ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 宇沢弘文著 「ケインズ一般理論を読む」 岩波現代文庫

2013年03月24日 | 書評
市民に分かるようにケインズ「雇用・利子及び貨幣の一般理論」を解読する 第12回

第4講 第2篇「定義と概念」

第4講:第2篇「定義と概念」では、基本的概念の解説として、経済変量の単位、経済分析のなかで期待の果す役割、所得の概念、貯蓄と投資の概念について語られる。マーシャル、ビグーがいう「国民分配分」とは毎期の産出量や実質所得の大きさを測るものであって、生産物の市場価値や貨幣所得を表すものではない。経済全体の産出物が多種多様で構成されているので、一つの尺度で測ることは不可能である。一つの財だけの経済という特殊なモデルでは可能である。資本設備に陳腐化したり消滅した古い設備と新しい設備の比較は難しい。一般的な物価水準とはあいまいな概念である。そこでケインズは雇用理論を展開するに当たって、2つの基本的な単位を導入する。貨幣単位と賃金単位である。労働を単純労働に還元した雇用単位、労働単位は雇用量を量る単位であり、賃金単位は労働単位の貨幣賃金である。こうして同質的なものとして議論する。ケインズは貨幣と労働の2つの基本的な単位を用いて議論した。ケインズは単純化のため1財経済マクロモデルで得られた結論を一般化しても大体正しいと考えた。企業の「期待」概念は価格、将来の収穫についての期待であり、企業の雇用は短期の期待に依存して決まってくる。投資水準の決定は将来予想される費用と売上とに関して、その時点で形成される期待に基づく。各時点での雇用量はその時点において存在する資本設備を念頭に置きながら、その時点の期待に依存して決まってくる。

企業は期末に経済活動の結果として、収入から使用費用を引いた粗利潤に期末資産を足した価値を持つ。国民所得とは収入から使用費用を減じた価である。このあたりの詳細は原価分析となり伝統により算入項目は多少異なる。経済全体の消費と投資はそれらの総和である。所得は売上から使用費用を引いたもの、消費とは売上から購入を引いたもの、貯蓄は所得から消費を引いたものである。「投資は貯蓄に等しい」 これが有名なケインズの命題である。総投資というのは資本資産の購入一般を指す。投資は広い意味で資本ストックの増加分で、固定資産、運転資本、あるいは流動資本のすべてを含む。投資についての異論はこれらから何を省くかという点である。ケインズは在庫投資は除くべきであると云う。貯蓄と投資の乖離を生み出す要因として所得の定義の問題がある。貯蓄が投資を上回る時ケインズのいう所得が減ったことになる。預金者と銀行が結託して、貯蓄が銀行体系の中に消滅し投資に吸い込まれてしまうか、銀行の体系がそれに対応する貯蓄がなくても可能であるように想定される。それは銀行体系の信用の増加の結果である。人々が保有したいと思う貨幣の量が銀行体系によって創出された貨幣の量に等しくなる。これが貨幣理論の基本的な命題となる。
(つづく)


文芸散歩  金田鬼一訳 「グリム童話集」 岩波文庫(1-5冊)

2013年03月24日 | 書評
ドイツ民俗研究の宝庫「児童と家庭向けのおとぎばなし」 第84回

* KHM 134  六人の家来
どこかのお妃は魔法使いで、そのお姫様は絶世の美女でしたので求婚に来る王子たちにお妃は難問を出し出来なければ命を奪うという事をやっていました。ある国の王子様がが求婚に行く途中で、体がでかくなるデブ男、何でも聞こえる耳を持つ男、縄のようにひょろ長いせい高のっぽの男、おそろしい目つきで相手を破裂させる男、熱くても寒いという反対の感覚を持つ男、遠くまで見通す千里眼の男の6人を家来にしてお姫さんのいるお城に乗り込みました。お妃の第1問は紅海に落とした指輪を取ってくることでしたが、千里眼の男が先ず場所をさがし、デブ男が紅海の水を吸い込み、背高のっぽの男が指でつまんで拾いました。第2問は牛300頭、葡萄酒300樽を食べつくすことでした。これにはデブ男が活躍しました。第3問は娘と2人で12時まで寝ないことです。寝ずの番をしていた全員がお妃の魔法で眠りこけ、起きたのは12時の15分前で、お姫様の大捜索隊を組み無事探し出して王子はお姫様と結婚しました。ここで話は終ってもよいのだが、なぜか王子様の身の上話で豚飼いの一件は理解に苦しむ。別の話が紛れ込んだようだ。

* KHM 135  白い嫁ごと黒い嫁ご
白い色は清浄無垢の貴い色で天上界へ導きます。黒い色は冥府(地下界)の色で、喪の色でもあります。ある母親が実の娘と継娘を連れて草刈に出かけました。途中あわれな格好をした神様が道を尋ねましたが、母親と実娘はにべもない対応をし、継娘は親切に教えてあげました。神様は母親と実娘に罰を下し黒い醜い姿に変え、継娘に祝福を与え白く美しい娘にしました。継娘にはレギーネという兄がいて、王様の馭者をしていました。レギーネは美しい妹の絵を描きましたが、これが王様の目に留まり亡きお妃にそっくりだったので王様は継娘を妃に迎えようとしました。実子の黒娘はこれを妬んで母親に魔法の術で馭者を半盲目に、継娘の耳を聞こえなくしました。そして黒娘と母親は王様の迎えの車に継娘と一緒に乗り込みました。継娘の花嫁衣裳、金ぴかのぼうしを剥いで黒娘に着せお城に着きました。目の見えない馭者は妹だと言って王様に紹介しましたが、王様は醜い黒娘をみて怒り馭者を牢に閉じ込めました。魔法使いの母親は王様を魔法にかけ黒娘と結婚させ城に住みました。そして継娘を河へ落としこみ殺しました。ところが継娘は白鴨となって三日晩お城の料理番の小僧のところに現れ話かけます。不審に思った小僧が王様に話しますと王様は台所に出かけ白い鴨の首を切って落としました。すると魔法が解けて美しい白い娘が現れ、王様は魔法使いの母娘を処罰し娘と白い結婚しました。
(つづく)