抱えこの村にやってきた。ドラマでは村の案内役・狂言廻しの役割を担っている。

 絡みがないのは残念だったが故・三國連太郎が貴子の父親役で存在感を魅せ、佐藤との親子出演があったのも見逃せない。

 この年は東北大震災があって、誰しも故郷や家族を想い起こさせるときでもあった。歌舞伎はこの村が抱える諸々の問題を浄化させる役割を果たしているのだろう。

 貴子は記憶障害がありながら歌舞伎・道柴のセリフだけはシッカリ覚えていた。舞台の袖で<景清が最後に眼をくり抜くところ、あたし好きです>という。

 <仇も恨みも是まで是まで・・・>という景清の善は貴子を赦し、この村で暮らしていくことに・・・。

 諸問題は何ら解決しない<ありそうでありえないこの群像劇>は苦労の果ての大円団となり、エンディング・忌野清志郎の主題歌{太陽の当たる場所}とともにホッコリさせてくれる。
 
 本作の最大の功績はこの村が観光名所となり、村歌舞伎が存続できることかもしれない。


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