遊び人親子の日記

親子で綴る気まぐれ日記です。

五色の虹

2016年05月11日 11時41分46秒 | 読書

         五色の虹   
           満州建国大学の卒業生たちの戦後    
                            三浦英之(著)2015年12月発行

   前の戦争を知る重要な資料であり、稀少且つ胸に迫るドキュメンタリー。

   著者は朝日新聞社の記者をしており、新潟赴任後、面会希望の電話を受ける。
   その人は自転車でシルクロード横断をしているメンバーの一人で、キルギスで、
   敗戦後日本兵捕虜が強制労働させられていたということを知り、帰国後、国内で
   情報提供を募ったところ、新潟在住の元日本兵が見つかった。
   その話を聞いた記者である著者は、早速、元日本兵の老人に会いに行く。
   
   その老人は、既に85歳という高齢、そして満州建国大学の出身者だった。
   彼の話を聞き、満州建国大学について興味を持ち取材をしようと決意するも、
   大学出身者のほとんどが鬼籍に入っているので元々証言可能な人が少なく、
   しかも、皆かなりな高齢であることから、残された時間が少ないことなど、
   困難を極める。
   数少ない証言者から、如何に当時の事実を取材できるのか・・・
   著者は、時間と国境という二重の制限と闘いながら取材、
   それにより得られた貴重な証言から本書は構成されている。
   
   満州建国大学は、日本の傀儡国家として建国された満州国における、
   漢人、満人、蒙古、朝鮮人、日本人、の五族協和を達成するための人材育成
   その実践、実験の場として、当時としては信じられないほどの言論の自由を
   与えられ、学費が免除された満州における最高学府だった。
   五族協和を掲げた大学生活は全寮制で、まさに寝食を共にし、学び合い議論し合う
   各国の青年達、、、が、建前では五族協和を唱えつつも、日本の政策との矛盾は
   明らかだった。革命から逃れてきた白系ロシア人学生などとは異なり、
   差別弾圧をされていた漢人や満人学生は抗日運動に走ることになる。
   
   戦況悪化にともない、満州建国大学の学生も学徒出陣、兵隊にとられ、
   次第に食料確保もままなくなり、まともな授業が出来ない状況に、、、
   結局、ロシア参戦により日本は敗退。
   満州はロシア、中国共産党、国民党が争う混乱の地と化してしまう。
   
   そんな複雑な地で建国の理想を求め、
   学び合った各国の青年たちのその後、激動の戦後の取材記。
   取材は、各国の体制の壁を前に思うようには進まないこともありながら、
   それでも、余命少ない高齢の卒業生たちの生の声を真摯に聞きまとめてあり、
   その苦労は相当に大変だったろうと察します。感動しました。
   日本人皆に、特に政治に携わる人達には、是非読んでもらえたら、と願います。

    わがまま母
   
   
   
           
コメント
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