大災害の被災対応と復旧・復興に法の課題とはなにか 第10回
第3部 「法の課題」 (3)
個人情報保護法制(2003年「個人情報保護法」、2003年「行政機関・独立行政法人の保有する個人情報の保護に関する法律」)は、IT化の情報社会において個人情報の適切な管理をするための、一定の理由が無い限り「目的外使用」や「外部提供」をしてはならないというもので、被災者の支援においてはこれが問題となった。救助すべき障害者を教えてもらえない、避難者同士の連絡をつけようとしても連絡先を教えてもらえないとか、一人住まいの高齢者が把握できないといった事例である。これらの法制は「個人の権利・利益を保護することが目的」であるはずだが、これによってかえって権利や利益が損なわれる危険性があるというのだ。災害時に各種福祉団体に個人情報を教えることを「外部提供」というが、原則として外部提供には本人の同意が必要である。2006年厚生省・総務省「災害時要援護者の批難支援ガイドライン」では個人情報収集の方法として、「手上げ方式」、「同意方式」、「関係機関共有方式」であった。行政機関としては持っている個人情報を共有しあう方式が一番スムーズである。行政は業務委託先できることになっているので、あらかじめ諸団体に支援業務を委託いておけばいいことになる。いずれにせよ官には個人情報が把握できるが、災害時の民間支援団体のアクセスのハードルは高い。阪神淡路大震災後、兵庫県西宮市は住民台帳から被災者検索システムを開発し罹災証明書発行に役立ったという。
阪神淡路大震災では市民ボランティアが芽生え、延べ約200万人がボランティア活動に参加したという。1995年はボランティア元年といわれ、1月17日は「防災とボランティアの日」と定められた。ところが東日本大震災では最初から官僚統制が露骨で、メディアなどはボランティアを厄介者扱いをしてきた。日本の東と西ではかくもボランティア文化が異なっている。1998年「特定非営利活動促進法(NPO活動促進法)」が制定された。災害ボランティアの本質は。「自由」、「自立」、「利他」にある。決して行政の末端ではなく、自立性を欠いた活動(創造性を欠いた活動)に成り下がってはいけない。政府の政策審議をスムーズにするための官制NGO(政府系NGO?)であってはならない。かゆいところに手が届く、官が考えられもしないはっと驚くような提案と実績を挙げるNPOでなければ意味が無い。「官統制下における手弁当持参の日雇い労務者」のようなボランティア扱いはあまりに惨めでは無いか。ただし東日本大震災ではボランティア活動を支える資金を募金する活動と労働寄付が融合した中央共同募金会の活動はボラアンティアに18億円の助成を行った。2011年6月NPO活動促進法の改正と新寄付税制が相次いで成立した。認定NPOの条件を緩和し、法人認定を国税庁から都道府県がすることになった。個人寄付の税額控除が行なえるようになった。災害対応における女性参加はあいかわらず低調で、各種委員会や会議の女性参加率は5%以下である。2005年の防災基本計画には始めて「男女双方の視点」が盛り込まれた。
(つづく)
第3部 「法の課題」 (3)
個人情報保護法制(2003年「個人情報保護法」、2003年「行政機関・独立行政法人の保有する個人情報の保護に関する法律」)は、IT化の情報社会において個人情報の適切な管理をするための、一定の理由が無い限り「目的外使用」や「外部提供」をしてはならないというもので、被災者の支援においてはこれが問題となった。救助すべき障害者を教えてもらえない、避難者同士の連絡をつけようとしても連絡先を教えてもらえないとか、一人住まいの高齢者が把握できないといった事例である。これらの法制は「個人の権利・利益を保護することが目的」であるはずだが、これによってかえって権利や利益が損なわれる危険性があるというのだ。災害時に各種福祉団体に個人情報を教えることを「外部提供」というが、原則として外部提供には本人の同意が必要である。2006年厚生省・総務省「災害時要援護者の批難支援ガイドライン」では個人情報収集の方法として、「手上げ方式」、「同意方式」、「関係機関共有方式」であった。行政機関としては持っている個人情報を共有しあう方式が一番スムーズである。行政は業務委託先できることになっているので、あらかじめ諸団体に支援業務を委託いておけばいいことになる。いずれにせよ官には個人情報が把握できるが、災害時の民間支援団体のアクセスのハードルは高い。阪神淡路大震災後、兵庫県西宮市は住民台帳から被災者検索システムを開発し罹災証明書発行に役立ったという。
阪神淡路大震災では市民ボランティアが芽生え、延べ約200万人がボランティア活動に参加したという。1995年はボランティア元年といわれ、1月17日は「防災とボランティアの日」と定められた。ところが東日本大震災では最初から官僚統制が露骨で、メディアなどはボランティアを厄介者扱いをしてきた。日本の東と西ではかくもボランティア文化が異なっている。1998年「特定非営利活動促進法(NPO活動促進法)」が制定された。災害ボランティアの本質は。「自由」、「自立」、「利他」にある。決して行政の末端ではなく、自立性を欠いた活動(創造性を欠いた活動)に成り下がってはいけない。政府の政策審議をスムーズにするための官制NGO(政府系NGO?)であってはならない。かゆいところに手が届く、官が考えられもしないはっと驚くような提案と実績を挙げるNPOでなければ意味が無い。「官統制下における手弁当持参の日雇い労務者」のようなボランティア扱いはあまりに惨めでは無いか。ただし東日本大震災ではボランティア活動を支える資金を募金する活動と労働寄付が融合した中央共同募金会の活動はボラアンティアに18億円の助成を行った。2011年6月NPO活動促進法の改正と新寄付税制が相次いで成立した。認定NPOの条件を緩和し、法人認定を国税庁から都道府県がすることになった。個人寄付の税額控除が行なえるようになった。災害対応における女性参加はあいかわらず低調で、各種委員会や会議の女性参加率は5%以下である。2005年の防災基本計画には始めて「男女双方の視点」が盛り込まれた。
(つづく)