大災害の被災対応と復旧・復興に法の課題とはなにか 第3回
第1部 「法のかたち」 (2)
災害関連法は主要な法律だけでも100を超えるといったが、更に法に基づいた下位の「政令」や「規則」、「通知」、「連絡」、「運用基準」がある。「政令」は総理大臣と担当大臣が署名するが、「省令」は担当大臣だけで決定する。省の事務次官、課長がだす「通知」は地方自治法に基づく技術的助言である。マニュアルやガイドラインにあたる「事務連絡」、「基準」は地方に指示を出す。法律だけでなく「前例」という慣例重視も大きな要因である。災害救助法には「生業に必要な資金、器具または資料の給与」の規定があるが、官僚は「現金支給は前例がない」と現金給付を堅く拒んでいる。災害現場では慣例が法を超えて運用が優先している。現場では予算措置がついたものから,国庫負担率の高いものから順に施策が行なわれる。優先順位は財政的裏づけの程度できまるようである。それを決めているのが「要綱」である。日本の災害法の特徴は災害救助や復旧・復興よりも防災とりわけ防災公共事業に重点を置いている。阪神・淡路大震災までは災害関連法は防災に関するものが大半を占め、復興については殆ど考えてこなかった。この矛盾が今回の東日本大震災で露呈した。このような防災中心主義は防災のための開発工事などの公共事業とともに発展し族議員を生じた。日本の災害法のもうひとつの問題点は災害救助法の権限は都道府県知事にあり、災害対策基本法の責任は市町村に分属するというねじれ問題にある。災害により市町村という司令塔の壊滅により、救助や対策が遅れ混乱したことは記憶に新しい。地震・自然災害の少ない欧州特に、ドイツ・フランスの災害法制は治安や有事法制を基本としたつくりとなっている。それに対してアメリカは「ロバート・T・スタフォード法」は災害対応を目的とした法であり、米国連邦緊急事態管理庁FEMAは災害対応庁である。今回の災害で自衛隊の活動は目を見張るものがあったが、やはり有事法制と災害法制とは峻別することが望ましい。
(つづく)
第1部 「法のかたち」 (2)
災害関連法は主要な法律だけでも100を超えるといったが、更に法に基づいた下位の「政令」や「規則」、「通知」、「連絡」、「運用基準」がある。「政令」は総理大臣と担当大臣が署名するが、「省令」は担当大臣だけで決定する。省の事務次官、課長がだす「通知」は地方自治法に基づく技術的助言である。マニュアルやガイドラインにあたる「事務連絡」、「基準」は地方に指示を出す。法律だけでなく「前例」という慣例重視も大きな要因である。災害救助法には「生業に必要な資金、器具または資料の給与」の規定があるが、官僚は「現金支給は前例がない」と現金給付を堅く拒んでいる。災害現場では慣例が法を超えて運用が優先している。現場では予算措置がついたものから,国庫負担率の高いものから順に施策が行なわれる。優先順位は財政的裏づけの程度できまるようである。それを決めているのが「要綱」である。日本の災害法の特徴は災害救助や復旧・復興よりも防災とりわけ防災公共事業に重点を置いている。阪神・淡路大震災までは災害関連法は防災に関するものが大半を占め、復興については殆ど考えてこなかった。この矛盾が今回の東日本大震災で露呈した。このような防災中心主義は防災のための開発工事などの公共事業とともに発展し族議員を生じた。日本の災害法のもうひとつの問題点は災害救助法の権限は都道府県知事にあり、災害対策基本法の責任は市町村に分属するというねじれ問題にある。災害により市町村という司令塔の壊滅により、救助や対策が遅れ混乱したことは記憶に新しい。地震・自然災害の少ない欧州特に、ドイツ・フランスの災害法制は治安や有事法制を基本としたつくりとなっている。それに対してアメリカは「ロバート・T・スタフォード法」は災害対応を目的とした法であり、米国連邦緊急事態管理庁FEMAは災害対応庁である。今回の災害で自衛隊の活動は目を見張るものがあったが、やはり有事法制と災害法制とは峻別することが望ましい。
(つづく)