できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

子どもを見るときの観点の問題

2011-02-18 23:54:56 | 受験・学校

しばらく更新が途切れてしまいました。この間ほんとうにいろいろありまして、心身ともにちょっと疲れました。どんな事情があったかについては、もうひとつの日記帳ブログを見てお察しください。

さて、このブログ及び日記帳ブログとは別に、この約1年くらい、いま流行の「ツイッター」にもかかわって、私もそこでいろんなことをつぶやいています。ですが、今の平松大阪市長ではありませんが、個人的には日常会話の延長みたいなこと、あるいはプロ野球の野村元監督の「ぼやき」みたいなことはツイッターに発信しても、そこで本格的な教育論や子ども論みたいなことを書き込んだり、誰かに論争をふっかけたりすることは、あえてしないでおこうと思っています。「連続ツイート」という方法はあるものの、基本的に、140字で的確に相手につたわるように自分の意見を書いて伝えられるかというと、「それはむずかしいだろう」と思うので。

ただ、ほかの人がツイッターで教育や子どもにつぶやいていることを見ていると、正直「これってどうなのだろう・・・・?」と思うこともあります。特に最近「どうなの?」と思ったのが、ある大学教員の方のつぶやきをツイッターで見たときのことです。

どうやらその方は、子どもの学びとか人間の学習というものを、英語・国語・数学(算数)・理科・社会の5教科中心に、しかも「学力テスト」などで数字で測れるものを重視する形で考えている様子。だから、その数字を挙げるための競争も当然、肯定ですし、美術や音楽などは家庭間の階層格差がはっきりと出るから、学校では重視しなくてよいとすら、その方はおっしゃるわけです。もちろん、これは私の側からのその方の見解の「まとめ」なので、かなりうがったまとめ方をしているかもしれませんが。

ただ、たとえば美術や音楽といった「芸術的・文化的な活動」への参加だって、子どもの権利条約の趣旨からすれば、このブログで何度も書いてきたように、子どもの権利保障の観点から学校外でそれに触れる機会を充実させていく方向性だってとれるわけですよね。

また、子どもの学習の成果を、テストの点数など「目に見える形で、数字で表されるもの」に置き換えて理解するというのは、それはしょせん、子どもの側の都合ではなくて、子どもに接する「おとなの都合」で定めたもの。つまり、おとなの都合で生み出された「バーチャルなものさし」でしかない。そのことを、一方でそういうテストなどを使って子どもの状態を見ながらも、どこかでおとな側がわかっておく必要もあるのではないでしょうか。

それこそ、学校でのテストの点数など「目に見える数字」では高い評価を得ている人たちが、この日本社会において、「時代の状況をたくみに読み解き、時々刻々と変化する社会の舵取りをする力に長けている人」たりうるのかどうか。もしも「そうなのだ」とすれば、今の日本社会の政治や経済の混迷状況など、とっくの昔に脱しているのではないでしょうか。なにしろ、今の日本社会をリードするエリート層の人々には、学校でのテストの点数を上げる競争に勝ち抜き、有名な大学などを出ている人たちが圧倒的多いわけですからね。

だから私にしてみれば、「子どもに競わせて、目先の1点や2点を上げるために教育の在り方をどうこうという議論をするよりも、もっと子どもたちがより深く、人間というもの、社会や文化というものを見つめる目を育てることに向けて、教育の在り方を考えていくほうが、これから先の日本社会を考えたときには大事なのではないか?」という思いがあります。

たぶん、こういうことを書くと、その方は「そんな目に見えない、あいまいなものに頼る教育論ではダメだ」とか言うのかもしれません。しかし、もともと子どもの学習の度合いの深まりだって「目に見えないあいまいなもの」であり、それを「あえて、目に見える形にする」ための方法として「テスト」という手続きをとっているのだ、と考えればいかがでしょうか?

子どもに限らず、人が何かを学んで、変わっていくという姿は、私たちが日常的にいろんな場面で見聞きしていることではあります。ですが、それをテストをつくって点数化するような、計量的な手法でのみとらえて理解し、教育の目的や方法について論じていくというのは、実はその「何かを学んで、変わっていく姿」のなかの、しょせんはごく一部分を、見ている側の都合で切り取って議論しているのにすぎないということ。その自覚だけは、どこかでしておいてほしいな、と私は思います。

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