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できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

いったい、大阪はどんな子ども施策をしたいのだか?

2011-02-22 20:35:13 | いま・むかし

昨日、平松大阪市長から市議会の代表質問で、「2013年度中に、市立中学校128校全校での学校給食を、弁当持参との選択制で実施」という方針が示されたそうです。このことを、私は毎日新聞の今日の朝刊記事で知りました。ちなみに、設備の整備などの「初期投資」に約20億円、その後の運営経費に毎年約十数億円かかると、この記事には出ていました。

正直なところ、「なんだ、この程度の経費で大阪市の市立中学校全校での給食が実施できるのか。だったら今まで、財政事情の豊かだったときに、どうしてやらないのか?」「おまけに、あの施策見直しの頃に、市立中学校で先行的に給食を実施していたのを、いろんな人たちの反対のなかで止めたのは、いったい、なんだったのか?」と思いました。

ついでにいうと「弁当を持たせるのは親の愛」とか言っていた市会議員さんたち、この平松市長の方針にはどういう意見を言うのでしょうか? あるいは、一方で「施策は早急にやめろ」といい、一方で「子どもの権利保障だ」といって市立中学校全校での給食実施を求めてきた市議会会派の方は、この平松市長の方針には、当然、賛成するんですよね?

そもそも今、大阪市役所の側も市議会の側も、市内の子どもたちに関する施策について、将来的なビジョンが何か、あるんでしょうか? ひとまず市立中学校全校での選択制での給食実施は肯定的に受け止めるとしても、しかし、こういう状況を見ていると、「いったい、この街は自治体として、今後どんな子ども施策をしたいのだろう?」と思ってしまいます。

同じことは、大阪府及び府内の各自治体についてもいえます。

今日は大阪府内各自治体の青少年会館などの施設職員の研修におじゃまして、3つの館の実践報告を聞いてコメントする仕事をしてきました。今日は、小学生の子どもたちとともに「人権」をテーマにした15分程度の映像作品づくりに取り組んだ館、指定管理者になったNPOが積極的に障害のある子どもの居場所づくりに取り組んでいる館、平日の午前中に近隣地域の乳幼児とその親たちの子育て支援事業に取り組んでいる館と、とても興味深い取り組みの報告を聴きました。

このような各館の取り組みは社会教育の枠を越えて、人権、まちづくり、福祉、保育・子育て支援など、多様な自治体施策と結びつく可能性を持っています。だから、「地道にこつこつと、各館で職員が交代しても誰かが引き継ぐ形で、それぞれの営みを育てていってほしい。それが地域コミュニティを育てていくと思うし、そのコミュニティに支えられて自立できる人も出てくると思うから」と、私はほんとうにそのことを願います。

ですが・・・・。多くの大阪府内の自治体では、こうした営みが今後、存続できなくなる危険性があります。なぜなら、各自治体で今、既存の青少年会館などに「指定管理者制度」を適用して、3~5年単位でどの団体に館の運営を委託するかを検討するシステムをとることになるケースが増えてきているからです。

この「指定管理者制度」を導入すれば、たとえ運営委託された団体がいい事業・実践を行っていても、3~5年ごとに委託契約を見直すことになります。そのたびごとに、「財政状況がよくないので・・・・」と言って委託費を削減されたり、「近隣の他施設と一体化しての運営委託」という形で施設そのものがリストラされることがでてきたり・・・・という恐れがでてきます。せっかくいい事業・実践を行ってきた団体側にしてみても、その施設を利用してきた子どもや保護者、その他住民にしてみても、「こういうのって、たまらない」と思うのではないでしょうか。

たぶん自治体行政サイドにしてみると「財政状況が苦しい中、背に腹はかえられない」ということで、公務員が事業や館運営を担うことの高コスト体質を改善するというような思惑から、「指定管理者制度」の導入をすすめようとするのでしょう。しかし、「指定管理者制度」の導入を行ったところから、その館の運営や事業を「より安上がりにしよう」という負のスパイラルがはじまるのではないでしょうか。別の見方をすると、「指定管理者制度」の導入は、それを適用して、事業や館運営を担ってもらう諸団体の「買い叩き」につながる危険性すらあるわけです。そんなことが繰り返されていけば、そのうち「こんなお金では誰も事業・館運営は担えない」ということで、誰も指定管理者になる団体が出てこなくなるのではないでしょうか・・・・。

これでほんとうにいいのでしょうか? いったい、大阪市・大阪府や大阪府内の各自治体は、これからどんな子ども施策をしたいのでしょうか? どんな地域コミュニティを育てて、そこでどんな子どもが育つことを願っているのでしょうか?

もうすぐ統一地方選挙だそうですが、私は現場の実践者や子ども・保護者、地元の住民の方とともに、各自治体の首長や議員さんたちに聞いてみたい気持ちになります。

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