竜馬暗殺
1974年/日本
制作当時の世相を色濃く反映した青春時代劇
shinakamさん
男性
総合 85点
ストーリー 85点
キャスト 85点
演出 85点
ビジュアル 80点
音楽 80点
幕末の英雄・坂本竜馬が暗殺される3日間を切り取ったATG作品。制作のキッカケが黒田征太郎など新宿ゴールデン街の飲み仲間が企画したため、連合赤軍事件で世間から見放され革命を模索したセクト同士の勢力争い、内ゲバが絶えない70年代半ばと幕末を置き換えたような青春時代劇。
監督は奇才・黒木和雄で、先頃亡くなった原田芳雄の34歳時主演のゴールデンコンビ。何より驚いたのは製作費の低予算(800万)。17年前とはいえTVCMを作るのがやっとの額だ。
映画界が低迷して制作することすらできなかった<活動や>たちのエネルギーが溢れる作品で今観ても見応え充分。
司馬遼太郎の竜馬像を超えた斬新な解釈による清水邦夫・田辺泰志のシナリオ。粒子の粗いモノクロ・スタンダード映像による田村正毅の撮影、クラシックギターだけの哀感漂う松村禎三の音楽、大御所・野坂昭如の題字などそれぞれが採算抜きで結集した経緯が画面を通して覗える。
黒木監督は憧れの革命家・竜馬のイメージを台無しにしないならないようギリギリまで人間らしく描いて新時代を求め抗争と内紛が絶えない幕末の世相を見事に描いて見せてくれた。
主演した原田芳雄はギラギラとした女好きの人間らしさと飄々とした独自の魅力を振りまいて彼の代表作のひとつとなった。中岡慎太郎役で共演の石橋蓮司がいい。武闘派で竜馬と主張を異にしながら親友という微妙な立ち位置で、ときにはコミカルに演じる役柄は時代の渦に巻き込まれる青年像として印象に残る。もうひとり少年暗殺者・右太役に松田優作が出演しているが、巷間言われるほどの名演技はしていないように思えた。3人が女装して、ええじゃないかの騒ぎに紛れるシーンはこの作品のハイライトで見所でもある。
竜馬を暗殺した池田や事件の犯人は謎のままだが、この作品でも史実を踏まえ新解釈はない。その分ドキュメントのように丁寧な雰囲気が緊張感を呼び、畳に染みる血がモノクロならではのリアルさがあった。
<おりょう>も勝海舟も出てこないが、右太の姉で叶やに囲われた<はた>が竜馬の人間像を浮かび立たせている。<はた>を演じたのは中川梨絵。日活ロマンポルノの女優として名前はしっていたが、代役で出たというのに時代に翻弄されながら猥雑でしたたかな女を演じて主役級の大活躍だった。
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