ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 宇沢弘文著 「ケインズ一般理論を読む」 岩波現代文庫

2013年03月30日 | 書評
市民に分かるようにケインズ「雇用・利子及び貨幣の一般理論」を解読する 第18回

第7講 第5篇「貨幣賃金と価格」 (2)
 有効需要の決定において定義した総需要関数Z=Φ(N)の逆関数である、N=F(Dw)を雇用関数という。有効需要Dwと労働の雇用量Nとの関係は、有効需要の変化に対する産出量O、期待利潤P、貨幣賃金Wの弾性率をeo,ep,ewとすると演算過程は省略するが(簡単である)、ep=1-eo(1-ew)の関係が成立する。これを古典派の貨幣数量方程式と呼ぶ。総有効需要と総雇用量との間には一意的な関数関係は存在しないが、有効需要の変化に対するレスポンスの程度が複雑に絡んでおる。有効需要が減少すれば、労働の過少雇用という減少がおき失業者が大勢存在することは確かである。有効需要が増加すると雇用量は増加するが、現行の実質賃金のもとでどれだけ労働供給量を増やせるかは不明である。古典派経済学の教科書の多くは第1篇:価値学説、第2篇:貨幣と価格学説からなるという。ケインズは価値理論と貨幣理論に2分するのは正しくないという。マクロ経済学とミクロ経済学に分類するのが正しいという。そしてミクロ経済学で個別企業や産業を分析するときには総有効需要や総雇用量は一定という仮定をおく。総産出量や総雇用量がどのようにして決まるかを分析するマクロ経済学では貨幣経済理論を援用しなければならないというのだ。そして将来の均衡期待が現在の均衡に影響を持つのである。

 価格水準(製品原価)決定メカニズムは、限界費用を構成する生産要素に対する支払いの規模と同時に、産出量の大きさにも影響される。生産技術と資本蓄積が一定のときは一般的な価格水準は全雇用量の規模によって決定される。失業が存在する限り労働者は現行賃金で働くことに同意する。したがって貨幣供給量の増加によって価格は影響を受けず、利子低下による有効需要の増大に見合うだけの雇用量の増大が見込まれる。貨幣供給量の増加に比例的に有効需要が増加する場合を「貨幣数量説」が成立することになる。価格理論の目的は貨幣供給量の変化にたいして価格水準がどう変化するかを分析するのである。貨幣供給量の増加が利子率の低下をもたらす度合いは「ヒックスのIS・LM分析」で解析された。貨幣供給量の増加は流動性選好に影響し、国民所得の増大が市場利子率を下げるのである。国民所得の増大(好況)は貨幣賃金の上昇となるのが一般的である。それはまた価格の上昇となる。ケインズはこれを「セミインフレーション」といい、有効需要が増えても産出量あるいは雇用量の増大という形にならずに、すべて費用の単位(価格)の上昇となって吸収されてしまう場合を「真正インフレーション」と呼ぶ。ケインズは先ほど述べた弾性率を貨幣供給量の変化に対して様々な要因の弾性率を定義して古典派の貨幣数量方程式を一般化した。演算は簡単なので省略するが、それで価格水準の安定について何が言えるか複雑でなんとも言えない。
(つづく)


文芸散歩  金田鬼一訳 「グリム童話集」 岩波文庫(1-5冊)

2013年03月30日 | 書評
ドイツ民俗研究の宝庫「児童と家庭向けのおとぎばなし」 第90回

* KHM 151  ものぐさ三人兄弟
王様には三人の息子がいました。誰を世継にするか、ものぐさ度で判定することになりました。三人は自分のものぐささを自慢げに吹聴します。一番末の息子は、自分が絞首台で首に縄をかけられて、誰かがナイフを渡したとしても自分は面倒だから死んだ方がましだと考えるといって王様を感心させました。世継は末弟に決まりました。

* KHM 152  牧童
賢い羊飼いの男の子がいました。その評判は国の王様の耳には入り、王様は男の子を呼び3つの謎掛けをしました。第1問は大海の水滴の数、第2問は空にある星の数、第3問は永劫とは何秒のことかということです。男の子の答えはかならずしも理解できませんが、「一休さんのトンチ比べ」のようなもので屁理屈に過ぎません。参ったというか反論するかそれは王様次第です。

* KHM 153  星の銀貨
小さな女子の父も母も無くなって、酷い貧乏なくらしでもっているものはパン一切れでした。女の子は信心深い人でひたすら神様を信じておりました。路で会った腹を減らした人にそのパンをあげ、かぶるものがない人に自分お帽子をあげ、着る物がない子どもに自分の胴着を与えて自分は裸になりました。そのとき空から降る星の如く、女の子の頭に銀貨が落ちてきました。一生涯女の子はお金持ちで暮らしました。流星は幸運をもたらすという民間信仰と考えられます。
(つづく)