晴れ、ときどき映画三昧

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『黒いオルフェ』 65点

2012-02-29 11:53:42 | 外国映画 1946~59

黒いオルフェ

1959年/フランス

強烈なサンバと静寂なボサノバによる色彩美

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shinakamさん

男性

総合★★★☆☆ 65

ストーリー ★★★☆☆60点

キャスト ★★★☆☆70点

演出 ★★★☆☆70点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

ギリシャ神話のオルペウスとエウリュディケの悲話をリオのカーニバルに場所を移したヴィニシウス・ヂ・モライスの戯曲を、マルセル・カミュが映画化。カンヌのパルムドール、米アカデミー外国語賞をW受賞した。ギリシャ悲話がもとになっていると知って喰わず嫌いだった筆者。今回初めでの鑑賞だが、予想どおりと想定外が混在した作品だった。
予想どおりだったのは、オルフェ(ブレノ・メロ)とユーリディス(マルペッサ・ドーン)の出逢いと別れのストーリーが不自然だったこと。シナリオには強引さが目立ち、2人の喜びも悲しみも唐突感があり共有できなかった。
想定外だったのは、リオの強烈な陽光とサンバのリズムの圧倒的な映像力。年に一度のカーニバルに熱中する唄と踊りは、まさに本物の迫力だ。これは現地での準備を徹底的に行いオールロケした成果だろう。カーニバルの準備に浮かれる街中、丘の上に住む貧しいヒトの集落から観た海岸と日の出、カーニバルで着飾り踊り狂うヒトの波どれをとっても映像のカタルシス。現地の録音とA・カルロス・ジョビンとルイス・ボンファの音楽が、ジャン・ブルーゴワンの撮影映像を一層際立たせている。
主役の2人を始め殆どの出演者がオーディションで選ばれている。子供たちの演技がイチバン上手く見えるほどだが、大人たちは踊りとなると別人のようにイキイキしていた。有名な「オルフェのテーマ・カーニバルの朝」が案外さり気なく挿入されていたのにびっくり。オルフェのブレノ・メロはギターの名人という役柄なのに弾き語りが覚束なかったのに興ざめ。実際はルイス・ボンファの演奏だったので文句はなかったが・・・。ジョビンの「フェリシダージ」(幸福)、ボンファの「オルフェのサンバ」(希望)も重要な効果的な場面で流れボサノバ好きには見逃せないが、貧しい暮らしから生まれたムラート(混血児)たちのサンバのリズムが圧倒した作品だった。