ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 宇沢弘文著 「ケインズ一般理論を読む」 岩波現代文庫

2013年03月19日 | 書評
市民に分かるようにケインズ「雇用・利子及び貨幣の一般理論」を解読する 第7回

第2講 第1篇「序 論」 (2)
 これから一般理論の解説には図、数式は一切使わないことにする。図や数式で誤魔かされてはならない、言葉で納得できなければならないと思うからである。古典派の「一般均衡」の状態では、労働について需要と供給が一致するだけではなく、すべての財やサービスについて需要と供給が実現し、生産者は利潤が最高になるように生産活動を行い得りたいと思うだけの涼を販売することが出来るという。この均衡を「ワルラス均衡」と呼ぶ。ケインズはビグーを批判の対象とするというが、ワルラスの一般均衡理論の考えが批判の対象なのである。1929年の大恐慌のとき、完全競争的市場を通じて資源配分が行われるとき、社会的に見て最適な資源配分が行われるので、政府の介入は無効であると云う見解が古典派から出された。古典経済学の第1公準は生産曲線を基にしている。労働雇用量を変数とする生産量は数学関数的アナロジーを使って、曲線の関数表現も根拠もなく、労働者あたりの生産量が最大となる変曲点において利潤(生産)が最高となるとしているが、理科系の私にはこれを自明と認めることはどうしてもできない。ケインズは古典派のいう労働雇用や生産要素は遅滞なく可変的であることに疑問を呈し、生産要素は過去の投資によってきまる固定的な要素であり、新たな状況での投資変更がなければ即応でき似るものではないとする。ここに時間という要素が入るが、一定の時間(現実には生産構成変更には1,2年かかる)を経れば均衡に達するかといえば、それはまた新たな状況への過渡的な過程で何が主要な要素となるか予測不可能性がある。古典派の第2公準は労働の供給についてである。限界非効用と実質賃金とが等しくなるという考えであるが、労働時間を変数とする実質所得曲線を労働の供給曲線を右上がりの曲線を想定していることにみそ(うそ)がある(現実は労働時間が多くなっても賃金は頭打ちする逓減曲線、ルート√曲線になるはず)。企業は利潤が最大となる水準で労働を雇用し、労働者は自ら選択した労働時間(日数)だけ働くことが出来る。これは完全雇用の考えである。古典派は摩擦的(一時的雇用調整)失業と自発的失業が基本であるとする点はケインズが批判するところである。ケインズは第1公準はそのまま認めるが(スパンを長く考えれば)、第2公準は否定する。
(つづく)

文芸散歩  金田鬼一訳 「グリム童話集」 岩波文庫(1-5冊)

2013年03月19日 | 書評
ドイツ民俗研究の宝庫「児童と家庭向けのおとぎばなし」 第79回

* KHM 122  キャベツろば
 若い猟人が森を歩いていると、おばあさんが何か恵んでくれというので相応のほどこしをしました。すると(魔法使いの)おばあさんは、猟人にどこでも飛んでいける合羽と、鳥の心臓を呑むと毎朝金貨が1枚拾える事を教えました。猟人はこうしてお金持ちになりましたので世界見物に出かけました。森の中に立派な御殿を見つけましたが、ここには魔法使いの婆さんときれいな娘が住んでいました。婆さんは娘を脅かして猟人を御殿に引き込み、娘に美人局のような事をさせ猟人から合羽と鳥の心臓を盗み出させました。こうして放り出された猟人は山の頂上から吹き上げられキャベツ畑に降りました。娘の裏切りと婆さんのたくらみを知ったのですが、腹が減っていたのでこのキャベツを食べると猟人はロバになり、別のキャベツを食べると人間に戻りました。復讐のため、2つの種類のキャベツを持って顔を真っ黒に塗って森の御殿にゆき、婆さんと女中と娘にキャベツを食べさせてロバに変えました。そして三匹のロバを粉引き場に連れてゆき、職人に酷使するように頼みました。婆さんロバは死にましたので、女中と娘のロバには別のキャベツを与えて人間に戻らせました。娘はばあさんに脅かされてやったと謝り、二人は結婚して幸せになりました。

* KHM 123  森のなかのばあさん
 下女がご主人お供をして馬車で森を通り抜けようとしたら、強盗が出てきて皆殺しにし馬を奪って逃げました。木に隠れて難を逃れた下女がある木下に座り込んでいると小鳩が現れ下女に鍵を与えて、下女が木の幹の扉を開けると、食事や寝室や衣裳が用意されていました。そして小鳩は下女にお願いごとをするのですが、小鳩は魔法にかけられているので、これを解くには小さな家にいる婆さんには返事をせず奥の部屋に往き、飾りのない指輪を持ってきて欲しいといいました。その通りにしますと森の一つの木が男の人に変わり、他の木も家来に戻りました。この男の人は王子様だったのです。下女は王子様と結婚しました。

* KHM 124  三人兄弟
 ある男は三人の息子を持っていましたが、家屋の他には財産はなく、誰に家屋を譲るかと悩みました。そこで三人のうち一番いい職人になった者に家を譲ることにしました。三人は修行に出かけ、長男は蹄鉄工に、次男は理髪師に、三男は剣術使いになって帰ってきました。腕の具合をくらべて三男に家を譲ることに決定しましたが、兄弟はめいめいの仕事に精進して仲良く家で暮らし、裕福な一家となりました。そして三人とも同じお墓に眠っています。
(つづく)