できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

2029冊目:美馬達哉『リスク化される身体 現代医学と統治のテクノロジー』(青土社)

2014-11-07 10:00:51 | 本と雑誌

2029冊目はこの本。
美馬達哉『リスク化される身体 現代医学と統治のテクノロジー』(青土社、2012年)

医療社会学の本ではあるけれども、リスクマネジメント論やリスク社会論の前提にある「リスク」という概念の問い直しから議論を出発させているので、学校事故・事件関連での「リスク」論への批判とも内容が通じる部分があって、とても興味深い一冊。
そもそも「リスク」かということ自体が、その社会・文化の支配的な価値意識との関連のなかで浮上すること。「リスク」をコントロールしようとする技術が新たな「リスク」を生み出す危険性。あらゆる「リスク」の未然防止をしようとすると監視社会的になるとか、甚大な「リスク」がある事態を想定しての対応、「危機管理」的な対応は、だんだん「戦争指導」に近づくこと。そして原発事故のような破局的な事態を想定して「リスク」予測をする議論は、だんだんSF小説的なストーリーに近づく、等々。
おそらくこの本で指摘されている「リスク管理」に関する諸課題が、学校事故・事件関連のことでも指摘できそう。そういう諸課題に気付くことなく、安易に「学校のリスクマネジメント」とか言うている学校事故・事件問題の研究者は、もはやダメだろうなあ・・・。

リスク化される身体 現代医学と統治のテクノロジー


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2028冊目:高木慶子『悲しん... | トップ | 2030冊目:鈴木哲夫『ブレる... »
最新の画像もっと見る

本と雑誌」カテゴリの最新記事