晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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『狂った果実』 70点

2012-02-17 15:57:01 | 日本映画 1980~99(昭和55~平成11) 

狂った果実

1956年/日本

当時はとても斬新だった

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★☆☆ 70

ストーリー ★★★☆☆70点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★☆☆65点

音楽 ★★★☆☆65点

<太陽族>という言葉が流行語を生んだ時代の石原慎太郎原作・脚本による辛口の青春ドラマ。期待の新鋭というふれ込みだった中平康の初監督作品で、当時とても斬新なカット割りとテンポの良さが話題となった。
大人に反抗する金持ちの息子で遊び慣れした兄が、純粋無垢な弟の初恋のヒトを奪ってしまう。兄は弟を想う気持ちと遊び半分でつきあってゆくうち弟への嫉妬心がないまぜとなって、兄弟の関係が壊れてゆく。前作「太陽の季節」でチョイ役でデビューした裕次郎が、兄の夏久役で本格出演、弟の春次役は16歳の津川雅彦でこれがデビュー作。2人の新人俳優に囲まれ魅惑的な女・恵梨に扮していたのはトップ女優・北原三枝。のちの大スター・裕次郎が北原三枝と結婚するキッカケとなり、ウクレレを弾きながらハワイアン風の挿入歌(想い出)を歌うシーンも楽しめる作品でもある。
スポーツカーを乗り回し高級クラブに出入りし、ヨット・ボート・水上スキーで海を謳歌する若者たち。傍から見ると憧れの生活だが、彼らにとって「退屈な暇つぶし」でしかない。ヒマを持て余し議論やケンカ好きな若者たちの暮らし振りがテンポ良く繰り広げられ、モノクロなのに湘南の海や陽射しが眩しく映る。石原兄弟はこんな青春時代を送ったのかと東京の下町で育った筆者にとって別世界を観るような気分で眺めていた。独身のお嬢様風だった恵梨が、実は米軍将校のオンリーだったというのも怪しげに映ったくらい何も知らなかった。4才年上の津川雅彦は、とても年上のお兄さんに見えた。
大スター不在の日活が、緻密な構成や美しい映像にこだわることなく、湘南を舞台に新人を集めエネルギッシュに作り上げた本作。トリュフォー・ゴダールを刺激しヌーべルバーグに影響を与えたというのはあまりにも有名なハナシ。本作が過大評価されたのでは?という気もするが...。