このところ、神戸の教員間いじめ問題に関する私のブログ記事について、認知度があがってきたような印象を受けます。そのこともあって、関係各方面から情報提供があったり、意見を求められたりすることも増えてきました。この約1か月間、ブログ+ツイッター+フェイスブックと、自分が使える媒体を駆使して、いまの神戸市長や市教委の対応のおかしさについて、私なりに情報発信をつづけてきたかいがあったなあと、あらためて思っております。
ただ、今もなお残念なことがあります。それは、相変わらず一部のマスメディアがネット配信記事のなかで、例の被害にあった教員が激辛カレーを無理やり食べさせられている画像を流し続けていること。また、それをSNS上で何も考えずに拡散している人がいることです。なかには、臨床心理士の資格を有する人が、ツイッター上で「加害教員を許すな」的な意見とともに、そういう画像のついた記事を拡散しているケースも見受けられました。「これって、ほんとうに容認し難いこと」のように思います。
それこそ、たとえばたとえ画像であっても、誰かがいじめられている様子を見るだけで心身ともに苦しくなる人もいるでしょう。また、そういう画像がネット空間上をいつまでも流布していることで、被害にあった教員が心苦しくなったりしないのか。画像のネット空間上での流布が、今後、被害にあった教員の回復や職場復帰の妨げになったりはしないのか。そういうことへの想像力が、どうも私たちの側に弱いような気がするのです。特に「加害教員許すな」という「正義感」が、上記のような苦しい思いをしている人々への想像力を鈍らせているとしたら…。やはり、上記の画像の流布等々、この約1か月間のマスメディアやSNS経由での情報流通のあり方には、もうそろそろ「やめたほうがいいだろう」と疑問や批判を呈せざるをえないのが実情です。
どうか、マスメディア関係者のみなさまには、この画像や動画の流布について、そろそろ止めていただきますよう重ねてお願いいたします。
それとともに、今日付けで、朝日新聞の社説が厳しく、分限処分条例改正案の議会提出や、実際の加害教員への分限休職処分実施をめぐる神戸市長・市教委の対応を批判しました。以下が、その社説の記事です。
(社説)神戸教員間暴力 「強行」処分の危うさ (2019年11月4日付け朝日新聞社説)
おそらく、この社説に関して、神戸市長はSNS上などでさまざまな「反論」(言い訳)をすると思います。
その「反論」(言い訳)の要点を私なりに推測すると、たぶん次の3点ではないかと思います。(実際に市長ブログなどを読まれた方からの情報もいただいていますが、ここではあくまでも私の推測として書いておきます)
・今回の件は前代未聞であり、しかも程度がひどい。
・あくまでも「例外的」な措置であって、今後も分限休職をするとは考えていない。
・「加害教員を許すな」という「世論」に押されてのことであって、市長も市教委も何も悪くない。
ただ、朝日新聞の社説は、市長や市教委がそういう意図で行った今回の加害教員への分限休職処分や、その前提となる市長からの分限処分条例改正案の提出そのものについての疑問、批判を投げかけるものです。
なので、もしも上記3点のようなことを市長がSNSなどで発信しているのであれば…。「だからなんなの? そういう対応がおかしいって言われてるんだけど…」というしかないような、そういう「反論」(言い訳)だなあと、私なら言うしかありません。
もう少しついでにいうと、この教員間いじめの問題が発覚して以来の約1か月間、たとえば「加害教員を早く処分しろ」とバッシングをしたり、市教委や当該の学校あるいは近隣の学校に苦情電話をかけまくる人々に対して、どの程度、市長や市教委上層部は「冷静な対応を求めたい」という呼びかけを行ったのでしょうか?
むしろ神戸市長ご自身が、たとえば「こんなケースは前代未聞だ、あるまじき行為だ、おぞましい」等々と言ってみたり、あるいは「加害教員への市教委の対応は不十分」なので「市教委を改革してやる」みたいなことを言ってみたり…。「加害教員を早く処分したい」という方向に世論を誘導するような、そんな情報発信をSNS上で行ってきたりはしなかったかどうか。「世論」に押されて自分たちはやったのだというけど、その「世論」を煽るような対応を、実は市長や市教委上層部がしてきてはいなかったのかどうか。そういう点を、今後、マスメディアのみなさんは冷静に検証していただけると、たいへん、私としてはありがたいです。
と同時に、たとえば市教委から首長部局への博物館等の社会教育部門の移管を、この事件をきっかけに提案していることの問題点や、いまもなお当該の学校の子どもや保護者、地域住民、そして当該の学校で働き続けている教職員への支援が不十分だと思われることへの批判等々も、併せてマスメディアのみなさんにはお願いしたいと思います。
・・・とまあ、こんなことを書いておりますと、「激辛カレーの画像を貼り付けて、加害教員叩きに走っている場合じゃないんだよ、マスメディアのみなさん。もっと他に取材をして、言わなきゃいけないことがあるんだよ」と、あらためてこの場をお借りして言いたくなりました。
どうぞ、朝日新聞や神戸新聞、あるいは他の新聞社・テレビ局、そして週刊誌等々の取材陣のみなさん。市長や市教委から流される情報や、あるいは一部市議あたりから「加害教員を早く辞めさせろ」という趣旨で出される情報だけでなく、他の情報も積極的に取り上げて、議論の素材にしていただければと。今日は切実にそのことをお願いしたいと思います。今回の社説のように、市長や市教委の一連の対応を厳しく批判するような議論は、私としてはたいへんうれしく思います。ぜひとも、このような姿勢を続けていただければ幸いです。
そして、神戸の教員間いじめ問題について、マスメディアからはこのまま「加害教員を早く辞めさせろ」の話ばかりを流すのではなく、ましてや、被害にあった教員にとって心苦しいであろう画像や動画を添付するのではなく、もっと違った切り口で、「あらためて今、伝えなければならないことがなんなのか」を考えなおして、今後の情報発信をしていただきますよう、あらためてお願いします。